環境省ホームページへ戻る 環境省政策評価
環境省政策評価

■大臣官房■

| 政策評価TOP | ご意見・ご要望 |

平成21年度第1回議事録要旨

| 議事録要旨INDEX | 委員名簿 |
| 平成21年度 第1回 第2回 第3回|


第1回環境省政策評価委員会 議事録要旨

1.日時: 平成21年6月11日(木)10:00~12:15

2.場所: 環境省第1会議室

3.出席者

-委員-

(委員長)

須藤 隆一

埼玉県環境科学国際センター総長

 

井村 秀文

名古屋大学大学院環境学研究科教授

 

河野 正男

中央大学経済学部教授

 

崎田 裕子

ジャーナリスト・環境カウンセラー

 

堤 惠美子

株式会社タケエイ 社長室上席顧問

 

藤井 絢子

特定非営利活動法人 菜の花プロジェクトネットワーク代表

 

三橋 規宏

千葉商科大学政策情報学部教授

 

山本 良一

東京大学生産技術研究所教授

 

鷲谷いづみ

東京大学大学院農学生命科学研究科教授

   

 

[欠席]

 

大塚 直

早稲田大学大学院法務研究科教授

 

細田 衛士

慶應義塾大学経済学部教授


-事務局(大臣官房)-

南川大臣官房長、鈴木大臣官房審議官、森本総務課長、後藤会計課長、
紀村政策評価広報課長、他


-環境省各局部-

金丸企画課長(廃棄物・リサイクル対策部)、梶原総務課長(総合環境政策局)、
弥元企画課長(環境保健部)、木村総務課長(地球環境局)、
岡部総務課長(水・大気環境局)、奥主総務課長(自然環境局)

   

4.議題:

(1)平成20年度環境省政策評価書(事後評価)(案)について
(2)その他

5.議事録要旨  

議事録要旨

〔議事録要旨〕

(各委員紹介・配布資料確認)
(大臣官房長挨拶)
(須藤委員長選任)

(事務局より資料1「平成20年度施策に関する事後評価書(案)(重点的評価対象施策)」および資料2「平成20年度施策に関する事後評価書(案)(その他の施策)」の説明)

【須藤委員長】
 事務局としては資料をまとめるのがぎりぎりになるのはよく理解しているが、次回以降、先生方に一通りお目通しいただける時間の余裕を是非作っておいていただきたい。
 鷲谷先生の方から順番にご意見あるいはご質問をお願いしたい。

【鷲谷委員】
 指標を用いて客観的に評価することが最近では重視されてきている。指標には様々な限界があって、指標だけで評価はできないが、指標を活用して全体の見通しをよくしたり、客観的に評価したりするということは重要であると思う。指標にポイントをおいて説明されなかったが、指標を見ながら話すとそうしたことが解明できるのでは。指標に関する研究があまり十分でないと感じた。様々な指標が挙げられているが、問題の程度を表している指標もあれば、解決するためのアクションとして政策に近いような指標もある。指標をもう少し評価に活用してはどうか。
 湖沼の生活環境項目については、明瞭な指標がありつつも、改善されていない。評価の中にも適切に表現されているが、その指標が生活環境の悪化につながる人間活動と自然的な条件との複合的な状況において、本来どういう動きをするものなのか、十分に把握されていないために、それぞれの湖沼でどの指標が一番有効かという点が特定されていない。問題がしっかり照らし出されていないということがあるのかなと思った。
 指標があってしかるべき分野なのに、指標がない分野の例として、環境保健分野があるのでは。例えば、花粉症については、人口に占める花粉症患者の比率とか、地域別に見ると首都圏の比率が高いのか、それとも人工林が広い面積を占めている地域が高いのか、そういうことを見ただけでも、どのあたりが課題になるのか、分かるのではないか。花粉症で病院にかかっている人の数だと非常に客観的な指標になるし、国民生活に関するアンケートの中で自覚的に花粉症だと思っている人の比率の質問を設けたら(内閣府の調査なので設けられるのかどうかわからないが)、全国的な花粉症患者の分布がわかってよいのではないか。生物多様性に比べて指標化しやすいはずなのに指標が設定されていないと思った。
 生物多様性に関して、重要であるのに書かれていないと思った点として、評価の中で生物多様性基本法について全く触れられていない。昨年、生物多様性基本法ができ、生物多様性国家戦略が国の計画としてしっかりと位置付けられるようになった。これから生物多様性基本法に基づく計画として位置付けるための作業が始まる状況であるだろうし、2ヶ所ぐらい書き込む場所があると思うので、記載した方が適切ではないかと思う。

