環境省
VOLUME.70
2019年4・5月号

エコジンインタビュー/自然と共存して暮らすこと。そのより良いバランスを模索中です。/柴咲コウ

柴咲コウ

2016年に、環境と、そして人に優しいアイテムを扱う、『Les Trois Graces(レトロワグラース)』という会社を立ち上げた柴咲コウさん。
小さい頃から、遠くに出かけて自然に触れるのが好きだったそうで、振り返れば常に環境や自然のことを意識してきたと言います。
そんな柴咲さんは昨年から、環境省の環境特別広報大使として活躍中。
日本の自然、そして国立公園についての思いを聞きました。

 今回の撮影場所は、東京のど真ん中にある新宿御苑。この日はコートが必要ないほど暖かな気候で、園内にある寒桜の開いた花を求めて、大勢の人が訪れていました。
「新宿御苑って名前が神々しいから、昔はあまり身近には感じられなかったんですが、ロンドンの町中に公園がたくさんあるのを見て、いいな、東京にもこんな公園があればいいのに…って思っていたら、実はあった(笑)。都会の中にこういう場所があるのっていいですよね。私もこのあたりに来ることがあるとちょっと寄って、読書したり、のんびりしたり、人間観察をするのが好きです」

 生まれも育ちも東京。日常の中では自然に触れる機会は多くはなかったそうですが、長期の休みには地方の知り合いを訪ね、そこで過ごすのが習慣になっていた、と柴咲さん。
「一番良く行っていたのが静岡で、夏休みはだいたいそこで過ごしていました。メダカが泳いでいるようなきれいな小川があって、牛舎があって、車で20分くらい行ったところには結構流れの早い川が流れていて、そこで釣りをしたりもしました。自然が豊かで、すごく楽しかった。でもやはり変化はしていて。緑が少なくなったり、小川がなくなったり、また隣の市と合併し、街も大きくなった。発展という意味から考えると素晴らしいことなんですが、その一方で犠牲になるものがある。大人になってから改めて、そういったリスクから目をそらしてはいけないと思うようになりました」

自然と触れ合うと、自分の内側にも新たな何かを発見できる。

 昔の日本は、人の営みと自然の共存がごく当たり前にできていたと思う、と柴咲さん。
「テクノロジーは発展するし、生き方も変わる。でもだからこそ、今ある最新の技術を使って、自然と共生するベストな調和を模索するべきだと思います。そういう意味では、今はとても過渡期なのではないでしょうか」

 自らの会社『レトロワグラース』を設立したことで、より環境や自然に対しての思いを大きくした柴咲さん。その思いをもっと何かと繋げられないか、と考え、昨年環境省の環境特別広報大使に自ら手を上げ、就任。9月には伊勢志摩国立公園の中にある伊勢神宮に、歌唱奉納を行った。
「広報大使になる前にも、伊勢神宮には何度かお参りに行ったことがあり、美しい清流がそばにあって、そのそばでお参りができる、素敵な場所だなと思っていました。あと、ものすごく心地がいい、単純に(笑)。それは、いろいろなことが循環されている空気感があるからなのかな。人の営みを尊重しながら、自然を大切にしている感じ。式年遷宮も、サステイナブルな象徴だと思いますし」

 忙しい日々を送る中、一番のリラックスは旅に出ること、と語ります。
「自分のテリトリーを出ることで、外にはもちろん、自分の内側に対しても再発見がある。狭い世界にいると視野も狭くなり、1つの見方しかできなくなりますが、外に出ると、別の世界や文化があることを知り、自分自身のちっぽけさを実感しますよね。それは自然に触れることでも同じ。この役割を担ってから、日本にはたくさんの国立公園があることを知りました。しかもどの公園も、異なる自然や文化があります。知らずにすでに訪れている公園もいくつかあるのですが、今後は意識的に行ってみたいですね。私は温泉が好きなので、まずはそのあたりから攻めてみたいと思っています(笑)」

profile

柴咲コウ

1981年生まれ、東京都出身。16歳より芸能活動を始め、映画『GO』(2001)で日本アカデミー賞最優秀助演女優賞などを多数受賞。4/27より主演の『連続ドラマW 坂の途中の家』(WOWOW)が放送スタート。また来年には映画『燃えよ剣』が公開予定。旅とサステイナブルをコンセプトにしたファッションブランド『ミヴァコンス』のプロデュースも。

写真/千倉志野

撮影場所/新宿御苑(上)、新宿御苑旧洋館御休所(下)

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