課題名

B-16 地球温暖化抑制のためのCH4N2Oの対策技術開発と評価に関する研究

課題代表者名

稲森 悠平 (環境庁国立環境研究所地域環境研究グループ)

研究期間

平成7−9年度

合計予算額

253,408千円 (うち9年度 86,752千円)

研究体制

(1) 農耕地から放出されるメタン・亜酸化窒素の発生制御技術に関する研究

   水田および畑地から放出されるメタンと亜酸化窒素の発生抑制技術に関する研究

  窒素施肥土壌から放出される亜酸化窒素などの窒素化合物の発生抑制技術の開発に関する研究

   植物体を経由したメタン・亜酸化窒素輸送過程の解明とその制御に関する研究

(農水省農業環境技術研究所、農水省野菜茶業試験場、農水省国際農林水産業研究センター)

(2) 反芻家畜におけるメタン及び亜酸化窒素放出とその変動要因の解明に関する研究

(農水省畜産試験場)

(3) 草地における温室効果微量ガスの動態と制御技術(農水省草地試験所)

(4) 微量ガス抑制のための燃焼システム対策技術(通産省資源環境技術総合研究所)

(5) 自動車から放出されるメタン・亜酸化窒素抑制技術に関する研究(運輸省交通安全公害研究所)

(6) CH4N2O抑制のための生活系排水のバイオ・エコエンジニアリングシステムによる対策技術に関する研究

(環境庁国立環境研究所)

(7) 廃棄物処理分野におけるメタン・亜酸化窒素の発生制御対策技術に関する研究

(厚生省国立公衆衛生院)

(8) 温室効果ガス排出抑制のための下水処理システム対策技術に関する研究(建設省土木研究所)

(9) 東北アジア地域におけるCH4N2O抑制のための汚水・汚泥の適正処理技術開発

(環境庁国立環境研究所)

   中国におけるCH4N2O抑制のための汚水・汚泥の適正処理技術開発

  韓国におけるCH4N2O抑制のための汚水・汚泥の適正処理技術開発

   湿地帯、酸化池、水生植物植栽地等のエコエンジニアリングシステムを用いたCH4N2O発生抑制技術開発

研究概要

1.序

 近年、世界的に注目されている地球環境問題として地球温暖化がある。この地球温暖化は、人間活動に伴う各種温室効果ガスの大気中への過剰な放出に起因している。その代表的なものが、CO2CH4N2O等である。従来より、これらのガスの温暖化抑制対策としてCO2に重点がおかれてきたが、微量ガスといわれていたCH4N2Oの占める割合が増加し、温暖化寄与率が累進的に加速しているという懸念から、これら2種のガスの発生抑制対策の重要性が叫ばれるようになり、その緊急対応がさらに必須な状況となってきた。CH4N2Oの人為的な発生源としては、様々なものが考えられるが、それらの特定、また発生量の見積もり等においては不明な部分は残されてはいるものの、人為的発生源対策の強化が必要とされている。本研究においては、CH4N2Oによる地球温暖化の対策技術の確立を目的として、可能性のある主要な発生源を各サブテーマの研究対象に設定し、各分野における具体的対策技術開発と評価を目的とし推進する事とした。

 

2.目的

 地球温暖化を引き起こす温室効果ガスに対するIPCCのレポートによればCH4N2Oの発生源は複雑でいまだ明らかにされていない部分も多く、また小規模のものが数多く存在するという特徴を有し、このため、各発生源毎に具体的な対策を講じる必要があり、地球温暖化防止行動計画においても「CH4その他の温室効果ガス排出抑制対策」として廃棄物・汚泥・家畜排液の資源化・再利用、水田管理、バイオマス燃焼対策、石炭・石油の発掘・運送消費の適正管理および適正処理、余熱利用等、エネルギー利用の効率化が重要視され、各分野の対策技術が緊急に求められている。このような状況を鑑み、本研究ではCH4N2Oによる地球温暖化の対策技術の確立を目的として、主要な発生源として、農耕、畜産、燃焼、生活系排水処理、自動車、廃棄物処理、下水処理、東北アジア地域における汚水・汚泥処理を各サブテーマの研究対象に設定し、各分野における具体的な対策技術の開発と評価を行う事とした。

 

