第3節 水利用の各段階における負荷の低減


1 発生形態に応じた負荷の低減


(1)工場・事業場対策
ア 排水規制の実施と上乗せ排水基準の設定
公共用水域の水質保全を図るため、水質汚濁防止法(昭和45年法律第138号)により特定事業場から公共用水域に排出される水については、全国一律の排水基準が設定されています。内湾、内海及び湖沼の閉鎖性水域に関しては、富栄養化の防止を図るため、窒素及びりんに係る排水基準を設定し、排水規制を実施しています(本章4節参照)。
全国一律の排水基準では環境基準を達成維持することが困難な水域においては、都道府県条例においてより厳しい上乗せ基準を設定し得るものとされており、すべての都道府県において上乗せ排水基準が設定されています。
イ 汚水処理施設の整備
下水道整備については、「社会資本整備重点計画」に基づき、普及が遅れている中小市町村の下水道整備、未着手市町村における新規着手の推進、水質保全のための高度処理の積極的導入等を重点的に実施しました。下水道等の汚水処理施設の整備事業を関係省が重点的に支援する「汚水処理施設連携整備事業」においては、平成17年度は新たに4市町の事業を認定し、13年度以降に始まった継続事業とあわせて25市町で実施しました。
合流式下水道については、平成16年から原則10年以内での改善が義務化されたことを受け、「合流式下水道緊急改善事業」等を活用し、緊急的・総合的に合流式下水道の改善を推進することで、16年度の合流式下水道改善率は17%に達しました。さらに、17年6月に下水道法を改正し、流域下水道全体で効率的に高度処理を図るため、高度処理共同負担事業制度を創設しました。

(2)生活排水対策の推進
日常生活に伴って家庭から排出される生活排水については、生活排水処理施設の整備がいまだ十分ではありません(図3-3-1)。特に、流域内に人口や産業が集中する河川や、手賀沼、印旛沼などのように集水域の都市化が進んでいる湖沼においては、排水負荷量のうち生活排水の占める割合が大きくなっています。このため、地域の実情に応じ、下水道、浄化槽、農業等集落排水施設、コミュニティ・プラント(地域し尿処理施設)など各種生活排水処理施設の整備を推進しました。その際、都道府県ごとに策定された汚水処理施設の整備等に関する都道府県構想に基づき、効率的な生活排水処理施設の整備が図られました(下水道等の整備については、本節1(1)参照)。

図3-3-1	汚水処理人口普及率の推移

浄化槽については、平成17年5月に浄化槽法(昭和58年法律第43号)の改正により、法の目的への「公共用水域等の水質の保全」の明示等がなされました。また、浄化槽の設置については、個人が設置する浄化槽に対して補助を行う市町村や、自ら浄化槽の整備を行う市町村に対する国庫補助制度が設けられており、17年度には新たに循環型社会形成推進交付金や汚水処理施設整備交付金が創設されました。これらの補助金・交付金により、全国約1,800の市町村のうち約1,400の市町村で整備が図られました。また、下水道、浄化槽、農業集落排水施設の整備事業を関係省が重点的に支援する「汚水処理施設連携整備事業」においては、17年度は新たに4市町の事業を認定し、13年度以降に始まった継続事業とあわせて25市町で実施しました。
農業振興地域においては、農業集落におけるし尿、生活雑排水等を処理する農業集落排水施設の整備を699地区、緊急に被害防止対策を必要とする地区については、用排水路の分離、水源転換等を行う水質障害対策に関する事業直轄6地区補助10地区を実施しました。さらに、漁業集落から排出される汚水等を処理し、漁港及び周辺水域の浄化を図るため、漁業集落排水施設整備を推進しました。
水質汚濁防止法では生活排水対策の計画的推進等が規定されており、同法に基づき都道府県知事が重点地域の指定を行っています。平成18年3月31日現在、42都府県、209地域、350市町村が指定されており、生活排水対策推進計画による生活排水対策が推進されました。

