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化学物質と環境円卓会議(第1回)議事録

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■日時:平成13年12月3日(月)14:00~17:00
■場所:主婦会館プラザエフ9階「スズランの間」
■出席者:(敬称略)
川口 順子 環境大臣
<市民>
有田 芳子 全国消費者団体連絡会事務局
崎田 裕子 ジャーナリスト、環境カウンセラー
角田 季美枝 バルディーズ研究会副運営委員長
中下 裕子 ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議事務局長
村田 幸雄 (財)世界自然保護基金ジャパンシニア・オフィサー
<産業界>
出光 保夫 日本石鹸洗剤工業会環境保全
河内 哲 日本レスポンシブルケア協議会企画運営委員長
瀬田 重敏 (社)日本化学工業協会広報委員長
田中 康夫 日本レスポンシブル・ケア協議会企画運営委員
仲村 巖 (社)日本自動車工業会環境委員会副委員長
橋本 伸太郎 日本電機工業会環境政策委員会委員長
小林 珠江 日本チェーンストアー協会環境問題小委員会委員
<行政>
岩尾 總一郎 環境省環境保健部長
大森 昭彦 農林水産省大臣官房技術総括審議官
片桐 佳典 神奈川県環境科学センター所長
鶴田 康則 厚生労働省大臣官房審議官
増田  優 経済産業省製造産業局次長
<学識経験者>
北野 大 淑徳大学国際コミュニケーション学部教授
原科 幸彦 東京工業大学工学部教授
安井 至 東京大学生産技術研究所教授
 (欠席)  後藤敏彦 環境監査研究会代表幹事
 山元重基 日本生活協同組合連合会環境事業推進室長
司会(事務局)  環境省環境保健部環境安全課長 安達一彦
■資料:
○川口環境大臣挨拶
  資料(スライド) [PDF(73KB)]
○事務局配付資料
 
資料1  「化学物質と環境円卓会議」(リーフレット) [HTML]
  資料2  化学物質と環境の係わり [PDF(310KB)]
  資料3  円卓会議の内外の事例 [PDF(173KB)]
  資料4  「化学物質と環境円卓会議」の運営要領(案) [PDF(7KB)]
  資料5  「化学物質と環境円卓会議」のスケジュール(イメージ) [PDF(6KB)]
  参考資料  円卓会議の内外の事例(詳細資料) [PDF(401KB)]
○構成メンバーの意見発表
《市民》
 
崎田資料  『環の国』実現に向けて、「化学物質と環境円卓会議」への期待(スライド) [PDF(78KB)]
  村田資料  化学物質と環境円卓会議への期待(スライド) [PDF(159KB)]
《産業》
  出光資料  家庭用消費剤(洗剤)の環境・安全に関する取組み [PDF(36KB)]
洗剤の環境影響への対応/自主的活動(スライド) [PDF(151KB)]
  河内資料  レスポンシブル・ケア [JPEG]
  瀬田資料  「化学物質と環境」に関する化学企業の取り組み(スライド) [PDF(131KB)]
  田中資料  情報開示とリスクコミュニケーション(スライド) [PDF(96KB)]
  仲村資料  環境報告書(2001年3月期) [PDF(2.63MB)]
  橋本資料  電機電子業界における化学物質管理の取り組み(スライド) [PDF(154KB)]
  小林資料  (スライド) [PDF(194KB)]
《行政》
  岩尾資料  リスクコミュニケーションにおける誤解(スライド) [PDF(57KB)]
  大森資料  農林水産省における化学物質対策について [PDF(15KB)]
  鶴田資料  厚生労働省における化学物質とコミュニケーションに関する取組(スライド)
 (1) [PDF(35KB)]   (2) [PDF(62KB)]
  増田資料  化学物質総合管理政策 ―理念と概要― [PDF(102KB)]
《学識経験者》
  安井資料  ある図書で指摘されていた有害化学物質の例とコメント [PDF(7KB)]
《欠席委員》
  後藤資料  化学物質と環境円卓会議 [PDF(16KB)]
  山元資料  化学物質と環境円卓会議 資料 [PDF(291KB)]

1.開会

(事務局:安達) 時間が参りましたので、第1回「化学物質と環境円卓会議」を開催させていただきます。
 会議の開催にあたりまして、まず川口環境大臣からご挨拶を申し上げます。

2.川口環境大臣挨拶

(川口) 環境大臣の川口でございます。今日はお忙しい中をどうもありがとうございました。
 ご案内のように、私たちの身の回りにはさまざまな化学物質が有用なかたちで存在します。例えばプラスチックや合成洗剤、殺虫剤などさまざまございますけれども、生活の質の維持に欠かせない化学物質が、他方で物の製造、使用、廃棄の段階、あるいは日常生活のさまざまな場面を通じて環境を汚染し、人の健康や生態系に有害な影響を及ぼすこともあるわけです。特に最近では、内分泌かく乱化学物質、いわゆる環境ホルモンなどの新しいタイプの問題も提起され、環境リスクについての国民の不安もあるわけです。
 こうした化学物質と環境の問題に対処するためには、社会の構成員である市民、産業界、行政が情報を共有し、可能なかぎり共通な認識に立って環境リスクを低減するために行動をしていくことが重要だと考えております。

 今年の7月に、小泉総理の主催のもとで、私を含む全閣僚と10人の有識者の方々から成ります「21世紀『環(わ)の国』づくり会議」の報告書が出ました。その報告書の中でさまざまなことを言っておりますが、例えば、先進国と途上国が協力をして地球との共生を目指す地球の環、環境産業革命を目指す環境と経済の環、環境への負荷の少ない循環型社会を目指す物質循環の環、自然との共生を目指す生態系の環、市民産業行政のパートナーシップの構築を目指す人と人との環という5本柱で、さまざまな取り組みを提案しています。
 その中で、化学物質の問題につきましては、情報の共有と共通認識のための枠組みといたしまして、市民、産業、行政の代表による対話の場を設けることが提案されています。お手元の資料の下の吹き出しの右下、一番下に書いてありますが、そういうことが提案をされました。
 この提案を踏まえまして、各方面で化学物質と環境の問題に深くかかわっておられる方々に呼びかけをさせていただきましたところ、皆様のご賛同が得られまして、本日ここに第1回の「化学物質と環境円卓会議」が開催をされる運びとなりました。お忙しい中をお時間をお割きいただいてお集まりいただいた方々、そして傍聴してくださる方々にも厚く御礼を申し上げたいと思います。
 円卓会議では、ここに参加されました市民団体、産業界、行政各部門の皆様方が主役になります。皆様方が化学物質の環境リスクについてどう考えるのか。環境リスクを減らしていくために自分たちは何をしようとしているのか。そのために他のセクターに何を望むのか。そういった事柄について大いにご議論をいただく場であるとお考えいただきたいと思います。
 そしてできることでしたら、このような場での議論を通じて相互理解が進み、共通認識ができ、それが広く外部に発信されるようになればいいと思っております。環境リスクコミュニケーションとパートナーシップの2つをキーワードとしてここでさまざまなご議論をいただいて、それが安全、安心な「環の国」日本の実現に貢献をしていくことを私としては祈念をいたしております。どうもありがとうございました。

(事務局) 本来であれば引き続きましてメンバーの方々のご紹介をさせていただくところですが、本日の2つ目の議題におきまして自己紹介をかねた皆様からのご発言をいただくこととなっておりますので、誠に勝手ながら割愛させていただきます。各メンバーの方々のご経歴につきましては、お手元に配付しておりますリーフレット等でご覧いただければと思います。
 なお、本日は環境監査研究会の後藤さんと、日本生活協同組合連合会の山元さんはご欠席と伺っております。また、東京大学の安井先生、東京工業大学の原科先生につきましては、遅れるとのご連絡を受けております。
 申し遅れましたが、私は本会議の事務局を務めさせていただいております環境省環境保健部の安達でございます。
 まずお手元の資料の確認をさせていただきたいと思います。環境省の封筒に入った資料がございますが、その中には議事次第と資料1~5までの本会議の資料が入っております。もう1つの封筒、あるいは外に出ております資料につきましては、メンバーの方々が意見発表のために準備されたもの等であります。よろしいでしょうか。
 それでは、この円卓会議の趣旨につきましては、先程、川口環境大臣のご挨拶にもありましたように、市民、産業、行政における情報の共有と相互理解の促進を図るということであります。そこで、3者間の対話を円滑に進めていくために、3人の学識経験者の方々に司会進行役をお願いいたしております。
 本日の司会進行は北野先生にお願いしておりますので、北野先生、どうぞよろしくお願いいたします。

(司会:北野) ただいまご紹介いただきました淑徳大学の北野ですが、この大役をうまく務まるかどうか非常に不安なのですが、ご参加の皆様方のご協力をいただきながら実りあるものにしていきたいと思っております。
 はじめに、私の方から3つの提案をさせていただきたいと思うのですが、まず1点目ですが、今日はいろいろな方がお見えです。それぞれ「先生」とか「さん」とか付けるのは大変ですから、申し訳ないのですが、皆さんを全部「さん」ということで、よろしいでしょうか。役所の方もすべて「さん」ということで呼ばせていただきますが、よろしいでしようか。
 2点目ですが、今日はご覧のようにテレビカメラも入っております。こちらの発言の内容も後程、議事録にまとめまして、もちろん内容をご確認いただいたうえで公開してはどうかと思っているのですが、また今日お配りいただいた会議の資料も、原則公開ということで進めていきたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは3点目ですが、今日はそれぞれメンバーの方にお集まりいただいているのですが、一応そのメンバーの選定の場合には、各セクター、産業なり行政なりNGOなり何なりという立場でご参加いただいており、ここでのご発言がそれぞれ自分の所属されている団体のコミットメントといいますか、その団体なり何なりの約束になってしまうとなかなか発言がしづらくなりますし、有意義な発言も阻害してしまうのではないかと思います。この会議の目的というのは、それぞれの自分の立場を主張するばかりでなく、本音でいろいろなアイデアを出していこうではないかというものです。その意味で、決してその団体を代表するものではない、組織を代表するものではないということで、どちらかというと個人の資格というかたちでお話しさせていただきたいと思いますし、またお話しいただけたらと思っているのですが、この3点目もいかがでしょうか。必ずしも団体とコミットするものではないということでご理解ください。よろしいでしょうか。ありがとうございます。

3.議事

(1)「化学物質と環境円卓会議」の設置について

(司会) では、議題(1)「化学物質と環境円卓会議の設置について」ということで、事務局からご説明をいただきます。お願いします。

(事務局) それでは、お手元の資料2、資料3を用いてご説明させていただきます。OHPを用意しておりますので、それを見ていただけたらと思います。
(以下OHP併用)

 まず、背景および趣旨について、ただいま大臣のご挨拶にもございましたように、「21世紀『環の国』づくり会議」の報告書ではスライドのような提言がなされております。化学物質と環境円卓会議は、このような提言を踏まえまして、化学物質の環境リスクについて国民的参加による取り組みを促進することを目的として、市民・産業・行政の代表による環境リスクに関する情報の共有・相互理解を促進する場として設置するものであります。

 そのため、この会議は3つのコンポーネントからなっていると考えております。まず1つ目が、インターネットによる意見の募集、あるいは地域で活動されている方々のご意見を伺うための地域フォーラムの開催により、国民各界の意見・要望を集約する。2つ目として、これらの意見・要望を踏まえた本会議における対話を通じて環境リスク低減に関する情報の共有と相互理解を深めていく。3つ目として、会議での議論そのものや、あるいはもし得られるようであれば、会議を通じて得られた共通認識を市民・産業・行政に発信していこうと考えております。

 化学物質と環境のこれまでのかかわりについてごく簡単にまとめたものです。まず、資料2の2ページの上の図ですが、化学物質と私たちの生活は切っては切れない、なくてはならないものになっているという図です。
 ただ、一方で、化学物質の環境に対するさまざまな問題も出てきました。

 左側に出来事を並べてありますが、1956年に有名な『沈黙の春』が出版され、DDT等にかかわる危険が指摘されたわけです。その後、1968年には、まずイタイイタイ病についての厚生省見解、さらには水俣病に対する政府見解が出され、また、直接環境とは関係ありませんが、いわゆるカネミ油症の問題を契機としたPCBによる環境汚染の顕在化ということがありました。
 特にこのPCBによる環境汚染の顕在化は、右の「対策」にあります「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)」の制定につながったわけです。これは我が国の場合、1973年ですが、欧米では同様の法律ができたのは70年代後半ということで、この問題の影響の大きさがわかるかと思います。
 さらに1976年にはイタリアの化学工場の爆発によるダイオキシンによる周辺の環境汚染というセベソ事件が起こっております。また、トリクロロエチレン等の有機塩素系溶剤による地下水汚染の顕在化、あるいは1984年にはインドのボパールでの殺虫剤製造工場の爆発事故による周辺の環境汚染が出てまいりました。特にこのインドボパールの工場は米国資本ということもあり、米国のTRI制度、我が国でいいますとPRTR制度の成立のきっかけとなったような事件でもあります。さらに96年には『奪われし未来』が発行され、内分泌かく乱化学物質について世間の注目するところとなったところであります。
 対策として、公害対策基本法・化審法、92年には地球環境サミットとリオ宣言、93年には環境基本法の制定、99年にはPRTR法の制定等が行われております。

