ビルは“ゼロ・エネルギー”の時代へ

改修ZEBコラム

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改修ZEB化による光熱費の大幅な削減等の事業価値を判断

津山市総合福祉会館の外観の写真
津山市総合福祉会館の外観
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岡山県津山市にある社会福祉法人 津山市社会福祉協議会「津山市総合福祉会館」では、既存建物の改修によって一次エネルギー消費量を58%削減し(創エネ含まない)、ZEB Readyに認証されました。

「津山市総合福祉会館」では、屋根断熱、Low-Eペアガラス、全熱交換換気扇で空調負荷を最大限低減し、高効率エアコンを導入。照明は、高効率LEDと照度センサー、人感センサーを活用。BEMSで空調や照明など用途別エネルギー使用量や部屋別空調使用量の把握など、貸室毎の使用人数の変化にも柔軟に対応することができ、大幅な省エネ効果が維持できる設備の導入を行っています。

今回は、「津山市総合福祉会館」のZEB化について、社会福祉法人 津山市社会福祉協議会の坂手様(常務理事)にお話を伺いました。

施設・設備の老朽化と津山市(低炭素都市推進室)からのバックアップで
ZEB化の検討が始まった

(司会者)

施設、設備の老朽化がZEB化のきっかけと伺いましたが、取り組みの経緯をお聞かせください。

社会福祉法人 津山市社会福祉協議会の坂手様の写真
お話を伺った、
社会福祉法人 津山市社会福祉協議会の坂手様

(坂手様)

この津山市総合福祉会館は昭和57年の8月から稼働しています。30数年経ち、エアコンも老朽化して、随所に不具合が出てきたのをきっかけに改修を考えることになりました。改修計画は津山市第5次総合計画の主要事業の中で〝地域福祉の充実〟という公益性が評価され、採択されました。その際、津山市役所低炭素都市推進室からエアコンだけではなく、全面的な改修について提案をされました。

(司会者)

津山市役所低炭素推進室からZEB化を勧められたそうですね。

(坂手様)

津山市役所低炭素推進室からはZEB化による全面的な改修の提案を受けましたが、推進中も引き続きバックアップしていただきました。当時、私を含め当館職員でZEBを知っているものはいませんでした。進め方もわかりませんでした。ZEBの取り組みに関する知見をお持ちの津山市役所低炭素推進室の電気技師の方からZEBの定義や技術、事例など検討していくための情報提供や設備計画や施工管理など推進時に参加していただきました。

(司会者)

ZEB化を決断された時、その効果への期待はいかがでしたか。

(坂手様)

当館が2階から上が貸室になっており、市民の皆さんに自由に利用していただいています。今回のZEB化改修で建物全体を建て替えることなく設備更新できること、これからも長期・安定的に市民サービスを提供できることを期待しました。
また、ZEB化によって大幅に削減できた光熱費を福祉事業に活用できることへの期待もありました。

ZEB化で、エアコン更新のみの当初の改修事業費が約2倍以上となったが、
光熱費の大幅な削減等の事業価値と投資額のバランスを判断し、ZEB化改修へ

(司会者)

ZEB化によって、当初の改修計画にどのような影響がありましたか?

(坂手様)

当初はエアコン更新のみの改修を考えていました。ZEB化となると空調設備以外にもZEB化技術の工事が必要になり、当初予算の2倍以上の費用になることがわかりました。
まず、市の補助金と国の補助金の活用を見込んで、資金計画を見直しました。屋根断熱、Low-Eペアガラス化などのパッシブ技術と、高効率エアコンの導入、照明のLED化となどのアクティブ技術を組み合わせた設備更新することで、当館の貸室毎の使用人数・時間の変化にも柔軟に対応し、大幅に省エネを実現することができ、光熱費を大幅に削減ができると判断しました。BEMSによるエネルギー管理で改修後も継続的に省エネに取り組むことで、さらに光熱費を削減できると判断しました。当初予算の2倍以上になりますが、ZEB化改修によって光熱費を大幅に削減できることに加えて、当館の環境への配慮の取り組みの1つになると考え、ZEB化改修を判断しました。

工事期間2年間のうち、エアコンが不要な時期に工事を集中することで、
営業を継続しながらの改修を実現

Low-Eペアガラス化した窓の写真
全館Low-Eペアガラス化

(司会者)

改修工事期間においても営業を継続するためにどのような工事計画をされましたか。

(坂手様)

当館では有料で貸室を行っていますので、空調が効かないなどの設備工事に伴う利用者の支障を最小限に抑える必要があることに加えて、工事中も貸館収入を確保するため、営業しながら改修しなければなりませんでした。そのため工事期間2年間のうち、エアコンを使わない時期、各年9月から12月に集中的にフロア毎に施工しました。1年目は4階の大会議室と屋根を断熱化、全ての窓のLow-Eペアガラス化。2年目は3階から順に貸室と事務室を営業継続しながら改修を進めていきました。

断熱化した屋根の写真
屋根は断熱化
LED照明、高効率エアコンの写真
全館LED照明、高効率エアコン化

ZEB化で大幅削減した光熱費は、
子育て支援や福祉相談など福祉事業に活用していく

(司会者)

ZEB化後の省エネ効果はいかがですか。

(坂手様)

当館は年間一次エネルギー消費率が58%というBELS認証を得ています。ZEBプランナーが取りまとめた平成30年度の実績報告では、一次エネルギー削減率は73.8%でした。従前から電気使用量が40%減、電気料金が30%減(約150万円減) *になりました 。今後はエアコンを一気に起動せず、順次に起動するなど最大使用電力量の低下による基本料金引き下げで電気料金の40%減を目指しています。削減できた分は子育て支援や福祉相談など当館の福祉事業に活用していこうと考えています。
*施工前5年平均値比べ/創エネなし

BEMSの導入で継続的にエネルギー管理するようになり、省電力への対策を立てやすい

(司会者)

導入されたBEMSは省エネの取り組みに役立っているとのことですが、具体的にお聞かせください。

(坂手様)

BEMSでは空調や照明など用途別エネルギー使用量や部屋別空調使用量、日々の最大電力量をグラフ表示等で把握できます。年間の使用電力量の変動や最大だった月日もわかります。例えば、 当館では毎年7月頃ボランティアの事業説明会があり、多いときには400人程度が入れ替わりで来館されます。BEMSの記録によると昨年の使用電力量のピークがこの事業説明会の実施日でした。当日は当館の全ての部屋を使います。開館後、空調等を一気に起動したことが使用電力量の最大化した理由だとわかりました。今年は開館前に起動し、設定温度に至るまでの時間を長くすることで使用電力量を削減できました。年間での最大電力使用量を経年比較すると、改修前が145kWh、ZEB化1年目の2018年度が115kWh、2019年度は2桁まで削減できました。次のピークは暖房使用時の2月なので、過去のデータを見ながら使用電力量を下げる工夫を考えています。
BEMSで“見える化”されたデータを使ったエネルギー管理で、省電力対策が立てやすく、効果が実感できるようになりました。

毎日の電力使用量を把握するBEMSの写真
BEMSで毎日の電力使用量を把握
ZEBリーディング・オーナー・マークの写真
ZEBリーディング・オーナー・マークを活用して、
利用者へも省エネ行動をアピール

(司会者)

今後もエネルギー管理情報を活かして、様々な省エネ対策のアイデアが生まれることを期待しております。ありがとうございました。

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