3.研究の内容・成果

(1)農耕地から放出されるメタン・亜酸化窒素の発生制御技術に関する研究

 /綸弔よび畑地から放出されるメタンとN2Oの発生抑制技術

 (1)水田からのCH4発生を有機物管理技術及び品種選抜により抑制することを目的として、タイと日本で調査研究を行った。タイ各地の農家の水田圃場での有機物管理実態を調査し、前作の水稲残渣とともに非耕作期間中に生育した雑草のバイオマスが、水稲耕作期間のCH4発生に重要であることが明らかになった。また、ライシメータ水田圃場において、水稲非耕作期間中の二酸化炭素発生量、および水稲耕作期間中のCH4発生量は、有機物施用区のほうが、無施用区よりも多かった。さらに日本の2品種の水稲を耕作してCH4フラックスを測定した結果、これらの品種間では耕作期間の全CH4発生量は統計的に有意差が見られなかった。(2)水稲体経由のCH4輸送機構を解明するために、水耕栽培の水稲を用いた室内実験を行った。その結果、水稲地下部の温度が水稲体のCH4輸送に大きく影響すること、また、土壌表層中の気相が水稲の茎の基部付近(土壌面より下にある)から田面水の圧力によって水稲の通気組織に侵入し、大気中へ放出される可能性が示唆された。(3)世界的に見てデータが非常に少ない熱帯地域での畑地からのN2O発生量を推定するため、タイの4地点で雨期に飼料用トウモロコシを栽培し、N2Oのフラックスを測定した。その結果、フラックスの経日変化、および施肥窒素量に対するN2O発生量の割合(0.080.48%)は、温帯地域の日本での測定結果と同様な傾向であることが明らかになった。なお、作物を栽培しない乾期のフラックスは、非常に小さかった。(4)中国の水田からのN2O発生量を推定するため、3地域の水田で、水稲栽培期間中、CH4とともにN2Oのフラックスを測定した。その結果、日本での測定結果と同様に、落水後にCH4が発生しなくなるとN2Oが発生し始め、CH4N2Oの発生量は負の相関を示し、両者は「トレードオフ」の関係にあることが明らかになった。

 窒素施肥土壌から放出される亜酸化窒素などの窒素化合物の発生抑制技術に関する研究

 農耕地からのN2Oの発生量は地球全体からの全発生量の約20%と推定されているが、アジアでのデータが少なく不確実性は非常に大きい。さらに施肥した畑土壌からは、N2Oだけでなく、一酸化窒素(NO)も大気中に放出されることがわかってきた。NOは、やはり温室効果ガスの一つである対流圏オゾンの前駆物質であり、また酸性雨の原因物質の一つである。現在、これらの窒素酸化物の施肥土壌からの発生量と発生原因、およびこれらのガス発生抑制技術を開発することは、緊急で重要な課題である。1996年度の研究目的は、異なる窒素肥料あるいは緩効性窒素肥料を使用することによって、日本の畑土壌(黒ボク土)からのN2Oの発生量の抑制効果を、室内実験から評価することであった。室内での土壌培養実験は、硝化作用あるいは脱窒作用に好都合な範囲の水分条件(土壌孔隙の水分飽和度(WFPS)が、40557085%)のもとで、一定温度(25℃)で50日間実施した。N2Oの発生は、通常の硫酸アンモニウム(AS)肥料区のほうが硝酸カルシウム(CN)肥料区よりも非常に多かったので、硝化作用がN2Oの主要な発生過程であると思われた。土壌水分量が増加すると、すべての処理区からのN2Oの発生量も増大し、WFPS85%では40%の場合よりも20倍以上も大きかった。ASあるいは燐酸アンモニウム肥料(AP)を緩効性被覆肥料の形態(S-ASS-AP)で施用した場合、通常のASと比較すると、N2Oの発生量はWFPS40%85%の処理区では減少したが、WFPS55%では差がなく、また70%ではS-ASの処理区だけが非常に少なかった。S-ASあるいはS-APを施用すると、N2Oの発生の最大ピークは、NH4+-Nがゆっくり放出されたために、時期が遅くなってしかも値が減少したが、放出されたNH4+-Nが硝化されるので、培養実験のほとんどの期間中N2Oは発生し続けた。CNを緩効性被覆窒素肥料(S-CN)の形態で施用すると、硝化作用に利用できるのでNH4+-Nの量が非常に少なくなるので、N2Oの発生量はZR区からの発生量よりも多くならなかった。これらの結果から、今回の実験のように硝化の起こりやすい条件の下では少なくとも、硝酸態の窒素肥料、とくに緩効性被覆窒素肥料の形態で選択的に使用することは、農耕地からのN2Oの発生ポテンシャルを非常に減少できることが、証明された。

