第4節 チャレンジ25という将来世代への約束

 地球温暖化対策をどのように進めるかについては、第3節でみてきたとおり、世界で粘り強く議論が続けられています。それと並行して、わが国においてどのように地球温暖化対策を進め、国際的にわが国に課せられた役割を果たしていくかも大きな検討課題です。

1 チャレンジ25を実現する国全体の制度

 IPCCが「地球温暖化は疑う余地がない」と断定しているように、地球温暖化問題は待ったなしの状況であり、わが国としても着実に対策を講じる必要があります。わが国はコペンハーゲン合意に基づき、2020年までに25%削減という削減目標を気候変動枠組条約事務局に提出しました。これから10年で25%削減目標を達成するためには、あらゆる政策を総動員していく必要があります。

 そのためには、産業界は言うに及ばず、すべての国民が力をあわせていくことが不可欠です。政府では、「地球と日本の環境」を守り、未来に引き継いでいくための行動を「チャレンジ25」と名付け、すべての主体の力を結集するために積極的な取組を進めています。

 一方、世界同時不況から脱するための取組は、まさにこれから正念場を迎えます。このため、新たな持続的な需要と雇用を確保することが求められています。これに対し、平成21年12月に閣議決定された「新成長戦略(基本方針)」では、わが国の強みを活かす成長分野の筆頭に、グリーン・イノベーションによる環境・エネルギー大国戦略が掲げられています。環境関連の事業は、国の内外で短期的にも長期的にも潜在的な需要が見込まれる持続的な成長分野と言えます。また、英国で2006年(平成18年)10月に公表された「スターン・レビュー」等においては、今、環境関連の事業に取り組まなければ、将来莫大な費用が必要になるとの予測も示されています。

 このような状況を踏まえ、今こそ、環境関連投資等の思い切った政策を行うことで、経済発展を牽引し雇用を創出する必要があります。さらには、このような政策を通じて、社会のあり方全体を未来に向けて持続可能なものに変えていかなければなりません。

新成長戦略(基本方針)

 わが国は今、長い衰退のトンネルの中にいるといえるのかも知れません。「リーマンショック」の傷跡、65年前の終戦当時の状況にまで悪化した財政、少子高齢社会への急激な突入など、私たちの前には大きな課題が迫ってきています。しかしながら、環境大国、科学・技術立国というわが国が元来もつ強み、個人金融資産(1,400兆円)や住宅・土地等実物資産(1,000兆円)を活かしつつ、アジア、地域を成長のフロンティアと位置づけて取り組めば、成長の機会は十分存在します。このような観点に立ってまとめられた「新成長戦略(基本方針)」では、グリーン・イノベーション(環境エネルギー分野革新)による環境・エネルギー大国戦略、すなわちグリーンイノベーションが牽引する経済成長がその筆頭に掲げられています。

 今後のグリーン・イノベーションによる成長として、具体的には、まず、電力の固定価格買取制度の拡充等による再生可能エネルギー(太陽光、風力、小水力、バイオマス、地熱等)の普及拡大支援策や、低炭素投融資の促進(図2-4-1)、情報通信技術の活用等を通じて日本の経済社会を低炭素型に革新することとしています。また、安全を第一として、国民の理解と信頼を得ながら、原子力利用について着実に取り組みます。


図2-4-1 エネルギー環境適合製品の開発及び製造を行う事業の促進に関する法律案【低炭素投資促進法案】

 さらに、蓄電池や次世代自動車、火力発電所の効率化、情報通信システムの低消費電力化など、革新的技術開発の前倒しを行うこととしています。また、モーダルシフトの推進、省エネ家電の普及等により、運輸・家庭部門での総合的な温室効果ガス削減を実現します。

 そして、電力供給側と電力ユーザー側を情報システムでつなぐ日本型スマートグリッドにより効率的な電力需給を実現し、家庭における関連機器用の新たな需要を喚起することで、成長産業として振興を図ります。さらに、成長する海外の関連市場の獲得を支援することとしています。

 低炭素社会への転換を図りつつ、経済成長を実現する上で、快適性・生活の質の向上によるライフスタイルの変革も重要な課題です。エコ住宅の普及、再生可能エネルギーの利用拡大や、ヒートポンプの普及拡大、LEDや有機ELなどの次世代照明の100%化の実現などにより、住宅・オフィス等のゼロ・エミッション化を推進することとしています。これはまた、居住空間の快適性・生活の質を高めることにも直結し、人々のライフスタイルを自発的に低炭素型へと転換させる大きなきっかけとなることが期待されます。こうした家庭部門でのゼロ・エミッション化を進めるため、各家庭にアドバイスをする「環境コンシェルジュ制度」を創設します。

 また、老朽化した建築物の建替え、改修の促進等による「緑の都市」化も同時に進めなければなりません。日本の都市を、温室効果ガスの排出が少ない「緑の都市」としていくため、都市計画のあり方や都市再生・再開発のあり方を環境・低炭素化の観点から抜本的に見直します。そして、老朽化し、温室効果ガスの排出や安全性の面で問題を抱えるオフィスビル等の再開発・建て替えや改修を促進するため、必要な規制緩和措置や支援策を講じていきます。

 このように経済社会構造を変革していくには、個々の地方がそれぞれ経済社会構造の変革を成し遂げていく必要があります。そのため、公共交通の利用促進等による都市・地域構造の低炭素化、再生可能エネルギーやそれを支えるスマートグリッドの構築、適正な資源リサイクルの徹底、情報通信技術の活用、住宅等のゼロ・エミッション化など、エコ社会形成の取組を支援します。規制改革、税制のグリーン化を含めた総合的な政策パッケージを活用しながら、環境のみならず、健康、観光を柱とする集中投資事業を行い、自立した地方からの持続可能な経済社会構造の変革を実現する第一歩を踏み出します。

 これらの施策を総合的に実施することにより、2020 年までに50兆円超の環境関連新規市場、140万人の環境分野の新規雇用の創設といった経済成長を目標としつつ、低炭素社会への転換を図ります。

地球温暖化対策(低炭素化促進)のための税制全体のグリーン化

 他方、いわゆる環境税の取扱を含め、税制のグリーン化も重要な課題です。平成22年度税制改正大綱では、個別間接税に関連し、「グッド減税、バッド課税」という考え方が採られています。これは、特定の財・サービスが環境や健康などに影響をもたらす場合に、それが好影響であるときには税負担を軽減し、悪影響であるときには税負担を課すという考え方です。「グッド減税、バッド課税」という考え方に立ち、地球規模での課題に対応した税制の検討が行われました。