 3~4ページですが、各分野の取り組みとして、行政の取り組みについてはさまざまな取り組みをしているわけですが、ここでは化学物質に関する主な法律のみを示しております。先程申し上げました「化審法」、化学物質の製造という対策の最も上流での規制を行う法律につきましては、厚生労働省、経済産業省、環境省が所管して法律の施行を行っております。また、ほぼ同様の農薬に関する法律としましては「農薬取締法」があります。
 さらに、いわゆる「PRTR法(特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律)」により、環境への排出についての把握、さらにはその届出といったPRTR制度とMSDS制度を内容とした法律がいよいよ来年度から、事業者から国への届出が始まるところであります。
 そのほか、大気汚染防止法、水質汚濁防止法、ダイオキシン類対策特別措置法等々のさまざまな法律があるわけです。
 また、産業界の取り組み、NGO・NPOの取り組み、市民の取り組み等についてまとめさせていただいておりますが、これらにつきましては後程お話もあるかと思いますので、説明は割愛させていただきます。

 資料3ですが、すでにご案内のとおり、本会議につきましては、その進め方につきましてもこの会議において検討していただくこととしております。したがいまして、今回および第2回会議において、そのような進め方について検討していただく予定ですので、ご参考まで、海外での円卓会議と呼ばれる、あるいは円卓会議のような会議の事例につきましてご紹介させていただきます。
 まず円卓会議と申しましても、さまざまな目的や形態で催されるものがあるわけですが、今回は「対話」という側面を持った3つの事例についてご説明させていただきます。

 まず、イギリスの「化学物質ステークホルダーフォーラム」です。これは政府の「化学物質の持続可能な製造・使用」(1999年)という化学物質戦略に基づき設置されております。
 目的につきましては、「環境中の化学物質について懸念を有する利害関係者間の理解を促進し、化学物質による環境および環境経由の健康影響に関するリスク管理について政府に助言を行う」とされております。2000年夏から開催されております。
 構成は、NGO・産業界・学会の3者構成で合計20名弱のメンバーからなっております。議長は、第三者としてセルボーン伯爵が務めておられます。
 活動は、年3~4回の定例会議と、年1回の市民が参加する公開の会合が開かれております。
 これまでの成果の例としましては、リスク管理が必要な化学物質を特定するためのクライテリアについて三者で合意したことが挙げられております。

 カナダの「環境と経済に関する円卓会議」です。これは1994年に制定された法律に基づき設置されております。
 目的としましては、「持続可能な開発を促進するために、意志決定者や一般市民への助言・提言を行う」とされております。1996年から開催されております。
 構成は、NGO・産業界・大学・労働組合・金融・コンサルタント、あるいは関心の高い個人など、さまざまな方々が総理からの任命による22名からなっております。
 活動は、年4回の定例会議、あるいはその下に部会を設けて検討しております。さらに年1回以上の、市民を交えたワークショップも開かれております。意見の把握方法としては、一般市民を対象にしたフォーラム、あるいは電子メールなどでの意見の受け付けを行っております。
 成果ですが、会議の対象は化学物質に限らず環境分野のさまざまなテーマを扱っておりますが、特に有害化学物質の管理について検討した際には、11項目からなる提言がまとめられております。

 デンマークの「コンセンサス会議」です。これは市民自身が専門家から話を聞き、新しい科学技術の評価について意見や提案を行うことになっております。1980年代から開始されていると聞いております。
 構成は、公募により選出されました市民のパネルが14名、専門家のパネルが13名、会議の進行・調整役、ファシリテーターの方がいらっしゃるという構成です。
 活動は、標準的には2回の準備会合と2泊3日の本会議からなっております。
 これまでの成果については、遺伝子治療や食品の放射線照射など、さまざまなテーマについて報告書がまとめられておりますが、特に食品環境中の化学物質許容限度に関する会議におきましては、閾値の考え方やクリーナーテクノロジーと生活の質、情報提供などについてQ&Aをまとめております。

 以上3つの事例のより詳しい内容につきましては、お手元の環境省資料として配付しておりますのでご参考にしていただけたらと思います。以上です。

(司会) どうもありがとうございました。今、資料2に基づきまして、この円卓会議の目的、化学物質に関しての行政・産業界・NGO・NPO・市民の取り組みについてのご紹介、そして資料3に基づきましてイギリスとカナダとデンマークにおける円卓会議の例についてご紹介いただきました。
 ただいまのご説明についてご質問のございます方はどうぞご発言ください。よろしいですか。特になければ、もし途中で出てきましたらそういう機会を設けたいと思います。それでは次の議題に移りたいと思います。

(2)構成メンバーの意見発表

(司会) 議題2は、構成メンバー、今日ご参加の皆様からの意見発表ということですが、化学物質と環境に関してこれまでどのようなご活動をされてきたのか。どのような取り組みをされてきたのか。また、そういう活動・取り組みの中で日頃どんなことを感じておられるのかということを5分間ほど用意しておりますので、5分間の中で日頃の思いの丈をしゃべっていただければと思っております。
 5分間については自分で。学会と違いますので、5分たったらチンと鳴らすとか、そういう規制はしませんので、自主管理ということで、ご自分で5分間ということで見ていただいて発言していただければと思っております。
 順番ですが、資料1のリーフレットの順番でいきたいと思うのですが、よろしいでしょうか。最初は市民の代表からということで、有田さんからになるのですが、よろしいでしょうか。それではこの順番でお願いいたします。それでは有田さん、お願いします。

(有田)
  • 消費者運動を通じて、自動車排ガスに関する大気測定、合成洗剤に関する調査及び啓発活動などを行ってきた。PRTRにより化学物質に対する不安が良い方向へ導かれることを期待して活動しており、レスポンシブルケア協議会の対話にも参加している。
  • 円卓会議でも「対立」ではなく、透明性を確保し、信頼を持って「対話」により市民も努力し行動したい。

 こんにちは。ただいまご紹介にあずかりました全国消費者団体連絡会の環境政策担当の有田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 北野さんから、自己紹介と期待することをはなして下さいとのお話がありましたので、今からどのようなことをご報告すればいいのかなと少し迷っておりましたが気が楽になりました。市民の代表ということで、特に私は専門家ではありませんので、資料の準備もしておりませんし、本当に今まで市民として、消費者運動として行ってきたことを簡単にご報告させていただきたいと思います。
 先程、環境省の方のご説明にありました資料2の4ページに「NGO/NPOの取り組み」という枠の中に入っているような中身でほとんどの事を行ってきたわけです。特に意識して化学物質として取り組んできたわけではありませんが、例えば自動車の排ガスの問題、大気汚染測定の活動、車輌から出る光化学スモッグに関連する酸性雨の調査、農薬問題、合成洗剤の問題などを主に、化学物質と意識はしないで消費者運動として取り組んできたわけです。
 その中で、たまたま私は、このプロフィールの中にも書いておりますけれども、コープかながわの環境担当の理事をしておりました関係で、神奈川県が97年に行いましたPRTRに関する国際シンポジウムで市民代表のパネリストとして参加しました。環境に関する運動はたくさんやってきたのですが、それらのものを化学物質として強く意識したのはそれ以来です。
 ただ、出身地が福岡ですので、カネミ油症や水俣病という公害問題を含めて非常に関心はあり、市民運動も行っていました。そう言う経験で思うことは、市民は意識しないようでいて、有害な化学物質が排出されているのかもしれない、含まれているかもしれないという不安が有るということです。
 PRTRについて、これから化学物質に関する法律をつくっていくとわかったときは、いい方向に進むなと思いました。神奈川県のパイロット事業の中でも委員会の中でも、それとは別に、独自に、行政の方や企業の方にも参加していただいてワークショップを行いながら市民の意見を取りまとめてきました。また消団連(消費者団体連絡会)に入りましてからも、レスポンシブル・ケアという対話集会に関わっていますが、企業の方と市民が対話をしていく事の重要性を感じています。まだまだNGOというか、環境運動に強く関心を持って動かれている方の代表の方としか対話集会はできておりませんが、そういうことにもかかわってきています。
 今後期待することですが、市民は情報の透明性というところにまだまだ信頼を置いておりませんが、それもずいぶん進んできたのではないかと思っておりますし、また行政の方も非常に努力をされているとも思っております。私たちもできるかぎり対立ということではなくて、対話を進めていきたいと思っております。しかし、やはり情報の流れといいますか、不十分だと思っております。期待するところとしましては、対立ということではなくて、情報の十分な透明性の確保ということで、市民団体はただうるさいことを言うというふうには思わないで、ぜひ信頼をもって進めていただきたいと思いますし、私たちも努力したいと思っております。少し長くなりましたが、どうぞよろしくお願いいたします。

(司会) ありがとうございました。次は後藤委員ですが、今日はISOの会議で海外出張されておりまして、後程、事務局から後藤委員からのコメントは発表してもらうことにしたいと思います。続きまして崎田さん、お願いします。

(崎田)
  • 化学物質対策については、リスクコミュニケーションが重要と考え、また、市民が環境学習を積むことも重要であると考える。行政はそれを支援、コーディネートする必要がある。分かりやすい情報を提供する第三者機関が必要。家庭にある薬品など処理の難しい物質をうまく処理できる仕組みと、その仕組みの透明性の確保について議論したい。

 崎田と申します。よろしくお願いいたします。私は生活者の視点でジャーナリスト活動をしておりました。その中で、これから地球環境を見据えた環境を本当に進めていくためには、産業界の皆さんの動き、国の政策、そして一人一人の市民が、いわゆる大きな仕組みと個人個人の実践が両輪のようにきちんと歩んでいくのが一番大切だと感じまして、環境省に環境カウンセラー登録をさせていただき、環境学習の推進もやってまいりました。
 そういう中で、自分の家のごみを減らそうということに気づき、自分のごみを減らしてみると、暮らし方の大切さ、それを支えるものづくりや、ものの流通のしかたの大切さも見えてきまして、まず自分の家庭のごみを減らしてみると社会のごみゼロの仕組みが見えてきますよという呼びかけなどを、普段しております。
 今回、化学物質というお話をいただいたときに、きっと私が一番一般市民に近いのではないかと思っておりまして、そういう私が今の社会全体の動き、そして化学物質についてどのように感じているかをお話しさせていただこうと思っております。
 皆さんにペーパーを出させていただいて、これを少し横目で見ながらお聞きいただければありがたいのですけれども。

(司会) 少し確認しましょうか。どのペーパーですか。

(崎田) この「崎田資料」というA4の1枚です。今あそこにパワーポイントで出している内容を出していただいたというものです。

(司会) ありますでしょうか。

(崎田) ダイオキシンの発生などが大変社会で問題になったときに、ごみ焼却場からダイオキシンの9割が出ているということが2~3年前から大変はっきり言われてきたときに、いろいろな方から、ではどのように私たちは付き合ったらいいのかということでいろいろお話しいただきまして、やはり今市民は、自分たちがこの化学物質とどう付き合ったらいいのか、そしてこれからどういうふうに行動したらいいのかというあたりが、一番わかりやすく伝えてほしいということを望んでいるのではないかと感じて暮らしております。

 実は私は大臣のお話にあった「21世紀『環の国』づくり会議」に参加させていただきました。私は生活者として参加させていただきましたが、そこで実感したのは、これからは私たち一人一人の環境に関する行動やライフスタイルと、そして産業界や国の政策が一致して、環境革命のこの変化の時代を乗り切るという意識づくりがとても大切なのではないかと私は感じました。
 特に内容に関しましては、「地球温暖化防止」「循環型社会づくり」「自然と共生する『環の国』の実現」という3つのテーマを最初にご提示いただいたのですが、それの実現に関しては、環境と経済の両立と、私たちのパートナーシップ、人と人がみんなで支えあってそれを達成するという国の雰囲気づくりがとても大事なのではないかと感じました。
 そういう中で、一人一人の市民というレベルで考えますと、今、環境に関する行動が大変大きく求められている。新しい生活文化をつくっていくということが、今、市民に一人一人が気づいていないというか、考えつかないくらい大きく期待されていることを感じました。

