第4節 東アジアの循環型社会構築に向けた展望と我が国の協力

1 東アジア循環型社会ビジョンの策定に向けて

 第1節で見たように世界的な廃棄物問題の深刻化と、資源・エネルギーの逼迫、それを背景とした循環資源の国際的移動の活発化は(図4−4−1)、できるだけ早く国際的な循環型社会を構築していくことの必要性を示しています。


図4−4−1 国際的な資源循環の状況

 我が国の循環型社会形成推進基本法では、「循環型社会」について、製品等が廃棄物等となることを抑制し、排出された廃棄物等についてはできるだけ資源として適正に利用し、最後にどうしても利用できないものは適正に処分することが徹底されることにより実現される、天然資源の消費が抑制され環境への負荷が低減される社会と定義しています。国際的な循環型社会とは、このような社会が国際的に実現されるものと考えることができます。国際的な循環型社会を構築していく上での基本的な考え方として、まず、

 1)各国の国内で循環型社会を構築し、次に

 2)廃棄物等の不法な輸出入を防止する取組を充実・強化し、その上で

 3)循環資源の輸出入の円滑化を図る

ことが重要であり、この考え方は、第2回アジア3R会議(2008年)においてアジア諸国の間でも共通の認識となっています。

 こうした基本的な考え方に沿って、循環資源の性質を考慮しながら、東アジア地域で循環型社会を形成していくことは、東アジアの各国にとって便益をもたらすのみでなく、地域全体の持続的発展の観点からも意味があるものです。また、循環資源の最適な移動も考慮に入れた東アジア循環型社会を実現することで、地球温暖化対策や資源・エネルギー問題への対応にも資することになります。そのためには、我が国の経験を各国と共有しつつ、東アジア諸国の国内における循環資源の適正な利用・処理能力の向上を図る取組と、循環資源の適切な越境移動を確保する取組をパッケージとして組み合わせ、効果的・効率的に取組を進めていくことが重要です。

 逆に、こうした取組が十分な成果を挙げることができなければ、社会的・経済的に緊密な関係を有する東アジア地域においては、環境汚染の拡大や、資源の枯渇といった、危機的な状況が生じることとなりかねません。こうした意味で、東アジア諸国は運命共同体であり、相互に協力しながら循環型社会の形成に向けたビジョンを共有し、循環資源の適正な利用・処分に向けたシナリオを実現していくことが必要となっています。

 このため、我が国としては、循環型社会基本計画にも盛り込まれたとおり、平成24年までに、東アジアでの循環型社会の構築に向けた基本的考え方や目標を定めた「東アジア循環型社会ビジョン」を策定することとしています。

 現在我が国は、それに向けて、東アジア諸国の国内における循環資源の適正な利用・処理能力の向上を図る取組として、[1]3R国別計画・戦略の策定支援、[2]政策対話、[3]3Rに関する情報拠点・研究ネットワークの整備、[4]3R・廃棄物管理に関する技術協力及びインフラ等整備支援、[5]3R・廃棄物処理技術の国際展開といった取組を進めています。また、循環資源の適切な越境移動を確保する取組として、[1]我が国の不法輸出入規制の執行体制の強化や規制対象品の明確化、[2]アジア諸国と連携した情報交換や施行能力向上のための取組支援をそれぞれ進めており、以下で取り上げていきます。

2 アジアの循環型社会構築に向けた取組ときめ細かな協力の展開

 各国内における循環型社会の構築に向けて、アジアの各国において廃棄物の3Rと適正処理が実現されるよう、各国の循環利用・処分の能力向上に我が国が貢献していくことが重要です。開発途上国の多くでは、公的な廃棄物収集体制の確立や衛生的な処分といった廃棄物の適正管理が依然として主要な課題となっていますが、東アジア諸国など急速な経済成長を見せる国においては、都市部を中心に廃棄物収集・処理システムが向上する一方で、廃棄物の発生量そのものが増加し、発生抑制や循環利用の必要性に直面しています。また、各種資源の高騰や供給上の制約に対する懸念から、資源の有効利用に対するニーズも高まっています。すなわち、アジアの各国においては、今後、廃棄物の適正管理に向けた取組を進めると同時に、3Rを推進していくことが重要な課題となっています。さらに、地球温暖化問題が喫緊の課題となる中で、CDM事業のように温暖化対策の観点を統合した廃棄物の適正管理や3Rの取組を進めることで、各国の公衆衛生の向上と地球温暖化問題への対処の両方をにらんだ、コベネフィット対策を進めていくことも重要です。