 植物体を経由したメタン・亜酸化窒素輸送過程の解明とその制御に関する研究

 水田からのCH4発生を抑制するための方策として、CH4発生の少ない水稲品種を選抜することが期待されている。本研究では、さまざまな水稲品種を水耕栽培し、水稲の根域に溶存するCH4を大気へ輸送するポテンシャルの測定を行い、水稲の生理・形態的特徴と比較することを目的とする。そのために、6種類の水稲品種を水耕栽培し、移植後30-40日にCH4輸送ポテンシャルの測定を行った。その結果、品種により異なったCH4輸送ポテンシャルが認められ、CH4輸送ポテンシャルと茎および通気組織の容量との間には正の相関が見られた。これらの結果は、水稲の生理や形態が水田からのCH4発生に影響を及ぼすことを示している。

(2)反芻家畜におけるメタン及び亜酸化窒素放出とその変動要因の解明に関する研究

 温室効果ガスであるCH4及びN2Oの家畜からの放出量の低減を図るために、それらの発生量の推定精度の改善を図るとともに、その変動要因について検討した。その結果、CH4放出とその変動要因に関して、1)牛からのCH4発生量の変動は乳量あるいは増体量との関連が非常に大きく、生産性の向上を図ることによって生産物当たりのCH4発生量を大きく削減できることを明らかにした。さらに、乳牛及び肥育牛からの生産物当たりのCH4発生量の推定式を作成した。また、肥育牛については濃厚飼料を多給した場合にCH4発生量が著しく減少することを明らかにした。2)反芻家畜からのCH4発生量は給与飼料構成によって影響を受け、粗蛋白質摂取量の増加により減少、炭水化物摂取量の増加とともに増加する。また、炭水化物摂取量の増加にともなうCH4発生量の増加は粗繊維の割合が大きい方が大きかった。3)適温環境下に比べて高温環境下ではCH4発生量は増加する。とくに維持レベルでは高温環境下での発生量は適温域よりも10%程度増加する。N2Oの放出については、1)通常の飼養環境下においてはルーメン内からほとんど発生しないものと判断された。また、畜舎内の糞尿からの放出量もごく僅かであることが確認された。したがって、家畜からのN2O放出はその大部分が糞尿中の窒素からその堆肥あるいは液肥化の過程において発生するものと考えられた。2)N2Oの放出を削減するためには糞尿中の窒素排泄量そのものの低減を図る必要がある。そこで、乳牛及び肥育牛からの窒素排泄量に及ぼす諸要因について検討したところ、生産性の改善、窒素給与量の抑制がその低減に有効であることが明らかになった。

(3)草地における温室効果微量ガスの動態と制御技術に関する研究

 草地における施肥窒素由来N2O放出量は、緩効性窒素肥料、被覆窒素肥料、硝酸性窒素肥料、硝化抑制剤入り肥料の使用により、慣行の化成肥料よりも低下した。牧草生産量は、硝化抑制剤入り化成肥料及び硝酸性窒素肥料が、慣行肥料を施用した場合と同等であった。緩効性窒素肥料と被覆窒素肥料は地温が高く、降雨量の多い時期には慣行肥料区と同等の収量が得られた。草地ではCH4吸収が認められたが、肥料試験区の間における大きな差異はなかった。以上の結果と資材調達や取り扱いの難易から、年4回の施肥時期に硝化抑制剤入り肥料を分施する方法、早春施肥時に慣行肥料を施用し、13番草刈り取り毎に緩効性窒素肥料を施用する方法を採用することで、N2O放出量を慣行肥料施用に比べて、約50%程度に削減できると推定した。家畜ふん尿(牛スラリー)の圃場還元に伴うCH4放出量は、表面施用>溝施用>混和施用>土中施用であり、N2O放出量は逆に、土中施用>混和及び溝施用>表面施用であった。スラリーの貯留前に曝気処理を施すことにより、曝気終了後から圃場施用時までの貯留中にスラリーから放出されるCH4放出量は、ポンプ循環曝気、水中ポンプ循環曝気、回転翼撹拌曝気のいずれの方法においても、無処理(貯留)に比べて約1/10に低減したが、ポンプ循環曝気ではN2O放出が認められた。スラリー圃場還元時において、曝気処理後貯留液を表面施用した場合、無処理液施用区に比べて、CH4放出量は1/10以下、N2O放出量は1/2以下であり、貯留前の曝気処理が圃場施用時におけるCH4発生量低減に有効であった。密閉型発酵制御槽における測定では、曝気期間中のCH4放出量は無曝気区に比べ、1/4以下であった。この間N2O放出は認められなかった。したがって、スラリーの貯留前曝気処理は、スラリーからのCH4N2O放出量低減に有効であると考えられる。