 そういう中で、これから私たちが暮らしていくときのキーワードとしては、民間活力溢れる新しい21世紀に向けて、産業界の皆さんと市民が本当にきちんとコミュニケーションして役割を果たしていくというお互いの意識改革や社会の雰囲気づくりが、今この転換期を乗り切るときに大変求められているのではないかと感じました。
 そういう中で、新しい役割分担として、本当に市民と産業界が主役で、行政の方にそれをうまくコーディネーションしていただくという、新しい発想でいくことがとても大切だと感じました。
 そのときに、今盛んに社会で言われているのはどういうことかというと、拡大生産者責任と消費者の排出者の責任をきちんと踏まえるということが、今私たちも大切だと強く感じています。それで「3Rの優先順位」の徹底した社会をみんなでつくるにはどのようにしたらいいかということを、本音で語りあい行動していくのだと感じました。
 そういう時期に、例えば国や地方公共団体にはどうしていただきたいかと考えたときに、最近急激に議論が本格化してきて大変うれしいのですが、いわゆる環境配慮企業がうまく回っていくような環境税のお話などが、大変はっきり話されてきてよかったなと思っています。
 それともう1つ、次にあるのがいわゆる今日の場なのですが、企業と市民のリスクコミュニケーションとして、このような場をうまく持っていただくことが大変重要だと感じていました。それとともに、私たち自身の環境学習とか消費者啓発、市民参加の仕組みをうまく全国で盛り上げていくという、市民自身が主体的に考えていけるような雰囲気を盛り上げていただくコーディネーションも、国や地方公共団体に強くお願いしたいし、私たち市民もやっていかなければいけないと感じておりました。
 その中のコミュニケーションというところですが、先程もお話ししたように、化学物質に関して、例えば赤ちゃんを育てるときに、「母乳で育てようと思っていたのにやめた方がいいかしら」といった話から、みんなお母さんになると迷ったりするのです。食べものなどの身近なところでお母さんたちは迷ってくる。やはり、そういう簡単なところから情報がきちんと交流できるような安心感のある社会をつくっていくというのが、すべての主体にとって今必要なのだろうと私も本当に感じております。

 最後に、私は今ここで、やはり今日のような場を継続して、安心で安全な情報交流をしていくような社会をつくっていくのだというコンセンサスをみんなでつくっていく。こういう場を継続していこうという雰囲気づくりが、今ここに求められているのではないかと感じました。
 あと、そういう本当にわかりやすい情報にきちんと市民の視点からも出会えるような第三者機関、あるいはそういうサイトのようなものも必要ではないかと思いますし、今、大変興味のある人と興味のない人との意識格差がすごく大きくなっている。そういうときに普通に暮らしている人にどのように的確に情報を伝えていくか、そして一緒に学んでいく場をどう広げていくかというところも、市民としてはやはり重要なことと感じています。
 今回、産業界の皆さんがメンバーに大勢入っていらっしゃいますが、実は暮らしていますと、家庭の中にある薬品とか化学物質などの処理の仕組みが、わりに今、地方自治体では最後に残されたところで、そういうものはみんなお店に持っていきましょうという指導を受けているのですが、もう少しお店やメーカー、産業界の方で、何かこれを全国的にうまく処理していく、あるいは受けていくような仕組みが提案できないのだろうかということも感じています。
 そういう意味で、家庭にある化学薬品、あるいは産業廃棄物業者に回っていく化学薬品の処理などに対する透明性や、仕組みづくりというようなことまで話が進めばいいなと思っております。長くなりました。よろしくお願いします。

(司会) ありがとうございました。それでは続いて角田さん、お願いします。

(角田)
  • 「バルディーズ研究会」では、企業の環境に対する社会的責任を根付かせるため、告発型ではなく対話型で「市民と企業の協働作業」をスローガンに活動してきた。
  • 円卓会議では、これまで市民、産業、行政が疑心暗鬼であった化学物質問題について直接対話することができ情報の相互交流が期待される。円卓会議を「何のため」に行うかを先ず議論したい。

 こんにちは。バルディーズ研究会の角田と申します。与えられた5分という時間の中でどれだけ話せるかわからないのですが、まずバルディーズ研究会について、それから私の自己紹介、この円卓会議について期待することを手短に述べさせていただきたいと思います。
 バルディーズ研究会については、お手元の三つ折りのリーフレットを、あとででも結構ですのでご覧ください。この研究会は91年に正式発足した市民団体です。活動のテーマは、企業の環境に関する社会的責任を、もう少し発現できるような社会システムに根づかせるにはどうしたらいいかというようなことをやっております。
 「バルディーズ」というのは、環境をやっている方はピンとくるかもしれないのですが、1989年3月に、当時史上最大の石油流出事故といわれた原油タンカーの名前を引いた「バルディーズ原則」をアメリカのNGOのCERES(セリーズ)が作っておりまして、そこから来ています。バルディーズ原則の精神を日本に広めようと発足した会です。アメリカの環境運動の流れを受けて、日本にもこの動きを紹介しようと発足した団体です。
 もう1つ、今までの市民団体と変わっているのは、告発型ではなくて対話型でいこうということで、会のスローガンが「市民と企業の共同作業」ということでやっております。企業の中から企業を環境主義にしていこう、あるいは株主の立場で投資の環境配慮を考えていくことで企業の環境配慮を進めよう、あるいは消費者にもう少しグリーンという視点を持ってもらってグリーンコンシューマーになってもらおうという、企業を取り巻く中から外からといったような、どこからでもいいからやりましょうということでやっております。
 メンバーは今約120人とこじんまりした会ですが、個人会員のほとんどは企業の方です。企業の方と市民がテーマによるプロジェクトを発足させまして、企業の環境の取り組みをどのように進めていけばいいのか、あるいは情報公開はまだここが足りないのではないかというようなことを、仕事の合間の時間にかんかんがくがくやっている会です。
 今までの説明でおわかりになったかと思うのですが、化学物質についてターゲットを絞っている活動はしておりません。しかし、企業の環境の取り組みということになりますと、生産工程の化学物質の排出や廃棄物の問題など、かかわってくる問題があります。あるいは情報公開、特に最近は環境報告書で企業が自ら情報を出していただいているのですが、情報公開を進めることをどうしたらできるかという話を、企業と対話しながらやってまいりました。
 その中の1つで、アメリカのTRIやスーパーファンドの研究をしまして、日本にもこういう制度があったらいいのではないかということで、実際にアメリカと日本の化学物質の情報公開はどう違うのだろうと、情報公開の制度の比較をしたりしていました。それで、国の方でPRTR法の検討があったときに、メンバーの中から技術検討会の委員として行ったり、あるいはオブザーバーで参加したりということでかかわらせていただいております。また法律の市民案骨子を作成したり、他の市民団体と協力しながらPRTR法の政府案について意見を述べる活動をしてきました。
 次に私の自己紹介をいたします。会を背負って立つのでなく自分の責任で発言をするということなので、私のバックグラウンドを少し紹介させてください。
 私は、本業はフリーランスの編集者とライターをやっております。主に企業と自治体の環境マネジメントや環境情報公開を取り上げています。編集者という立場と、それからNGOの活動といったところでの私なりの活動の特徴は、人と人とをつなぐ、あるいは立場の違う人をつなぐ、あるいは日本と海外の情報をつないでいく。そういった、違う情報をつなぎ合わせてみるとこんなことが発見できるのではないかといったような情報をご提供して、皆さんに考える材料を提供するということをしているのかなと思っております。
 この円卓会議への期待ですが、まずこのようにラウンドテーブルで化学物質についていろいろな立場の人が一堂に会するということはなかった話ですので、まずそれは非常にうれしいと思いました。というのは、今まで疑心暗鬼で企業の立場の人と消費者の立場の人がなかなか話が進まなかったこともあると思うのですが、こうやって顔を突き合わせてみますと、何だこんなことはこう考えていたのか、やっていたのかということが直接わかってくるものです。特に日本の人は情報といっても、文字ではなく顔つきや手振りといったノンバーバルなコミュニケーションで情報を吸い取っていくタイプの国民性だと聞いていますので、やはり顔を見て、「本音を言っているのかな」といったことを感じながらこうした話ができるのは非常にうれしいと思いました。この場がぜひ続いていただくといいと思います。
 進め方に関してはまたあとで意見を述べたいと思うのですが、やはり円卓会議の設置の目的が、お話をいただいてから考えているのですが、よくわからないので、円卓会議の設置を何のために持っていきたいのかということがあとで議論できればいいのではないかと思います。以上です。

(司会) わかりました。その点に関しては、このあとまた事務局の方から説明がありますので。大体5分を守っていただきたいと思いますが、少し長い方もいらっしゃるので、十何名いらっしゃいますので、できるだけ自己管理をお願いします。次は中下さん、お願いします。

(中下)
  • 「ダイオキシン・環境ホルモン国民会議」では、環境ホルモン問題がこれまでの化学物質対策とは違い、予防原則に則った新たな政策提言が必要であると考えている。
  • これからの化学物質対策として10の提案がある。(1)被害者を円卓会議のメンバーに加える、(2)予防原則を法制化する、(3)子供に対するリスク削減政策、(4)化学物質政策における生態系保全の枠組みの位置づけ、(5)負の遺産(POPs)の処理、(6)食品の安全と上流でのダイオキシン対策、(7)有害廃棄物対策における拡大生産者責任(EPR)の実現、(8)情報公開の徹底、(9)分かりやすい情報提供、(10)リスクコミュニケーションの推進。

 ダイオキシン環境ホルモン対策国民会議の事務局長をしております中下と申します。私は本業は弁護士で、弁護士になりまして22年になります。
 ここにありますように、もともと弁護士になってから女性の権利問題を中心に取り組んでおりましたが、3年前に『奪われし未来』という本を読んだことから、私たちの子どもたち、将来の子どもたち、あるいは野生生物の存続にかかわる重大な問題ではないか、このままで私たちは看過していいのだろうかという思いを非常に強くいたしました。仲間の女性弁護士に呼びかけましたところ、158名の女性弁護士が呼びかけ人になりまして、1998年9月にこの国民会議を設立いたしました。
 設立にあたりましては、私ども法律家だけでは、全く化学のことも素人ですので、わからないので、科学者の方、医師、作家の方々といった50名のさまざまな発起人の方々にご協力をいただきまして、主に政策提言をしていこうというNGOとして設立いたしました。代表は立川涼、現愛媛県の環境創造センターの所長、前高知大学の学長が務めております。
 環境ホルモン問題は、従来の毒性概念と全く異なる新しい概念ではないかと思っております。そうしますと従来の化学物質対策では抜本的対策はできないのではないか、従来の対策の基本である科学的な因果関係の立証主義-それももちろん大事なことですが-、それだけでは解決できない問題をはらんでいるのではないか。その意味では、予防原則に立って、有効な対策を迅速に講じていくことが必要で、そのためには批判をしているだけではなく、具体的な政策を提言していくNGOがどうしても必要だろうということでつくったNGOです。以来、ダイオキシン対策について緊急対策提言を3度にわたって行いました。環境庁の真鍋長官とは、その際にも意見交換をさせていただいております。
 さらに先程、崎田さんのお話の中にもありましたように、ダイオキシン問題の抜本的な解決には、やはり循環型社会を構築することが必要であるということで、循環型社会の基本法に関する立法提言という提言をさせていただいております。
 それからPOPs条約につきましては策定過程から私どもはかかわっておりまして、POPs廃絶日本ネットワーク(JPEN)というNGOのネットワークをつくり、私は事務局長を務めさせていただきました。ジュネーブ、ボン、ヨハネスブルグの各会議にもNGOとして、さまざまな提言、ロビー活動をいたしました。
 私どもは、政策提言を行うNGOですが、その立脚点は、もの言えぬ未来の子どもたち、もの言えぬ野生生物の立場になり代わって私どもが政策を提言していくというスタンスで取り組んでおります。現在会員が約1400名ですが、約3分の1を専門家が占めております。やはり政策提言をするには専門家が協力することが不可欠かと思いますので、私どもの会議ではそういったかたちでいろいろな方のご協力を得ながらしております。
 これからは私の個人的な意見ですが(もちろん会員の方のご意見も踏まえております)、私どもは具体的政策提言をモットーとしておりますので、10の具体策についての提案を申し上げたいと思います。
 第1に円卓会議に関することですが、化学物質問題というのは被害者の方を避けては通れない問題であると思います。化学物質政策を考えるときには被害者の方を必ず加えて、ご一緒に政策を考えていく必要があるかと思いますので、この構成メンバーの中に被害者の方をぜひ加えていただけたらなと思っております。
 2つ目は、先程申し上げたとおりですが、予防原則を化学物質対策の基本に据える必要があります。このことを、私どもは法律で明記をしていく必要があるのではないか、そのためには「化学物質安全基本法」のような基本法を制定するということも視野に置いて考えなければならないのではないかと思っております。予防原則を実施していくにあたっては、科学だけでは不十分であって、科学を補完するものとしての社会的な合意形成が大変重要であって、そういった意味で、この円卓会議がそういった合意形成の一助になればと私も大変期待をしております。
 3つ目は、子どものリスク削減のための特別策を早期に講じる必要があるということです。子どもは決して小さな大人ではありませんし、発達過程にあるわけでして、コルボーンさんの本によりますと、「シングルヒット」といわれているような、発生のある一時期の曝露が不可逆的な影響をもたらすことがありますので、「小さな大人」ということではなく、子ども独自のリスク削減策を別途講じていく必要があるのではないか。G8の環境大臣会合で、マイアミ宣言で採択されました。子どもの環境保健に関する事項が含まれておりますが、そういったものを実現していくための対策を日本国内で早期に実施する必要があると思っております。
 4つ目は、野生生物の観点からいいますと、生態系保全の枠組みを化学物質政策の中にもっと強力に盛り込んでいく必要がある。「PRTR法」の中には生態毒性の考え方がようやく入りましたが、まだ「化審法」の中にはそのような枠組みが入っておりません(今、環境省で検討会がなされており、私も参加させていただいておりますが)。「農薬取締法」も非常に不十分なかたちですし、「大防法」、「水濁法」なども然りです。そういった意味で、生態毒性の考え方を盛り込んでいくことが必要だろうと思います。
 5つ目は、負の遺産の処理です。これはPOPsのことですが、これを地域住民の合意に基づいて透明な手続きで進めていただきたいということです。POPs条約の批准に伴い、例えば失効農薬の回収や適正処理といった現行にないような規定も併せて整備をしていく。POPs条約の要請を満たすというだけではなく、さらに前向きに。だんだん時間がなくなってきたので簡単に。

