放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料
(令和2年度版、 HTML形式)

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第3章 放射線による健康影響
3.7 がん・白血病

国際がん研究機関(IARC)専門家グループの提言

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2017年4月、世界保健機関(WHO)の専門機関である国際がん研究機関(IARC)は、各国政策担当者及び医療関係者に対し、放射線被ばくの影響に係る科学的な情報提供と助言を行うことを目的として、原子力事故後の甲状腺モニタリングの長期戦略に関する国際専門家グループを設置しました。
国際専門家グループが2018年9月に公表した「原子力事故後の甲状腺健康モニタリングについてのレポート」では、甲状腺がんの疫学、臨床等に関する最新の知見等がまとめられるとともに、現在の科学的根拠と過去の経験に基づいて将来起こりうる原子力事故の後の甲状腺健康モニタリングの長期戦略に関して二つの提言が示されています。
一つ目の提言では、特定地域の全住民に対して、甲状腺超音波検査に参加するよう積極的に募集する甲状腺集団スクリーニングの実施は推奨しないとしています。
二つ目の提言では、胎児期、小児期または思春期に100~500mGy以上の甲状腺線量を被ばくしたより高いリスクの個人に対して、長期の甲状腺健康モニタリングプログラムの提供を検討するよう提言しています。ここでの甲状腺モニタリングプログラムとは、集団を対象としたスクリーニングとは異なるもので、「ヘルスリテラシーを向上させるための教育、参加者の登録、甲状腺検査及び臨床管理についての集中的なデータ収集を含む」と定義されており、検査対象となる本人が疾患を早期発見して進行度の低いうちに治療する利益を得る目的で甲状腺検査を受けるか否か、またその方法を選ぶことができるとしています。また、「甲状腺がんについて不安を抱く低リスクの個人の中には、安心を求めて甲状腺超音波検査を受ける者もいるだろう。低リスクの個人が、甲状腺超音波検査の潜在的な利益と不利益について詳細な説明を受けた上で、検査を希望するならば、整備された甲状腺モニタリングプログラムの枠組みの中で甲状腺超音波検査の機会を与えられるべきである。」と補足されています。
なお、このレポートは過去の原子力事故後に実施されてきた甲状腺超音波検査を評価等するものではありません。

本資料への収録日:2020年3月31日


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