環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成30年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第1部第3章>第4節 食品ロス削減

第4節 食品ロス削減

1 食品ロスの発生状況

国連食糧農業機関(FAO)によれば、世界の栄養不足人口は、7億8,900万人(2014年から2016年までの3か年平均)と推計されています。SDGsでは、2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させるターゲットが設定されています。

我が国の食料自給率はカロリーベースで約4割、生産額ベースで約7割となっており、残りは海外から輸入しています。その一方で、2015年度に食品関連事業者や家庭から646万トンの本来食べられるはずの食品が捨てられています。このうち、約半分の289万トンは、一般家庭からのものであり、食品ロス削減のためには、食品関連事業者の取組の推進と消費者の意識改革の両方について取り組む必要があると言えます(図3-4-1)。

図3-4-1 我が国の食品ロスの大きさ

2 食品ロス削減対策

(1)食品ロス削減国民運動(NO-FOODLOSS PROJECT)

食品ロスの削減に向けて、関係府省庁が連携して、官民を挙げた食品ロス削減国民運動(NO-FOODLOSS PROJECT)を展開しています(図3-4-2)。

図3-4-2 食品ロス削減国民運動のロゴマーク

この国民運動の一環として、フードチェーンの各段階における食品ロス削減の取組を推進しており、例えば、加工食品の小売業者への納品期限の見直し、賞味期限の年月表示化、外食における食べきり、フードバンクの活用の推進等に取り組んでいます。また、家庭からの食品ロスを削減するため、消費者一人一人の行動を改善(買いすぎ、作りすぎの防止等)するための普及啓発を実施しています。

(2)全国おいしい食べきり運動ネットワーク協議会

「おいしい食べ物を適量で残さず食べきる運動」の趣旨に賛同する地方自治体により、広く全国で食べきり運動等を推進し、食品ロスを削減することを目的として、2016年に「全国おいしい食べきり運動ネットワーク協議会」(事務局:福井県)が設立されています。本協議会には2018年3月時点で47都道府県を含む320自治体が参加しており、自治体の取組の優良事例の共有や共同キャンペーン等を行っています。

2017年10月には、食品ロス削減の取組が国民運動として一層拡大するよう、「3010運動」(宴会開始後30分と終了前10分は着席して食事に集中する取組)の発祥地である長野県松本市において「第1回食品ロス削減全国大会」(松本市・全国おいしい食べきり運動ネットワーク協議会主催、消費者庁・農林水産省・環境省共催)が開催され、合計約800名の参加者が食品ロス削減の決意を全国に発信しました。

(3)食品廃棄物等の有効活用

削減の取組を行った上で発生した食品ロスや食品ロス以外の食品廃棄物等の有効活用に向けて、環境省・農林水産省では、食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(平成12年法律第116号。以下「食品リサイクル法」という。)に基づき、再生利用等の実施を促進しています。2015年に策定した基本方針では、2019年度までの再生利用等実施率目標を食品製造業95%、食品卸売業70%、食品小売業55%、外食産業50%と設定されています(図3-4-3)。

図3-4-3 食品産業における再生利用等実施率の推移

このうち製造業は既に目標を達成していますが、食品流通の川下である食品小売業、外食産業では食品廃棄物の分別が困難であるなどの理由から、再生利用等実施率が低迷しています。そこで、食品廃棄物等の再生利用を促進するために、食品リサイクル法に基づく再生利用事業計画の認定を行っています。

事例:やまぐち食べきっちょる運動 (山口県)

山口県では2011年2月に「山口県食品ロス削減推進協議会」を設立し、学識経験者や飲食店、旅館、事業者等が力を合わせて食品ロスを減らしていくための「やまぐち食べきっちょる運動」に官民が連携して取り組んでいます。

同運動には県内の旅館・ホテル、飲食店等が「やまぐち食べきり協力店」として登録し、食べきりメニューの提示や食材の使いきり、希望量に応じた食事の提供等に取り組んでおり、その数は約250件に上っています。

やまぐち食べきり協力店のステッカー

また、家庭で食材を無駄なく利用するための「やまぐち食べきりアイデア」の掲載など身近な取組を促進しているほか、学校での食育推進に合わせ、J2レノファ山口FCと連携した「給食たべきりイベント」の実施や県内全小中学校での「食品ロス削減メッセージ」の放送、地元アイドルによる「もったいない啓発ソング」のCM放映など、きめ細かな普及啓発に取り組んでいます。

J2山口との給食たべきりイベント

事例:救缶鳥(きゅうかんちょう)プロジェクト(株式会社パン・アキモト)

栃木県那須塩原市の株式会社パン・アキモトは、防災備蓄用のパンの缶詰「救缶鳥」の製造・販売を行っています。

「救缶鳥」の基本的なスキームは、賞味期限が3年の「救缶鳥」を賞味期限が残り1年になると、購入した自治体、企業、個人等に再購入・回収に関する案内を送付し、再購入の商品と引き替えに、備蓄してあった救缶鳥を回収し、国際支援NGO等と連携して、食糧難の国や地域に無償で提供しています。モノを大切にする心「もったいない」を身近な防災備蓄食で行い、同時にそれをもって国際貢献を継続的に実現するシステムです。

この取組は、2017年の環境省の第5回グッドライフアワードで環境大臣賞最優秀賞を受賞しました。

「救缶鳥」を手にしたフィリピンの子どもたち