 新たな循環型社会基本計画においても、我が国の制度・技術・経験の国際展開については下記のとおり取り組むことが表明されています。

 「我が国の3R・廃棄物管理の先進的な制度、優れた技術・システム、各主体の取組と連携の経験を、アジアを始めとする世界各国の国別3R推進計画の策定支援やエコタウンをモデルとした循環型の都市づくりへの協力、安全で衛生的なし尿処理システムの普及支援などを通じて、成長著しいアジアから今後の発展が期待されるアフリカまで、各国に適した形で展開し、各国内の循環型社会の形成を支援します。そのため、各国の実情・ニーズを把握し、状況に合わせた我が国の3R技術・システムの提供や研修生の受け入れを実施します。また、国レベルのみならず、国民、事業者、地方公共団体など多様な主体同士での国際的な連携を進めます。」

 これまでも、日中韓三ヵ国環境大臣会合などの枠組みなども活用して、各国との政策対話を重ね、そのニーズを把握し、各国が抱える問題の解決に協力してきました。現在、アジア、特に東アジアの多くの国々は、それぞれの社会や経済の状況を踏まえて、3Rの概念の導入を図りながら廃棄物管理等に関する施策の充実に努めており、我が国としては、今後、そのニーズを踏まえて、国際協力の具体的なあり方を検討していくことが必要です。その際には、我が国の廃棄物・リサイクル対策におけるこれまでの改革の積み重ねを東アジア各国の貴重な財産として活用していくことが考えられます(表4−4−1)。


表4−4−1 アジアの国々の3Rに関する取組事例

 平成19年の循環型社会白書では、我が国の優れた技術と施策・制度の紹介をしましたが、我が国が持つ優れた技術・システムの知見を活かして、各国の廃棄物管理の仕組みや3R推進計画やビジョンの策定に対して支援していくことにより、大きな効果を挙げていくことが可能です。

 さらに、国際協力機構(JICA)などによる既存の技術協力や研修などを通じて、廃棄物の適正処理や3Rに関する技術・システムの整備を図るための人材育成や組織の整備を実施していく必要があります。この他に、CDM事業など温暖化対策とのコベネフィットの追求、3R政策の立案・実施の基盤となる科学的な知見や技術的な情報を共有するための研究者・専門家のネットワークの構築や、循環型社会の主要な担い手となる地方公共団体やNGO・NPOの取組を推進していくことも重要です。


(1)3R国別計画・戦略の策定支援

 各国が3Rに関する取組を効率的効果的に進めるためには、3Rの推進を国家として推進することを明らかにし、既存の廃棄物管理等に関する法制度や地方レベルにおける廃棄物管理やリサイクルの実態などを踏まえた計画や戦略を策定して取り組むことが重要です。我が国は、ベトナム、インドネシアなどにおいて、国連地域開発センター(UNCRD)、国連環境計画(UNEP)アジア太平洋地域事務所及び地球環境戦略研究機関(IGES)と連携して、国別の状況に応じた3R計画・戦略の策定を支援しています。支援に当たっては、当該国の環境担当省庁をカウンターパートとしつつ、廃棄物の処理を実際に担当する地方政府や関連する他省庁、NGO等を広く巻き込み、できるだけオープンな協議プロセスによって計画・戦略を検討する手法をとっています。さらに、例えばベトナムにおいては、アジア開発銀行(ADB)の支援とも連動させて、同国における3R国別戦略策定の成果・経験を他のメコン川流域諸国にも波及させることとしています。また、JICAにおいても、マレーシアにおいて固体廃棄物減量化計画の策定を支援するなど、3Rに関連した計画策定支援を積極的に行っています。


(2)政策対話

 我が国は、3R推進のための国内の制度強化・政策の計画的実施の方向に歩み始めた諸国との間で、廃棄物処理・3R担当部局間の政策対話も積極的に進めています。韓国環境部との間では、部局長級の「日韓廃棄物・リサイクル政策対話」を2006年6月に東京で(第1回)、2007年5月にソウルで(第2回)開催しました。韓国では、2008年から電気電子廃棄物や使用済自動車のリサイクルに関する法律が施行予定であることから、これらの廃棄物のリサイクルに係る現状や経験をはじめとして双方の政策動向に関して情報・意見交換を実施しました。

