環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成29年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第3章>第4節 国際的取組の推進

第4節 国際的取組の推進

1 3R国際協力の推進と我が国循環産業の海外展開の支援

地球規模での循環型社会づくりと、我が国の循環産業の海外展開を通じた活性化を図るためには、国、地方公共団体、民間レベル、市民レベル等の多様な主体同士での連携に基づく重層的なネットワークを形成する必要があります。

我が国とつながりの深いアジア太平洋諸国における循環型社会の形成に向けては、アジア太平洋諸国における3Rの推進を促す取組として、2016年11月にアデレード(オーストラリア)で「アジア太平洋3R推進フォーラム第7回会合」を「持続可能な開発アジェンダ2030に向けた3Rと資源効率性の進歩」を全体テーマとして開催しました。

特に、アジア各国に適合した廃棄物・リサイクル制度や有害廃棄物等の環境上適正な管理(ESM)の定着のため、独立行政法人国際協力機構(JICA)では、アジア太平洋諸国のうち、ベトナム、インドネシア、マレーシア、スリランカ、大洋州について、技術協力等により廃棄物管理や循環型社会の形成を支援しました。また政府開発援助(ODA)対象国からの研修員受入れを実施しました。

同時に、国レベルだけでなく、アジア各国の地方公共団体との知見・経験の共有を行うことも重要です。日本環境衛生センター主催の第7回アジア3R自治体間ネットワーク会合に合わせて、3Rと廃棄物適正処理の推進を目的とした、環境省主催による官民連携ワークショップを開催し、海外から6都市と日本の自治体を招聘(へい)しました。あわせて、NGOによるセミナーも開催しました。

さらに、これらの取組を下地とし、我が国の廃棄物分野の経験や技術をいかした、廃棄物発電ガイドラインの策定などアジア各国の廃棄物関連制度整備と、我が国循環産業の海外展開を戦略的にパッケージとして推進しています。我が国循環産業の戦略的国際展開・育成事業等では、海外展開を行う事業者の支援を2016年度に11件実施しました。2011年度から2015年度までの支援の結果、2016年12月時点で商用運転が開始した件数が3件、契約、SPC・合弁企業設立、MOU(覚書)締結、入札まで至っている(準備中含む)件数が7件、JCMや他省庁支援事業等の他事業に発展した件数が1件という成果を上げています。また、我が国企業によるアジア等でのリサイクルビジネスについては、2件の実施可能性調査を新たに実施しました。さらに、現地ニーズに合致したリサイクル技術・システムの確立に係る研究開発・実証事業として、2012年度からの継続案件1件、2013年度からの継続案件1件を実施しました。また、2016年度からの新たな取組として、NEDOで実施中のアジア省エネルギー型資源循環制度導入実証事業において、海外案件を2件採択しました。

さらに、各国別でも様々な取組を行っています。

ベトナムにおいては、ワークショップや専門家会合等の開催により我が国が策定支援した「一般廃棄物焼却炉に関する国家技術基準を規定する通達」が2016年5月に施行されました。加えて、「廃製品回収・処分に関する通達(案)」の支援として、2015年11月と2016年3月に意見徴収のワークショップを開催しました。また、フィリピンにおいては2016年11月に環境政策対話を実施し、廃棄物発電プロジェクトの推進等に関する協力についてのミニッツ(協議録)に署名しました。

加えて、アジア地域等の途上国における公衆衛生の向上、水環境の保全に向けては、浄化槽等の日本発の優れたし尿処理技術の国際展開を実施しています。2016年度は、第4回アジアにおける分散型汚水処理に関するワークショップを2016年9月にインドネシアで開催しました。また、中東欧地域において日本の分散型汚水処理システムを普及するための情報収集及びアプローチ検討のために、2016年6月にハンガリー及びルーマニアでワークショップの開催及び現地調査を実施しました。

同時に、国際的な活動に積極的に参画し、貢献することも重要です。国連環境計画(UNEP)国際資源パネルへの支援については、環境省は2016年6月に南アフリカのケープタウンで開催されたUNEP国際資源パネル第18回会合及び2016年11月にフランスのパリで開催されたUNEP国際資源パネル第19回会合に参加し、積極的に議論に参加しました。今後も毎年複数の報告書の公表が予定されるなど、UNEP国際資源パネルの活動は着実に進捗しています。また、外務省は、我が国に誘致したUNEP国際環境技術センター(UNEP/IETC)の活動について、エネルギー利用のためのバイオマス廃棄物プロジェクトに関するセミナーや我が国の産業廃棄物処理政策と実践を取りまとめた報告書刊行のサイドイベント等に参加しました。