(3)非特定汚染源対策
降雨等により流出するいわゆる非特定汚染源も、水質汚濁の大きな要因の一つになっています。市街地、農地等の非特定汚染源については、効果的な施策を構築するため、モデル流域における計画の策定・検討調査を実施しました。また、雨天時に宅地や道路等の市街地から公共用水域に流入する汚濁負荷を削減するため、新世代下水道支援事業制度水環境創造事業を推進しています。さらに、れき等の利用による浄化型水路の整備などにより、農業用用排水路等の水質浄化を図るため、水質保全対策事業を推進しています。

2 負荷低減技術の開発普及

下水道に関わる新技術を先駆的に導入・評価し、新技術の普及と効率的な事業の執行を図るために、新世代下水道支援事業制度機能高度化促進事業を実施するなど総合的な技術開発を重点的に実施しました。特に、合流式下水道の改善は緊急かつ重要であることから、下水道技術開発プロジェクト(SPIRIT21)において、産学官連携で合流式下水道改善に関する技術開発を推進し、平成17年3月までに24技術を実用化しました。
浄化槽においては、上水道の取水口より上流に位置する区域でかつ水源地であるダム貯留湖の周辺地域を高度処理浄化槽の補助対象地域に加え、従来から補助対象としていた窒素除去能力を有する高度処理型浄化槽に加え、りん除去能力を有する高度処理型浄化槽を補助対象とし、りん除去能力を有する浄化槽の普及に努めました。
農業集落排水事業においては、特に中山間地域等の小規模処理区を対象に、処理性能の高度化と低コスト化を図るため、膜分離方式の小規模処理システムを官民連携新技術研究開発事業により開発しました。また、遠隔監視システムの活用による高度処理の実証調査を行いました。

3 水環境の安全性の確保

1)水道水源の水質保全対策
水道原水水質保全事業の実施の促進に関する法律(平成6年法律第8号)に基づく水道原水水質保全事業の実施の促進の要請を受け、平成17年度末までに、都道府県計画(8計画)・河川管理者事業計画(8計画)が策定されました。

(2)地下水汚染対策
水質汚濁防止法に基づいて、地下水の水質の常時監視、有害物質の地下浸透禁止、事故時の措置、汚染された地下水の浄化等の措置がとられています(図3-3-2)。また、地下水の水質調査により井戸水の汚染が発見された場合、井戸所有者に対して飲用指導を行うとともに、周辺の汚染状況調査を実施し、汚染源が特定されたときは、指導等により、適切な地下水浄化対策等が行われます。

図3-3-2	水質汚濁防止法の地下水規制等の概要

環境基準超過率が最も高い硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素による地下水汚染対策については、「硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素に係る水質汚染対策マニュアル」等を活用し、地域における取組を推進しました。また、硝酸性窒素による地下水汚染が見られる地域において効果的な浄化手法の確立に向けた調査を実施するとともに、地域の実情に応じた重点的な対策のあり方について検討しました。

(3)漁業公害等調査
水銀やダイオキシン類等有害物質の魚介類中での蓄積状況把握、蓄積機構解明、試験方法検討などの調査のほか、二枚貝等が体内に蓄積する貝毒のモニタリング手法の検討、内湾域における発電所の取放水による漁業の影響についての検討等を行いました。

(4)農薬汚染対策
農薬については、水質汚濁の未然防止を図る観点から、農薬取締法(昭和23年法律第82号)に基づき水質汚濁に係る農薬登録保留基準を定めており、平成17年度までに、133農薬の基準値を設定しました。また、17年4月に施行した水産動植物の被害防止に係る改正農薬登録保留基準について、個別の農薬の基準値設定に向けた検討を行いました。さらに、環境中における残留性及び生物濃縮性の観点から、より適切なリスク管理を行っていくため、水質汚濁に係る農薬登録保留基準を17年8月に改正するとともに、同基準の18年8月の円滑な施行に向け体制づくりを行いました。


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