(4)微量ガス抑制のための燃焼システム対策技術に関する研究

 温室効果ガスの一つであるN2Oについて、燃焼プロセスからの発生量抑制技術の開発を行った。まず、効果的な抑制法の探索のため、発生量の大きい下水汚泥焼却の流動プロセスを対象にして、小型循環流動層燃焼装置により連続燃焼を行い生成量を測定した。下水汚泥の流動焼却では排ガス中のN2O濃度は1000ppmを越えたが、窒素転換率では1520%程度で、同じ装置により石炭を燃焼させた場合の転換率である30%に比べ、下水汚泥では低いことが明らかになった。次いで、より詳細に生成メカニズムを調べた。下水汚泥焼却におけるN2Oの主たる発生源は下水汚泥中のN分のうち、揮発分として放出されるものを起源とすることが分かった。これらの成果を踏まえ、具体的な低減法の検討を行った。代表的な低減法として、触媒による排ガス中のN2O分解、活性コークスによる排ガス中のN2O吸着、補助燃料ガスの燃焼装置への吹き込みによる部分高温化、を選びそれぞれの方法の効果を実験により調べた。Rh/ZnO系ゼオライト触媒による分解は非常に効果的であるが、実燃焼排ガスの様にSO2が共存する系では活性を急速に失うことがわかり、実用化のためにはさらにSO2に対する耐性を増加させる必要があることがわかった。次に試みた活性コークスによる吸着能の測定では、活性コークスはほとんどN2Oの吸着能を示さないことがわかった。これより、実用化が進められている活性コークスによる乾式排ガス処理プロセスではN2Oの排出抑制は期待できないことがわかった。補助燃料の吹き込みによる炉内高温化によるN2O分解はNOの生成を伴わずに、約40%の抑制率を示し実用的には最も期待できる抑制法であることが確認できた。これらを基にさらなる低減法として、燃料(廃棄物)の前処理による低減法を試みた。燃料を低温で乾留処理し、すでに明らかにしたN2Oの主要な生成源である揮発分をあらかじめ除去することによりN2Oの生成量を40%程度抑制可能であることを示した。このとき、もう一つの窒素酸化物であるNOの生成量が増加することが問題となったが、二段燃焼法を適用することにより、NOについても対処できることを示した。上記に示した抑制法を組み合わせることにより、燃焼プロセスからのN2Oは最大80%程度抑制できる見通しを得た。

(5)自動車から放出されるメタン・亜酸化窒素抑制技術に関する研究

 自動車から排出される温室効果ガスN2Oの排出低減方策を探るため、モデルガスと試作した触媒により、触媒組成と劣化によるN2O排出影響を観察した。その結果、1.触媒が劣化するとN2O排出量が増大する原因は、触媒がN2Oを排出する温度領域が、劣化により使用頻度の高い触媒温度領域に移動することにあり、劣化がN2O排出量に与える影響は試験走行モード負荷分布により異なる、2.三元触媒が生成するN2Oは触媒のNOX浄化率に大きな影響を与え、また低温活性が高いバラジウム(Pd)触媒の低温におけるNOX浄化率にはN2Oへの転換分が含まれており、N2Oへの転換分を除去したNOX浄化率は大幅に低下し、触媒におけるN2Oの生成量は低公害性と温暖化防止両者間でトレードオフ関係にある、3.N2O排出量は貴金属の坦持量に比例して増大すること、またN2O低減対策からは、低坦持触媒が好ましいが、低坦持触媒は劣化により大幅にN2O排出量が増大する、等の、自動車からのN2O排出量低減対策や自動車からのN2O排出量推計に有用な幾つかの結果を得た。

(6)CH4N2O抑制のための生活系排水のバイオ・エコエンジニアリングシステムによる対策技術に関する研究

 本研究では、温室効果ガスCH4N2O生活排水系からの発生抑制を目的として、下記の項目について検討を行った。N2Oに関してはまず、実生活排水処理施設におけるN2O放出量の実態調査を行ったが、その結果、好気処理工程の硝化反応時に大きなN2O放出量が認められ、処理の状況によっては大量のN2Oが環境中に放出される可能性が考えられた。そこで、生物学的硝化反応に着目してN2O生成に及ぼす運転操作条件等の影響について検討した。その結果、通常の流入負荷条件下においては、水中のNO3の蓄積およびpHの低下に伴いN2Oの発生速度が増大すること、そして嫌気の脱窒工程の組み込みおよびこれらの最適制御の重要性が明らかとなった。これらの知見から、N2O発生および富栄養化の抑制可能な高効率硝化・脱窒バイオリアクターの開発を目的として、代表的な嫌気好気処理プロセスの一手法である間欠ばっ気活性汚泥法に対して、好気および嫌気の各工程の最適操作条件についてベンチスケールおよびパイロットスケールでの実験的検討を行った。その結果、ばっ気方式に関して好気/嫌気の時間設定の自動制御を行うDO制御間欠ばっ気活性汚泥法は、N2O発生抑制および高度窒素除去が可能であり、さらに、凝集剤を添加することによって高度なリン除去が可能となることが明らかとなった。これらのことは、畜舎排水の処理等においても同様の成果が得られ、本法は地球温暖化の防止および閉鎖性水域の水環境の修復・改善を図る上で非常に有効な手段となる可能性が示された。CH4に関しては、生活排水等の流入により人的汚染を受けた湿地からのCH4の発生とその抑制対策技術について検討を行った。その結果、植生の違いによりCH4放出量に大きな違いがあること、また、CH4放出には時間変動や季節変動があることが明らかとなった。さらに、湿地に生息する土着のCH4酸化細菌を5株分離培養することができ、これらの菌株の機能強化と湿地帯の水環境修復への適用の可能性が示された。