OECDについては、2016年 11月末にフランスのパリで開催されたOECD資源生産性・廃棄物作業部会第8回会合へ参加し、我が国の経験や取組の発信を行いました。

また、SDGsが2015年9月に国連サミットにおいて採択されましたが、その中で、世界全体で、資源効率性の向上や3Rと同様の取組を進めること及び持続可能な生産消費形態の確保をすることがゴールとなっています。このようなゴールの下、2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たり食品廃棄物を半減させるなど、3Rの推進や資源効率の向上に関するターゲットが盛り込まれました。さらに、バーゼル条約等に関わる取組も、各省連携の下で行っています。環境省は、POPs条約において考慮することとされているPOPs廃棄物の環境上適正な管理に関する技術ガイドラインのうち、PCN廃棄物に関するガイドラインの策定作業を主導するとともに、我が国のPCN廃棄物等の処理技術等に関する知見を適切にインプットし他のPOPs廃棄物ガイドラインの策定又は改訂作業も含め、国際的な議論の進展に貢献しました。また、バーゼル条約第12回締約国会議において暫定採択された「電気電子機器廃棄物及び使用済電気電子機器の越境移動(特に廃棄物と非廃棄物の識別)に関する技術ガイドライン」の今後の正式採択に向けた進め方等について、公開作業部会の場における議論に積極的に参加しました。外務省も、バーゼル条約に関係する活動として、本締約国会議での議論に積極的に参加しました。また、水銀に関する水俣条約(以下「水俣条約」という。)における水銀廃棄物の基準値設定にあたって、第7回政府間交渉委員会(INC7)の決定に基づく会期間の議論を主導し、第1回締約国会議に向けた提案の作成に貢献しました。

さらに、バーゼル条約、国際貿易の対象となる特定の有害な化学物質及び駆除剤についての事前のかつ情報に基づく同意の手続に関するロッテルダム条約(PIC条約)、POPs条約の3条約に、2013年に採択された水俣条約を加えた4条約の連携強化に係る活動も推進しました。水銀廃棄物の環境上適正な管理に関する技術ガイドライン等、バーゼル条約における取組で得られた知見は、水俣条約の実施に活用できることから、特にバーゼル条約と水俣条約の連携強化に取り組みました。

持続可能な開発のための教育(ESD)の推進については、第6章第5節6を参照。

2 循環資源の輸出入に係る対応

地方環境事務所において廃棄物等の不法輸出入の監視強化のための取組を関係省庁と連携して行うなど、廃棄物等の不法輸出入防止に関する水際対策に積極的に取り組むとともに、このための国際的な連携強化を図るため、2016年9月に、インドネシアでアジア太平洋地域の13の国と地域及び関係国際機関の参加を得て、有害廃棄物の不法輸出入防止に関するアジアネットワークワークショップを開催しました。また、廃棄物等の輸出入を行う事業者に対しては、2017年1月以降に全国9か所でバーゼル法等の説明会を開催するなど、事業者への手続案内等の拡充を図りました。さらに、循環資源の越境移動をめぐり近年生じている課題に対応し、適正な資源循環の実現に向けた今後の取組の在り方等について検討を行い、第193回国会にバーゼル法の改正法案を提出しました。

そのほかにも、港湾における循環資源の取扱いにおいては、循環資源の積替・保管施設等が活用されました。

3 災害廃棄物対策に係る国際支援

近年、世界各国において自然災害が頻発化・激甚化しています。災害大国である日本が蓄積してきた災害対応のノウハウや経験は、地理的条件や災害の種類等によって調整が必要な点もありますが、世界各国においても有効であり、アジア・太平洋地域のような災害が頻発する地域に対する災害廃棄物処理に係る国際支援を行っていくことが重要です。環境省では、日本の過去の災害による経験、知見を活かした国際支援の一環として、ネパールにおいて2015年4月及び5月の大地震が発生して以来、環境省職員や専門家を派遣し、倒壊した家屋等により発生した大量の災害廃棄物の適正かつ迅速な処理を行うための技術支援を実施しており、2016年度においても首都カトマンズの災害廃棄物処理を中心に継続的な支援を行いました。

また、2015年4月に行われた第18回日中韓三カ国環境大臣会合において締結された共同コミュニケでは、大地震等災害時の廃棄物対策等における経験や政策の共有を図ることに合意しました。さらに、5月に行われたG7環境大臣会合で採択されたコミュニケの付属書である「富山物質循環フレームワーク」には、災害廃棄物に関し、G7各国が環境上適正な管理を進めていくことや、アジア・太平洋等の世界的なホットスポット地域等の国・地域への支援を行うことが盛り込まれました。