 化石燃料に課税される揮発油税、地方揮発油税、軽油引取税については、平成22年度税制改正において、平成20年4月から10年間のものとして定められていた暫定税率は廃止されました。しかしながら、厳しい財政事情や、化石燃料消費が地球温暖化に与える影響等から、当分の間、これらの税については現在の税率水準を維持することとされました。具体的には暫定税率を廃止した上で、当分の間、揮発油税、地方揮発油税、軽油引取税について改正前の税率水準を維持することとしました。ただし、指標となるガソリン価格の平均が、連続3ヶ月にわたり、160円/Lを超えることとなった場合には、燃料課税の本則税率を上回る部分の課税を停止する等の措置を実施することとされました。また、自動車重量税については、車体の環境負荷に応じて、段階的な複数税率を設定することでグリーン化を行うこととされ、また、いわゆる「エコカー減税」についても制度の仕組みを維持することとされました。

 他方、環境関連税制全般については、1990年代以降、欧州各国を中心として、諸外国においてエネルギー課税や自動車関連税制などを含む環境税制の見直し・強化が進んできているところであり(図2-4-2)、わが国の環境関連税制による税収の対GDP比は、欧州各国に比べれば低い状況にあります。地球温暖化対策のための税については、環境省が、中央環境審議会グリーン税制とその経済分析等に関する専門委員会を開催し、地球温暖化対策税を含むグリーン税制の経済分析等について審議を行いました。環境省では、平成21年度においても地球温暖化対策税の創設について要望するとともに、経済産業省からも地球温暖化対策税の検討について要望が行われました。平成22年度の所得税法等の一部を改正する法律附則においては、地球温暖化対策のための税について、「当分の間規定する税率の取扱いを含め、平成23年度の実施に向けた成案を得るよう検討を行うものとする」と規定されました。


図2-4-2 諸外国における温暖化対策に関連する主な税制改正の経緯

 その他、自動車の低公害化、低燃費化や省エネ住宅の推進に係る特例措置も盛り込まれました。

 さらに、平成22年度税制改正大綱では、地球規模の問題解決のため、国際連帯税について早急に検討を進めることとされました。国際連帯税は、環境問題のほか、国際金融危機、貧困問題などの地球規模の問題への対策の一つとして注目を集めており、金融危機対策の財源確保や投機の抑制を目的として国際金融取引に課税する手法や、途上国の開発支援の財源確保などのために国境を越える輸送に課税する手法など、さまざまな手法が議論されているもので、すでにフランス、チリ、韓国などが航空券連帯税を導入するなど国際的な広がりを見せているものです。

 また、これらの税制による税収の使途について、地球温暖化問題に関する閣僚委員会タスクフォースの経済モデル分析からは、すべての炭素排出に炭素比例で課税する地球温暖化対策税を導入したとして、その税収を地球温暖化対策に充てた場合、家計に一括還流する場合と比較して、実質可処分所得への影響が顕著に緩和されるという結果が得られていることは注目に値します。

地球温暖化対策基本法の制定と対策の推進

 わが国の地球温暖化対策の基本的な方向性を明らかにするために、地球温暖化対策に関しての基本原則や国、地方公共団体、事業者及び国民の責務、温室効果ガス排出量の削減に関する中長期的な目標、地球温暖化対策の総合的かつ計画的な推進を図るための基本計画、基本的施策等を盛り込んだ地球温暖化対策基本法案を平成22年3月に閣議決定し、国会に提出しました(図2-4-3)。


図2-4-3 地球温暖化対策基本法案(平成22年3月12日閣議決定)の概要

 地球温暖化対策基本法案では、その目的として、地球温暖化を防止すること及び地球温暖化に適応することが人類共通の課題であり、すべての主要国が参加する公平かつ実効性のある国際的な枠組みの下で取り組むことが重要であることにかんがみ、地球全体の温室効果ガス排出量の削減に貢献するとともに、国際社会の中で率先して社会経済構造の転換を促進しつつ、脱化石燃料化を図ること等により、温室効果ガスの排出量をできる限り削減し、吸収作用を保全・強化し、地球温暖化に適応することができる社会を実現するため、経済成長、雇用の安定やエネルギー安定供給の確保を図りつつ地球温暖化対策を推進することを掲げています。

 この目的の達成に向けて、上記のとおりさまざまな事項を定めており、その中でも特に重要な基本原則、中長期的な目標、基本的施策の概要は次のとおりです。

 まず、基本原則として、地球温暖化対策を行うに当たっての基本的な原則を定めており、次の7項目を盛り込んでいます。

・新たな生活様式の確立等を通じて、豊かな国民生活と国際競争力が確保された経済の持続的な成長を実現しつつ、温室効果ガスの排出量を削減し、吸収作用を保全・強化することができる社会を構築すること。

・わが国に蓄積された知識、技術、経験等を生かして、及び国際社会においてわが国の占める地位に応じて、国際的協調の下に積極的に推進すること。

・地球温暖化の防止等に資する研究開発・成果の普及が図られるようにすること。

・地球温暖化の防止等に資する産業の発展及び就業の機会の増大、雇用の安定が図られるようにすること。

・エネルギーに関する施策との連携を図りつつ、エネルギーの安定供給の確保が図られるようにすること。

・防災、生物の多様性の保全、食料の安定供給の確保等に関する施策との連携を図ること。

・経済活動・国民生活に及ぼす効果・影響について事業者・国民の理解を得つつ、適切な財政運営にも配慮すること。

 中長期的な目標には、温室効果ガス排出量の削減に関する中長期的な目標と再生可能エネルギーの供給量に関する中期的な目標があり、具体的な数値を明記しています。前者については、温室効果ガス排出量について、すべての主要国による公平かつ実効性のある国際的な枠組みの構築及び意欲的な目標の合意を前提として2020年までに1990年比で25%を削減すること、2050年までに1990年比で80%を削減し、2050年までに世界全体の温室効果ガス排出量を少なくとも半減するとの目標を、すべての国と共有するよう努めることを明記しています。後者については、温室効果ガス排出量の削減に関する中長期的な目標の達成に関して、再生可能エネルギーの供給量について、2020年までに一次エネルギー供給量に占める割合を10%に達することを定めています。

 基本的施策には、国内排出量取引制度の創設、地球温暖化対策のための税の検討その他の税制全体の見直し、再生可能エネルギーに係る全量固定価格買取制度の創設という主要な3つの制度の構築に加え、全量固定価格買取制度以外の再生可能エネルギーの普及拡大に関する施策、原子力に係る施策、エネルギーの使用の合理化の促進、交通に係る施策、革新的な技術開発の促進、教育・学習の振興、自発的な活動の促進、地域社会の形成に当たっての施策、吸収作用の保全・強化、地球温暖化への適応、国際的協調のための施策、政策形成への民意の反映等について定めています。