(7)廃棄物処理分野におけるメタン・亜酸化窒素の発生制御対策技術に関する研究

 廃棄物処理分野におけるCH4およびN2Oの排出実態および発生抑制対策を現場観測等から検討した。機械化バッチ式ごみ焼却炉において、観測により求めたCH4排出係数は、燃焼が良好である低負荷ならびに燃し切り運転時に低く、不完全燃焼が生じている高負荷ならび埋火運転時に高くなっており、ごみの適正な燃焼がCH4発生抑制においても重要であることがわかった。我が国で排出されるし尿および生活雑排水に含まれる窒素のうち26%がし尿処理施設に投入されており、そのうちN2O発生が大きいとされる高負荷型脱窒素処理施設における発生ポテンシャルは、し尿および生活雑排水由来のN2O全体の3%程度であると推定された。高負荷脱窒素処理施設における全国調査では、投入し尿および浄化槽汚泥のCOD/T-N比が低い施設でN2O転換率が大きくなる傾向が認められた。また、連続観測では、し尿等が搬入される時間帯や反応槽への供給空気量の切替え時にN2O濃度が増加する傾向がみられ、反応槽投入物の質の制御および操作のタイミングがN2Oの発生抑制に重要であることが示唆された。一般廃棄物最終処分場では、わが国、韓国およびインドネシアにおける現場観測により、埋め立てられたごみの埋蔵期間や覆土の透気性が時期的および場所的なCH4放出量の変動に関与しており、さらに覆土に比較的高いCH4酸化能があることが示唆された。また、覆土における大気および埋立地ガスの拡散・移動と、実験的に求めた覆土のCH4酸化速度式を組み入れて数理モデルを構築し、ごみ層におけるガス圧と覆土の透気性の制御が、最終処分場において覆土の酸化能を最大化するような発生抑制対策に重要であることを示した。

(8)温室効果ガス排出抑制のための下水処理システム対策技術に関する研究

 下水処理システムからのCH4N2Oの排出抑制技術の開発および消化ガスの有効利用方策の検討を行った。下水処理システムは、水処理システム、汚泥処理システムから成るが、ここでは従来からの研究1)により温室効果ガス放出量の大きいことが明らかとなった水処理システムと汚泥の流動焼却プロセスを対象に排出抑制技術の開発を行った。さらに、汚泥消化ガス(CH4)の炭素は元来大気中の炭酸ガスであることから、温暖化防止対策の一環として消化ガスの有効利用方策の検討を行った。

 水処理システムにおける研究では、反応槽に担体を投入した嫌気、無酸素、好気の組み合わせプロセスから成るパイロットプラント実験を行い、N2Oの生成因子の解明等の検討を行った。その結果、降雨による流入下水中の有機物濃度の低下時や低水温期の脱窒活性の低下時にN2O生成が高かったが、流入下水中の窒素のN2Oへの転換率は0.20.5%程度とわかった。また、実下水処理場でCH4N2Oの放出量の補足調査を実施し、その結果から全国処理場の水処理システムからのCH4N2Oの年間放出量を試算したところ、各々約10,000t及び500tとなった。この放出量は各々、国内全発生量の約0.9%0.7%に相当する。なお、これらの値については硝化、脱窒反応の条件によっても変動することから更なる調査が必要とされる。

 高分子凝集剤汚泥の流動焼却プロセスを対象としたN2O排出抑制技術の開発においては、実験炉及び実炉を用いてフリーボードの燃焼温度と汚泥中の窒素のN2O転換率との関係を調査した。その結果、現在の燃焼温度(750800℃)を約50℃上昇させることにより、N2O排出係数を平均1,200gN2O/汚泥tから800gN2O/汚泥tに削減できることが判明した。また、温度上昇による炉の建設費や耐用年数等への影響も小さいことが判明した。

