環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成24年版 図で見る環境・循環型社会・生物多様性白書状況第1部>第4章 世界をリードするグリーン成長国家の実現に向けて>第1節 グリーン経済とグリーン・イノベーション

第4章 世界をリードするグリーン成長国家の実現に向けて

 第1章で見たとおり、グリーン経済・グリーン成長の実現に向けた取組は、昨今の国際的な潮流となっています。第4章第1節では、グリーン・イノベーションに関する世界と我が国の現状を、第2節以降では、低炭素社会・循環型社会・自然共生社会の実現に向けた我が国の取組の具体例を、それぞれ概観していきます。

第1節 グリーン経済とグリーン・イノベーション

1 グリーン・イノベーションとは

 環境と経済の間には密接なかかわり合いがありますが、世界が直面する環境制約に対応していくためには、第1章で見たように、双方を単にトレードオフの関係として捉えるのではなく、持続的な好循環を生み出していく関係として、その実現を目指すことが重要となります。こうした社会のシステムを実現させる上で大きな原動力となるのが「グリーン・イノベーション」、すなわち、エネルギー・環境分野におけるイノベーションです。

 現在各国では、環境・経済・社会の中長期的なあるべき姿と達成すべき目標について国の戦略として定めるとともに、目標達成に向けたグリーン・イノベーションの推進策を進めています。我が国においても、新成長戦略(2010年(平成22年)6月閣議決定)において、グリーン・イノベーションの促進や総合的な政策パッケージによって、2020年までに「50 兆円超の環境関連新規市場」、「140 万人の環境分野の新規雇用」、「日本の民間ベースの技術を活かした世界の温室効果ガス削減量を13 億トン以上とすること(日本全体の総排出量に相当)」を実現することとしており、[1]「固定価格買取制度」の導入等による再生可能エネルギーの急拡大、[2]環境未来都市構想、[3]森林・林業再生プランの3つが、同戦略を推進するための重点施策である国家戦略プロジェクトに指定されています。


グリーン・イノベーションに関する各国の取組

2 グリーン・イノベーションを実現させるための施策

(1)グリーン・イノベーションと環境技術

 ア)環境研究・環境技術開発の目指すべき方向性

 技術開発による成果を効率的にあげるためには、出口を見据えた研究開発の重点化が重要となります。中央環境審議会は、中長期(2020 年、2050 年)のあるべき姿をにらみながら今後5年間で取り組むべき環境研究・技術開発の重点課題やその効果的な推進方策を明らかにした答申として、2010年(平成22年)6月、「環境研究・環境技術開発の推進戦略」(以下「推進戦略」という。)を取りまとめました。同戦略では、持続可能な社会の構築に向けて、[1]脱温暖化社会、[2]循環型社会、[3]自然共生社会、[4]安全が確保される社会の達成を目指すこととしており、これら4つの個別領域の研究・技術開発に加え、中長期のあるべき社会像に関する総合的研究(全領域共通分野)、複数の領域にまたがる横断的研究(領域横断分野)、技術の社会実装を進めるためのシステム構築や社会シナリオ等の研究を進めることとしています。


環境研究・環境技術開発の推進戦略における各領域とその重点課題

(2)グリーン・イノベーションと環境金融

 グリーン・イノベーションの推進に当たっては、1,400兆円を超える我が国の個人金融資産を含め、国内外の資金が、環境保全に資する事業活動に対して効率的かつ十分に供給されることが重要です。

 環境金融の具体的役割は大きく分けて二つあります。一つは、環境負荷を低減させる事業に資金が直接使われる投融資です。もう一つは、企業行動に環境への配慮を組み込もうとする経済主体を評価・支援することで、そのような取組を促す投融資です。

 環境金融の普及・促進に向けた自主的な取組として、約30の我が国の金融機関が協働し、2011年(平成23年)10月に、環境金融への取組の輪を広げていくための行動原則として「持続可能な社会の形成に向けた金融行動原則」(21世紀金融行動原則)を策定しました。同原則は、持続可能な社会の形成のために果たすべき行動指針として7つの行動原則を示しており、また、具体的な行動指針として、「預金・貸出・リース業務ガイドライン」、「運用・証券・投資銀行業務ガイドライン」、「保険業務ガイドライン」という3つのガイドラインをあわせて策定しています。同原則には、平成24年4月末時点で180の金融機関が署名しています。


持続可能な社会の形成に向けた金融行動原則(21世紀金融行動原則)

3 グリーン・イノベーションと市場のグリーン化

 グリーン・イノベーションを推進していくためには、環境分野における技術革新を実現しつつ、新たな制度設計や制度の変更、新たな規制・規制緩和などの総合的な政策パッケージにより、環境技術・製品の急速な普及拡大を後押しすることが不可欠です。とりわけ、「市場」に着眼し、そのグリーン化を図っていくための施策は、多くの主体に対して効率的かつ効果的に働きかけることができる特長があります。

 環境省が2012年(平成24年)1月にとりまとめた報告書「市場の更なるグリーン化に向けて」では、市場のグリーン化について、「環境保全の視点を大胆に社会・経済活動に織り込み、環境配慮型の製品・サービスを開発・提供することを需要の拡大につなげることをはじめ、環境に配慮した企業行動が評価を受け、より大きな利潤を得ることができるような市場を形成すること」と位置づけています。


グリーン化された市場のイメージ