 基本的施策に定める主要な3つの制度のうち、国内排出量取引制度については、温室効果ガス排出量の着実な削減のため、温室効果ガスの排出者の一定期間における温室効果ガス排出量の限度を定めるとともに、その遵守のためのほかの排出者との取引等を認める制度を創設するものとし、このために必要な法制上の措置について、地球温暖化のための税と並行して検討を行い、地球温暖化対策基本法の施行後1年以内を目途に成案を得るものとしています。その検討においては、排出者の範囲や一定の期間における温室効果ガスの排出量の限度を定める方法など制度の適正な実施に関し必要な事項について検討を行うものとしています。そのうち、一定の期間における温室効果ガスの排出量の限度を定める方法については、一定の期間における温室効果ガスの排出量の総量の限度として定める方法を基本としつつ、生産量その他事業活動の規模を表す量の一単位当たりの温室効果ガスの排出量の限度として定める方法についても、検討を行うものとしています。

 また、地球温暖化対策の総合的かつ計画的な推進を図るため、地球温暖化対策に関する基本的な計画(基本計画)を定めることとしていますが、まずは2020年25%、2050年80%削減を実現するための具体的な対策・施策の一つの絵姿、及びその場合の経済効果を提示するため、2010年(平成22年)3月31日に「地球温暖化対策に係る中長期ロードマップ(環境大臣試案)」を発表しました(図2-4-4)。今回の試案は、今後国民の御意見を伺いながら、より充実したものとなるよう精査していく予定です。


図2-4-4 地球温暖化対策に係る中長期ロードマップ(概要)〜環境大臣小沢鋭仁試案〜

 そして、そのような道筋を踏まえ、すべての国民が力をあわせて「地球と日本の環境」を守り、未来に引き継いでいくためのチャレンジ25を推進する国民運動「チャレンジ25キャンペーン」を展開し、エコな生活スタイルの選択、省エネ製品の選択など「6つのチャレンジ」の実践を呼びかけることにより、ものづくりから日々の暮らしまで、さまざまな活動に伴う二酸化炭素の排出の削減を進めます(図2-4-5)。


図2-4-5 チャレンジ25キャンペーン

 さらに、米国、中国などすべての主要国が参加する公平で実効性ある枠組みづくりに向け、国際交渉を主導していきます。また、先進国と途上国の架け橋としての役割を果たすため、今後の国際交渉の状況を注視しつつ、気候変動対策に意欲的に取り組む途上国に対し「鳩山イニシアティブ」による途上国支援を進めていきます。


温暖化防止の国民運動チャレンジ25キャンペーン


 地球温暖化という人類の生存にかかわる脅威に対して、世界が立ち向かおうとしています。 

 日本は、京都議定書を批准し、2008年から2012年の間に二酸化炭素などの温室効果ガス排出量を1990年に比べて6%削減することを世界に約束しています。

 このような中、昨年9月、鳩山内閣総理大臣はニューヨークの国連気候変動サミットにおいて、「わが国は、すべての主要国による公平かつ実効性のある枠組みの構築と意欲的な目標の合意を前提として、温室効果ガス排出量を2020年までに1990年比で25%削減する」という目標を表明しました。 政府では、地球と日本の環境を守り未来の子どもたちに引き継いでいくため、「チャレンジ25」と名付け、あらゆる政策を総動員して地球温暖化の防止を進めています。

 そのための国民的運動を、「チャレンジ25キャンペーン」として本年1月14日からスタートし、二酸化炭素削減に向けた具体的な行動の実践を呼び掛けています。各界で活躍されている著名な方々もキャンペーン応援団として参加しています。皆さんもぜひご参加下さい。


温暖化防止の国民運動チャレンジ25キャンペーン

チャレンジ25キャンペーン」応援団キャプテン

 加山 雄三 (かやま ゆうぞう)

 俳優、シンガーソングライター

 チャレンジ25キャンペーン応援団のキャプテンを務めている加山雄三です。国民の皆様の中には、具体的な温暖化防止のアクションは始めてはいないが、地球の将来を考えて、きちんとやらないといけないと思っている方もたくさんいると思います。私も、今日から新しいスタートという気持ちで、皆さんと一緒にCO2削減にチャレンジしていきますので、皆様もどうぞ、一緒に参加しましょう。


チャレンジ25キャンペーン」スーパーアドバイザー

 小宮山 宏 (こみやま ひろし)

 工学博士(東京大学、1972年)、

 第28代東京大学総長

 2009年4月より三菱総合研究所理事長、東京大学総長顧問

 私はエコハウスに住んでおり81%のCO2削減を実現しましたが、良さはそれだけではありません。結露しなかったり、家の中でトイレが寒くなかったり、また、初期投資も回収できるなど、とにかく、住みやすいことがポイントです。私も、スーパーアドバイザーとして全力で頑張りますので、皆さんもCO2削減に向けチャレンジしてください。


チャレンジ25キャンペーン」応援団

 上戸 彩 (うえと あや)

 女優

 マイ箸やマイバックを利用するなどして、エコ活動に取り組んでいます。

 最近では、ソーラーパネルの付いた携帯電話が出てくるなど、そうした身近に使える、エコな電化製品も増えてきています。

 私も、毎日の生活の中でエコな取組を実践し、CO2をダイエットしていきますので、皆さんも一緒に、CO2ダイエットにチャレンジしましょう。


チャレンジ25キャンペーン」応援団

 大林素子 (おおばやしもとこ)

 スポーツキャスター、(財)オリンピック委員会スポーツアンバサダー

 50年後、100年後、スキーやビーチバレーなどの競技が出来なくなるかもしれないと言われています。私たちアスリートも、各試合会場で、こどもたちに、温暖化防止に向けたメッセージを送るなどの活動を行っていますが、これからもそうした活動により一層取り組んでいきます。


チャレンジ25キャンペーン」応援団

 岡田武史 (おかだたけし)

 サッカー日本代表監督、地球環境イニシアティブ発起人

 再生可能エネルギーを日本に広める団体の代表発起人を務めるなど、温暖化防止に取り組んでおりますが、自分自身の生活を顧みますと、まだまだやりきれていない部分があります。これから努力していきたいと思います。


チャレンジ25キャンペーン」応援団

 杉本 彩 (すぎもと あや)