 消化ガスは消化槽の加温に使用され、残余は余剰ガスとなるが、実務的には消化ガスの有効利用は余剰ガスの有効利用と同義である。中小の処理場まで視野に入れた消化ガスの有効利用のためには、余剰ガスの貯留・運搬が不可欠である。そこで各種変数を組み入れた余剰ガス生成モデルを作成し、規模別、地域別、月別の余剰ガス生成量の予測を可能とした。また、消化ガスの貯留方法として吸着剤に吸収させる貯留技術が有効であることが判明した。

(9)東北アジア地域におけるCH4N2O抑制のための汚水・汚泥の適正処理技術開発

 |羚颪砲けるCH4N2O抑制のための汚水・汚泥の適正処理技術開発

 生物処理法における典型的な従属栄養細菌であるAlcaligenes faecalisを活性汚泥の中に添加した排水処理システムを用いて、Alcaligenes faecalisの接種量およびCOD対全窒素の比を変化させて、嫌気条件下実験検討を行った。その結果、Alcaligenes faecalisの接種した系では、活性汚泥のみの系と比較してN2Oの発生量はおよそ50%に低下した。さらに、Alcaligenes faecalis接種系は窒素の除去能が高く、活性汚泥のみの系より約30%高い全窒素の除去率が得られた。CODの除去について、前者の系もより高いCOD除去能が見られた。そのために、Alcaligenes faecalisを活性汚泥排水システムヘの添加によるし優占化により、N2Oの発生抑制および排水処理能を向上させることができることと考えられた。Alcaligenes faecalisの添加量を高め、かつ高いCOD対全窒素の比を保持した実験条件では、N2Oの発生量を低く抑えられ、高いCODおよび窒素除去能の得られることが分かった。

 韓国におけるCH4N2O抑制のための汚水・汚泥の適正処理技術開発

 韓国においては近年の著しい経済発展により生活水準の向上が成し遂げられている。また、それに伴う社会資本整備も急進している。特に下水道を含む生活排水処理施設の整備が積極的に推進されており、特に農山村地城に位置するダム湖等の水源域においては近年の急激な水環境の悪化に対応するために生活および畜産排水処理に関する法整備が進められている。したがってこれら地域では、今後、我が国と同様に分散型の小規模処理場の増加が予想されている。この場合、排水処理に伴って発生する汚泥について、これまでの規模の大きな処理手法ではなく、小規模処理手法の開発が急務である。また生活水準の向上とともに畜産の振興も著しく、これらに伴う高濃度有機性排水の処理もその大部分が小規模であり同様な開発が必要である。この研究においては上記を鑑み、これまでよく知られているコンポスト化反応を基本原理とし、有機物の完全分解が可能な高温好気発酵法について汚泥、畜産系高濃度有機性排水処理への応用を検討した。その結果、これらの有機物は水分の含有量が多く、廃食油のような熱源の添加が必要であり、添加量によっては反応に必要な窒素が不足することから、C/W(水分)比およびC/N比の適正化が重要であること、また発酵ガス中におけるCH4N2Oの挙動についての検討より、CH4については発生が認められ無かったが、N2Oについては反応の初期に発生量が増加する傾向にあり、さらにC/N比等との関係に着目した最適操作条件の確立のための検討を行うことの重要性を明らかに出来た。

 湿地帯、酸化池、水生植物植栽地等のエコエンジニアリングシステムを用いたCH4N2O発生抑制技術開発

 生活排水を処理する土壌トレンチ、湿地帯、酸化池等からのCH4N2O等の地球温暖化ガスの発生を抑制できるエコエンジニアリングシステムを活用した地球温暖化ガス対策技術を開発し、中国等の近隣諸国も含めた汎用化技術を確立することを目的としている。まず、日本と中国の土壌トレンチ処理施設でのCH4N2Oガスの発生の実態調査と室内ベンチスケール土壌トレンチでの物質収支の解明によるCH4N2Oガスの発生特性を解析し、両国における土壌トレンチからのCH4N2Oガスの放出原単位はいずれにおいても同様に生活排水を処理する活性汚泥法より数百倍高くなることが明らかとされた。また、中国側に土壌トレンチ処理施設を普及した場合に巨大な放出量となることから、適切な抑制対策の開発と普及が重要と考えられた。これらを基に更に両国の国立試験機関に設置された同じ密閉ガス回収空間を設置したベンチスケール土壌トレンチでの物質収支の解析によるCH4N2Oガスの発生に関するメカニズムを解明とCH4N2Oガスの発生とORPとの関係を解析し、微量通気法を導入したCH4N2Oガスを抑制する循環式嫌気ろ床・土壌トレンチシステムを開発する研究を行った。研究成果としては土壌トレンチのCH4N2Oガスの高放出の主なメカニズムはその内部の好気状態と局部的嫌気部分が併存することが構造的な原因であること、土壌トレンチにおいてORP+150mV以上或いは-10mv以下に維持すればN2Oガスの発生を抑制できること、また、微量通気方式を適用することによりORP+300400mV程度に維持でき、CH4N2Oガスの放出をそれぞれ約1/21/3抑制できることがわかった。すなわち本研究で開発された微量通気方式等を組み込んだCH4N2Oガスの抑制対策のための循環式嫌気ろ床・土壌トレンチは中国に適用可能な手法であり、実証化検討を進め、汎用化を図ることの重要なことが明らかになった。