(司会) 個別の提言については、このあとこの会議はずっと続きますし・・・。

(中下) わかりました。項目だけ少し。

(司会) ここに何を期待するかという、もっと大枠の話でお願いしたいと思うのですが。

(中下) そうですか。では後は項目だけ申し上げます。
 あとは、6番目にダイオキシン対策ということで、ダイオキシン対策については、積み残しの食品対策が大変重要な問題だと思います。それから、上流対策を強化していくことが必要である。
 7つ目は、有害廃棄物対策について、先程、崎田さんもおっしゃいましたような有害化学物質の拡大生産者責任(EPR)を実現していただきたい。
 8、9、10は大体同じような内容ですので合わせて申し上げますが、情報公開を徹底するということと、情報提供をわかりやすいかたちでやる。これは皆さんが先程来ご提案のあったところです。現状では毒性情報と毒性評価情報についても不十分なかたちでしか公開されておりませんので、これはぜひ公開をしていただきたい。そして表示制度を整備していただきたい。統一化し、わかりやすいかたちで表示をする。それからリスクコミュニケーションの推進ということです。
 申し訳ありません、時間がオーバーしましたが、以上のとおりです。

(司会) 時間がなくて申し訳ないのですが、最初に申し上げましたように、今まで自分がどのようなかたちで化学物質の関係に携わってきたかということと、その中で日ごろどういうことを感じておられるのか、そしてこの円卓会議に何を期待するかという大枠の話をいただいて、また個別の話につきましては、このあと何回か予定されておりますので、そこでまたテーマとして出していただければと思っております。すみません、途中で話を折ってしまって申し訳ないのですが。
 では村田さん、お願いします。56分ごろをめどにお願いします。

(村田)
  • WWFの有害化学物質問題に対するビジョンは、「有害工業化学物質、農薬など(特に内分泌攪乱、生物濃縮、残留性をもつ物質)による生物多様性への脅威を一世代の内(遅くとも2020年まで)に終息させる」としている。
  • 化学物質問題に関する早急な包括的見直しが必要。円卓会議で環の国「化学物質憲章」をまとめられると良い。

 WWFの村田と申します。まず、このような円卓会議という場を設けられました環境省の方々のご努力を非常に高く評価したいと思います。前例のないことを初めてこういうかたちで開いたということは、この結果がどうなるかは別として、非常に意義のあることだと私は個人的に思っています。
 まず、時間がありませんので、WWFがどのようなことをしているのか、ごく簡単にご紹介して、後半に期待することをお話ししたいと思います。
(以下スライド併用)

 ご覧いただくように、私どもは民間の自然保護団体で、一般の個人や団体、企業の方々からの支援で活動しております。活動の内容としましては、設立当初は主に自然保護・野生生物の保護を中心とした活動をしてまいりましたが、やはり自然は人間活動と切り離して守ることはできません。それから、問題が非常に地球規模になってきておりますので、従来の自然保護プロジェクトに加えて地球環境問題にも非常に力を入れてきております。

 WWFの化学物質問題に対する基本的な取組の方向、どうありたいのかを、ネットワーク内でビジョンとして掲げているものです。工業的に生産される有害化学物質、農薬などに関して、特に内分泌かく乱、生物濃縮、残留性がある物質については、生物多様性への脅威を一世代のうちに終息させようと。具体的に言えば、2020年までにこの問題はある程度めどをつけたいということを念頭において、活動しております。

 化学物質をめぐり、市民はさまざまな不安を持っています。すでにここにいらっしゃるどなたを調べても、祖父母の時代にはなかった数多くの化学物質が体の中にすでに含まれております。それらすべて悪いとは申しませんが、問題は、それらの安全性がほとんど評価されていない状況です。その他ここに挙げたようなさまざまな不安を抱えております。

 そうした市民の不安に対し、専門家の方々の中には、「これまでのやり方でいいのだ、もちろん問題があればその都度、軌道修正してきているではないか。」と答える方がいます。本当にそれでいいのでしょうかということが、まず私どもの問いかけです。

 少し時間軸を伸ばして考えてみますと、例えばそこにお示ししたように、1970年から、過去30年間の世界の化学物質生産高の推移ですが、急速に伸びています。このグラフのスタート時点の1970年は、すでに公害が顕在化していた時期ですので、いかに現在の生産高が大きいか分かります。

 世界的な傾向の次は、国別の人口1人あたりどれだけ化学物質を消費しているかを比較したものですが、ご覧いただくように、日本がダントツに高くなっています。例えばインドと比べると50倍も多くの化学物質を消費していることになります。

 以上お見せしたのは現在までの状況ですが、これから先どうなるかということで、2020年までの生産予測をお示しします。人口の伸び以上に化学物質の生産が増えると予想されています。

 こうした状況の中で、本当に従来どおりの化学物質管理の考え方で良いのでしょうか。今、ダイオキシンの問題、環境ホルモンの問題、シックハウスなど、さまざまな問題が出てきています。私たちは化学物質のリスク管理に関して、未知のゾーンにすでに深く入り込んでしまっているのではないか。そういった認識のもとに、これからの化学物質のあり方を考え直さなければいけないのではないかと思っています。

 そこで、このような場こそ、行政、産業界、市民が同じ席で議論できるまたとない場ですので、この中でこれから化学物質をどう管理していくのかという基本的な方向を、「環の国」の化学物質憲章として議論し、取りまとめられたらすばらしいと思います。以上です。

(司会) ありがとうございました。もうひとかた、生協の山元さんが委員でいらっしゃるのですが、今日はご用がありまして欠席ですので、後程、山元さんのご意見も事務局からお伝えしていただこうと思います。
 次に産業界に移るのですが、順番はこのとおりでよろしいですか。出光さんからで。

(瀬田) 恐れ入ります。最初に私が話をさせていただきたいと思いますが。瀬田でございます。

(司会) ではまず瀬田さんにお話しいただいて。

(瀬田) その次に河内さんということで。

(司会) わかりました。それでは瀬田さんお願いします。

(瀬田)
  • 化学工業は過去に公害問題を起こし、以来共通の重要関心事としてその解決と予防に取り組んできた。自主管理活動を行うレスポンシブル・ケア(RC)活動や、開発におけるグリーンケミストリー(GC)を推進している。
  • 化学物質は社会に貢献している反面、化学工業の努力が社会に充分理解されていない。この理由として、「化学」を説明することが難しいことがあげられるが、社会に対して分かりやすい形できちんと説明してきたかという反省に立ち、円卓会議を良い機会と考え今後とも「環境・健康・安全」に最大限の努力をしたい。

 瀬田でございます。

(司会) 資料はございますか。

(瀬田) はい。こういうブルーの印が付いたものがございます。それからもう1つ、「レスポンシブル・ケア(RC)報告書」というのがこの中に、旭化成のものですが、入っておりますので、これを片手にお話をお聞きいただければと思います。
(以下スライド併用)

 私は、最初のスライドに示しております通り、旭化成に在籍しておりまして、同時に日本化学工業協会の広報委員長をしております関係でここに座らせていただいておりますが、本日は個人の資格でということですので、できるだけそれに沿ってお話をしたいと思います。

 まず私は、今回の場を、化学と社会とのかかわりでとらえていきたいと思っております。その意味で、この3つの視点からのご説明をしたいと思います。
 1つは化学企業の取り組み、2つ目は化学企業が進める環境保全活動、これは具体的にお話をしたい。最後に、この円卓会議の目的ということで私は理解しておりますが、情報共有と相互理解、これに対する化学企業からの努力ということでお話をしたいと思います。
 OHPは10枚ぐらいあります。本当はもっと削ったのですが、前のバージョンで申し訳ありません。できるだけ飛ばしてまいります。

 まず1つは、環境問題に関する化学企業の取り組みということですが、過去のある時期、公害問題がいろいろなかたちで出てまいりまして、深刻な状況に直面して以来、化学企業はその解決、予防に真剣な目を向けてまいりました。環境安全投資、研究費を含め、大きな資源を投入し、その結果成果も著しく上がってきたと思います。一方では、日本が世界に誇る公害防止技術、環境保全技術、環境浄化技術も開発するに至りました。

 現在の化学企業が、今や環境に関する明確な認識を大前提にして事業活動を行っていることははっきり申し上げていいと思います。さらに、これは国際的にそうなのですが、化学企業はある時期から環境・健康・安全を、根本的に見直す新たな認識と理念の時代に入ってきているといえると思います。

 次に、化学企業が進める環境保全活動についてご説明いたします。いろいろな活動をしておりますが、2つをここでご紹介したいと思います。両方ともカタカナで申し訳ないのですが、1つはレスポンシブル・ケア、もう1つはグリーンケミストリーです。
 このレスポンシブル・ケアにつきましては、化学物質の取り扱いに関する化学企業の自主管理活動であります。具体的には、化学物質の「ゆりかごから、リサイクルを経て墓場まで」、これは私が勝手に使っている言葉ですが、その全ライフにわたってトータルの環境負荷を最小にするというのがレスポンシブル・ケアの精神であります。
 グリーンケミストリーと申しますのは、研究開発の考え方でありまして、化学物質ならびにその生産技術の開発において、開発される製品の全ライフにわたってのトータルの環境負荷を最小にするための研究開発の考え方であります。

 レスポンシブル・ケアに関しましては、このあと河内委員、あるいは田中委員からお話が出ると思いますが、そのいわば前座として旭化成の例を、お手元のパンフレットをベースにしてお話をしたいと思います。
 この活動で、旭化成グループと申しますと、関連会社を含めて、工場と研究所を全部合わせて百数十の事業所があります。これを共通のルールで、毎年、全社方針、全社目標を設定し、それを各工場にブレークダウンしてチャレンジしてまいります。

 このようなことを社長出席のもとで設定をして、最終的にこの結果を1年後に集約するわけですが、そうしてまとまったものを3重で社内監査をいたします。さらに「RC報告書」が編集されます。

 かくしてこの本が編集されるわけですが、ある時期は全社の150~200人ぐらいの人間がほとんどかかりきりになるということです。
 ここで大事なのは、47ページ分までは社内でやってきて、その中身を社外監査にかけていることです。お手元の資料の48ページ、一番最後をご覧いただきたいのですが、これが第三者検証の最終的な意見書、社外検査報告書であります。

 この社外検査は大変徹底したものでして、そこに書きましたが、非常に厳しく中をチェックしていただいております。

 このほかに、環境安全設備投資を、これは中にも書いてありますが、過去30年で累計1200億円、毎年平均40億円を投入しております。さらに、これに関連する人件費等をほぼ同額かけています。ここ5年間の旭化成の平均の年間当期利益(単独)が150億円ぐらいですので、その大きさがこれでおわかりいただけると思います。

 こうした環境安全に関する全社を挙げての取り組みは旭化成に限ったものではなく、多少内容の違いがあっても、化学企業は今どこでもやっているところであります。
 すみません。飛ばしていきますので、5分で何とかしたいと思います。

 次に、グリーンケミストリーです。これは先程申しましたように、化学物質ならびにその生産技術の開発において、開発されるもの全ライフにわたっての環境負荷を最小にするための研究開発であります。

 グリーンケミストリーには、廃棄物をなるべく出さない、原料をなるべくむだにしない、人と環境に害の少ない製品にする、省エネ等々の要件があります。

 このグリーンケミストリーの活動は国際的な活動で、今日本でも産学官の大半の研究者が目指している化学であります。日本はそのリーダー役を果たし、国際シンポジウムも開いておりますが、先ごろのノーベル化学賞を受賞された野依教授の理想はまさにこのグリーンケミストリーです。グリーンケミストリーにおける日本のリーダーの1人でもあられます。

 最後に、情報共有と相互理解のために化学企業からどういう努力をするかということです。化学の貢献とは、「利便性」か「文明の基盤」か、いろいろと意見は分かれるところですが、社会への貢献は、先程川口大臣から非常にはっきりとおっしゃっていただきましたので安心したところです。そうした中で、化学企業の努力がなかなか社会に理解されないのはなぜかと考えてみますと、その理由の1つは、化学を簡単且つわかり易く説明するのは結構難しいのです。これははっきり申し上げて大変難しい。しかし、もう1つの理由として、それでも化学企業は自分たちの努力を社会に対してわかりやすいかたちで本当にきちんと説明してきたかということになりますと、やはり反省するところが多々あります。