【山本委員】
 3点ある。1点目は、地球温暖化関連である。気候の安定化ということは条約に書かれてあるわけだが、政府の気候安定化に関する目標設定が不明確ではないかと感じている。ある文書によると、2℃ターゲットを容認し、設定している国は、100ヶ国以上になっているが、日本は、2℃以下に抑えるということを鮮明に表明したことはないと思う。ただ、安倍元総理の全世界で半減とか昨年の福田ビジョンを見ると、長期目標は2℃以下で抑えるとも見える。しかし、昨日発表された中期目標は、2005年比15%減、90年比で8%減。この目標だと、IPCCの文書によると、650ppmを目指していると見えるわけで、これは4℃の上昇となる。ということは、長期は2℃を目指して、中期は4℃を目指しているのではないかという疑念が生じる。ここをきちんと整理して、気候の安定化に対して、日本の態度をはっきりさせる必要があると思う。
 地球温暖化の分野では、新しい論文がどんどん出ている。昨年、『フィロソフィカル ・ トランザクションズ』(The Philosophical Transactions of the Royal Society)に載った論文では、現在の世界の状況では、21世紀末に650ppmで温室効果ガスを安定化することもかなり怪しくなってきているという結論である。450ppmで安定化することはほぼ不可能で、550ppmは非常に危うい、650ppmも危うくなりつつあるという結論で、非常に深刻な内容の論文になっている。4月号の『Nature』の論文でも、2℃ターゲットを選ぶとしても時間的余裕がほとんどないという結論である。この辺を国民が知る必要があると思う。
 2点目は、59ページの生物多様性の問題。生物多様性をいかなる指標で評価するのか、特にインパクト評価をどのように実施するのか、日本は準備をした方がいい。これは国際的に非常に大きな話題になっている。
 LCA日本フォーラムは、14年の歴史があり、データベースを構築している。このLCAデータベースには、生物多様性のインデックスがない。工場や製品開発は生物多様性に何らかのインパクトを与えている。今、生物多様性のオフセットということが提案されており、国として早く準備を進めるべきである。
 3点目は、69ページの経済のグリーン化の推進。日本版グリーン・ニューディールを進めることは大変すばらしい。問題は、グリーン・ニューディールを進めるに当たって、消費者のエコ・リテラシーをどう上げるかが極めて重要である。そこで提案したいのは、実務的なグリーン購入の知識を普及させる必要があるということ。そのために、グリーン購入検定制度を、例えば日本環境協会とかグリーン購入ネットワーク等が実施するのが有効な施策ではないかと考える。
 今回の中期目標設定にあたって痛切に感じたのは、環境規制が負担である、コストであるという強力な意識が社会の中に満ち溢れているということである。これは非常に困ったことである。環境規制は、新たな産業の創出、イノベーションにつながる。本来は経済産業省等が調査・研究するのが筋かもしれないが、環境規制はイノベーションを産み出す、新たな産業を創出するということを調査して準備した方が、環境省の施策を進めていく上で、有効ではないか。