 女優、作家

 開発の犠牲になる野生動物や、美しい自然を見るたびに、心を痛めています。

 また、その都度、人間の傲慢さと愚かさを感じています。

 愛と思いやりを持ってエコ活動に取組み、意識を高めていきたいと思っています。


チャレンジ25キャンペーン」応援団

 杉山 愛 (すぎやま あい)

 プロテニスプレイヤー、グランドスラム62回連続出場の世界記録保持者、グランドスラム3度優勝(ダブルス)、オリンピック4回出場。

 温暖化による気温上昇は、海外でプレーしていても肌で感じることで、私たちのプレーする環境も、その暑さ等により、どんどん厳しい状況になっています。まずは、省エネ家電に買い替えるなど、自分のライフスタイルをエコに変えていきたいと思っています。


チャレンジ25キャンペーン」応援団

 別所 哲也 (べっしょ てつや)

 俳優/「ショートショート フィルムフェスティバル&アジア」代表

 俳優の傍ら、国際短編映画祭の代表を務めており、2008年からストップ!温暖化部門を設立しました。毎年、世界の映像クリエーターから温暖化防止のメッセージが込められた映像が寄せられていますが、そんな映像の持つ力を活かして、日本はもちろん、世界中の人々に温暖化防止のメッセージを伝えていきたい。皆さん、ともにチャレンジしましょう。


2 チャレンジ25につながるさまざまな主体の取組

 このような政府の取組と相前後して、民間企業などあらゆる主体で地球温暖化に対する問題意識が高まり、さまざまな二酸化炭素削減の取組が始まっています。環境省が平成3年度から実施している「環境にやさしい企業行動調査」においては、最近10年近くにわたり、一貫して地球温暖化防止への取組を「方針を定めて取組を行っている」とする企業が最も多く、その割合も増え続ける傾向にあるという結果が得られています。また、同じく環境省の実施している「環境にやさしいライフスタイル実態調査」では、インターネットを用い、広く国民の環境問題に対する意識や行動をアンケート調査していますが、近年の調査結果では、関心のある環境問題分野として「地球温暖化」を挙げる人が最も多く、その割合も実に回答者の8〜9割に達する状況が継続しているなど、人々の地球温暖化に対する問題意識の高まりが見て取れます。

 このような状況の中、近年のわが国の二酸化炭素排出量は、総体としては残念ながらあまり削減が進んでいない状況にあります。2008年度の温室効果ガスの総排出量は12億8200万トン(二酸化炭素換算)であり、京都議定書の規定による基準年(CO2、CH4、N2Oは1990年度、HFCs、PFCs、SF6は1995年)の総排出量と比べると1.6%上回っています

原子力発電所の利用率が長期停止の影響を受けていない時の水準(1998年度の実績値)にあったと仮定して総排出量を推計すると、2008年度の総排出量は基準年比で3.4%減となります。

 部門別に排出量の推移をみると、産業部門(工場等)や運輸部門(自動車・船舶等)では、さまざまな削減努力の効果があってゆるやかに減少傾向にあるのですが、商業・サービス・事務所等を含む業務その他部門及び家庭部門では、二酸化炭素排出量は増加傾向にあり、総体としては産業部門等の削減効果を打ち消す形となってしまっています(図2-4-6)。なお、産業部門等で平成19年度から20年度にかけて二酸化炭素排出量の減少がみられますが、これは金融危機の影響による年度後半の急激な景気後退が原因と考えられます。


図2-4-6 二酸化炭素の部門別排出量(電気・熱配分後)の推移

 商業・サービス・事務所等で排出量が増加傾向にある原因としては、事務所や小売店等の延床面積が増加したこと、それに伴う空調・照明設備の増加、そしてオフィスのOA化の進展による電力消費の増加などが挙げられます。また、家庭部門における増加については、世帯数の増加による電力消費の増加などが原因と考えられています。これらの部門は、いずれも既製のエネルギー消費機器を購入して使用するというエネルギー消費形態であり、オフィスや家庭内のどこからどれだけ排出されているのかといった専門知識にも乏しいことから、産業部門(工場など)が自ら工程を見直して排出削減を行うのと同じように取り組むということはむずかしいと思われているものです。しかしながら、「環境にやさしいライフスタイル実態調査」結果からもわかるように、本質的には、今の人々は自らの二酸化炭素排出を削減したがっているものと考えられます。また、これらの部門は、現状で削減対策ができていないだけに、エネルギー使用のムダやムラが潜んでおり、まだまだ対策の余地があるものといえましょう。


 対策の余地という観点では、製品製造工程等の最も主要と思われる二酸化炭素排出過程のみならず、原材料調達過程(上流側)や製品の出荷・物流過程、使用、廃棄等(下流側)での排出にも留意し、サプライチェーン全体で可能な対策を講じることも非常に重要です。また、サプライチェーン全体での対策を検討する上では、自社の活動に起因する二酸化炭素排出のみならず、海外を含めて、事業活動上の関連企業の活動に起因する排出についても留意すべきです。

 このようなサプライチェーン全体を見渡した上での排出削減の取組としては、すでにある総合化学メーカーにおいて、資源調達過程に着目し、廃材アルミをクローズドループリサイクル化することで、一から精錬する場合と比べて精錬から製造までに排出される二酸化炭素を74%削減できることを明らかにするなどの動きがあります。部品を海外から調達したり、組立工程を海外に移転しており、そこで多くの二酸化炭素が排出されているような場合には、わが国の技術を移転し、海外の工程での排出を削減することも考えられます。また、別の製造業企業においても、これまであまり顧みられることのなかった物流過程に着目した結果、トラックの平均積載量にかなりの余裕、すなわちムダがあることが判明するなど、今後このような取組のますますの普及が望まれます。

 上流から下流までをトータルでとらえるという考え方を国全体に拡げると、さまざまな産業で原材料調達などを環境配慮度合いの低い海外に依存せざるを得ない場合もありますし、大量に二酸化炭素を排出して製造された製品が輸入されることもあります。一方で、国内では、環境配慮型の工程で製造された製品や、製品そのものが環境性能が高いというものも多数あり、そのような製品が輸出されて、海外での排出削減に貢献している場合も多数あると考えられます。これらをトータルで捉えて、わが国の産業全体として、世界全体でみて二酸化炭素排出を削減できるような産業構造とすることが望まれます。

