課題名

B-17 電気自動車の普及促進による二酸化炭素排出抑制交通システムヘの転換に関する研究

課題代表者名

清水 浩 (国立環境研究所 地域環境研究グループ)

研究期間

平成3−5年度

合計予算額

57,381千円 (うち5年度 20,619千円)

研究体制

(1) 電気自動車の導入分野別に要求される性能と機能の定量化(運輸省交通安全公害研究所)

(2) 電気自動車の普及阻害要因の分析(環境庁国立環境研究所)

(3) 電池構成要素の供給、利用、リサイクルシステムの開発(通産省大阪工業技術試験所)

(4) 適正な電力及び車輌運行のためのシステム整備(通産省機械技術研究所)

(5) 地域導入システムの総合評価と電気自動車の普及に資するモデル車輌の総合的分析

(環境庁国立環境研究所)

研究概要

 我国における部門別二酸化炭素排出シェアによると、運輸部門は21%で、そのうちの約86%に当たる16%が自動車からのものである。この排出を減らす技術の1つとして電気自動車の普及促進が期待されている。しかし、電気自動車は現状ではいわゆる動力性能がエンジン自動車に劣っている他、価格には問題がある。さらに電池等のリサイクルシステム、給電・充電システム等のインフラストラクチャーも未整備である。これらの問題点を解決して大量の普及に結びつけるために、利用分野ごとに車に要求される性能と機能を明らかにし、電気自動車の普及阻害要因を分析し、電池等の供給、利用、リサイクルシステムを開発し、電力供給手法や保守、整備方法のシステム化を図り、地域を特定して普及を図るためのシステムを設計する。

研究成果

 研究成果を列挙すると以下のとおりである。

 電気自動車の性能を精度よく評価するシミュレーションプログラムを開発した。このプログラムでは一充電走行距離、最高速度、加速性能、エネルギー消費率の計算が可能である。

 電気自動車の性能に求められる要件を調査と実測により取得した。電気自動車は小型物流に用いる場合一充電走行距離が150km、積載量が2トンあればほとんどの目的に利用可能であることが分かった。また、エネルギー消費や性能面から見て大都市圏の通勤用に利用することが望ましいことも判明した。

 電気自動車の走行エネルギーを理論と実測により求めた。軽の電気自動車で東京−大阪往復した場合のエネルギー消費は同一車種のエンジン自動車の半分であった。

 電気自動車用電池の性能を十分に引き出すための管理システムとして、組電池のアンバランスを調整する機能が重要であることを確認した。

 電池の残存容量を高精度で検出するために、起電力と内部抵抗値を基準とする残存量計を開発した。

 電池の資源量、リサイクルの可能性を評価した。電池性能の向上とリサイクルシステムの構築で電池の資源量の節減を図ることが明らかになった。

 性能要件に適合する電気自動車の実現可能性を技術的観点から評価した。その結果、電気自動車に新しい技術を導入することにより、タクシー、小型物流等に要求される性能要件を満たす車の実現の可能性が明らかになった。

 性能要件に適合する電気自動車の普及条件を経済性の観点を中心に評価した。営業に利用する車では車体価格に比べて人件費が圧倒的に高いため、1台の車で得られる収益が上げられる車の実現によって初期価格の問題は解決できることが明らかになった。そのための具体的手法として電気自動車は設計の手法によっては車全体に占める客室空間を広くすることが可能であることを利用した新しい概念の車を提案した。

 普及に際してのインセンシブとしては、タクシーの場合インドア駐車場を設けてここで客を拾うことを許すことの可能性等を検討した。