【三橋委員】
 4点指摘したい。一つは、全体的な所感として、環境省が対象とする領域が増えていて、少人数で大変だという気持ちを持っている。数年前、過労で精神的なバランスをくずしたり、お亡くなりなったりする人がいた。最近はどういう状況なのか伺いたい。
 評価書について、これは平成20年度の事後報告なので、あれもこれもやっている、という見せ方で、批判に対して証拠固めしているような内容・説明になっているのが気になる。何を重点的に扱っていくかということが重要である。
 温暖化対策については、評価書では国際比較をもっと書き込む必要があると思う。例えば積極的にやっているヨーロッパの国々ではこういうことをやっているとか、そういう説明の仕方で政策にインパクトを与えることは可能だと思う。
 例えば、数年前にダイムラー等のドイツの有力企業と議論した際、環境税の導入に際しては、ダイムラーが反対と表明すれば、市民から不買運動をされるし、ドイツの行政は市民の声を最大限に反映する形で行われているとあって、表立って個別企業として反対表明はできず、消極的な賛成をせざるを得なかったということを言っていた。日本の場合、日本経団連という隠れみのがあるために、個別企業の名前を出さないで意見を言える。個別企業が環境税反対だということを言えば、日本であっても袋叩きにあうかもしれない。諸外国の場合は、例えば環境税一つとっても、ドイツは同じ工業国なのにうまくいって、日本ではうまくいかない。やはり業界団体の名前に隠れて個別企業が責任を取らない体制というものが問題になっているので、そういうことが分かるような書き方ができると思う。
 今の日本では、化石燃料を使って高い経済成長を実現するのは制度的にできなくなっていることも、基本的な考え方として明記すべきである。CO2の排出量を減らしながら経済成長を高めていくということ、省エネ等に取り組むエネルギーが高い成長を促すので、今のような緩い目標では成長率そのものを高めることも難しくなっている。大不況のときは、イノベーションでしか経済改革をさせる原動力になれない。マイケル・ポーターは、よい環境規制というのは、むしろ企業の国際競争力を強化させるのだと言っている。経済産業省や日本経団連の言っていることは、長期的にみて、日本の産業競争力を弱めるようなことになる。著名な学者の名前を借りて言うことはいくらでもできる。そういう視点がちょっと弱いのではないかと感じる。
 環境・経済・社会の、特に環境教育の問題については、ポイントを絞り込む必要がある。CO2排出は有料となる時代であるということ、CO2を排出するのはただでは許されない時代になってしまったということで、環境教育のバックボーンのようなものを決めるべき。抽象的に環境保全のためにみたいなことだとインパクトが弱い。21年度の環境行政を考える場合には、ポイントを絞り込む必要がある。

【藤井委員】
 湖沼については、相変わらず改善されていない。琵琶湖については、COD、BODの乖離をどうするのかというのが長年の課題である。下水道普及率83%になって、下水道ができれば琵琶湖がきれいになるという看板が琵琶湖の周りにあった。しかし、どうも下水道の排水地点に化学物質の問題もあるということで、今年、下水道課、琵琶湖対策課、琵琶湖再生課、琵琶湖環境科学研究センターが協力して、難分解性物質8物質を取り上げて、CODの数値回復への影響について調査することになっている。こうした、より踏み込んだことをしないと、COD、BODの乖離を改善できないままいくのではないか。
 もう一つは、水環境の記述部分に途上国とのパートナーシップが書いてあるが、当該国のNGO、こちらのNPOの視点が欠けている。特に途上国では、国同士のパートナーでは絶対見えないところがたくさんある。途上国に向けて活動するには、NGO、NPOはお金がない。地球環境基金が役に立つが、基金が8億から7億、今年は5億ちょっとになり、アジアで頑張っているNGO、NPOにお金がまわらなくなっている。パートナーシップの中にNGO、NPOとの連携軸を入れるような仕組み作りを、またNGO、NPOの資金をどのように支援していくかということを是非盛り込んでやっていかないといけないのではないか。NGO、NPOは、具体的解決に向けたノウハウを随分持っているが、うまく活かしきれていない。このノウハウを活かさない手はない。
 もう一つは、水俣関係である。公害問題については、さきほどの説明において、「しっかり」、「徹底して」、という言葉が使われていたが、水俣問題についてはそのことは一言もおっしゃらなかった。これだけ新たな申請者が出てきて、裁判が起き、胎児性の患者ですらもう50代になり、また、子供であった世代が今、裁判の当事者になり、そのまた子供たちにも問題が起きている等の現状がある。もっと人の痛みがわかるような施策を急がないと、途上国に向けて水俣問題の経験を発信できない。疫学調査を含めて、この国は本当にやっているのかということが大変気になる。

