未来に引き継ぐ大自然 国立公園
国立公園とは

生態系維持回復事業

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本事業設立の背景

自然公園の一部の地域では、シカによる自然植生等への食害、他地域から侵入した動植物による在来の動植物の駆逐などの問題が発生しています。これらの問題は、希少な動植物の生息・生育環境を脅かし、生息数の減少につながる他、生態系自体が変化し従来の自然公園の景観を損なうおそれがあります。
これまでの自然公園の保護は人間活動の直接的な影響を極力抑制する仕組みでしたが、これらの仕組みだけでは必ずしも対応できない事態が生じており、生態系を積極的に維持又は回復をしていく措置を講じていく必要があります。
ただし、原因となるシカなどの特定の動植物のみに注目した取組みを行っていたのでは、その動植物と関係の深い別の動植物の異常繁殖や減少など新たな影響が生じてしまうおそれがあり、結果として自然公園の景観を保護できない可能性があります。
そのため、自然公園内でこれらの取組を行う際にはシカや外来種の駆除といった特定の動植物を対象にした取組を個別に進めるのではなく、生態系の過程や動植物間の相互作用などに注目した総合的な取組をモニタリングに基づいて順応的に行っていくことが大切です。
このようなことから、平成21年の自然公園法の一部改正により、自然公園の生態系の維持又は回復を図ることを目的とした生態系維持回復事業制度を創設しました。

環境省が行う生態系維持回復事業

自然公園法(昭和32年法律第161号)に基づき、国は国立公園内の自然の風景地の保護のため生態系の維持又は回復を図る必要があると認めるときは、国立公園における生態系維持回復事業を行うものとしています。
国が生態系維持回復事業を行う際には、国立公園における生態系維持回復事業に関する計画(生態系維持回復事業計画)を策定し計画的に事業を行うこととしています。