 このような考え方に立つと、例えば、わが国の製鉄業では、同じ量の粗鋼を生産する際に排出される二酸化炭素の量で比較して、海外より4割程度少なくて済んでいます。このすぐれた技術を活かして製造した鉄鋼を大量に輸出することにより、わが国が逆に外国から輸入している分の影響を差し引いても、平成19年時点で、世界全体で1,400万トン(わが国の総排出量の1%強に相当)の排出削減に貢献しているものと計算されます。また、ある自動車メーカーでは、同社の「サスティナビリティレポート2009」において、海外も含めてハイブリッド自動車を累計で180万台以上販売しており、世界全体での累積二酸化炭素排出削減効果は1,000万トン以上に達しているとしています。ほかにも、海水淡水化などの浄水処理方法として、わが国の企業が得意とする技術に逆浸透膜法があり、ある膜製造メーカーでは、同社の膜技術を世界に普及させ、旧来の蒸発法と置き換えることにより、平成19年現在で約940万トンの二酸化炭素削減に貢献しているものと見積もっています。これらの事例のように、すでに大きく海外での温室効果ガスの削減に寄与しているケースも現れていますが、わが国としては、さらにさまざまな産業において同様の努力を継続し、新成長戦略にあるとおり、民間ベースの技術を活かした世界の温室効果ガスの削減として、わが国の総排出量に匹敵する約13億トン-CO2の削減を目指すべきと考えられます。


 地球温暖化に問題意識を持ち、生活や事業活動から排出される二酸化炭素を削減したい人々(個人、法人とも)に対して、利用するさまざまな商品やサービスからの二酸化炭素排出量の情報提供、すなわち「見える化」は、その行動を強く後押しします。また、人々の地球温暖化に対する問題意識の高まりに呼応して、二酸化炭素の排出削減に取り組む姿勢が、企業や商品のブランド価値を高める時代になってきました。このような状況を背景として、例えばカーボン・オフセット付き商品サービスを提供することにより、自社ブランドのイメージを向上させることも狙って、海外から買い取った二酸化炭素排出権を国に寄付し、カーボン・オフセットを行う企業が増加中です。また、類似の仕組みであるグリーン電力証書制度についても、契約電力量が近年急激に増加しているところです。カーボン・オフセットについては、行政においても、例えば環境省において、その普及を後押しすることによって二酸化炭素排出削減・吸収に貢献するとともに、民間資金を国内の山村地域に還流して地域活性化を図ることを目的に、オフセット・クレジットJ-VER制度の運営などが行われています(図2-4-7)。


図2-4-7 オフセット・クレジット(J-VER)制度について

 中小企業等の二酸化炭素削減努力を後押しするため、平成20年10月、排出量取引の国内統合市場の試行的実施に併せて、大企業の技術・資金等を提供して中小企業等が行った温室効果ガス排出抑制のための取組による排出削減量を認証し、大企業が自主行動計画等の目標達成のために活用する仕組みである国内クレジット制度が始まりました。


「見える化」によるソリューション
―企業の利益創出と二酸化炭素排出量削減の両立に向けて―


 エネルギーの消費によって発生する温室効果ガスは、地球温暖化を引き起こす大きな原因となります。快適な生活を守り、住みやすい地球を子孫に残していくために、近年では企業や工場をはじめ、店舗、住宅にも省エネへの取組が求められています。

 電気・ガスなどのエネルギーは無形のため、通常、使用量を目で見ることはできないのですが、これをセンサー等を使用して「見える化」することにより、いつ・どこで・どのくらいのエネルギーを使っているか、より詳しい分析を行うことが可能となります。従来、二酸化炭素削減対策がむずかしいと思われてきた業務民生分野であるオフィス・家庭などでも、電力消費量を「見える化」することで、意外とかなりのムラ・ムダが見つかるものなのです。

 近年では、顧客の工場やオフィス等で、この目に見えない使用エネルギー量を「見える化」し、それによって見えたムダ・ムラを指摘、改善をアドバイスするといった事業も始まり、それを利用した省エネ・環境対策活動が活発化してきています。

 特に製造業においては、過去から省エネ活動が取り組まれており、もう改善はやりつくしたと思われがちですが、より細かなエネルギー計測を行い、設備ごと・生産ラインごとに「見える化」を行うと、意外とまだまだ改善の余地があることが分かります。また、年々二酸化炭素排出量が増えてきている民生業務分野では、さらに省エネの改善余地があることが想定されます。多店舗型業態の企業は店舗に注目されがちですが、企業全体を捉え、物流・倉庫・工場等、エネルギー使用量の多い拠点の管理も行うことにより、さらに二酸化炭素排出の削減余地が出てくることが見込まれます。

 「見える化」からの省エネ活動は、先進的に京都市立の幼稚園・小中高等学校において「京都モデル」として活発なエコ活動として取り組まれており、大きな省エネ効果を出しています。さらには「見える化」を利用した環境教育により、持続可能な社会に向けた人づくりへの取組が始まっています。学校を起点とし、家庭・地域へ波及していくことにより、さらなる省エネ・環境対策活動の広がりが期待されます。

 今後、太陽光発電などの普及が進むとともに、二酸化炭素を排出しない再生可能エネルギーを優先して使用するなど電力の最適な融通を行うことにより、快適な生活と二酸化炭素削減の両立が実現可能となり、環境と人々の暮らしを豊かにする社会の実現が期待されます。


「見える化」による改善の事例


 また、大胆に街ぐるみで住宅や商業施設からの二酸化炭素排出削減に取り組む事例も現れてきました。東京都千代田区では、平成20年1月に制定した千代田区地球温暖化対策条例に基づき、区有施設などにおいて率先して電力量の削減に取り組むため、平成20年度から区が管理する街路灯を省エネルギー型の照明に交換しています。すべての街路灯5,501基が交換されたと仮定すると電力量は約250万Kwh削減されます。これは、一般家庭約700世帯が1年間に消費する電力量に相当します。また、埼玉県越谷市では、独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)を施行者とする「越谷レイクタウン」土地区画整理事業において、自転車専用レーンを設け、ほとんどの住まいを駅徒歩15分圏内とするコンパクトな街づくり、調節池から流れる冷気の活用、集合住宅における太陽熱セントラルヒーティングの活用のほか、大型複合商業施設では、都市ガスを利用した高効率の冷暖房(ハイブリッドガスエコシステム)や太陽光発電を導入して従来型ショッピングセンターと比べ二酸化炭素排出を20%削減するなど環境共生のまちづくりがなされています(図2-4-8)。


図2-4-8 越谷レイクタウン土地区画整理事業

 なお、「越谷レイクタウン」は、このような取組により「環境に配慮した住みよいまちづくり国際賞」として唯一の国際的表彰制度である「リブコムアワード2009」において、日本で初めてプロジェクト賞の金賞を受賞しました。