 今回大変よい場を与えていただきました。私は、社会と化学とのかかわりという立場から以上のようなことを考えていきたいと思っております。市民の皆様方からのご指摘があって改善に成功してきた例は過去にもたくさんございますし、一方で、自主活動は自由意思を刺激いたしますので効果が大きいと思います。化学企業は、真摯に、真っ当に、真剣に努力をして参ります。

 最後のスライドですが、いっそう「環境・健康・安全に最大限の努力を払う」ことをあらためてお約束したいと思います。以上です。

(司会) ありがとうございました。次に河内さん、よろしいですか。

(河内)
  • 化学業界は、化学物質の新たなリスクである内分泌攪乱物質について、科学的な研究を進めている。情報公開は進めているが必ずしも充分ではなかったとの反省もあり、さらに円卓会議で学びたい。
  • わが国ではリスクアセスメントの専門家が不足している。リスクアセスメントのツールをどう制度へ反映させるかが確立されていない。市民は化学物質のリスクについてどこまで分かっていて、どこが分からないか、リスクにどう対処するかなど、リスクコミュニケーションを進めつつ、化学業界としてもこの問題に取り組んでいきたい。

 河内でございます。日本レスポンシブル・ケア協議会に携わっておりますので、その立場から少し発言させていただきたいと思います。
 冒頭、大臣からもお話がありましたように、現在、いろいろな化学製品が開発され、多くの分野で使われていて、いまや日常生活で不可欠なものになっております。しかしながら、取り扱いしだいでは、人の健康、環境への影響が懸念されるわけですので、ここでいかにこういうことを管理していくかということが重要だと思います。もちろん法的な規制がベースになるわけですが、化学物質の種類も用途も非常に複雑になり、技術の進歩により発生する新たな問題等を考えますと、一律に法規制で管理するやり方では十分な管理が非常に困難になってきました。
 その化学物質を一番よく知っている産業界自らが適正な管理を行い、規制と自主的な活動をうまくかみ合わせることが非常に重要ではないかという趣旨で、自主的な活動として、今日は分厚い資料を2冊も入れさせていただいているのですが、いわゆるレシポンシブル・ケア活動をしてきているわけです。この活動は世界的な活動で、日本化学工業協会としても6年前から取り組んでいるわけですが、46か国が同じような国際的な展開を図っているところです。

 少しこの取り組みについて日本化学工業協会のPRをさせていただきたいのですが、工場からの排出という面では非常に今までも削減努力してきているわけです。ここ数年の成果としましては、有害大気物質12物質について、1999年までの3か年で平均48%の削減実績がありまして、引き続き2003年までにさらに43%の削減に取り組んでいるところであります。

 産業廃棄物の削減についても、2010年度の最終処分量を1990年度比80%削減するという目標を掲げて、すでに2000年度の実績として90年度比70%削減しております。
 地球温暖化対策についても、エネルギー原単位を2010年度には1990年度比90%にすることを目標としており、2000年度の実績として94%に達しております。こういう対策にはどうしても投資が伴うわけですけれども、日本レスポンシブル・ケア協議会の会員会社だけで2000年度で740億円という投資をしているわけです。

 工場の取り組みというのは、工場から排出するという意味では非常に限定しており、管理がしやすいわけですが、我々化学産業から出てきた製品は次から次へと加工されて最終製品にだんだん変わっていくわけです。最終製品というのは一般消費者の皆さんが実際に目に見えるようなところに多く使われているわけですが、それが使われて最終的に廃棄物として捨てられる。この全サイクルについての安全性を見ていかなければいけないという非常に複雑な問題を含んでおります。

 また、次から次へと新たな安全性の視点も出てまいります。例えば先程お話がありましたような内分泌かく乱物質等もまた出てきておりますが、このような問題についてはなかなかすぐ科学的にどうだということは解明されない。この内分泌かく乱物質についても、専門家の間でもまだなかなか結論が出ていないということです。
 こういうことで、やはり科学的にしっかりと原理原則を見ていかなければいけないということで、いわゆる世界の化学産業界の中で、レスポンシブル・ケアの活動の一環として既存化学物質の安全性データを充実させるという取り組み、それから、やはりまだ化学物質の基礎的な研究がこれからもまだ必要だろうということで、今いろいろなかたちで取り組んでおります。このようなことについても、もちろん行政はどんどんやっておられるのですが、産業界自身としても、経済的な負担を伴った取り組みを行っております。

 このような取り組みはなかなか皆さんにわかっていただきにくいといいますか、いろいろなかたちでレポートや報告会も行っているのですが、まだ自己満足のところが若干あるのではないかと反省しています。こういう機会をとらえて、ぜひさらに紹介を進めていきたいと思っています。

 産業界としては、経営者自らが自己管理、自己責任の考えのもとで、人の健康や環境に取り組んでいくという強い決意をもって進めていることをご理解いただきたいと思います。
 今後の課題について少し述べさせていただきたいと思うのですが、1つは、リスクアセスメントの教育ができるような専門家が欧米と比べると力不足ではないか。毒性学の専門家という面で見ても、やはり不足しているのではないかと思います。
 それからリスクアセスメントのツールも、いろいろ検討はされているのですが、最後はどういうかたちでまとめ上げて制度の中に組み入れていくのかということも非常に重要な問題だと思います。

 それから、やはり一般の方が化学物質について、ここまでがわかっていて、こういうことは化学的にわからない、わからない点はどういうリスクがあって、そのリスクをこういう考え方で対応していくのだということが、お互いにわかるようなリスクコミュニケーションができるような人もこれから必要ではないかと思っています。どうもありがとうございました。

(司会) ありがとうございました。それでは出光さん。田中さんが先にされますか。では田中さん、お願いします。

(田中)
  • 当協議会では、会員の約60%がレスポンシブル・ケア(RC)年次報告書を発行し、環境省のガイドラインを踏まえ、取り組みの目標・実績を絶対値で表現したり、サイトレポートを発行するなどの改善を行っている。また、RCの内部監査や専門家による検証のパイロット事業を行っているが、安全性評価の検証が課題となっている。
  • 分かりやすい情報の提供を行い、倫理的な行動を継続し、化学物質の安全にさらに強くなるよう研究者の養成につとめながら、研究活動をより一層推進し、持続可能な発展に貢献したい。

 それでは、私から報告させていただきます。「田中」と書いてあるこのような資料と、当社のRC報告書、それから協議会の資料があります。これを全部見ていただくのは大変ですから、あとでご覧いただくということで、「情報開示とリスクコミュニケーション」というパワーポイントでお願いします。
(以下スライド併用)

 今日は時間がございませんので、パワーポイントの方だけでご説明申し上げたいと思います。私は、日本レスポンシブル・ケア協議会、これは日本化学工業協会の中のレスポンシブル・ケア(RC)を推進する会と考えていただいたら結構ですが、この企画運営委員をやっておりまして、今発表いたしました河内が委員長をつとめております。私はレスポンシブル・ケアの導入の時点からやっておりました。本日出席してこのような機会を与えていただき、しかも環境大臣のもとでご報告できるということを大変光栄に思っておりますし、ありがたいことだと思っております。

 私は、実は当協議会のレスポンシブル・ケアの報告書作成、あるいは監査制度検討の専門委員として、過去数年にわたって取り組んできましたので、情報開示とリスクコミュニケーションという観点からお話しさせていただき、そしてレスポンシブル・ケアの取り組みの実例をお示ししたいと思います。そして最後に、これからのRCはどうあるべきかをお話しします。

 まず、先程お話ししましたように、年次報告書は、95年からレスポンシブルを始めておりますから、その結果ということで96年から発行しております。会員の中では、現在60%ぐらいが環境報告書を作るようになっておりますし、環境省のガイドラインにも沿った報告書も増えております。また、化学物質の安全にも触れる報告書になってきておりますし、数値は絶対値で表現するようになってきております。
 それから、我々素材メーカーは工場が環境負荷を持っているわけですが、そのサイトでの環境報告書も出来上がっております。我々の環境報告書というのは、「レスポンシブル・ケア報告書」という名前でもやっておりますが、やはり化学会社は事故・災害が環境に影響を与える場合が多いわけです。このようなものも含めて報告書の中に書いております。
 レスポンシブル・ケアのポイントは、化学物質の安全、事故災害、労働災害、保安防災、リスクコミュニケーションという5つの観点から取り組んでいる活動であります。RC活動報告会をやりますと、今日出席されている角田さん等々からも意見をいただいておりますけれども、市民からは平易な内容にしてほしいとか、事故が起こってもその対策はどうだったのですか、その効果は上がったのでしょうか、外部に影響を与えたのはどうなったのですか、そういったことを教えてくれませんかという要望が出ております。
 それから、環境省を中心に報告書表彰制度もあります。こういうものに応募するのですが、落第生が当業界では多いかもわかりませんが、応募したすべてに対してコメントをいただければさらにいい報告書になるのではないかと思っております。

 それから監査ですが、先程お話がありましたように、この報告書に基づいて第三者監査を検討しておりますが、全企業がやっておりますのは内部監査とトップ診断、そしてまとめた報告書の検証という3段階でやっております。現在検討を行っておりますのは、化学業界の専門家が各会社を回りまして検証するという検証パイロットです。やってみて気がついたことですが、化学物質の安全評価を検証するというのは難しいなと思っております。
 それから、自主活動がきちんとやられているのであれば、検証しろ、監査を受けよと言われるのですが、リスクコミュニケーションをしっかりやれば、こういうことは市民の皆様はおっしゃらなくなるのではないかと思っております。

 当社の取り組みということで、実はOHPとパワーポイントを交互にできると思ったらできないということですので写真でお見せできませんが、理念と方針、持続可能な開発を目指すのだということを決めまして、常に改善するということで、いろいろな数値を改善してきました。
 具体的な例は、今よく言われておりますように、エンドパイプからインプラントに移しておりまして、新しいプロセスの開発をやりました。複合発電もどんどん入れているということです。

 PRTRは、先程、業界と申しますか、会員全体の話を申し上げましたけれども、この中の有害物質の12物質は、ほとんど当社では取り扱っていませんが、トルエン等を中心として削減を進めてまいりました。2000年度には700トンぐらいになっております。2つの棒があるのは、把握すべき物質の量が増えたので途中から増えているグラフであります。

 廃棄物も、当社では、2010年には99年の5%未満にしよう。それから、中間年度として書いてありませんが、2005年にはその半分ぐらいは持っていこうということにしております。

 省エネも、先程と同様に、業界では10%の効率の向上でいくことにしておりますが、当社は15%を目標に進めております。

(司会) すみません、この場に何を期待されているかということについて少し意見がほしかったのですが。

(田中) 最後に、これからの日本レスポンシブル・ケアといたしまして、環境コミュニケーションを通じて我々の活動をやっていくべきだろう。自主活動を、皆さんの意見を伺いながら進めていくのが理想ではないか。そして先程も出ていましたが、わかりやすい情報。それから、やはりいろいろ言いましても自主活動ですから、倫理的に正しい行動をやろうではないかと思っております。
 しかし、残念ながら化学物質の安全について、化学業界にいながら強くはありません。何とか強くなりたいと思っております。研究者にも化学物質の安全に強くなってもらいたい。できましたら大学の化学科の近くで化学物質の安全、動物を扱う方がいれば、門前の小僧ではありませんけれども、強くなるのではないかと思っております。いずれにしましても、持続可能な発展に貢献したいと思っております。以上です。

(司会) ありがとうございました。時間がなくて大変申し訳ないのですが、個別の中身についてまた後日十分ディスカッションする機会があると思いますので。今やっていますのは、どちらかといえば自己紹介ということで、自分がどのようにかかわってきたのか、何を考えているのか、その辺のところを自己紹介のかわりにお話ししていただくということです。いろいろ言いたいことはよくわかるのですが、別途そのような機会があると思いますので、恐縮ですが時間を守りながら、お願いいたします。

(出光)
  • 石鹸や洗剤は、製品の使用そのものが環境への排出となる。環境面では河川水質と健康影響、生態系影響の視点があり、これまでに多くの消費者から意見が寄せられ改善を図ってきた。
  • 都市の人口動態、ライフスタイルの変化、降雨による河川の変化などモニタリングを続け、洗剤成分のリスクアセスメントも推進して行く。情報発信しているつもりであるが、足りないところについて伺い、環境負荷低減に取り組みたい。

 手短にやらせていただきます。私は、日本石鹸洗剤工業会の環境保全委員会を担当しております出光でございます。
(以下スライド併用)

