第5節 海洋環境の保全


1 未然防止対策


(1)船舶等に関する規制
海防法に基づき、油、有害液体物質等及び廃棄物の排出規制、焼却規制等について、その適正な実施を図るとともに、船舶の構造・設備等に関する技術基準への適合性を確保するための検査、海洋汚染防止証書等の交付を行っています。また、日本に寄港する外国船舶に対して立入検査を行い、SOLAS条約やMARPOL73/78条約等の基準を満たしているかどうかを確認するポートステートコントロール(PSC)を的確に行ってきました。

(2)未査定液体物質の査定
船舶によって輸送される有害液体物質等の排出に関する規制が実施されたことに伴い、昭和62年より海洋環境保全の見地からの有害性の確認がなされていない液体物質(未査定液体物質)の査定を行っており、これまでに査定、告示した物質は150物質(平成18年3月末現在)となっています。

(3)海洋汚染防止指導
6月と11月の「海洋環境保全推進週間」をはじめとして、全国各地で海洋環境保全講習会等の海洋環境保全推進活動を行いました。船舶の不法投棄については、廃船の早期適正処分を指導する内容が記載された「廃船指導票」を廃船に貼付することにより、投棄者自らによる適正処分の促進を図り、廃船の不法投棄事犯の一掃を図りました。

2 排出油等防除体制の整備

OPRC条約及び「油汚染事件への準備及び対応のための国家的な緊急時計画」(以下「国家的な緊急時計画」という。)に基づき、環境保全の観点から油汚染事件に的確に対応するため、各種対策(1)脆弱沿岸海域図の公表、2)関係地方公共団体等に対する傷病鳥獣の救護及び事件発生時対応のあり方に対する研修・訓練の実施)を実施しました。また、油汚染事件に対する環境保全対策の一層の充実を図るため、油処理剤の環境影響の評価に関する情報の収集及び調査を進めました。
また、油防除資機材の整備、大型のしゅんせつ兼油回収船の建造、荒天対応型大型油回収装置等の研究開発等についても進めています。また、海上における油等の排出事故に対処するため、巡視船艇・航空機の常時出動体制を確保し、防除資機材を配備するとともに、排出油防除に関する協議会等の組織化・広域化の推進及びこれらの協議会との連携のもとに行う各種訓練等の内容の充実により、官民一体となった排出油防除体制の充実を図りました。
さらに、油防除活動等を効果的に行うために必要な「沿岸海域環境保全情報」の整備を進め、国の関係機関、地方公共団体等が、インターネットでこれらの情報の共有化を進めています。そのほか、油等の排出事故対応に資するため、漂流予測の情報を提供するための海上浮遊物移動拡散予測業務についても引き続き実施するとともに、マリンレジャーの活発な相模湾に整備した次世代型海流監視システム等による詳細なデータ収集等、漂流予測体制の強化を図りました。
大規模石油災害時に油濁災害対策用資機材の貸出しを行っている石油連盟に対して、当該資機材整備等のための補助を引き続き行いました。また、漁場保全の観点から油汚染事件発生に的確に対応するため、油防除・油回収資機材の整備、関係都道府県等に対する汚染防止機材の整備、民間団体の実施する防除指導者の育成のための講習会及び実地訓練等について助成しました。さらに、流出油が海洋生態系に及ぼす長期的影響調査を行いました。

3 油濁損害賠償保障制度の充実

タンカーによる油濁事故による損害賠償をより充実するために、平成15年、「1992年の油による汚染損害の補償のための国際基金の設立に関する国際条約の2003年の議定書」が採択され、17年3月に発効しました。これにより、船舶所有者からの賠償及び国際油濁補償基金・追加基金からの補償の合計限度額が約1,200億円となり、日本における油の汚染損害による被害者の保護が一層充実することになります。また、16年4月に油濁損害賠償保障法(昭和50年法律第95号)を改正し、17年3月以降、タンカー以外の保障契約を締結していない一般船舶については、わが国への入港が禁止されました。
さらに、原因者不明の漁場油濁については、民間団体が実施する漁業者が行った防除・清掃作業についての費用の支弁する事業等に対し助成しました。

4 海洋汚染防止のための調査研究・技術開発等

漁業被害の防止のための赤潮対策技術開発、各閉鎖性海域の特徴を踏まえた赤潮及び貧酸素水塊による漁業被害防止対策確立のための調査、防除に関する手法の検証及び開発・普及の推進等を実施するとともに、赤潮発生状況等の調査等について助成しました。また、海浜及び漁場の美化を総合的に推進するための廃棄物の回収除去や、良好な漁場環境の保全を図ることを目的とした漁民の森づくりの活動に助成しました。
バラスト水問題に対する抜本的な取組として、バラスト水を積載しなくても安全に航行することが可能な船型(ノンバラスト船型)の開発を推進しました。

5 監視取締りの現状

海上環境事犯の一掃を図るため、日本周辺海域における海洋汚染の監視取締りを行っており、特に海洋汚染の発生する可能性の高い東京湾、瀬戸内海等の船舶がふくそうする海域、タンカールート海域等においては、巡視船艇・航空機により重点的に監視取締りを行いました。特に6月と11月に実施した、「海上環境事犯一斉取締り」では、潜在化している悪質な海上環境事犯を集中的に取り締まりました。最近5か年の海上環境関係法令違反件数は表3-5-1のとおりで、平成17年に送致した621件のうち、有害液体物質及び廃棄物の排出等の海洋汚染に直接結びつく違反は581件と全体の約94%を占めています。

表3-5-1	海上環境事犯法令別内訳



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