現在実施している生態系維持回復事業計画の概要及び実施状況

令和6年3月29日現在

知床国立公園
策定者 農林水産省 環境省
事業を行う区域 知床国立公園全域
事業を行う期間 平成27年4月1日から事業の目標が達成されるまで
事業の目標 エゾシカの個体数調整等を通じて、エゾシカの急激な増加が起こる前の1980年代初頭の植生を回復させることを当面の目標とする。
事業計画書 知床生態系維持回復事業計画 [PDF 759KB]
尾瀬国立公園
策定者 農林水産省 環境省
事業を行う区域 尾瀬国立公園全域
事業を行う期間 平成26年4月1日から事業の目標が達成されるまで
事業の目標 ニホンジカの防除等を行い、尾瀬国立公園におけるニホンジカの採食圧による影響の低減を図ることにより、尾瀬国立公園における原生的な生態系を維持又は回復をすることを目標とする。
事業計画書 尾瀬生態系維持回復事業計画 [PDF 119KB]
白山国立公園
策定者 農林水産省 国土交通省 環境省
事業を行う区域 白山国立公園全域
事業を行う期間 平成27年4月1日から事業の目標が達成されるまで
事業の目標 外来植物の防除等を行い、白山国立公園における原生的な生態系を維持又は回復することを目標とする。
事業計画書 白山生態系維持回復事業計画 [PDF 263KB]
南アルプス国立公園
策定者 農林水産省 環境省
事業を行う区域 南アルプス国立公園全域
事業を行う期間 平成28年4月1日から事業の目標が達成されるまで
事業の目標 ニホンジカの影響が及ぶ以前の植生である1980年代の植生を目安として、南アルプス国立公園の生態系の維持又は回復を図ることを目標とする。
事業計画書 南アルプス生態系維持回復事業計画 [PDF 173KB]
霧島錦江湾国立公園
策定者 農林水産省 環境省
事業を行う区域 霧島地域全域
事業を行う期間 平成28年4月1日から事業の目標が達成されるまで
事業の目標 ニホンジカの個体数調整や植生の保護対策等を通じてニホンジカの影響が及ぶ以前と考えられる1990年代半ばの植生を目安として、霧島地域の生態系の維持又は回復を図ることを目標とする。
事業計画書 霧島生態系維持回復事業計画 [PDF 116KB]
屋久島国立公園
策定者 農林水産省 環境省
事業を行う区域 屋久島国立公園のうち屋久島に係る地域
事業を行う期間 平成28年4月1日から事業の目標が達成されるまで
事業の目標 ヤクシカの生息状況や植生等の被害状況・回復状況をモニタリングしながらその結果に応じて個体群管理や被害防除等の対策を進めることにより、ヤクシカ個体群の維持にも配慮しつつ、絶滅のおそれのある種等を含む多様な植生及び森林等の更新の維持又は回復を図ることを目標とする。
事業計画書 屋久島生態系維持回復事業計画 [PDF 132KB]
阿寒国立公園
策定者 農林水産省 環境省
事業を行う区域 阿寒国立公園全域
事業を行う期間 平成25年3月12日から平成29年3月31日まで
事業の目標 エゾシカの採食圧による影響の低減を図ることにより、阿寒国立公園における固有の生態系を維持又は回復することを目標とする。
事業計画書 阿寒生態系維持回復事業計画 [PDF 119KB]
釧路湿原国立公園
策定者 環境省
事業を行う区域 釧路湿原国立公園全域
事業を行う期間 平成28年4月1日から下記の目標が達成されるまで
事業の目標 エゾシカによる影響を低減することを通じて、釧路湿原国立公園における生態系をラムサール条約登録以前の状態に維持又は回復を図ることを目標とする。
事業計画書 釧路湿原生態系維持回復事業計画 [PDF 864KB]
阿寒国立公園
策定者 農林水産省 環境省
事業を行う区域 阿寒国立公園全域
事業を行う期間 平成29年4月1日から事業の目標が達成されるまで
事業の目標 阿寒国立公園におけるエゾシカによる影響の把握、情報収集等を行うとともに、エゾシカによる自然環境への影響を低減するための効果的な対策を検討・実施することで、阿寒国立公園の生態系の維持及び回復を図ることを目標とする。
事業計画書 阿寒生態系維持回復事業計画 [PDF 740KB]
阿寒国立公園
策定者 環境省
事業を行う区域 阿寒国立公園オンネトー湯の滝地区
事業を行う期間 平成29年4月1日から事業の目標が達成されるまで
事業の目標 外来魚の防除等を行い、外来魚の完全駆除を達成することにより、オンネトー湯の滝地区の生態系の維持又は回復を図ることを目標とする。
事業計画書 オンネトー湯の滝生態系維持回復事業計画 [PDF 1419KB]
富士箱根伊豆国立公園
策定者 農林水産省 環境省
事業を行う区域 箱根地域
事業を行う期間 平成29年10月2日から事業の目標が達成されるまで
事業の目標 植生劣化が起きない程度にニホンジカの密度を維持するほか、外来生物の防除等を実施することにより、箱根地域における生態系の維持又は回復を図ることを目標とする。
事業計画書 富士箱根伊豆国立公園 箱根地域生態系維持回復事業計画[PDF 214KB]
阿蘇くじゅう国立公園
策定者 農林水産省 環境省
事業を行う区域 阿蘇くじゅう国立公園くじゅう地域
事業を行う期間 令和2年11月6日から事業の目標が達成されるまで
事業の目標 ニホンジカの管理及び外来種の防除、植生遷移への対応等により、阿蘇くじゅう国立公園くじゅう地域における風景地の保護及び生態系の維持又は回復を図ることを目標とする。
事業計画書 阿蘇くじゅう国立公園 くじゅう地域生態系維持回復事業計画[PDF 146KB]
日光国立公園
策定者 農林水産省 環境省
事業を行う区域 日光国立公園日光地域
事業を行う期間 令3年3月5日から事業の目標が達成されるまで
事業の目標 尾瀬国立公園との広域連携を図りながら、関係機関が相互に連携・協力することにより、日光地域におけるニホンジカの生息密度を低減させ、適切な生息密度を保つことにより、健全な植生の維持・更新に支障がない状態を維持することを目標とする。
事業計画書 日光国立公園 日光地域生態系維持回復事業計画[PDF 135KB]
中部山岳国立公園
策定者 農林水産省 環境省
事業を行う区域 中部山岳国立公園全域
事業を行う期間 令5年9月1日から事業の目標が達成されるまで
事業の目標 関係機関と相互に連携・協力しながら、国立公園内において調査・監視(モニタリング)及び捕獲等を実施しつつ、周辺地域とも連携を図ることで、国立公園内の高山・亜高山帯へのニホンジカの生息域拡大及び高山植生等への被害発生を未然に防止し、中部山岳国立公園の生態系の維持を図ることを目標とする。
事業計画書 中部山岳国立公園 中部山岳生態系維持回復事業計画[PDF 1,627KB]
支笏洞爺国立公園
策定者 農林水産省 環境省
事業を行う区域 洞爺湖中島(大島、弁天島、観音島、饅頭島)
事業を行う期間 令6年3月29日から事業の目標が達成されるまで
事業の目標 関係機関等と連携し、洞爺湖中島において、生態系の状況を把握するための調査、監視(モニタリング)及びエゾシカや外来生物の防除等を実施することで、島内の植生が健全に更新できる生態系へと回復させ、その生態系が維持されることを目標とする。
事業計画書 支笏洞爺国立公園 洞爺湖中島生態系維持回復事業計画[PDF 283KB]