 石鹸洗剤工業会というのは、とにかく作っている製品一つ一つの使用そのものが、言ってみれば環境に流れていく。つまり、内容物は使えば下水を通して河川に行く。容器類は家庭のごみとして排出されるということで、従来からも、環境という側面で見ると、ある意味ではわかりやすい業界ということで、それだけに有田さんのお話にもありましたが、「洗剤問題」というようなかたちで、従来もいろいろご意見・ご批判を承っていた業界です。
 ただ、私どもはそういう中で、いわゆる毎日使用するということで、量が多い。いろいろな意味で環境に影響を及ぼすということで、課題として大きく2つあると思います。1つは、河川の水質にどのような影響を及ぼすか。もう1つは、製品そのものの人間への安全性の問題です。
 基本的に河川の問題については、当業界製品の中でも量の多い衣料用洗剤を中心にお話しさせていただくと、まず1つは発泡などの、いわゆる当初の界面活性剤の分解性の問題があって、これは生分解性の悪いハードのアルキベンゼン(ABS)からリニア(LAS)に変えていったとか、あるいは湖沼での富栄養化の問題で無リン洗剤への転換をしてきたというのが大体30~20年前にかけての取り組みです。

 その後、消費そのものの影響の低減を図るということで、いかに源流の対策をするかということです。私どもは源流対策ということで、いかに濃縮化するか、コンパクト化するかという取り組みをやってきているわけです。例えば1回あたりの界面活性剤の量は5年ほど前からすると半分ぐらいになっております。機能を落とさないで、例えばバイオの技術を適用するとか、最適な界面活性剤の組み合わせを図るなど、いわゆる処方の改良で負荷を下げるという取り組みです。片方は、容器の廃棄量で、ブルーで示すところが絶対量です。96年をピークにして2割ぐらい削減されておりますが、グラフの上部に示している部分は、もしコンパクト化、あるいは詰め替えを出さなかったらどうなったかという仮想の数値ですが、それで見ると、やらなかったときと比べて今の実生産量は45%ぐらい減っています。これが環境に対する技術的ないろいろな取り組みの例であります。

 更に自主的活動として、私どもは河川の影響を大きくとらえておりますので、特に人口の密集している大都市の河川の界面活性剤のモニタリングをずっと続けております。
 その横の方には、その界面活性剤がどのようになるだろうかというモデルそのものを作って、それと現実のデータとの比較なども行っております。モデルは若干高めに出るのですが、ある意味ではそういうものを使うこと自身が安全サイドに結論を出してくる。そのような見方をしております。
 その他、水生生物に対する影響も新しい物質が出てきたときは必ずやっておりますが、最終的には、生態系リスク評価を今年の10月に発行させていただいているのですが、ここでは河川のモニタリングデータと予想される無毒レベルとの比較の中で、現時点においては河川での界面活性剤の生態系への影響はきわめて低いレベルにあるという認識をしております。

 2番目の身体の方は、私どもも独自にいろいろやっていますが、どちらかといいますと国内外の第三者機関の科学的な検討をベースに、使用ベースでは問題ないという認識をしております。

 私どもがもう1つ申し上げたいのは、先程の有田さんの話にもありますように、例えば花王の場合、消費者からの相談、苦情、批判、要望などの件数は年間9万件ぐらいあります。他社さんにもそれなりのものがございまして、その中で安全や環境というのは大体2%ぐらいのレベルでの相談です。最近では容器の廃棄の問題や、原料で、例えば狂牛病があればあの製品でどうかとか、製品の安全がどうかというようなご相談があります。
 そういう取り組みをしておりますが、今後考えていかないといけないのは、都市の人口動態や環境、私どもでいえば河川というのは降雨量などいろいろな問題があります。国民の生活スタイルや、私たちが開発する新しい商品といったものが河川にどういう影響を与えているかというモニタリング、あるいはリスクのアセスメントなども継続していきたいと思いますし、もう1つは、ヨーロッパなどでも今、洗剤成分のリスクアセスメント「HERA」を進めておられるのですが、その国際的なハーモニーの中で同時に日本の工業会としても進めていきたい。HPVなどの取り組みも同様に考えています。
 いずれにしても、本日参加させていただきまして、私たちがいろいろな意味で情報を発信しているつもりでも、消費者の皆さんの視点から見ると、こんなところが足りないといった忌憚のない意見を聞かせていただいて、それを反映して、商品改良を含めて環境負荷の低減に継続的に取り組んでいきたいと思っております。

(司会) ありがとうございました。今、産業界、特に化学物質をつくる側という立場から4人の方にお話をいただいたのですが、このあとは化学物質を使う側、ユーザー企業ということで、もちろん個人としての資格なのですが、3人の方に。くどいようですが、今までどのように考えてきたとか、特にこの場に何を期待するか、その辺にぜひ焦点をあてて、使う側でのご意見をいただければと思います。では最初に仲村さん、お願いします。

(仲村)
  • 自動車業界は化学物質の使用者であるとともに、製造した自動車が使用時に排ガスを生じ、その対策も必要となる。化学物質対策には、製造者の協力と市民の協力が必要な場面がある。自動車業界では、環境報告書を発行し、ISO14001を世界的に取得して環境マネジメントを行っている。
  • 産官学による科学的なリスクアセスメントの実施、科学的データの蓄積、その情報開示が必要である。

 自動車会社で環境安全の役員を担当しております。今日は化学物質の使用者という立場でいるわけですが、実は先程、有田さんからお話がありましたように、自動車というのは、例えば物質に関しては使用者であると同時に、ガソリンをHCとかNOxに変える生産者でもあるわけです。
 私も入社以来、バックグラウンドはエンジニアでございまして、排気ガスをなくす技術にずっと取り組んでいるわけです。そちらの方は私の代ではパーフェクトではないにしても、次の世代には限りなくゼロに近づけることができるような感じがいたします。
 ただ、化学物質の管理に対して、使用者としての立場でも、パーフェクトにするためには、工業用の化学物質の生産者およびいろいろな社会、市民の方々を含めてご協力をいただかないとできないところが多々あると思っております。
 では自動車の中でどのような管理がされているのかということを少しご紹介しながら、最後に私の考え方を、これに望む希望のようなものを申し上げたいと思います。
 お手元に「環境報告書」があると思います。たまたま日産自動車のを持ってきておりますが、これは先日、環境報告書大賞をいただきまして、ですからトヨタさん、ホンダさんからも文句は出ないと思いますが(笑)、これに沿って少しご説明したいと思います。
(以下スライド併用)

 自動車の活動は、地域的に全世界に広がっておりますし、先程の生産財の管理から、つくる工程、使用工程、廃棄したあとの処理まで、非常にたくさんの人がかかわりあうわけです。1つのカーメーカーでも何万人がかかわりあいます。そこで、きちんとしたフィロソフィーと実行の方針をつくるということが非常に大事です。これを世界各国に翻訳して、オペレーションの徹底をさせています。これはお手元の報告書でいいますと6ページほどにございます。

 8ページをめくっていただきたいと思いますが、各地で生産にかかわるところ、あるいは実際の生産活動があるところはすべてISO14001を取っておりまして、それが世界にいかに広がっているのかという例であります。

 一方、世界のアクティビティを、環境マネジメントのもとにフォーカスするといいますか、ベクトルを合わせるために、ちゃんとした組織をつくって活動する必要があります。これはその組織の例で、もちろん会社の最高意思決定機関直属で環境統括委員会をつくっております。そのもとで、製品がどうだとか、その製品の廃棄がどうだという事柄ベースや、生産に関する環境エネルギーはどのくらい使用しているのか、有害物質はどのくらい管理されているのかということを含めて管理する。それからリサイクルはリサイクルの項目できちんとやる。同時に、会社というのは、設計開発部門、生産部門、管理部門、営業等がありますけれども、そのファンクション別にも委員会があります。同時に世界各国のオペレーションの中でもそれはある。こんなふうになっています。

(司会) 化学物質に絞って頂けますか。

(仲村) 化学物質に関して言いますと、ずっとあとになりまして26ページにありますけれども、新材料などを使うところは専門の部署がありまして、それがきちんと作業のフローを形成して、それを管理します。材料の専門の部署は大体150人ぐらいの専門のエンジニアがおります。

 27ページにあると思いますが、特にPRTRでは、指定された物質について、すべての物質をトラッキングしております。これは全世界のアクティビティをトラッキングするわけですが、化学物質でいいますと、エチレン、エチルベンゼン、キシレン、トルエンが多いということになっております。

 以上のように環境白書のほとんどが、化学物質管理というよりむしろ排ガスとかリサイクル、そういう製品面に中心が置かれておりますが、化学物質管理に対しても対応システムが出来上がっております。
 私どもとしては、管理についてはほぼシステムは出来上がっている。ですから、どういうのが悪くて、どの程度どうだということを明確にしないといけない。そこに関しまして多少意見がございまして、まずは科学的なリスクアセスメントをきちんとしていかなければいけないだろうと。その面については、1つは我々自身が管理していくためにも定量的に管理しなければいけない。有害・無害というオン・オフの問題ではなくて、どのくらいだったらどうなのかという詰め方をしなければいけないということです。
 もう1つは、化学産業の世界でも学会の協力がいるという話がありましたが、我々の製品分野ではますますその知識が足りないのです。産官学の中での協力がないと使用者側も大変困っているということです。それと第3番目はデータ管理の蓄積をするシステムが大事ではないかと思っております。
 もう1つは情報の開示です。我々は会社として透明性を出すのは非常に大事なことだと思っておりまして、環境問題についても全く例外ではないと思っています。そういう意味でこのような趣旨の会議は大変意味があると思っております。それと同時に、先程のような、我々の手の届きにくいところについても研究が進むことができたらと思っております。

(司会) ありがとうございました。恐縮ですが、あと9人ほど残っておりまして、時間どおりやっても45分かかってしまうのです。はっきり言いまして。ですから、本当に今日、私の進め方が悪いのかもしれませんが、これは自己紹介の場ですので、今までどんなかたちでかかわってきたのか、現在かかわっている中で何が問題と考えているのかという立場で、そしてこの会に何を今後期待するのか。その辺に絞って、あとの方にだんだん時間がなくなって申し訳ないのですが、では、橋本さんお願いします。

(橋本)
  • 電機電子業界では、ステージごとに環境責任を明確化し認識している。PRTRの自主調査等、会員企業への啓発を図っている。自主管理の徹底と環境配慮型製品の開発に注力している。
  • 化学品メーカーとの情報交換が重要。また、環境に適した代替品の開発が望まれる。PRTRデータが公表されるが、円卓会議において、どのようにコミュニケーションを図ればよいかについて議論ができればと思う。

 日本電機工業会環境政策委員会の委員長というかたちで出させていただいておりますけれども、シャープの橋本でございます。どちらかというと化学物質のユーザー業界の代表というかたちですが、とはいうものの実際に化学物質を使うということからいいますと、いわゆるユーザーというよりもメーカーに近い位置づけにあるかと思います。
 今もご説明がありましたが、そういう意味でできるだけ簡単に言いますけれども、PRTRへの取り組みと、有害大気汚染物質の自主管理、環境配慮型商品開発への取り組みといったようなことで、それに対して今後の課題とか、そういったことを手短に話をさせていただきたいと思います。

 資料としては、画面にも出ておりますけれども、このようなパンフレットを用意しておりますので、それを参考にしていただければと思います。

 まず「ステージ別環境責任」として、私たちは商品開発から廃棄物の回収・再生、工場運営、そして情報開示等を含めた社会的責任といったようなかたちで、企業の環境責任という意味では非常に多岐な分野にわたっているかと思います。

 「PRTR法への取り組み」というかたちで、すでに工業会として1998年からいろいろなガイドラインを作り、どのようなかたちで行うかということに対する説明会などもずっと準備をし、進めてきております。

 その結果の概要としては、回収率そのものの率としてはあまりよくはないのですが、大手からはほとんど回答を得ております。このようなかたちで見ますと取扱量の6.6%ぐらいがPRTRの報告対象物質であるというかたちになっております。

 もう1つは、有害大気汚染物質についての自主管理というかたちで、4物質について管理計画を決めて行っております。第1期、第2期と分けているのですが、第1期については、ジクロロメタンは目標未達だったのですが、実際にはかなり削減はしているもののそういうかたちになっているのですが、第2期については大幅に減らすというかたちでの自主管理計画を策定しております。

 それらの物質の大気排出を抑制するために、業界を含めていったいどの程度のお金をかけてきたのかと言いますと、これはほんの一部の例ですが、非常に大きなかたちで投資をし、実際にこのように減らしてきているということを示しております。

 また、私たちは、環境配慮型商品開発というかたちで、省エネや省資源といったものもあるのですが、どちらかというと、化学物質については安全性を重視し、グリーン材料を使うというかたちで、どんなものが実際に部品として、あるいは材料として買うときの中身がどうであるかということと、そしてグリーン調達として、どのような化学物質が使われているのかということまで明確にさせるかたちで、グリーン調達、グリーン材料の使用にポイントを置いて商品開発のコンセプトを進めております。
 別の意味では、省エネなどといったエネルギーの削減についても非常に重要な一面を持っているのですが、今回私たちとしては省略をさせていただきたいと思います。

