対談インタビュー

食べ残しが出ても、“気兼ねなく”持ち帰り、楽しんでいただきたい。

Ruth's Chris Steak House 東京
支配人

シャラビー ムーサ

Ruth's Chris Steak House 東京
料理長

松浦 恒太

Ruth's Chris Steak House 東京 支配人 シャラビー ムーサ 氏と Ruth's Chris Steak House 東京 料理長 松浦 恒太 氏の動画イメージ
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食べ残しが出ても、“気兼ねなく”持ち帰り、
楽しんでいただきたい。

私たち、ルース クリス ステーキハウスは、米国ニューオーリンズ発の老舗で、米国を中心に世界で約160店舗展開しています。米国ではドギーバッグはとてもポピュラーで、私たちも、もともと食べ残しのお持ち帰りサービスを提供しています。この日本(東京)の店舗でも、出店当初から同じようにお持ち帰りに対応しています。

何より美味しい料理を提供して、お客様に楽しんでいただき、できるだけ食べ残しが出ないようにすること、そして、食べ残しが出ても、気兼ねなくお持ち帰りいただいて楽しんでもらえるようにすることを大切にしています。

ルース クリス ステーキハウスでは、世界中どの店舗を訪れても変わることなく米国料理らしさを楽しんでもらえるよう、ボリュームのある高級ステーキと沢山の付け合わせ、そして大きなデザートを提供できるようにしています。そのため、日本では少し多めに感じられることもあります。特に、お一人のお客様やカップル、年配のご夫婦が食べきれないケースがあります。ホールスタッフからは、初めてご来店のお客様にもボリュームをイメージしてもらえるようにお伝えしています。ご注文が少し多めかなと感じる場合にも率直にお伝えして、もし食べきれないときはお持ち帰りできることも積極的にお伝えしています。

冬季はスープを除いて、ほぼ全てのメニューをお持ち帰りいただくことができます。夏季はレアやミディアムレアのステーキはミディアムまで火を入れることで、お持ち帰り可能にしています。衛生管理を徹底するため、調理をするキッチンとは別の区画で、調理スタッフとは別のスタッフがお持ち帰り用の容器にお詰めしています。

当店は席数も比較的多いので、調理スタッフのほうでも、日々予約数を確認しながら、食材の発注や仕込みを調整するように気をつけています。調理スタッフにとっても、料理が下がってきて、お客様が残している量が多いと残念に感じるので、ホールスタッフからボリュームの説明や、食べ残しのお持ち帰りを勧めてもらえることで助かっています。

WORDS

ルース クリス ステーキハウス
1965年、米国ルイジアナ州ニューオーリンズに開店した老舗高級ステーキハウスの東京店であるRuth's Chris Steak House 東京。シックな設えのインテリアの店内で980 ℃のオーブンによる直火焼きステーキをはじめ、伝統に育まれた米国料理を提供。虎ノ門駅より徒歩2分、霞ヶ関駅より徒歩6分。

980 °Cのオーブンによる直火焼きステーキ

お店からお持ち帰りを伝えることで、
お客様の喜び、食品ロス削減につながる。

私たちはドギーバッグではなく、「To Go バッグ」(お持ち帰りバッグ)と呼んでいます。東京出店当初、日本のお客様はTo Go バッグの利用を遠慮される方が多かったですが、「お持ち帰りできますよ」というお声かけをするうち、徐々に利用される方も増えてきました。お声かけすることで、お客様からも、「ありがとう」「無駄にならなくてよかった」「お店でお持ち帰りできるところがあるなんて知らなかった」と喜んでいただいています。今ではお客様のほうから、To Go バッグを利用したいと頼まれることもあります。

今日では高級レストランも、環境への配慮を欠かすことはできないと考えています。初めてのお客様は「高級ステーキハウスでお持ち帰りなんてできないのではないか」「かっこ悪いのではないか」とお感じになる方もいらっしゃいますが、私たちから普通に提供しているサービスであるということをお伝えして、ご利用いただくハードルを下げるよう努力しています。一度ご利用いただくと、皆さん慣れてこられて、To Go バッグの利用をリピートなさるようになってきています。

東京に出店してから2020年で14年目を迎えますが、この間に徐々にTo Go バッグの利用が増えてきています。食品ロスのデータも計測していますが、To Go バッグの利用の増加によって確実に食品ロスの削減にもつながっていることが分かります。

大小 2 種類の容器とオリジナルの丈夫な手提げ紙袋

お客様とのコミュニケーションと
容器・手提げ袋の工夫で、
お店とお家で2度の楽しみを提供。

お持ち帰りいただいてから、どのようにすれば美味しく食べることができるのかをお伝えすることも大事なポイントだと考えています。ホールスタッフからは、ステーキを朝食のサンドイッチにするとか、付け合わせや温かいデザートの美味しい温め方など、簡単なヒントをお伝えするようにしています。お客様には、お店でも、お家でも、2度喜んでいただくことができますし、調理スタッフにとっても、ホールスタッフから説明してもらうことで、色々な料理の楽しみ方を提供することができます。

食べ残しを詰める容器は、量や大きさに応じて使い分けられるよう大小2種類用意しています。容器の大きさは、過去の食べ残し量のデータをもとに設計しています。蓋が外れないようになっており、容器の周囲から中身がこぼれにくいような形状になっています。持ち帰ってからも美味しく食べていただけるよう、色々な料理の味が混ざらないように分けて詰めるようにしていますが、お客様からまとめて詰めてほしいとご要望があれば大きなタイプの容器に盛り合わせることもあります。詰め終えたら容器に食べ切り期限の日付を記載したシールを貼り、オリジナルの丈夫な手提げ紙袋に入れてお渡ししています。紙袋は容器と大きさを合わせており、紙袋の中で容器が倒れないように工夫しています。

食べ切り期限の日付を記載したシールを貼った容器

日本での普及には、
お店ごとの衛生管理の徹底を前提に、
お客様の理解も必要。

当店におけるTo Go バッグの提供も衛生管理を前提に考えています。生ものに近いもの、例えばレアやミディアムレアのステーキ、スープ、生クリーム入りのものなどをそのままお持ち帰りいただくことはできません。また、お持ち帰りいただけるものも、お客様に1時間~1時間半以内に食べていただくか、それが無理なら冷蔵庫に入れていただき、シールの期日までに早めに食べていただくことをお願いしています。お店としてできる限りの対策をして、きちんとお願いをお伝えした後は、お店から出た瞬間からお客様の責任で食べていただく必要があると思います。日本でドギーバッグを普及させていくには、お客様にもこのことを当たり前のこととして理解していただくことも大事です。

それぞれのお店もまず衛生管理の徹底を基本的なスタンダードとしたうえで、お店ごとにお持ち帰り可能なものとそうでないものをきちんと見きわめ、お客様のご理解の下、できる範囲でお持ち帰りに取り組んでいくのがよいのではないでしょうか。

レストランにとっても、生産者から加工や流通など様々な事業者を経て届けていただいた食材がロスになってしまうのは、サプライチェーンの全ての皆様に申し訳ないことだと思っています。環境省がNewドギーバッグコンテストを立ち上げて、食品ロスを削減しようというムーブメントを作っていこうとしていることは、私たちにとってもとても嬉しいことです。
当店のTo Go バッグを街中で持ってくださっている方を見かけると、スタッフにとっても励みになります。Newドギーバッグコンテストでも、持ち帰りたくなる、お店のスタッフにとっても誇りになるようなデザインが生まれることを期待しています。

Ruth's Chris Steak House 東京の落ち着いた店内の風景
食品ロスを解決するには

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