 また、中国の環境保護部(旧国家環境保護総局)との間でも部局長級の「日中廃棄物・リサイクル政策対話」を2007年3月に北京で(第1回)、2008年3月に東京で(第2回)開催し、有害廃棄物対策、廃棄物の輸出入管理に関する日中協力の重要性等が議論されました。中国国家発展改革委員会との間では、2007年6月に部局長級の日中3R政策対話(第2回)が北京で開催され、我が国のエコタウン事業の経験を踏まえた循環型都市に関する協力等について議論されました。

 さらに、中韓両国とは、日中韓三カ国環境大臣会合を毎年開催しており、循環型社会形成についても意見交換を行っています。2007年12月に富山で行われた第9回会合においては、東アジア各国及び地域全体で循環型社会形成を進めるに当たって、一つのビジョンを共有することが重要であるとの認識が共有され、我が国が目指す「東アジア循環型社会ビジョン」策定に関する理解が進展しました。中韓両国、さらに、別途政策対話が行われているシンガポールを加えた三カ国は、東アジア全体での循環型社会の実現において日本とともに中心的役割を果たす国であり、環境省としても今後とも協力関係の強化に努めることとしています(図4−4−2)。


図4−4−2 我が国とアジア各国との二国間協力

 アジア地域全体を対象とした政策対話として、環境省は2006年10月に東京で「アジア3R推進会議」を開催し、アジアの19カ国及び関係国際機関の担当部局長等の参加を得て、3Rの総合的な推進、生ごみ、電気電子廃棄物及び医療廃棄物対策について活発な議論を行いました。また、2007年9月に福岡で開催された「エコアジア2007」では、アジア太平洋地域の環境担当大臣等による自由な意見交換の中で、各国内及びアジア地域全体での循環型社会の構築の重要性が認識され、それに向けて地域におけるビジョンづくりを念頭においた3Rに関する政策対話、政策・技術情報や優良事例の普及等を、地域協力によって一層推進していくことの必要性について一致しました。

 さらに、東アジアでは、2007年8月に、環境担当省庁と保健担当省庁の連携協力を促進し、地域における環境保健に関する問題への地域の対処能力の向上等を目指して、東南アジア10カ国、日本、中国、韓国、モンゴルの14カ国が参加して「環境と保健に関する地域フォーラム」が設立されました。今後3年程度同フォーラムの活動においては6つのテーマ別の作業部会を設けて取り組むこととなっており、そのうちの一つが「固体廃棄物・有害廃棄物」作業部会です。我が国はこの作業部会の議長国であり、今後、作業部会においては、都市廃棄物及び医療廃棄物に焦点を絞って、各国の優良取組事例の共有、各国が共通に抱える課題への対処について地域レベルでの取組に関する提言の取りまとめ等を行うこととなっています。2008年2月にはシンガポールにおいて第1回作業部会を開催し、医療廃棄物に関する各国の取組状況や優良事例の情報交換、今後の作業計画の検討等を行いました。我が国としては、「アジア3R推進会議」で議論された都市廃棄物・医療廃棄物の問題について、本フォーラムの作業部会が継続的にフォローアップし、一層の情報共有が進むことを期待しています。


(3)3Rに関する情報拠点・研究ネットワークの整備

 アジアにおける循環型社会の形成に向けて、各国が自国の状況に適応した技術の普及・制度づくりを進めていくためには、3Rに関する知識・技術情報の蓄積・提供を効率的に進めることが極めて重要です。このため、環境省では、アジア開発銀行やUNEPアジア太平洋地域事務所等のイニシアティブで構築・運営されている情報拠点「3Rナレッジ・ハブ(3R Knowledge Hub)」のコンテンツ作りを支援しています。

 また、我が国の廃棄物学会が中心となって構築を進めている「アジア太平洋廃棄物専門家ネットワーク(SWAPI)」について、アジア地域における廃棄物・3Rに関わる研究者・専門家のネットワークとしての発展を期待して活動の支援を行っています。2007年11月の第3回東アジア首脳会議において、福田総理が発表した「日本の環境協力イニシアティブ」では、「『アジア3R研究・情報ネットワーク』を構築し、政策・経験の共有を通じて各国の3Rの取組を支援」することが盛り込まれており、今後、3Rナレッジ・ハブ及びSWAPIの連携、さらにはこれらと各国の政策当局との連携を強めるべく支援を行っていくこととしています。