 これらの取組事例のように、企業が自主的に二酸化炭素排出権や割高なグリーン電力を購入したり、民間主導で二酸化炭素削減を目的とした大型プロジェクトが実行されたりするようになってきたということは、それだけ地球温暖化対策の意義が人々の間で浸透してきたことの現れであり、同時に環境を保全しながら経済をも発展させるための具体的な方法論が産み出されてきたことの現れであると考えられます。

 地球温暖化対策の取組は、わが国一国にとどまるものではありません。また、地球温暖化問題の解決のために、人々の文化や豊かさが犠牲になるようでは、継続的に対策を行うことはできないでしょう。生活水準を落とさずに対策を行うには、革新的な技術が必要です。そして新成長戦略にも掲げられているとおり、わが国の環境技術は、今後の日本経済にとり最大の強みであり、世界の二酸化炭素排出削減に貢献できるものであるといえるほどのすぐれたものと考えられます。

 ハイブリッド車や二次電池、あるいはヒートポンプ技術などでの国際的な技術優位性については改めて指摘するまでもありませんが、ほかにも省消費電力型ディスプレイや次世代の照明として有望視される有機ELの材料では、わが国の企業が世界シェアの90%を占めているほか(図2-4-9)、太陽光発電システムやハイブリッド車などに使用され、市場規模では年率20%近い成長を続けるパワーデバイス(パワー半導体)などの分野においても、わが国は世界有数の技術やシェアを誇っています。さらには、前述したように、新成長戦略において、わが国の民間ベースの技術を活かした世界の温室効果ガスの削減目標値として約13億トン-CO2が掲げられているところであり、正に「環境が牽引する経済発展」を実現するに足る条件が備わっていると考えられます。


図2-4-9 有機EL ラウンジ

 しかしながら、それぞれの国情や激しい国際競争の実態にかんがみると、全世界にわが国の製品や技術を普及させることは、必ずしも容易ではありません。わが国のもつ省エネルギー技術などは、最適な操業を行うための維持管理に高度な知識を要することや、一部の途上国には技術移転に係る費用の負担が大きすぎる場合があること、企業の持続的な開発・普及に不可欠な知的財産権の適切な保護等が必要であることから、技術の移転・普及に向けては、当該国の国情に応じた最適な技術の特定・開発や、技術の維持・管理のための人材育成、適切な資金支援や法制度整備を行っていく必要があります。こうした取組を促進するためにも、鳩山イニシアティブを通じ途上国支援の仕組みを有効に活用するとともに、日本が世界に誇るクリーンな技術や製品・インフラ・生産設備などの提供を行った企業の貢献が適切に評価される仕組みの構築など、相手国とウィン−ウィンの関係をもって進めることも検討の視野に入れるべきでしょう。

 他方で、わが国の産業界は、世界に先駆けてさらなる環境技術の高度化を追求し、率先してそのようなトップランナーの生産技術を導入することも忘れてはなりません。これにより、潜在的な可能性としては、例えば、(独)新エネルギー・産業技術開発機構(NEDO)の調査結果によれば、わが国の石炭火力発電所の熱効率がトップランナー機器に置き換わったと仮定すると、約400万トンの二酸化炭素排出の削減が可能であるとされています。

 これらには技術的に大きなチャレンジがありますが、その可能性を秘めているのがわが国の底力であり、わが国には、その技術力を発揮することによる地球温暖化問題解決への貢献が求められます。こうしたチャレンジを克服していく過程で、今後のわが国の経済を強力に牽引する「輸出商品」が誕生することにつながると考えられます。


量子ドット太陽光発電


 地球温暖化対策にとって、太陽電池技術は極めて重要です。しかし、太陽電池のエネルギー変換効率が、シリコンの理論上の限界とされる29%に近付きつつあり、この限界を乗り越える新材料や新構造の出現が期待されています。量子ドットは、この太陽電池の性能限界の突破に向けて重要な役割を果たすことが期待されています。量子ドットを用いると、理想的には60%以上の効率を図ることができます。集光システムを用いれば、既存の太陽電池パネルの1000分の1の面積で同等の電力を生成することが可能になります。

 半導体量子ドットは、荒川教授らの研究によって1982年に生まれた日本発の革新的基礎技術です。太陽電池の仕組みは、半導体に太陽光が当たり電子が動くことで電流が生じます。しかし、現在のシリコンなどの半導体ではその中の電子が自由に動き回るため、電極に達した電子しか取り出せていないため、限界があります。今、この中に「量子ドット」という10ナノメートル(ナノは10億分の1)程度の寸法を有する箱を置いたとします。もし箱のポテンシャルが電子にとって低ければ、電子は箱の中に閉じ込められ運動の自由度を失います(右図)。量子ドットに閉じこめられた電子は、効率よく電極に達することになります。箱の形を変えたりすれば、電子のエネルギー(振動数)を制御することができます。ちょうど管楽器が形によって音色や音程を変えていることに相当します。左図に示すように、自然界で勝手に飛び回っていた電子を量子ドットという小さな箱の中に捕捉し、これにより電子の性質を自由自在に変えてやることができるのです。

 太陽電池の変換効率の限界を決めているエネルギー損失の主たる要因として、太陽光のすべての波長のエネルギーを吸収できないという透過損失と、受け取り可能な光エネルギーより大きなエネルギーを吸収した場合、それが半導体内部で熱に変わって失われてしまうという熱損失があります。量子ドットのエネルギーの離散性を活用すると、熱損失を抑制することが可能になります。また、いろいろ工夫することにより、透過損失も解消できます。これらにより、理想的には、60%以上の効率の実現を図ることができます。

 材料としては、これまでは主として化合物半導体による量子ドットが用いられてきていますが、最終的にはシリコン系量子ドットによる太陽電池の実現が期待されています。しかし、現時点は大きな課題が山積しており、今後長期的な視点で研究開発を行っていく必要があります。例えば、量子ドットの寸法と位置の完全制御や、高品質な材料開発も不可欠です。さらに、原理的にも明らかにしなければならないことがたくさんあります。

 量子ドットは、日本の研究者が世界をリードしてこれまで研究開発を推進してきた研究分野です。量子ドット太陽電池への展開についても今後わが国の英知をさらに結集させることにより、世界の先頭を切って高効率太陽電池の実現に貢献できるものと期待されます。ただし、短期的に過大な期待をするのは危険であり、20〜30年の長期的な研究開発の取組が必要です。幅広い裾野をもつ多数の研究開発者の人材育成を含めて、今後わが国として研究開発体制を確立することが必要であると考えられます。将来、量子ドット太陽電池は、グリーン・イノベーション創出に向けて最も重要な基盤デバイスの一つとして位置づけられることになるでしょう。