【堤委員】
 2点申し上げる。まず、69ページ、環境・経済・社会の統合的向上というところで、エコアクション21を取り上げたい。エコアクション21の判定委員会に関わって長い。この評価書においても、件数が増えていることが記載されている。企業規模の大小にかかわらず、着実に水、エネルギー、廃棄物の削減等を通じてCO2を削減するという考え方を広める役割を果たしているかなと感じている。評価書に触れられていないところで、実はこれらの活動を支えているのは地域の運営事務局で、個々の実態を見るとボランティア精神で支えられているという実態がある。熱意で支えられているものには、いずれ限界がくる。支える側を支える施策、てこ入れをすることの重要性についてもう少し検討してほしい。
 もう一点は、地球温暖化対策の推進について。再生可能エネルギーの中には、廃棄物由来のエネルギーもある。しかし、廃棄物処理業者は、CO2削減にいいから、自ら温暖化対策につなげて処理しようというところまで、体力や考えがなかなか及んでいない。こういった場合、排出事業者がそういった要求を委託する際に持っているということが重要になるわけで、排出事業者と処理事業者が一体になって、エネルギー利用を考える、こうした連携が鍵になるのではないか。そういう意味で、連携という部分も絵の中に入れ込んで検討してほしい。
 
【崎田委員】
 環境分野は、地方自治体、国、市民、企業を超えて、関わる人全てが連携し、相乗効果を挙げながら具体化していく時期にさしかかっていると強く思う。
 まず、地球温暖化対策について、例えば報道を見ていても、何のために目標を高めてしっかり取り組む必要があるのか、産業界や国民に届いていない。ある企業に、なぜ、新聞に一面広告で意見広告を出しているのか聞いたところ、アメリカ、中国、インドといったCO2多量排出国を国際交渉の議論の場に必ず引っ張り込んでください、という政府へのアピールをしたくてやったとのことだが、国民には違うメッセージが届いている。環境省は、国際交渉の場で、外務省や経済産業省等と連携し、日本の技術力等をアピールしながら、国に全体の流れをコーディネートしてほしい。
 地域社会の中でも、地域間カーボンオフセットなど、地域での取組が進んでいる。地域の取り組みを誘導するような、次の施策を作るといった設計をしていただきたい。先日ユビキタス特区を動かしている総務省の方と話をしたときに驚いたのは、こうした技術を使えば地域のCO2排出量の把握や削減が技術的には可能だということ。そういう将来展望を明確に見せてほしい。
 温暖化の分野では、国民の環境教育も大事である。環境・エネルギー教育では、全体像をきちんと伝えることが必要である。環境省は、そのコーディネートの役割を担うべきである。
 次に、国土交通省では、アジアとの連携を深めるために、下水道グローバルセンターを立ち上げ、環境省、厚生労働省の上水、下水、水再生に関わる人がアジアに貢献していくことを検討するための場が創出された。水政策についてもいろいろな場面で市民の視点をいれながら進めてほしい。
 生物多様性については、環境省の「NGO/NPO・企業の環境政策提言フォーラム」の審査員をやっているのだが、今年度は、優秀提言や優秀に準ずる提言で生物多様性に関連する提言が多い。調査にお金がつくのは優秀提言の一つで、きっと数百万円の調査という感じだと思うが、本気でやれば日本の信頼にもなるようなテーマが大変多い。優秀提言は、熱帯雨林の保全に関するテーマで、その地域の生物多様性や地域の暮らしの活性化を考えて、そこにちゃんとお金が落ちるように考えられており、これからの熱帯雨林の再生に日本が関わっていって、それらがカーボンオフセットとして評価されるような仕組みを構築すべきというものであった。こういう分野の調査・研究が進めば、新しい企業のCSRの方向性がみえてくるのではないか。また、優秀に準ずる提言の内容は、アジアの都市の自治体が生物多様性基本計画をつくっていく際に連携して支援するという内容であった。こういうものは、効果が出るのに時間がかかるが、大変重要なものだと感じている。
 環境保健の部分については、説明の中ではあまり触れられなかったが、配付資料には、「子どもの健康と環境に関する全国調査」の記述があった。この分野は重要な点であり、しっかり検討すべき。不用意に情報を流すとパニックを起こす可能性もあるので、きちんとした情報発信をしながらお金をつけて調査をすべきである。
 最後に、環境と経済のところだが、企業の不正、表示の不正などいろいろなことがあって、きちんとした信頼性を確保するための仕組みをつくる、よい取組に対するインセンティブを明確につけるという両面に関して、環境ラベルの見直しや環境ビジネスへの投資を支援する場を作るなど、いろいろな側面の中で環境と経済の好循環を進めていくのが重要である。