(4)3R・廃棄物管理に関する技術協力及びインフラ等整備支援

 ODAによる開発途上国支援として、JICAは、中央政府、地方政府、民間セクター等の対処能力の向上と連携強化を主眼とした技術協力を実施しています。中央政府レベルでは、廃棄物管理や3Rを国家レベルで推進するための法制度整備の支援、法令の実行を図るための基本方針及び計画の策定やその実行の支援等を行っています。また、地方政府レベル廃棄物の発生抑制や分別収集等を住民と共同で進めていくための制度づくりや住民の意識啓発などを行っています。さらに、民間セクターの廃棄物の発生抑制や資源の再生利用を進めるため、グリーン購入やエコラベル制度といったリサイクル産業の振興や企業の取組を促進する施策の検討・立案を支援しています。

 廃棄物管理や3Rに関して開発途上国の技術者や行政官を日本に招いて行う研修についても、多様なプログラムによって行われています。JICAが実施するものとしては、アジア諸国の環境行政官を対象に関連法制度や行政・技術情報の共有を図る地域別研修「循環型社会の構築」コース、産業廃棄物処理や再資源化に従事する技術者を対象とする集団研修「廃棄物3R・再資源化」コースをはじめ、多数実施されています。

 これらに加えて、無償資金協力及び有償資金協力により、廃棄物管理のための機材や処理施設等の整備に対する支援が行われてきています(図4−4−3)。


図4−4−3 3R関連分野におけるJICAの支援実績


(5)3R・廃棄物処理技術の国際展開

 我が国が有する3R・廃棄物処理の技術を国際的に普及させていくことは、国際的な循環型社会形成に向けた我が国の国際協力の中心ともなりうるものです。地球温暖化対策にも資するような、3R・廃棄物対策を一層進めていくことが重要です。

 我が国の事業者は、環境へ配慮した製品の設計・製造、製品等のリユースリサイクル、廃棄物からのエネルギー回収・利用等の分野で、世界的にも最先端と言うべき技術を発展させてきています。こうした技術は、時に国境を越える製品のライフサイクルやサプライチェーン全体での3Rの推進を通じて、国際的な循環型社会の構築に大きく寄与しうるものです。

 このため、政府としても、こうした技術がアジア等に適切に導入されるよう、知的財産権の保護に留意しつつ、各国の技術ニーズを把握するために、二国間・多国間の政策対話や情報交換を活発に行うほか、3R・廃棄物処理技術に関する情報を積極的に提供・発信することとしています。

 例えば、し尿処理に関連して、2003年3月に京都で開催された第3回世界水フォーラムにおいては、浄化槽のセッションがあり、日本の浄化槽の歴史、技術、維持管理、制度等について講演と意見交換が行われました。この水フォーラムでは世界各地からの「水行動集(世界の水問題解決のための具体的行動)」が集められましたが、日本の水行動集のひとつとして「短期間設置、低コスト型汚水処理技術の移転等」などが登録されていました。

 また、2008年の国際衛生年の開始を前に大分で開催された「アジア太平洋水サミット」(2007年12月)、浄化槽アジア水環境パートナーシップ(WEPA)のジャカルタワークショップ(2004年3月)や、同年4月にニューヨークで開催された第12回持続可能な開発のための委員会(CSD12)で、日本の浄化槽が紹介されるなど積極的な浄化槽技術の情報発信が行われています。

 さらに、2007年6月の日中3R政策対話において、我が国でエコタウン事業を実施している北九州市と青島市間、及び兵庫県と広東省間で循環型都市に関する協力を行うことになり、北九州市と青島市の間では、2007年9月から、協力の前提となる調査等が開始されました。


(6)個別の課題への対応(衛生施設の改善を例に)

 我が国の経験や技術、システムは、アジア各国における廃棄物の適正処理の確立にも大いに貢献しうるものです。ただし、その一方で開発途上国のニーズや発生する廃棄物の性質等の様々な要因を考慮すると、必ずしも我が国の技術やシステムと同様とならない場合も想定されます。例えば、衛生施設(sanitation)の支援は、水の衛生的な利用とも密接な関係があり、我が国とは大きく異なることも多い水利用のシステムや実態を前提に支援を検討する必要があります。