 「まとめ」として、電機業界の課題と化学薬品メーカー様へのお願いとして書いているのですが、いずれにしても、電機業界としては自主管理をきちんと徹底していくこと、環境配慮型商品の開発をしていくことを課題として挙げております。
 同時に、情報開示の範囲をメーカーも含めてお互いに拡大していき、そして今のところまだ使わざるを得ないけれども使いたくない化学薬品その他もたくさんあるわけで、このようなものの代替品の開発についてもお願いをしていきたいと思います。

 今現在、私たちがこのようなものをまとめていくにあたり、特にこの円卓会議の中でぜひ議論していただきたいと思っているのは、「PRTR法」で、実際に私たちの工場や事業所からどのようなかたちでどのようなものが出ているかということをきちんと公表していくわけですが、それは完全に自然界と同じ数字にはなりません。やはりある程度は出ているものは出ていると思うのです。法規制の範囲内であっても、出ているものは出ている。それをどうコミュニケーションしていくのかというのは、我々側から見ても非常に難しい問題を持っています。きちんと理解が得られるのか。自然界レベルではないということからみると、そこら辺に非常に難しい問題をコミュニケーションという意味では持っているなと思います。このあたりを論議できればと思っております。以上です。

(司会) ありがとうございました。では小林さん、お願いします。

(小林)
  • 流通業は、メーカーと消費者をつなぐ役割をもっている。消費者は、安全、安心、健康、環境は一体のものとして認識している。マスコミ報道やインターネットにより情報が氾濫しているが、これらの情報をいかに分かりやすい表現にして伝えるかという役割もある。円卓会議を通じて各行政の縦割り的ではない情報を通して消費者へ混乱のない情報を伝えていきたい。

 私は流通代表ということですが、特に今回は生活者のお立場の方と、いろいろな産業界、我々はユーザー側ということですが、そういったところをつなぐ役割が一番大きいのかなと理解をしております。
 今日は「小林資料」というA4の3枚組みのものを用意させていただきました。それを参考にしながら、自己紹介を兼ねて、手短にお話ししたいと思っております。

 今、我々流通の現場から見る消費者というのは、確実に変わってきています。それは従来よりも、いわゆるインターネット、IT革命によって情報が頻繁に即直結して消費者に入ります。あるいは、マスメディアを通じてもいろいろな情報が悪い言い方をすると氾濫している。本当に正しい情報があるかというと、何が正しくて何が間違いなのか、ある意味非常に混乱している中にあると我々は認識しております。
 先程、メーカーの方からもいろいろなご意見があるというお話を伺いましたが、私どもも消費者の窓口になっている部署や店舗を通じて、いろいろな情報がわからないということがたくさん入ります。

 「小林資料」の中で、これは電通の2年ぐらい前の古いものになりますが、「環境問題の関心事」という調査結果を見ますと、圧倒的にダイオキシン・環境ホルモンなどの、いわゆる化学物質に対しての関心が一番高いという結果が出ております。

 次に、「合成化学物質に対する理解」はどうかというと、消費者の方はクロかシロか、悪い、有害なのか、安全なのか、そのどちらかしかないような情報の受け取り方をしております。そして、何度も皆さんの方からお話がありますように、安全、安心、健康、環境については、企業はいろいろな線引きをするのですが、生活者の方は一体として考えています。産業側、あるいは我々流通側も、どのような対応を取っていかなければならないのかが、やはり一番大きな問題だと認識しております。

 私は今回、この円卓会議に参加させていただく意義として、あるいは私が願うこととして、私どもの役割は、消費者と製造業をつなぐ役割だということは、従来からありました。
 もう1つは、直接的に私たちから、あらゆる消費者の方がいろいろなレベルで不安に思っていらっしゃることを、分かりやすい言葉に訳しながら、つまり、言葉をやさしく変換しながら伝えることが私どもの役割だと思っております。しかし、それには今まではいろいろな壁がありました。いろいろなデータや情報の開示をしなければいけないのですが、つくっていらっしゃる製造業の立場からするといろいろな意味で難しいことがありました。
 あるいは行政も縦割りが残っていて、現場レベルではどこに問題の解決があるのか袋小路に入ってしまうことが多々ありました。環境省さんが総括をしていらっしゃるこのような場を持っていただくことによって、流通というのは最終のところですので、いろいろな省の方とこのような円卓会議の場で情報の共有化ができることは大変意義があることだと思います。私どもの方からお客様にわかりやすく提供できるというかたちについてもこの場で解決の糸口が見つけられればと期待をしております。以上です。

(司会) ありがとうございました。続きまして、行政側からまた順番に。岩尾さんの方からお願いします。

(岩尾)
  • これまでの発言からリスクコミュニケーションが必要であると感じた。環境省では経済省との協力によりリスクコミュニケーション手法ガイドを作成してきた。機会があればこの場で専門家の話を聞きたい。
  • 同ガイドによると、リスクコミュニケーションには10の誤解があるとされるが、円卓会議ではこの誤解に気をつけて進めていってはどうかと思う。今後、環境省の取り組みについても話題提供していければと思う。

 環境省の岩尾でございます。化学物質と環境を専門として取り組んでいろいろと仕事をしております。今お話を聞いておりまして、やはり必要なのは、言いたいことを言うだけではなく、いかにコミュニケーションを取るかということが大事かと思うのです。
 私どもと経済産業省と共同の調査を基に、横浜国立大学の浦野先生が「リスクコミュニケーション手法ガイド」という本を取りまとめていらっしゃいます。浦野先生には機会があればお話をお伺いしたいと思いますが、同ガイドでは「化学物質のリスクコミュニケーションにおける誤解」を10点挙げておられます。
(以下スライド併用)

 スライドを2つ作っていますが、1~5(前半)の中では、例えば、「化学物質のリスクはゼロにできる」「化学物質のリスクについては、科学的にかなり解明されている」、学者の先生がおられますが、「学者は、客観的にリスクを判断している」などと思われているのは、実は誤解だとおっしゃっています。

 また、「一般市民は化学的なリスクが理解できないのだ」ということも大きな誤解なのです。
 あとは、今日の話にも関連するのですが、8~10にあるように、自分のところの抱えているものを説明すれば得られるのだと思われているようですが、やはり聞く耳を持たない人にはいくら言ってもわからないわけで、私はこのような場がそうした誤解を解くための場にしていけるようなものにしたいと思っているわけです。

 円卓会議は、たまたま環境省が事務局をさせていただいていますが、これは政府全体で21世紀「環の国」づくり会議の報告をいただき、このような円卓会議を開こうということで始めているものです。したがって、各省庁、県の行政担当の方にも来ていただいていますので、いろいろとご議論をいただく場になればありがたいと思っています。
 私の立場からすれば、「PRTR法」の問題や環境ホルモンの問題など、議論していただきたいものがありますので、それは回を重ねるごとに、何か話題提供できる機会があればご提供していきたいと思います。以上です。

(司会) ありがとうございました。続いて大森さん、お願いします。

(大森)
  • 国民の関心が高いダイオキシンや内分泌かく乱物質について、農林水産物への影響を調査し、その蓄積等の科学的知見の蓄積を進めている。化学物質問題に関する正確な情報が伝達されるように、国民に分かりやすい形で情報提供を行っていく。
  • 環境リスクの評価、管理の徹底が必要。また、リスクコミュニケーションの推進が課題であるため、円卓会議でさらに推進されることを期待し積極的に円卓会議に取り組みたい。

 ありがとうございます。私ども農林水産省は農林水産業、農山漁村を対象にした施策を講じているわけですが、そういう点におきまして、良質な環境を提供していくこと、あるいは先程来議論されている安心、安全な食料の提供が、私どもの大きな役割であります。
 そういう中で、先の「環の国」会議につきましては、私どもの大臣も非常に強い関心で臨みまして、そういう点で循環型社会の形成が私どもの大きな課題であると思っておりますし、化学物質対策も非常に大きな重要な課題だと思っているわけです。
 お手元に資料をお配りさせていただきました。私ども農林水産省として、化学物質対策としてどのような取り組みをしているかというアウトラインをお示ししております。
 1つ目は、現在の化学物質対策としては安全な食料の供給を確保する観点から、農林水産物への影響を防止する取り組みです。ダイオキシン・内分泌かく乱物質等について、関係省庁と連携しながら、実態調査、化学的知見の早急な集積、影響防止技術の開発等を進めております。
 2つ目は、農林水産関連物資に関する対策として、とりわけ生産資材として使われている農薬等の問題です。これも多くの方からいろいろご意見が出ておりましたが、「農薬取締法」により、登録の際に毒性試験や残留性試験を義務づけて安全性の確保を図っておりますし、またその使用にあたり安全使用基準を設定して農家の遵守徹底の指導をしております。また、新たな知見が得られた場合には、逐次、リスク管理の改善を図っている状況にあります。
 3つ目は、国民の方々への情報の提供です。正確な情報をいかに的確に伝達していくかということは大きな課題です。ホームページ、あるいは、私どもは消費者の部屋を本省に持っておりますが、そういう場を通じてわかりやすいかたちでの情報提供に努めているという状況にあります。
 今後の問題といたしましては、環境リスクの評価、管理をより徹底していく取り組みが重要だと思っておりますし、併せてリスクコミュニケーションの推進が大きな課題だと思っております。
 この会議で私どもなりにまたいろいろお話をさせていただく中で、このリスクコミュニケーションがさらに推進されることを私どもとしては期待したいと思っておりますし、また、そういう点におきましてこの円卓会議には積極的に対応してまいりたいと考えております。よろしくお願いいたします。

(司会) ありがとうございました。続きまして片桐さん、お願いします。

(片桐)
  • 化学物質問題は、科学的実証には時間がかかるが、汚染が顕在化する前の未然防止が重要である。事業者における適正管理が求められ、NGOは市民への情報提供を行うとともに、協働での取り組みが重要。各自治体でも円卓会議のような場を設けるとよい。
  • 今後の課題として、リスクアセスメント手法の開発、PRTRデータの活用があげられる。

 神奈川県環境科学センターの片桐でございます。私はこの4月まで本庁におりまして、いろいろと話題となりましたダイオキシンの関係や環境ホルモン、PRTR、フロンの対策などの担当をしておりまして、そのときに市民の方々や市民団体の方々、NGOの方々、産業界の方々、学識経験者の方々と話し合いをさせていただく機会がありました。そういう中で、この円卓会議に参加させていただいたのは非常にありがたいと思っております。
 化学物質に関連して考えてみますと、これまで公害事件がいろいろありましたが、環境汚染物質と健康被害の発生の因果関係は科学的な立証に非常に時間がかかるということから、その解決には時間がかかってきたということがあります。今現在では、有害性の解明や因果関係の知見が不十分であっても、汚染の影響が顕在化していないような段階、そういうときの未然防止がこれから非常に重要になってくるのではないかといわれております。
 今後いろいろ考えていかなければいけない中で、環境リスクの低減が、まさに私としては未然防止の方の考え方ではないかと考えております。ただ、こういう中で化学物質の有害性に関しては、あまりにも知見が不足しているのではないか。多くの化学物質のうち、環境中で安全が確認されているものは非常に少ないのではないかと考えております。
 しかしながら、これらの化学物質の中には、環境中で分解がしづらく、生体への蓄積性や濃縮性が高いものがあり、生産工程や消費段階で環境中へ排出された化学物質は、大気、水域、土壌、生体などいろいろな環境媒体に複雑に移動しながら汚染が蓄積、拡大していくケースが非常にあろうかと思います。
 また、これらの化学物質の特徴としては、いったん環境中に出て汚染された場合には復元が非常に難しいということがあります。このようなことを防ぎ良好な生活環境の保全をするためには、事業所における化学物質の適正管理と環境排出量の最小限化を図るとともに、この円卓会議の趣旨にもありますが、NGOの方々や市民の方々に情報を提供し、市民、事業者、行政が共同して環境汚染の未然防止を図ることが重要ではないかと考えております。
 この会議自体は環境省が主体となっておりますが、神奈川県でもいろいろとやっておりますけれども、これが地域地域に広がっていき、各自治体の中でいろいろと会議が進めていかれればいいのではないかと考えております。
 ここで神奈川県の今までの取り組みについて若干話させていただきますと、神奈川県ではいろいろと化学物質については行ってきております。調査については、環境のモニタリング調査を50年代、ほかの自治体と同様、50年代の前半から行ってきましたが、化学物質の使用実態調査も、県内の企業を対象に昭和62年、平成2年、平成8年と行っております。
 また、PRTRのパイロット事業は国からの委託を受けまして、平成9年から進めてきております。また、PRTR法の施行に伴いPRTRデータの活用法の検討委員会もさせていただいております。
 そういう中で、事業者の対する排出抑制対策ですが、神奈川県の場合は意外と早くからいろいろなかたちで化学物質については対策をしております。1つには「先端技術産業立地化学物質環境対策指針」というものがあります。これについては、業種が限られてしまいますが、ハイテク関連の事業所の立地の前に、環境の負荷の低減に向けた指導をしております。これは平成5年10月から指針として行っておりますが、平成2年から暫定指針として行っております。私どもの環境科学センター自体も暫定指針の適用第1号ということで、立地の段階、建設の段階、最終的には環境安全協定、地元の自治会、周辺自治会との間で協定を結びまして、今現在も行っておりますけれども、毎年、総会を開いていろいろな説明もしております。
 また、化学物質に関しては「化学物質の適正な管理に関する指針」を持っております。これについては途中から条例に移行しましたが、その中で、私どもの方としては指針のときは物質として200物質ほど指定をしていたのですけれども、今の条例の中では特に物質は指定していません。要するに規制ではなく「配慮」というかたちになっておりますので、特に「この物質」というかたちでは決めていないということです。ACGIHなどいろいろな法令等で規制されている物質について、毒性情報があるものについては配慮をしていただくというかたちで、通常からいろいろとさせていただいております。
 このようなかたちで行っておりますと、情報提供は非常に必要になりますので、私どもとしては「化学物質安全情報提供システム」を、当初はパソコン通信でやっておりましたが、現在はインターネットで情報提供をさせていただいております。これも私どもだけでは不十分ということで、国立環境研究所などともリンクを張りながら、私どもの方の中に入ってくれば全部情報が出てくるようなかたちにしております。
 また、このように化学物質のいろいろなことを行っていますと、それに向けての研修会などを行っておりますし、環境ホルモン情報集のようなかたちの冊子やパンフレットも作成しながらいろいろと検討を進めております。
 また、リスクコミュニケーションの手法の検討もいろいろと進めておりますが、これについてはまだまだこれからの課題が多いのではないかと考えております。
 今後の課題としては、先程、化学的知見が不足していると話ししましたが、やはり地域におけるリスク評価の手法の開発が一番大きな話になってくるのではないかと思います。個々の物質については一つ一つつぶしていけばある程度はできるかもしれませんが、化学物質全体をどう考えていくのかというときに、その分析法と一緒にいろいろと考えていかなくてはならない問題があるのではないか。環境ホルモンだけを考えれば、もしかしたらいろいろなまとめた方法での評価の方法もあるかもしれませんけれども、それを全体的に考えたときにどうしたらいいのかというのことが一番大きな問題であろうかと思います。
 それから、目の前の話としてはPRTRデータの活用法で、これは私どもでもいろいろと検討させていただいておりますが、来年4月以降、報告がどんどん上がってくるわけですから、これを市民団体の方々の中でどのように活用していくかというのが一番大きな話になってきます。市民団体の方にとっても大きな話であろうと思いますし、企業の方にとっても大きな話になるのではないかと考えております。
 そういう中で、私どもとしては、少し話が長くなりましたが、神奈川県としては今までNGOの方々も含め、報道関係の方も入って会議を開いたケースもあります。PRTRについては円卓のようなかたちで昨年11月ごろに会議を開かせていただいております。それ以外にも、パートナーシップセミナー等、いろいろとやっておりまして、この円卓会議も地域フォーラムを計画しているようですが、ぜひ神奈川でやらせていただければと私としては考えております。もう少し神奈川で行っているのを発展させていけば、いい見本になるのではないかと考えております。以上です。