量子ドットの概念図と電子顕微鏡写真


3 温室効果ガスの排出が削減された将来世代の暮らし

 あらゆる主体の参加による地球温暖化対策が功を奏して温室効果ガスの排出が削減された社会、低炭素社会というのはどのような社会なのでしょうか。ここまで環境対策を経済成長の制約要因と考えるのではなく、むしろ経済成長のためにグリーンイノベーション、環境産業を振興すべきと述べてきました。地球温暖化対策は長期にわたる努力が必要です。長期目標の目標年である2050年の日本社会はどのようなものになっているのでしょうか。

 二酸化炭素削減の方法はさまざま、技術や施策の導入年もさまざまなシナリオが考えられ、当然、シナリオによって2050年の社会の姿は変わります。

 望ましい社会経済の姿は人ぞれぞれ、一つではありません。例えば、環境省では、地球環境研究総合推進費による戦略的研究開発プロジェクト「脱温暖化社会に向けた中長期的政策オプションの多面的かつ総合的な評価・予測・立案手法の確立に関する総合研究プロジェクト(以下「2050年脱温暖化社会プロジェクト」という。)」において、初めに望ましい2050年の社会経済の姿を想定し、それが実現可能かどうか、そして実現するためには何をすべきなのかを検証するというアプローチ(バックキャスティング手法)を用いて、将来像に幅を持たせ、経済発展・技術志向型のビジョンAと地域重視・自然志向型のビジョンBを想定して、それぞれエネルギーサービスの需要を含むその具体的な姿を描きました(図2-4-10)。


図2-4-10 低炭素社会構築に向けた2つの社会ビジョン

 ビジョンA「活力・成長志向」では、次のような将来像を想定しました。すなわち、企業や政府などの積極的な技術開発投資を背景に技術進歩率は高く、また社会全体として経済活動は活発であり、1人当たり年間経済成長率2%/人・年を維持しているような社会です。これらの高い経済成長率を支える要素としては、技術進歩に加えて個人レベルでの活発な消費と高い労働意欲が挙げられます。就業に関しては老若男女や国籍の区別がほとんどなく、個人の能力、特性、専門性に応じた雇用が標準となり、機会の平等が実現しています。また、これまで女性が担ってきた家事は大部分が外部化・機械化されており、仕事以外の空いた時間は自分のキャリアアップのために活用するなど、人々は「自分の夢」のために費やす時間が多くなっています。また、消費に関しては新しい技術や製品・サービスを積極的に受け入れるため、消費は旺盛であり買い替えのサイクルも比較的短い社会です。一世帯の構成人数は減少し、家族よりも個が重視され、若者や高齢者の一人暮らしが増加します。地方より都心部、戸建て住宅よりも集合住宅に居住する人口が増加し、利便性の高い生活を好む風潮が強くなると考えられます。

 一方、ビジョンB「ゆとり・足るを知る」では、Aと異なり、1人当たり年間経済成長率は1%/人・年であるが、ボランティア活動など経済として現れない活動も活発に行われるため、必要なサービスは充分享受できるとしました。そのほか、地方においても充分な医療サービスや教育を受けることが可能になるなど、不便のない生活が可能になっていくため、自らのライフスタイルに合った特色のある地域(地方等)に移り住んでいく人が増加し、結果的に都心から地方への人口・資本の分散が進むものと想定しました。その結果、農村などで庭付き一戸建てをもつ人が増加するなど、戸建て住宅に居住する人が増加し、一世帯当たりの構成人数と床面積が増加すると考えられます。ワークスタイルとしては、各家庭のライフプランにあわせて二人でバランスをとりながら収入を確保するスタイルが普及・定着しています。そして家事については家族内で分担されたり、地域内のボランティアやNGOなどがそれぞれの地域で提供している無償のサービスなどを活用したりするケースが多く見られます。一方で家族と過ごす時間が増加し、余暇時間には趣味やスポーツ、習い事などのほかに、ボランティア活動や農作業、地域活動に従事する人が増加するでしょう。このように、一つの地域の中にも多様な個性が存在するが、その分他者を尊重し、共に強みを出し合って協力しあう知恵を持って生活しているといった社会経済がイメージされています。

 環境省の委託調査である2050年脱温暖化社会プロジェクトでは、ビジョンAもビジョンBも、実のところ、従来のさまざまな日本社会長期将来見通しと大差なく、諸想定の範囲内に収まっているものであり、実際には、これらの社会経済ビジョンへいたる2つのシナリオは調和しながら混在しつつ進行していくのだろうとしています。また、同プロジェクトでは、いずれのビジョンについても、2050年にわが国の二酸化炭素排出量を1990年比で70%削減することが可能であることを示しました。さらに、環境省では、この研究成果を踏まえて、経済性、政策的実現性も考慮して技術的に二酸化炭素を80%削減しつつ需要に見合うエネルギーの供給が可能かどうかを検証しており、80%削減は可能という結論に達しました。


 一方、技術革新の観点から将来像を想像することもできます。平成20年度に、18人有識者ヒアリングや一般からの意見募集を踏まえて、中央環境審議会地球環境部会において取りまとめられた低炭素社会の具体的イメージでは、例えば図2-4-11のような社会像が示されており、低炭素社会の実現に向け、[1]カーボンミニマム、[2]豊かさを実感できる簡素な暮らし、及び[3]自然との共生の実現を基本理念として、あらゆる主体が取組を進めていくことが必要とされています。


図2-4-11 低炭素社会の具体的イメージ まち


図2-4-11 低炭素社会具体的イメージ 移動


図2-4-11 低炭素社会具体的イメージ 居住

 また、現時点ではまだそれほど普及していない、あるいは実用化の目途は立っていないが、将来的に有望視されているような地球温暖化対策に資する技術は数多くあります。例えば工場・発電所や廃棄物焼却炉などから発生する廃熱の利用は、現在も施設内等では比較的多く用いられていますが、デンマークなどでは、さらに大規模な利用がなされています。例えば、コペンハーゲン市では総配管延長1,500kmの地域熱供給システムが完成しており、約50万人の住民が地域暖房ネットワークに接続済みとなっています。熱源としては、化石燃料又はバイオマスを燃料とするコージェネプラント(熱電併給)が約6割、廃棄物焼却からの廃熱が2〜3割となっています。わが国では、現時点では熱供給事業の搬送距離は最大でも2km程度と欧米に比べ小規模な水準にとどまっていますが、熱エネルギーをそのまま熱として利用することはエネルギー効率が良く、現時点で活用されていない熱自体も多量にあることから、今後、廃熱利用のインフラストラクチャーが整備され、廃熱の有効活用が進むことが大いに期待されます。