 2004年時点で、世界人口64億人のうち26億人(41%)が改良された衛生施設1を持たないとされ、特にアジアやアフリカ地域では、衛生施設の普及が50%を超えない地域が多く存在します(「世界の水道と衛生施設」WHO,UNICEF編)。

1 下水システムやセプティックタンク、ピットラインに接続された水洗トイレやPFトイレ、換気付き改良トイレ、囲われたトイレ、堆肥化トイレ


 衛生施設の未整備は、水汚染や不衛生な環境を引き起こし、乳幼児や妊産婦への疾病のおそれを増大させるのみならず、生態系の破壊や漁業・農業への悪影響、観光資源価値の低下などを引き起こすおそれがあります。

 2008年は国際衛生年でもあり、衛生施設のさらなる普及が望まれることも踏まえ、我が国からの支援のあり方を検討します(図4−4−4)。


図4−4−4 東アジアと太平洋地域における衛生施設の普及率

 し尿処理支援は、トイレ設置から始まり、発生した汚泥処理までの一連の支援について勘案する必要があります。さらに、その処理に当たっては、地域の地理的、経済的、社会的など様々な特性に応じたきめ細かい配慮が必要となります。

 トイレの設置支援は、その後の下水・汚泥の処理問題と密接に関係しているため、処理工程を考慮に入れながらトイレ方式を決めるのが、し尿の効率的な処理・再利用に結びつきます。トイレ設置後における流れは、[1]下水と汚泥の回収・収集、[2]下水と汚泥の処理、[3]処理水の放流または再利用及び汚泥の最終処分または再利用、という三段階に分けられるため、地域特性に応じて、[1][2][3]のシステム構築を行えば、し尿の衛生的な処理・再利用に結びつくといえます。

 トイレには、汲み取り式、簡易水洗(ポアフラッシュ)式、し尿分離式、コンポストトイレ、水洗式といった分け方が考えられます。また、下水と汚泥の回収・収集も含めた処理は、発生場所で処理するOn-site方式と収集運搬後に処理するOff-site方式があります。最終的な処理と再利用の形態としては、最終処分場への埋立や、再生利用等の有効活用(堆肥化・炭化による助燃剤化や土壌改良材・メタン回収後のエネルギー回収)が考えられます。

 今後、衛生施設の普及に当たっては、利用者に見えるメリットを提供するのが有効な手段であり、汚泥の価値を引き出せるようなパッケージ施策が、衛生施設の普及には肝要といえます。

 また、低炭素社会との取組の統合のためには、CDM事業とも連携をはかれるような汚泥再生事業の促進を図る必要があります。


山岳地帯の汚水処理


 山岳地帯における汚水処理は、迅速な整備の必要性や維持管理の難しさといった観点から、途上国支援を考える際にも参考になります。

 我が国は、山岳地帯における環境に配慮した様々なトイレ設置が試みられています。例えば、生物処理によるバイオトイレや、太陽光や風力などの自然エネルギーを動力としたトイレが導入され、維持管理をする上でも重要な役割を果たしています。


山岳地帯の汚水処理 資料:環境省



3 廃棄物等の不法な輸出入の防止に向けた取組

 このような東アジア諸国の国内における循環資源の適正な利用・処理能力の向上を図る取組に加え、廃棄物等の不法な輸出入を防止する取組を充実・強化することが重要です。


(1)廃棄物等の輸出入の状況

 日本では、特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律(以下「バーゼル法」という。)に規定する特定有害廃棄物等に該当する貨物または廃棄物処理法に規定する廃棄物に該当する貨物を輸出入する場合には、それぞれ法に基づく手続が必要とされています。

 バーゼル法に基づく有害廃棄物等の輸出入実績をみてみると、輸出は先進国向けの金属回収目的の鉛蓄電池等であり、途上国へは輸出されていません。また、輸入は、主としてアジア諸国からの金属回収目的の金属含有スラッジ、電子部品スクラップ等が多くを占めています。

