第4節 閉鎖性水域における水環境の保全


1 湖沼

湖沼については、富栄養化対策として、水質汚濁防止法に基づき、窒素及びりんに係る排水規制を実施しており、平成16年5月に見直しを行い、窒素規制対象湖沼は277、りん規制対象湖沼は1,329となりました。また、湖沼の窒素及びりんに係る環境基準については、琵琶湖(2水域)等合計79水域(78湖沼)について類型指定が行われています。
また、水質汚濁防止法の規制のみでは水質保全が十分でない湖沼については、湖沼水質保全特別措置法(昭和59年法律第61号)によって対策を講じています。この法律は、湖沼の水質保全を図るため、環境基準の確保の緊要な湖沼を指定して、湖沼水質保全計画を策定し(図3-4-1、図3-4-2)、下水道整備等の水質の保全に資する事業、各種汚濁源に対する規制等の措置等を推進するものです。しかし、湖沼の水質改善が依然として芳しくないため、平成17年1月の中央環境審議会の答申「湖沼環境保全制度の在り方について」を踏まえ、湖沼の水質のさらなる保全を図るため、第162国会において湖沼水質保全特別措置法が改正されました。これにより、指定地域における農地、市街地等からの汚濁負荷削減対策を推進する流出水対策地区制度、水質浄化機能を有する湖辺の植生の適正な保護のための湖辺環境保護地区制度等の新たな措置がなされました。また、農地、市街地等の非特定汚染源から発生する汚濁負荷対策検討調査、健全な水循環のための調査、湖沼の汚濁機構解明や施策の効果の分析・評価について検討を行う調査を実施しました。

図3-4-1	湖沼水質保全特別措置法に基づく10指定湖沼位置図


図3-4-2	湖沼水質保全計画策定状況一覧


2 閉鎖性海域


(1)富栄養化対策
海域の窒素及びりんに係る排水基準については、閉鎖性が高く富栄養化のおそれのある海域に適用することとされており、現在、88の海域とこれに流入する公共用水域に排水する特定事業場を対象として、排水規制を実施しています。また、海域における全窒素及び全りんの環境基準については、上記の閉鎖性海域を対象に環境基準類型をあてはめる作業が国及び都道府県において行われているところであり、54海域が指定されています。

(2)水質総量規制制度
人口、産業が集中し、汚濁が著しい広域的な閉鎖性海域については、水質汚濁防止法に基づき、当該水域への汚濁負荷量を総合的かつ計画的に削減しようとする水質総量規制を実施しています。東京湾、伊勢湾及び瀬戸内海を対象に、COD、窒素含有量及びりん含有量を指定項目として、第5次水質総量規制を実施しています。
第5次水質総量規制に係る総量削減基本方針に示される削減目標量の達成のため、地域の実情に応じ、下水道、浄化槽、農業集落排水施設、コミュニティ・プラントなどの整備等による生活排水対策、工場等の総量規制基準の遵守指導による産業排水対策、合流式下水道の改善等によるその他の汚濁発生源に対する諸対策を総合的に推進しました。
また、総量規制の対象の3水域においては、総量規制の水質改善効果を把握するため、当該水域に係る水質、発生負荷量及び負荷削減対策状況等について総合的な調査・解析を行いました(図3-4-3)。

図3-4-3	発生負荷量の推移及び削減目標量

さらに、総合的な水質改善対策を一層推進するため、第6次総量規制の在り方について検討を行い、平成17年5月に中央環境審議会から答申が行われました。答申においては、21年度を目標年度とし、東京湾、伊勢湾及び大阪湾においては水環境改善のために、さらなる負荷削減対策等を実施するとともに、瀬戸内海(大阪湾を除く)においては現状の水質を維持するために従来の各種施策を継続して実施することとされています。

(3)瀬戸内海の環境保全
瀬戸内海においては、瀬戸内海環境保全特別措置法(昭和48年法律第110号)及び瀬戸内海環境保全基本計画等により、総合的な施策が進められてきています。瀬戸内海沿岸の関係11府県は、海水浴、潮干狩り等海洋性レクリエーションの場として利用されている自然海浜を保全するため、自然海浜保全地区条例等を制定しており、平成17年12月末までに91地区の自然海浜保全地区を指定しています。瀬戸内海における公有水面埋立ての免許又は承認に当たって、関係府県知事は、瀬戸内海の特殊性に十分配慮しなければならないとされています。瀬戸内海環境保全特別措置法施行以降17年11月1日までの間に約4,770件、約12,890ha(うち16年11月2日以降の1年間に39件、76.5ha))の埋立ての免許又は承認がなされています。

(4)有明海及び八代海の環境の保全及び改善
平成14年11月に成立した有明海及び八代海を再生するための特別措置に関する法律(平成14年法律第120号)に基づいて策定した基本方針により、国及び関係県が連携・協力を図りながら、貧酸素水塊の影響防止対策、底質改善、藻場の造成等、環境の保全及び改善、水質資源の回復等による漁業の振興を図るための各種施策の推進に取り組みました。また、同法に基づき環境省に設置された「有明海・八代海総合調査評価委員会」において、両海域の再生に係る評価等を行うための検討がなされました。

3 閉鎖性水域の浄化対策

水質悪化が著しい湖沼においては、底泥からの栄養塩類の溶出等を抑制するため、底泥しゅんせつを実施するとともに、湖沼に流入する汚濁負荷の削減を図るため、流入河川において直接浄化施設の整備を実施しました。港湾及び周辺海域の環境保全では、平成17年度には港湾公害防止対策事業(有機汚泥等のしゅんせつ等)を東京港等7港で行ったほか、港湾区域外の一般海域における浮遊ごみ・油の回収事業を行いました。また、漁港内外の静穏水域の浄化対策として、風力等自然エネルギーを活用した水域環境改善手法の検討を行いました。
閉鎖性が強くヘドロの堆積した海域の環境改善を目的として、海域環境創造・自然再生事業(覆砂、干潟や海浜等の整備)等を瀬戸内海等の3海域及び堺泉北港等13港において実施しました。また、水産基盤整備事業により、三重県英虞湾(あごわん)の漁場環境の改善を図るためしゅんせつを行いました。

4 大都市圏の「海の再生」

都市再生プロジェクト(第3次決定)「海の再生」の実現に向けて、「東京湾再生のための行動計画」及び「大阪湾再生行動計画」に基づき、陸域からの汚濁負荷の削減、海域における環境改善、環境モニタリング等の各種施策を関係機関と連携して推進しました。
さらに、「全国海の再生プロジェクト」として、伊勢湾及び広島湾において、行動計画の策定等を行う再生推進会議をそれぞれ設置しました。


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