【河野委員】
 全般的な評価書の印象としては、政策目標が掲げられ、それに対する内部的な評価が書かれている。指標によって評価しているが、指標が当初の目標を達成していない場合、どうするのかについて、具体的にどうやって指標を達成するのか踏み込んだ記述が足りない。例えば、地球温暖化について、指標でみると、1990年から9%ぐらい高いとあり、具体的にそれを削減するための取組が書かれているが、環境省としてできることとできないことがある。家庭部門、運輸部門が一般的に足を引っ張っているという話であれば、具体的にどう対応するのかについて、その政策を実施するためのもう1歩踏み込んだ手段が書かれているともっと分かりやすい。
 同じ観点から、閉鎖性水域の水質がよくない、というのであれば、どうすればいいのか。下水道が設置されても琵琶湖の水質は改善されていない。東京湾についても同じような一面があるかと思う。横浜市の下水道事業経営研究会に関わっており、高度処理をするとコストはかかるが、処理をすれば改善の余地があるというような話を聞いた。それならば、政策として高度処理に補助金をつけるということが必要なのではないかと思った。
 生物多様性の保全に関わるところでは、生物多様性に直接には結びつかないが、自然のふれあいということで、環境省管轄である公園についてはきちんとやっているということだったが、日本の森林の大半を占める民有林、あるいは国有林も含めて、環境省管轄外の森林の持続的な経営についても触れるべきではないか。林野庁、農水省の分野かもしれないが、間伐したものが放置されているなど、きちんと維持・管理されていない状況がある。森林は、きちんと管理されればCO2の貯蔵にも役立つ。環境省だけでできないならば、他省庁との協力も含めて書き込んでもらえばいいかなと思った。
 それから、経済のグリーン化については、税制や補助金を使っての経済のグリーン化は、温暖化阻止が基本だと思うが、優先順位付けを考える必要がある。あれもこれも書いてあって、優先順位が必ずしもないと先ほどの話にもあったが、CO2の削減やエコ産業の発展、あるいは国際的なリーダーシップをとるということから、戦略的にある分野にお金を注ぎ込み、そのことの波及効果として、間接的にもCO2が減っていくということがあるのだろうと思う。優先順位を考えたお金の使い方、税金の取り方、取った税金の使い方を考えてほしい。これは評価というより、今後の取組にウェイトを置いた発言になるが。

【井村委員】
 第1点は、全体的な印象として、評価書の内容はわかりやすくなった。不満がないわけではないが、いろいろな目標について数字が適切に書かれているし、結果についても、分量の制限がある中で、それなりに合理的に納得できるようなデータを示しつつ書かれている。
 指標については、環境負荷を示しているもの、環境負荷によって生じた状況に関するもの、対策に関するもの、いろいろなレベルがあって、記述に合わせて適当に指標を使えばいいのだが、一つ施策として見れば、システマティックに整理できるように改善できたらいいと思う。政策評価手法検討部会を担当しているので、自分自身の部会に対する反省としても感じている。
 評価・分析の部分は、達成の状況、必要性、有効性、効率性の4つの項目からなる。最初の頃、何を書くべきかについて、分野毎に不整合があったり、有効性で書くべきこと、効率性で書くべきこと等がごちゃごちゃしていたりしたが、今回は大分改善されてきている。ただ、いくつかについては書き込めていないところがある。例えば、効率性について、理由もなくただ効率的に行われていると言い切ってしまっている。各担当で、もう少し工夫してほしい。
 例えば、74~75ページ(「経済のグリーン化の推進」)に、効率性の記述があるが、すべて最後は「効率的である」と記述されている。75ページの環境税云々の部分について、結論として「効率的である」、と書いてあるが、まだ、これは評価できていないものである。効率的であるはずであるという仮定のもとに政策が作られ、実施されているわけだが、その評価が定まっているものではない。今後効率的であることが実証されることを期待はしているが、それがちょっと気になったところである。