 一方、廃棄物処理法に基づく廃棄物の輸出入実績をみてみると、輸出は、韓国向けのセメント製造用の石炭灰であり、輸出量は増加傾向にあります。また、輸入は、アジア諸国からの処理・リサイクル目的の水銀を含む廃蛍光灯、廃乾電池等でありますが、件数は数件にとどまっています(図4−4−5)。


図4−4−5 有害廃棄物等の輸出入の状況


(2)不法輸出入防止に向けた取組

 廃棄物等、特に有害廃棄物の輸出入規制については、有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約(以下「バーゼル条約」という。)の規定に基づき、多くのアジア諸国で輸出入規制法令が整備されてきています。しかしながら、必要な手続きを行わず有害廃棄物を輸出する場合や、バーゼル条約が規制対象としている有害廃棄物の範囲に関する解釈が各国によって異なることから、例えば、輸出国においては規制対象外と判断されたものが、輸入国では規制対象となり結果的に不法輸出入となる場合が発生しています。

 このような課題に対応するために、規制の執行体制強化に向けた取組を行うとともに、規制対象物品の明確化に受けた取組を国内的にも国際的にも講じていく必要があります。

 ア 日本国内の取組

 (ア)規制の執行体制

 日本では、バーゼル法及び廃棄物処理法の適切な運用に向けて、事業者向け説明会の開催、個別輸出入案件に対する事前相談の実施、税関部局とバーゼル法及び廃棄物処理法担当部局とが連携した水際対策の強化等の取組を一体的に行い、執行体制の強化に努めています。

 a バーゼル法等説明会の開催

 廃棄物等の輸出入に関して適切な管理体制を構築するにあたっては、まず、実際に輸出入を行っている事業者の方々に、バーゼル条約やその関連法令に関する知識を持っていただくことが重要です。このため、環境省及び経済産業省では、共同で、廃棄物等の輸出入関連法令の趣旨を理解し、適正な輸出入に努めて頂くよう「バーゼル法等説明会」を開催しています。このバーゼル法等説明会では、バーゼル条約、バーゼル法及び廃棄物処理法の概要説明と、実際に輸出入を行う際に必要な手続き等について説明を行っています。平成19年度は、全国10箇所で開催しました。


バーゼル法等説明会 出典:環境省

 b 個別輸出入案件に対する事前相談の実施

 また、環境省及び経済産業省では、実際に廃棄物等の輸出入を行おうとしている事業者向けに、輸出入しようとする貨物がバーゼル法に規定する特定有害廃棄物等に該当するか否か、廃棄物処理法に規定する廃棄物に該当するか否かについて助言を行う事前相談を行っています。

 この事前相談では、指定様式の事前相談書及び関係資料(インボイス、契約書、国内取引伝票、貨物全体の写真、成分分析表、分析サンプルの写真等)を提出いただき、提出された資料をもとに当該貨物がバーゼル法又は廃棄物処理法に基づく規制を受けるか否かの判断に役立ててもらうこととしています。

 c 水際対策の強化

 さらに、実際に循環資源が輸出される際には、税関においては、必要な手続をされずにバーゼル法又は廃棄物処理法に基づく規制対象貨物が輸出されることがないよう、慎重な審査・検査を行っています。このため、情報収集や分析の強化、取締機器の増強など種々の施策を講じており、例えば、大型X線コンテナ検査装置を全国16ヵ所に配備し、コンテナの検査をより速く、より的確に行うこととしています。また、仮に、税関での審査・検査で不審な貨物が発見された場合には、税関、環境省及び経済産業省が綿密に連携して貨物検査等を行い、法に基づいて厳正に対処することとしています。

 一方、環境省及び経済産業省も、税関における水際対策に資するよう、情報提供を積極的に行う一方、定期的に意見交換を行い対策の推進に努めています。

 (イ)規制対象物品の明確化

 バーゼル条約では、規制対象となる有害廃棄物等を判断するための有害性や処分作業(廃棄物/非廃棄物)の基準について各国で決定することができることとされているため、輸出入国の間で規制対象物質の範囲が異なるという事態が生じる場合があります。このような事態に対処するためには、まずは各国が、ある物が規制対象となるか否かについて、可能な限り客観的に明らかにすることが重要です。

 このため、我が国では、条約の附属書VIII及び附属書IXをもとに規制対象品目及び規制非対象品目のリストを告示で定めています。使用済み鉛バッテリー、廃PETボトル等一部貨物に関しては、廃棄物や特定有害廃棄物等に該当するか否かのポイントを明示し、輸出入業者等関係者へ周知徹底しています。