 

4.考察

 研究においてこれまでに得られた成果および環境行政、国際的動向、情勢等をふまえた、今後の検討課題等は、以下に示すとおりである。

 ・各分野におけるCH4N2O対策において、対策の対象ごとと同時に、原理的に共通する反応メカニズムの解明とモデルによるシミュレーション等を活用し、汎用的な発生抑制手法の確立を目指すことがさらに必要である。

 ・バイオ・エコエンジニアリングの活用においては、マイクロコズムによる研究と同時に、複合生態系内でのCH4発生およびその抑制メカニズムの解明を行い、純枠培養系の結果を現場の複合生態系(自然界)に持ち込む上でのさらなる解析がさらに必要である。

 ・燃焼システム等においては、N2O放出量削減型システムおよび燃焼条件等についてさらなる解析、検討が必要である。,

 ・各分野におけるCH4N2O対策をより効果的に推進するためには、国際交流研究制度等を活用し、アジア太平洋地域各国との連携した研究開発をさらに強化することが必要である。

 ・研究成果をアジア太平洋地域に技術展開する場合、国ごとの気候・生活様式等が異なることをふまえて、CH4N2O放出に関する現状調査および把握をさらに重点的に行い、国情に即した技術導入の基盤を確立する研究を発展させ、強化することが必要である。

 ・バスケット・アプローチ手法等に基づき、CH4N2Oの日本からの排出量およびその削減対策等に関するシナリオを提示できるような研究を積極的に取り込み、発展充実化、強化推進していく必要がある。

 ・各研究機関における有機的な連携をさらに強め、多面的・効果的に地球温暖化防止対策を推進していく必要がある。

 

5.研究者略歴

課題代表者:稲森悠平

1947年生まれ、鹿児島大学大学院農学研究科修士課程修了、

現在環境庁国立環境研究所地域環境研究グループ総合研究官

主要論文:

1) Wu. X. L., Kong. H. N., Mizuochi, M., Inamori. Y., Xia, H. and Yi. Q. :Nitrous oxide emission from microorganisms, Japanese Journal of Water Treatment Biology. 31. 151-160. 1995

2) Inamori, Y., Wu. X. L., Mizuochi, M. :N2O producing capability of N. europaea. N. winogradskyi and A. faecalis, Water Sci. Tech., 36, 65-72, 1997

3) Kimochi, Y., Inamori, Y., Mizuochi, M., Xu., K. Q., and Matsumura, M.: Nitrogen Removal and N2O Emission in a Full-scale Domestic Wastewater Treatment Plant with Intermittent Aeration, Journal of Fermentation and Bioengeneering, in press, 1998

 

サブテーマ代表者

(1) 鶴田治雄

1940年生まれ、東京大学理学部卒業、現在農水省農業環境技術研究所影響調査研究室長

主要論文:

1) Tsuruta, H., Kanda, K., anmd Hirose, T.: Nitrous oxide emission from a rice paddy field in Japan, Nutrient Cycling in Agroecosystems, 49, 23-28, 1997.

2) Smith. K. A., I. P. Mc Taggart and H. Tsuruta: Emission of N2O and NO associated with nitrogen fertilization in inintensive agriculture and the potential for mitigation Soil Use and Management, 13, 296-304, 1997.

3) 鶴田治雄:亜酸化窒素と土壌、農業及び園芸、73, 37-42, 1998

 

◆鶴田治雄(同上)

 

:八木一行

1959年生まれ、名古屋大学大気水圏科学研究所修士課程終了、

現在農水省国際農林水産業研究センター環境資源部主任研究官

主要論文:

1) Yagi. K., H. Tsuruta, K. Kanda, and K. Minami : Effect of water management on methane emission from a Japanese rice paddy field: Automated methane monitoring, Global Biogeochemical Cycles, 10, 255-267, 1996

2) Yagi. K., H. Tsuruta, and K. Minami : Possible options for mitigating methane emission from rice cultivation, Nutr. Cycl. Agroecosys, .49, 213-220, 1997

3) Yagi, K., K. Kumagai, H. Tsuruta and K. Minami : Emission, production, and oxidation of methane in a Japanese rice paddy field, in Soil Management and Greenhouse Effect. edited by R. Lal et al., pp. 231-243, Lewis, Boca Raton, 1995

 

(2): 寺田文典

1955年生まれ、東北大学農学部卒業、現在農水省畜産試験場栄養部反すう家畜代謝研究室長

主要論文:

1) Shibata, M., F. Terada, M. Kurihara T. Nishida, K. Iwasakki Estimation of methane production in ruminants. Anim. Sci. Technol. (Jpn.), 64:790-796. 1993.