【須藤委員長】
 評価書に関する全体所感としては、様式に従って指標を設けて、どう達成しているかということを評価してきたので、それなりにまとめられており、問題はないと思う。今後のことについては今日の議題ではないが、指標の問題や評価書の記載方法等については、今年も井村委員に政策評価手法検討部会をお願いして、また改めて議論する機会を持ちたいと、座長としては考えている。
 評価書についてではないが、評価書に派生する問題の中で二、三、気づいた点がある。
 温暖化対策については、地方自治体において取組に温度差があり、国より進んでいる部分やそうでない部分、いろいろある。評価書の中には入らないかもしれないが、地方自治体の取組についてきちんと情報収集を行い、遅れている地方自治体に対して発信するなど、もう少し地方自治体との連携を深めて、全体として進めていくべきである。
 先ほどから水の問題がたくさん出ているが、閉鎖性水域に下水道をつくることは逆に富栄養化を促進するということを従来から申し上げてきて、随分波紋を呼んだが、本来はそうである。閉鎖性水域の問題は、基本的にもう1回考えていただく必要があると考えている。
 南極については前回にも話したが、昨年は南極の保全マニュアルをつくった。排水の垂れ流しに近い状況で南極を汚しつつあり、極めて緊急を要する課題である。環境省と文部科学省との中間に位置する問題なので、両方で手を引いたのでは南極はますます汚れてしまうということだけ申し上げておきたい。