 また、有害物質を含んだ中古利用に適さない家電が中古利用の名目で輸出されることがないよう、バーゼル法における中古利用に係る輸出時の判断基準の明確化等の検討を行っていきます。

 さらに、個別の物品ごと(鉛バッテリー、廃PETボトルなど)に、廃棄物や有害性の判断にあたってのポイントを明示し、周知徹底しています。

 今後とも、例えば、家庭から排出された有害物質を含んだ家電のうち、実際には中古利用に適さないものが中古利用の名目で輸出されることがないよう、バーゼル法における中古利用に係る輸出時の判断基準の明確化等の検討を行っていきます。

 イ 国際的な取組

 我が国は、廃棄物等の不法な越境移動を防止するため、アジア諸国との連携を図りつつ、不法輸出入防止に向けた情報交換の推進や施行能力の向上のための取組支援を推進しています。

 (ア)有害廃棄物の不法輸出入防止に関するアジアネットワーク

 我が国は、バーゼル条約の実施能力の向上及び関係国間の情報交換体制(ネットワーク)を整備するため、平成15年に「有害廃棄物の不法輸出入防止に関するアジアネットワーク」を提案し、アジア諸国等と連携した不法輸出入防止の取組を進めてきています。平成15年以降、ワークショップ開催、ウェブサイトによる各国の規制情報の提供、不法輸出情報等の情報交換を行ってきました。今後は、これらの活動に加え、有害廃棄物の不法輸出入防止に関する各国の取組の状況、各国におけるバーゼル条約の規制対象物品の判断基準の差異を狭めていくための各国の有害廃棄物の定義や判断基準の明確化及びその共有、各国の施行能力向上に役立つようなバーゼル条約施行に関する優れた事例の共有等などの活動を積極的に進めていきたいと考えています。


有害廃棄物の不法輸出入に関するアジアネットワーク 出典:環境省

 (イ)アジア太平洋地域における廃電気電子製品の環境上適正な管理プロジェクト

 我が国は、バーゼル条約の下で進められている「アジア太平洋地域における廃電気電子製品の環境上適正な管理プロジェクト」に対して拠出を行い、その活動の一環として、バーゼル条約アジア太平洋地域センターが実施している使用済みのテレビ、パソコン、冷蔵庫等のいわゆるE-Wasteの廃棄物と中古品の判断基準に関する調査やE-Wasteのインベントリの整備等のプロジェクトを支援しています。

 (ウ)多国間・二国間の枠組による連携

 さらに、日本と循環資源の輸出入量が多い国々とは、廃棄物の不法輸出入防止に向けての取組について情報交換等を行っています。

 多国間の例としては、例えば、日中韓三カ国環境大臣会合(TEMM)において、E-waste等の有害廃棄物の不適正な輸出入防止対策のための情報交換の推進やワークショップの開催等の取組が進められています。

 また、日中、日韓などの二国間においても、両国の廃棄物等の輸出入に関係する法制度やその執行体制について情報交換が進められています。

4 東アジア循環圏の構築に向けて

 以上のように、我が国が提唱した3Rイニシアティブは、G8のみならず、OECD加盟国やアジア諸国など地理的な広がりをみせるとともに、世界情勢の変化を受け、廃棄物問題だけではなく、資源生産性の向上などにも資するものとして世界全体に浸透しつつあり、国際的な3Rに関する取組は新たな段階を迎えつつあります(表4−4−2)。


表4−4−2 G8各国および欧州委員会の3Rに関する取組進展の例

 我が国としては、これまでのG8プロセスにおける議論や、アジアにおける取組、そして第2次循環型社会基本計画の策定を踏まえ、3Rを通じた資源の節約、温室効果ガス排出抑制対策との副次的便益(コベネフィット)の追求、開発途上国における廃棄物処理や3Rの能力開発に向けた国際連携の強化などが、我が国が今後も世界をリードして積極的に取り組んでいく課題であると考えています。

 また、今後、我が国は、東アジア循環圏の構築に向けた取組を本格的に始動していくこととしており、その第一段階として、我が国は平成24年までに東アジア循環型社会ビジョンを策定し、アジアにおける持続可能な物質循環の実現を図ります。



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