2) 寺田文典・栗原光規・西田武弘・塩谷 繁 泌乳牛における窒素排泄量の推定、日本畜産学会報、68:163-168. 1997.

3) M Kurihara, M Shibata, T Nishida, A Purnomoadi and F Terada, Methane production and its dietary manipulation in ruminants. Rumen Microbes and Digestive Physiology in Ruminants. 199-208. 1997.

 

(3): 渋谷岳

1966年生まれ、明治大学農学部卒業、現在農水省草地試験場環境部土壌肥料第1研究室研究員

主要論文:

1) 渋谷岳、木村武、山本克巳、野中邦彦:草地における温室効果微量ガスの排出係数、草地飼料作研究成果最新情報 10, 41-42, 1995

2) 渋谷岳、山本克巳、近藤煕、野中邦彦:家畜ふん尿貯留槽からのCH4発生量の把握と発生制御技術の開発、農業環境研究成果情報 13, 71-72, 1997

3) 渋谷岳:液状きゅう肥施用に伴う悪臭及び温室効果ガス対策、平成9年度家畜ふん尿処理利用研究会資料、14-24, 1997

 

(4): 城戸伸夫

1944年生まれ、九州大学工学部卒業、現在資源環境技術総合研究所統括研究調査官

主要論文:

1) Suzuki Y., N. Kido, K. Tatsnmoto :Circulating Fluidized Bed Combustion of Char Derived from a Mild Pyrolysis Process", Proc. Int. Symp. on Energy and Env., pp.120. Shanghai, 1998

2) Suzuki Y., H. Moritomi, N. Kido :Reduction of N2O Emission from Circulating Fluidized Bed Combustors by Injection of Fuel Gases and Changing of Coasl Feed Point", Energy Convers. Mgmt. Vol 37, pp.1285, 1996

3) 守富、鈴木、城戸、池田、「化石燃料燃焼における亜酸化窒素の生成機構」、化学工学論文集、Vol 20, pp.849, 1994

 

(5): 小高松男

1946年生まれ、早稲田大学大学院理工学研究科機械工学専修前期課程修了、

現在運輸省交通安全公害研究所交通公害部計測研究室室長

主要論文:

1) Odaka, M. : Methane and Nitrous Oxide (N2O) Emission Characteristics from Automobiles. SAE Paper, 960061

2) 小高松男:過給ディーゼル機関のEGR時の燃焼および排出ガス挙動の解析. 自動車技術会論文集 Vol.26 No. 3

3) Odaka, M. : Deterioration Effect of Three-way Catalyst on Nitrous Oxide Emission. SAE Paper, 980676

 

(6): 稲森悠平(研究代表者に同じ)

 

(7): 田中勝

1940年生まれ、ノースウエスタン大学大学院博士課程修了、

現在厚生省国立公衆衛生院廃棄物工学部部長

主要論文:

1) 田中勝:都市ごみ焼却に係わるダイオキシンの安全性評価、衛生化学、43, 203-208, 1997

2) 田中勝. 大迫政浩. 河村清史. 松井康弘. 山田正人. 藤井崇. 安岡孝司. 杉山涼子. 栗原和夫:都市ごみ処理システム選定のためのLCAの活用、第8回廃棄物学会研究発表会講演論文集、128-131, 1997.10

3) Tanaka M. (share writing) Risk management for landfill disposal of solid waste: Environmental Geotechnics 3. Balkema, 1531-1544, 1997

 

(8): 中村栄一

1948年生まれ、イリノイ大学環境工学修士課程修了、

現在建設省土木研究所下水道部新下水処理研究官

主要論文:

1) 中村栄一:琵琶湖の水質改善と下水道、用水と廃水、38, 1996

2) 中村栄一:地球温暖化と下水道、水の創造、3, 1996

3) 中村栄一:水処理方式の選定の考え方、月刊下水道、21, 1998

 

(9) О霓考平(研究代表者に同じ)

◆О霓考平(研究代表者に同じ)

:稲森悠平(研究代表者に同じ)