【地球環境局】
 山本委員からの意見で、地球温暖化問題について長期的な目標をおくのか、最終的には気温をどう抑えるのかが重要という意見、2℃ターゲットが世界で主流になっている中で、日本は目標設定が不明確ではないかというお話だった。
 日本の目標については、排出量で見たとき、2050年に60~80%削減し、それによって、世界全体で2050年に半減という目標への貢献を打ち出している。その目標が、2℃ターゲット、あるいは別の言い方をすると大気中のCO2濃度450ppmシナリオとどう関係があるかについては、必ずしも明確にしていない。いずれにしても、長期のターゲットを達成していくという視点で、これから対策を進めていかなくてはならない。中期目標も、長期の目標を達成していくための重要なステップであると考えている。委員から、中期目標1990年比8%減、そのまま当てはめると650ppmシナリオぐらいになるのではないか、というご指摘があった。この8%減というのは、日本における中期目標として、「真水」の数字である。先進国全体でどれだけ削減していくか、途上国を含めてどれだけ削減していくかということについては、今後の国際交渉において決まっていく。日本の8%減というのが、直ちに先進各国で8%減にとどまるということではないと考えている。一つは、これまでの日本の省エネ努力等で、例えばCO2排出量でみたときの効率性が非常に高いということを背景に、他国と比較して日本の排出ターゲットがどうかということを比較したときに、必ずしも全ての国が、削減率で見たときに同じ目標を持つべきであるということにはなっていない。8%減ということを総理が決定したことを踏まえて、これが「真水」の目標設定であるという点、それから他国との比較でどうかということを背景として、世界全体で、また、あるいは先進国全体できちっとした削減対策がとれるよう努力していきたい。
 地球温暖化に関する最新の科学的知見については、環境省も国立環境研究所と協力して、できるだけ世の中に明らかにしていくよう努力している。その努力は今後も続けていきたい。
 温暖化対策とコストの関係については、今回の中期目標の検討にあたって、コスト分析がなされ、それが大きな負担であるかのように受け取られている。実際は、2020年にGDPがどのぐらい押し下げになるか、家計にどういう負担があるかについては、その背景として、2020年にGDPが標準ケースで今より20%以上増える、家計の所得についても100万円近く増えるという前提でのGDP押し下げ効果であるという点が必ずしも十分に理解されていないところがあるように思う。
 イノベーション、グリーン・ニューディールといった取組が新たな雇用や産業を生むという点について、今回のモデルの中で十分に分析できていないということを、環境省も認識している。国立環境研究所と協力しながらさらに研究を進め、できるだけその結果を世の中に明らかにしていきたい。
 三橋委員の意見に対して、温暖化対策の国際比較ということについて、今、低炭素革命という方向に日本も大きくかじを切ろうとしているところであり、他の先進国も低炭素へ向けた取組を進めている。そういう中で、ヨーロッパやアメリカの最近の動きを常に研究しながら、我が国のとるべき方向について検討しているところである。そういう方向については今後も維持していきたい。
 CO2を減らしながら経済成長を進めていく、あるいはCO2排出自体もお金を払わなければならない時代になっているということについては、環境省もまさにその通りだと思っている。排出量取引の試行や、カーボンオフセットの取組も行っているが、そうした取組を通じて、炭素に価格付けをするということが広まりつつある。それが地球温暖化対策を進めていく上で大きな力になる。引き続き進めていきたい。
 堤委員から、廃棄物由来のCO2排出を減らすための取組において、排出事業者との連携が必要との意見を頂いたが、環境省としてもそう考える。廃棄物処理業者としては、排出事業者の要求がなければ、CO2排出量の削減についてはなかなか取り組みにくいということもよく理解できるところであるので、廃棄物・リサイクル部ともよく相談して、どのように支援できるか検討していきたい。
 崎田委員から、温暖化の目標について、これを何のためにやっているのかということがどこかへ行ってしまって、コストが安い方がいいのではないかという議論になってしまったのではないかとのご意見があった。中期目標の検討の中で、温暖化対策を放置すればどういう影響があり、それがどういう負のコストになってくるかということについても、国立環境研究所を中心に研究し、できる限り発信してきたつもりであるが、その影響予測が今世紀末とか非常に先のことであるのに対し、対策の方は2020年の議論をしている。また、影響を数値化する、特に金銭で評価するのが非常に難しい分野も多いということもあって、十分に情報発信をし切れなかった。それが目先の負担の大きさにという方にとらわれてしまった部分があるのかなと思う。今後も研究を進め、本来の温暖化対策の目的に常に立ち返って議論されるよう努力したい。
 河野委員から、家庭、運輸部門への対応のご指摘があった。京都議定書の約束期間においては、家庭、オフィスビル、運輸からの排出が伸びており、ようやく抑制に向かっているところである。中期目標の期間においては、この部分を非常に大胆にカットしていく必要があり、そのために、エコポイントによる家電の買替えの促進、エコ自動車の普及、太陽光発電の促進など、そうした施策を駆使して、家庭、オフィスビル、運輸向けの対策を強化していきたい。予算の注ぎ込み方についても、温暖化地策に効果があって、できれば他の副次的な効用も期待できるものに重点的に予算が配分されるようにしたい。

【水・大気環境局】
 水環境、とりわけ生活環境項目の汚濁負荷の問題について、取組不十分、新たな課題に対応する指標の設定、NPOなど多様な主体の参加の3つのご指摘をいただいたと思う。
 指標については、底層DOとか透明度とか、新たな課題に対応した指標を導入するということも含め、特に閉鎖性海域については、30ページ一番下に記載されている第7次総量削減計画の策定を軸に検討していきたい。
 湖沼については、いろいろ課題があると認識しているので、改正湖沼法のもと、対策を進めていきたい。
 NPO、NGOの参加については、有益な活動を活かすよう、大いに心がけていきたい。

