対談インタビュー

美味しく、無駄なく、丁寧に、という仕事をいつも心がけています。

ホテルメトロポリタン エドモント
宴会料理長

松谷 俊昭

ホテルメトロポリタン エドモント宴会料理長 松谷 俊昭 氏の動画イメージ
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美味しく、無駄なく、丁寧に、
という仕事をいつも心がけています。

私たちホテルメトロポリタンエドモント*では「⾷品ロス削減プロジェクト」として、「3010(さんまるいちまる)運動*」の展開や、どの工程で食品ロスが発生するのかの考察とその対策などの取組によって、食品ロス削減に一定の効果を出しています。

かつて宴会という場においては、豪華にたくさんの料理を並べてゲストをもてなすのが当たり前でした。そうすると当然、食べきれない料理が残るわけです。そこで、お客さまと丁寧な打合せをする中で、参加者の年齢層や男女比、宴席の主旨などを細かく聞き取り、情報を共有してから⾷材を仕⼊れ、適正な量の料理を作ったりサービスを提供したりすることで、あらゆる⼯程の中でロスが発⽣する原因を⼀つ⼀つ解消させていくことを繰り返し行っています。
宴会が終わった後には毎回、何がどのぐらい残ったかというデータを取り、「次回はパスタを少なくしよう」とか「次回はもうちょっと肉料理を多くしよう」というように、それぞれのお客様に合わせて料理の構成やボリュームなどをご提案しています。

また、「3010運動」にホテル全体で力を入れて取り組んでいます。取組にご賛同いただけたお客さまには、宴会の約2時間の内の最初の30分と、お開き前の10分間に「ちょっとお話を⽌めてお⾷事タイムにしましょう」と案内をしていただいています。料理を楽しく美味しく召し上がっていただく時間を設けることで、皆さんにご満足いただきながら、食べ残しによるゴミの削減につなげようという取組です。

取組の成果として、総生ごみ量が約16%削減(自社調査:2018年6-10月/2019年6-10月の比較)という結果が出ています。宴会が終わった直後の状態を確認すると明らかに料理が残されることが少なくなってきました。これまでの取組がこのように形になって実感できることはと大変うれしく、今後も様々な工夫を続けていきたいと、スタッフのモチベーションも高まっています。

WORDS

ホテルメトロポリタンエドモント
「食のエドモント」と称され、都心にありながら閑静なエリアに位置するホテルメトロポリタン エドモント。用途や好みにあわせて選べる668の客室は、グループやファミリーでのご宿泊にも最適です。飯田橋駅・水道橋駅より徒歩5分。

3010運動
3010運動は、宴会時の食べ残しを減らすためのキャンペーンで、<乾杯後30分間>は席を立たずに料理を楽しみましょう、<お開き10分前>になったら、自分の席に戻って、再度料理を楽しみましょう、と呼びかけて、食品ロスを削減するものです。

ホテルメトロポリタン エドモント宴会料理長 松谷 俊昭 氏のインタビューシーン

食品ロス削減はもちろんですが、
それを美味しく召し上がっていただくことが重要。

例えば婚礼で振舞われる料理は、形を整えて美しく提供するために食材の端の部分をカットするなど、ロスが出やすいのが現状です。しかし、そういった調理工程で生じる⼈参の⽪や⼤根の⽪などは、実は美味しく⾷べられ、栄養価も高いのです。これらを活用し、ひと⼿間ふた⼿間かけることで美味しく仕上げたメニューを「もったいないメニュー」と呼んでいます。
もったいないメニューの1つの例として、余ったパンを加工したラスクがあります。宴席ですごく⼈気があるパンなんですが、たくさん提供するため残る場合があります。それを廃棄するのではなく⼀⼯夫し、約3〜4ミリ位にスライスして、約60度の温蔵庫に⼊れて2⽇間乾燥させ、そこにシナモンやカルダモンのトッピングをして、さらに120度で時間と手間をかけて仕上げたメニューです。

ただ廃棄するのではなく、このような美味しいラスクにして販売するところにもったいないメニューの意味があると思います。美味しく召し上がっていただくことこそが⾷品ロスを解決する上での⼤切な要素だと考えています。

洋菓子を調理している様子

ドギーバックには、まだまだ課題があります。

持ち帰りを考えるときに、⼀番クリアしなければいけない課題は衛生管理です。私たちがホテルで料理を提供する際には適切な温度管理や時間管理をしていますが、お客さまが持ち帰られる場合には、お客さま自身に管理を委ねるほかありません。

⾏政、ホテル、お客様それぞれがきちんと理解できる線引きが明確になればクリアに対応ができるのですが。また、持ち帰りできるものは十分に加熱された食品であるとか、高温多湿である日本では夏や梅雨時は避けるとか、料理の取り扱いについての注意書きを添えるなど食中毒を予防するための工夫や、いくつかの整理が必要かと思います。
私たちも料理を残さず美味しく召し上がってほしいという思いがありますが、現実としてまだまだ課題が残っています。

スマートフォン用イメージ ホテルメトロポリタン エドモント宴会料理長 松谷 俊昭 氏の料理中の横顔

横断的に、皆さんと一緒に実施していきたい。

「持ち帰り」によって一定の効果が出ることも分かっていますし、グローバルに⾒ていくと海外では広く普及している国もあります。あるいはかつての⽇本では「折り詰め」といった文化もありました。ですが、私たちだけがやろうと決めても、様々なリスクを考えると躊躇せざるを得ない課題が存在します。

余ったものは捨てられます。捨てると環境問題として、廃棄・運搬・焼却の工程でCO2も排出してしまい、行政においてゴミ処理の経費も発生します。それを減らすために持ち帰れるものがあれば持ち帰っていただきたい、流れとしてそうありたいと思いますが、行政・事業者が連携しお客さまの理解も含めて、相互に協力しなければ効果は出ません。例えば自治体の広報誌などで、「食べ切りや持ち帰りの推奨キャンペーン」とか、「ドギーバッグの配布や持ち帰り運動の展開」というようなPRをしていただけると、また雰囲気が変わってくるかなと感じています。

⾷材をいかに無駄なく料理に仕上げるか、⽇々努⼒をしています。以前はホテル側からロスを減らしましょう、なんて提案をするのはとんでもないという概念がありましたが、この⾷品ロスという問題は地球規模の課題で、一緒に解決していきませんか、という話は意外にも多くのお客様さまからご理解をいただいています。

このドギーバッグのコンテストは1つの⼿法で、その後に実際に「お持ち帰り」 という運動が広く普及してくると、より食品ロス削減の効果が出てくると思います。

ドギーバッグのデザインやネーミングが、持ち歩いていて恰好良くって「あの⽅は、食品ロスにすごく関心が高く、ちゃんと持ち帰って自己責任の範囲で召し上がられる⽅なんだな」という認識を⾼められるようなものになれば、⽇本の食品ロスは少なくなっていくような気がしています。

食品ロスを解決するには

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