 交通・運輸部門では、陸上交通ではすでに実用化されつつある電気自動車に加え、水素自動車や燃料電池車が普通に街を走る時代がすぐにやってくるかも知れません。内燃機関で動く乗り物では、自動車のほか航空機や船舶にもイノベーションの波は押し寄せています。外洋を航海し、大量に物資を輸送する船舶は、かつて大航海時代には「風力」で走っていたものでしたが、今後また、風力や太陽光などの「再生可能エネルギー」で動くようになるかも知れません。平成20年4月に発足した民間プロジェクトでは、重油を燃料とする従来のディーゼル機関に代えて燃料電池を採用し、風力、太陽光も活用したほか、船底にはサメの肌を参考に水の抵抗を軽減する特殊塗装も施し、現在のコンテナ船に比べ、二酸化炭素の排出を69%も削減できるエコシップを構想しました(図2-4-12)。同プロジェクトでは、2050年を目標に二酸化炭素を排出しないゼロ・エミッション船の実現も目指しています。


図2-4-12 エコシップ構想の例

 さらに、化石燃料に代わるエネルギー源として、現在も太陽光やバイオマスなどが利活用されていますが、現時点ではまだ商業利用には至っていないものとして、ボトリオコッカスなどの微細藻類によるオイル生産があります。微細藻類のオイル生産性は、とうもろこし等のほかの産油植物と比べて格段に高く、世界の石油需要をすべてとうもろこしから産生される燃料に置き換えたとすると、地球上の全耕作地の14倍もの面積が必要となるのに対し、微細藻類では、理論上、全耕作地の1.8〜4.2%でまかなうことが可能とされています。また、究極の再生可能エネルギー技術として、2050年頃には宇宙空間で太陽光を利用した発電が行われているかも知れません。地球上の限りある資源を節約しながら使う時代から、無尽蔵でクリーンな太陽エネルギーを、天候に左右されることなく安定的に利用する技術。つくり出した電力はマイクロ波やレーザーに変換して地上に送ります。これは一見荒唐無稽にも思えますが、実は何百年も未来の物語ではなく、独立行政法人科学技術振興機構において、2033年(平成45年)頃に適用されるのではないかと真剣に予想されている「技術」なのです。

 まとめ

 本章では、ここまで、地球温暖化の被害の状況や対策の経済上の効果を論じた上で、温暖化対策に関する国内外の取組を紹介してきました。地球温暖化対策の進め方にはさまざまなオプションがあり得ますが、いずれにしても、地球温暖化問題の解決のために、私たちの文化や豊かさが犠牲になることがあってはいけません。地球温暖化の進行には、私たちの日々の活動すべてが大きく関係しています。そして、その悪影響は、私たちだけでなく、未来の子どもたちまで永く続きます。私たちは、すぐにでも手立てを講じてこの問題に立ち向かい、温室効果ガスの排出が削減された持続可能な経済社会、新しい日本を目指します。


微細藻類の可能性


 微細藻類は、「オイルシェル(石油頁岩)」を作った生物として知られています。藻類には、脂肪や炭化水素を大量に産出する種が多く、これらの藻類をバイオマスエネルギーの原料として利用することは、1970 年の石油危機後から主に米国で研究されてきました。藻類のオイル生産能力は年間約47 トン〜140 トン/ha と算定され、トウモロコシ、大豆、ベニバナ、ヒマワリ、アブラナ、オイルパームなどの産油植物と比較すると、25〜120 倍もあります。

 例えば、米国の輸送で費やされるオイル量の半分を藻類オイルで賄うとすれば、藻類の培養に必要なプールの面積はコロラド州の1/7〜1/20 程度にすぎない190〜560 万haでこと足ります。米国では輸送部門のエネルギー消費量が全消費量の約7割を占めていることから、広大な砂漠を利用した藻類ディーゼル生産技術開発が注目されています。

 緑藻類Botryococcus braunii (以後「ボトリオコッカス」という。)は、藻体乾燥重量当たり20〜70%の重油相当の炭化水素を産出することで知られている藻類です。ボトリオコッカスは、「細胞内、及びコロニー内部にオイル成分を産出する」ことが特徴で、細胞を壊さずにオイルのみを採取することが可能です。また一般的な植物性オイルは、金属を酸化させたり、残余オイルが固形化したりするのに対し、この微細藻類が産出する炭化水素は、化石燃料のように既存システムを用いて精製利用をすることができます。筑波大学では、この有望なボトリオコッカス株を取得しており、コスト面で有利な大規模開放系利用の研究開発を進めています。

 筑波大学における当面の研究開発目標は、「オイル生産効率を1桁向上させる(収量で1,000t/ha/年)」ことです。2020年までに実規模生産プラントで実証し、2025年までにそれを社会へ適用していく計画を描いています。

 近年、わが国では、耕作放棄地の荒廃が問題になっています。22万haある「耕作放棄地」のすべてに微細藻類培養槽を設けることで、年間石油輸入量に当たる2.2億トンのオイル生産、約6.57億t-CO2/年の二酸化炭素排出削減に寄与できる可能性があります。太陽光発電との用地競合も考えられますが、将来の低炭素社会においても素材製造、飛行機燃料など、「油の火力ニーズ」は存在すると考えられます。

 ボトリオコッカスは、国産の新しいエネルギーとして期待されています。


微細藻類の可能性



宇宙エネルギー利用システム


 宇宙エネルギー利用システム(SSPS:Space Solar Power Systems)とは、太陽光という無尽蔵なクリーンエネルギーを赤道上空約36,000kmの静止軌道上で収集し地上へ送り届けるエネルギー供給施設です。

 SSPSのシステム構成や形状については、これまでに国内外でさまざまな種類のものが検討されてきています。一例として、マイクロ波SSPSは、静止軌道上の太陽電池で発電した電力をマイクロ波に変換して地上に伝送します。地上では、受けたマイクロ波を電力に再度変換して利用します。軌道上の集光設備を直径数kmの規模とすることで100万kW程度(原子力発電所1基分相当)の発電を行うことができます。


マイクロ波によるエネルギー伝送の概念 マイクロ波SSPS のイメージ



前ページ 目次 次ページ