【自然環境局】
 鷲谷委員から頂いた生物多様性基本法及びそれに基づく国家戦略について、ご指摘の通り、生物多様性基本法に位置付けられた国家計画があるので、今後見直しを図っていく。
 山本委員から、生物多様性にかかる指標をどうするかというご意見を頂いた。COP10では、2010年目標として、生物多様性の損失速度を顕著に減少させるということが決まっているが、その次の目標をどうするかが議論となる。できるだけ我が国も国際的な議論に参加して、客観的な指標なりデータをつくっていきたい。
 崎田委員から、生物多様性の時代に応じた支援ということのご指摘を頂いた。国内的な取組としては、NGOに新たな予算をつけて支援する仕組みを作っている。企業のCSRについても、今年の夏に生物多様性に関わるガイドラインを発表して、CSRを促進していきたい。
 河野委員から、国立公園と指定地域以外の地域に対する保全についてご意見を頂いた。林野庁と常日頃連携しながら進めている。指定地域以外の、生物多様性の保全上、重要なものについては、例えば里山イニシアティブと里地里山の保全ということで重要な里山を選び、その取組を全国に発信していくことを、関係省と連携して進めているところである。

【廃棄物・リサイクル対策部】
 堤委員から頂いたご意見、廃棄物処理事業者のCO2削減取組については、地球環境局からお答えしたように、関係団体と話し合って進めていきたい。

【総合環境政策局】
 環境と経済について、もっとダイナミックに考えて政策ツールを作るべき、というご意見を頂いた。これについては、環境経済政策研究を環境省の目玉として21年度に4億円の予算をとっている。例えば、経済政策の中で低炭素革命が時代の柱となるよう、環境と経済をダイナミックな関係でしっかりとらえるということだと思う。そういったところについて、環境政策として、しっかり数字を出して説明できるようやっていきたい。
 地方自治体の対策について、もっと目配りして連携し、よいものは広めるように、というご意見を頂いた。これについては、地球温暖化対策基本法の改正で、実行計画を都道府県のみならず指定都市、特例市、中核市といったところにまで広めるというものがあり、マニュアルづくりをしている。それだけでなく、自由度の高い施策をやって頂けるように、21年度補正予算で550億円、地域版グリーン・ニューディール基金をつくっている。ツールとしての情報とお金の両方で地方自治体に元気になっていただきたい。
 NGO、NPOへの支援については、環境教育法を国民の環境保全活動に関する法律に名前を変えて、国民が環境保全活動をするのを支援しようといった法改正を、今議員立法で議論されている。その中のキーワードが、国民、NGOの方々も含めた協働である。財政的な支援もやっていこうと検討している。
 環境教育について、もっと踏み込んでやるべきである、という意見に対して、大きな動きとしては、学校に太陽光発電設備をつけようというものに、3,000億、4,000億という補正予算がついているものが挙げられる。この補正予算のポイントは、文部科学省が単に太陽光発電設備をつけるというのではなく、それを使ってみんなが考える教材にするという点で、環境省も経産省も協力せよ、というミッションが与党から与えられている。先ほどの環境教育法の改正等も是非成立させたいと思っているが、その中で、環境教育がより実践的なものに持って行ければと思っている。

【環境保健部】
 環境保健部分野において、指標が一つも立てられていないという指摘について、今後工夫をしていきたい。特に花粉症について、拾えばいろいろな数字があるはずというご指摘を頂きましたので、工夫してみたい。
 水俣病問題については、長い経緯があり、この場で簡単に説明できない難しい問題ではある。現在、公害健康被害補償法の外で新しい法律を作って水俣問題を解決していこうと、立法府が動いて話が進みつつある。行政府の環境省としては、早く法律が成立して制度ができれば、その制度のもとで必死になって救済の実施に取り組んでいく。

【須藤委員長】
 委員の先生方からのご質問、ご意見に対し、回答として時間が短すぎて不十分であったかと思うが、とりあえずはこれでお許し頂き、後はメールでやり取りして頂きたい。
 その他の議題がもう一つあるので、簡単に趣旨だけお話頂きたい。

(事務局より資料3「今後の環境施策の効果的・効率的実施について(素案)」の説明)

【須藤委員長】
 この問題について、本来ここで議論することになっていたが、時間をかなりオーバーしているため、次回の委員会で議論させて頂くこととする。

 これをもって本年度の第1回政策評価委員会を終了とする。

以上



Top


環境省大臣官房政策評価広報課