(司会) ありがとうございました。それでは鶴田さん、お願いします。

(鶴田)
  • 厚生労働省では、平成12年12月に国民の健康確保のための化学物質安全対策行政の課題をまとめ、情報公開とコミュニケーション、弱者対応、予防原則等15の課題を掲げた。化学物質安全対策に関するNPO団体等との意見交換会を毎月行っており、参加型手法に基づき化学物質安全対策に関する合意形成を試みている。内分泌かく乱化学物質の問題に関する重点課題の一つとしてリスクコミュニケーションがあり、行政-一般消費者間の双方向の情報伝達を行うためのガイドライン策定の作業を行っている。化学物質安全対策に関する情報ホームページを開設し、一般国民にタイムリーな情報発信を行っている。

 私の方からは、厚生労働省におきます化学物質とコミュニケーションに関する取組についてご紹介いたします。
(以下スライド併用)

 1点目は、国民の健康確保のための化学物質安全対策行政の課題ということで、昨年12月、当時の厚生省の生活環境審議会におきまして、21世紀の化学物質安全対策に求められる15課題を報告しております。
 この中では、情報開示とコミュニケーションにおきまして、1つは産業界には製品の安全性にかかわる情報をわかりやすく開示する責任がある、それから、一般消費者には製品を上手に選択するのに必要な製品の安全性に係る情報を知る権利がある、また、行政は一般消費者側の意見を集約して産業界と消費者との間のメディエーターの役割を担う必要がある、このようなことを提起しておりまして、このほかにも、妊婦や子供等の弱者への対応、予防原則、一般消費者による行政評価などの各課題についての取組を行ってきたところであります。これは資料1に詳細が書いてあります。
 2点目が、化学物質安全対策に関するNPO団体等の意見交換会ということで、法律家、市民団体、試験機関、行政の各代表が参加する意見交換会を持っており、ここでは参加者が対等の立場で我々行政の活動について協議、評価を行っておりまして、その際には参加者の合意を得るための過程を明らかにする、また、合意を得たことを行政施策に移すといったことを目標にしております。
 これを達成するために、この会では、古くから途上国の国際開発援助プログラムで利用されております、米国、ドイツ、日本でやり方が開発された、参加型の立案手法を取り入れて、化学物質安全対策に関する合意の形成を試みております。これは資料2で詳細を示してありますが、まず問題系図を作成しまして、これを目的系図に変換する、そしてこの問題解決のアプローチを確認して、さらに具体的な活動事項や実施条件、評価指標を加えたPDM(プロジェクト・デザイン・マトリックス)と呼ばれる立案表を開発したところであります。

 3点目が、内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会の中間報告です。内分泌かく乱性の問題は、従来の化学的手法では予測が困難であり、特に次世代の健康影響が危惧されているという点から見て、化学物質のリスクコミュニケーションを検討するための代表的な叩き台になるのではないかと考えております。これは資料3で示してありますが、リスクコミュニケーションを内分泌かく乱性と健康影響を考えるための重点課題に位置づけてその検討結果を取りまとめております。ここでは行政と一般消費者との双方向のコミュニケーションを扱うということで、資料3の58ページぐらいから具体的なガイドライン作成のための骨格を整理してありますので、参考にしていただきたいと思います。
 4点目が、化学物質安全対策に関する情報のホームページを開設しておりまして、一般国民にタイムリーに情報を発信していきたいと考えております。これは国立医薬品食品衛生研究所の化学物質情報部と協力して行っております。
 以上、今日は時間もありませんので、主として厚生労働省における化学物質とコミュニケーションについての取り組みを駆け足で紹介いたしましたが、この中には、今日の「化学物質と環境円卓会議」にお集まりの皆様と今後の議論を進めていくうえで、いくつかのヒントが提供できたのではないかと考えております。化学物質と環境、さらには国民の健康を考えるためには、行政・産業界・一般市民の当事者全員がそれぞれの責任と権利を認めあって、開かれた議論を行って合意を形成していくことが重要と考えております。私からは以上です。どうもありがとうございました。

(司会) ありがとうございました。では続いて増田さん、お願いします。

(増田)
  • 化学物質総合管理の歴史は、1970年代の科学的方法論の確立から1980年代の安全性情報の交換・提供ルールの確立、そして1990年代のリスク評価とリスク管理の推進へと推移し、今後はリスクコミュニケーションの促進が重要。
  • 化学物質総合管理のためには、国際調和と協調を尊重しながら、科学的方法論を尊重しつつ、リスク原則にのっとり未然防止に努めていくことが重要であり、この際自主管理が大きな役割をはたす。
  • 科学的方法論に基づくリスクコミュニケーションの時代に当たり、日本はレギュラトリーサイエンスが弱い。また問題指摘型でなく、問題解決提案ができる専門家を産業界にも労働界、学界そして市民の輪の中にも育てることが必要である。その意味で日本のキャパシティビルディングを議論すれば意義のある円卓会議になる。

 お手元に「増田」と書いた資料があるかと思います。私が大学を出て社会に出たのは1973年、ちょうど「化審法」ができた年であります。そういう意味で、社会に出てから見聞きしたことを個人的な見解で私なりに整理してみました。したがって、これが私の自己紹介だと思います。

 (表題には)「化学物質の総合管理政策」と書いてあります。環境のリスクということでこの場は設定されたようですが、私の頭の中では、化学物質の管理というのは環境だけではなくいろいろな側面があり、したがって、この資料では化学物質総合管理ということで多くの側面がみんな入っております。

 次の頁ですが、大きな歴史的な認識として、私の中でこのようになっております。科学的なきちんとした方法論の確立と、それを活用してリスクを減らしていこう、管理していこうという時代から、今後はリスクコミュニケーションで広く人々と議論をしていくという時代になると思います。1つだけ私が気になっておりますのは、この2つが何か二律背反のごとく語られることが多いような気がしますが、やはり科学的なきちんとした積み上げが一方にあって、そのうえでのコミュニケーションであり、またコミュニケーションを意識してどう科学的な事実を積み上げるかということを考える時期だと思います。そういう意味では、両方は二律背反ではなくて車の両輪、お互いがお互いの土台となっているということではないかと思っております。

 次の資料ですが、見聞きしたのはOECDが多いものですからOECDの活動に関する資料がたくさん付いております。国際連合ベースのIFCS(化学物質管理政府間フォーラム)の活動と大きくは違わないと思います。やはり前半の科学的方法論のところは、資料にあるようなかたちでずっとこれまで進んできた。このようなたゆまざる努力が、いろいろな共通の認識や共通の行動、リスクコミュニケーションのかなりの部分の基礎になっていると思います。そういう意味で、信頼のベースはこのようなたゆまざる積み上げがかなり重要な意味を持つものだと思っています。ちなみにテストガイドラインを作るだけでも膨大な専門家が膨大な年月をかけて作り上げてきたものですし、現在でもそうして努力は続けられているということは頭に入れておいていただきたい重要なことだろうと思います。

 次の資料は、OECDの目的とは何かということですが、1975年にスタートしたときからこのような目標であったと理解しております。「化審法」は1973年にできたわけですが、これがかなり重要なきっかけになり、「化審法」がもたらした一般化学品に対しても事前に審査をして未然防止していくという考え方がOECDの中の非常に重要な目標になっております。併せて、そのようにつくられた制度が各国間の貿易・経済活動・産業活動の障害にならないようにという未然防止も大きな目標になっています。そういう意味では、OECDでは当初から安全と同時に、経済的、社会的な活動という両方の面における未然防止が重要な課題になります。このことは今日でも、あるいはこれからも非常に重要な側面だろうと思います。

 時間もございませんので飛ばしながらいきますが、次のページに「科学的方法論の確立」というものが書かれております。一言だけここで申し上げたいのは、現在でもこういったことが積み上げられているということです。例えば内分泌かく乱物質に関するいろいろな事柄は、多くの専門家が参画する形で、OECDであるいは各国際機関で議論されているということであります。

 次の頁をご覧いただきますと、そういう形でつくられた方法論があって初めて、科学的な意味できちんとした知見が得られるわけですが、知見はただ抱えているだけでは役に立ちません。そこで、OECDではどうやってこの知見を有効に的確に活用するかという議論も行われています。こういう場などを通じてMSDSなどいろいろな議論が出てきたと理解しております。

 次の頁ですが、ただ今まで申し上げたのはいずれも前段階であり、最後はきちんとリスクを評価して、リスクの管理、削減をしなければいけないということは当然の目標であります。そういう観点で第3期にはこのような展開がされました。ただ、先程来いろいろなお話の中に若干出てきていますように、必要にして十分やり尽くせているかといえば、大変膨大な作業だということもあり、なかなか進みきれていないのも事実だろうと思います。そこをどのようにやっていくのか、またこれからのハンドリングをどうしていくかということは、国際的にも大変大きな課題として議論されているということかと思います。
 ここで1つだけ注釈をさせていただきますと、ハザードをベースに、しかしエクスポージャーを見ながらリスクを評価し管理していくことになりますと、多岐にわたる使用形態などを考えに入れる必要があり、サイエンスの問題だけではなく、現実の場面における状況が重要となり、産業界などの関係する方々、ある意味では一般市民の方々も含めて、非常に重要な位置がリスクを評価するうえでは出てきます。あるいはリスクの管理という点でも出てくるということかと思っています。

 次の頁ですが、そのような積み上げと、一方で車の両輪であるリスクコミュニケーションをこれからいかに行っていくのかということだと思いますが、これはどのようなかたちでどうやったらうまくいくのか、みんな揃って今、暗中模索しているということかと思っております。一方で分類表示については、やはり早くきちんと統一すれば、そういうことがやりやすくなるのだろうと思っております。

 次のページですが、こうした国際機関等の動きも見ながら、化学物質の総合管理はどういう理念でやってきたか、やっていきたいかというのが次に5項目上がっております。
 繰り返しになるのですが、リスク原則や未然防止は、当然科学的な議論がベースにならざるをえないと思いますし、一方で、自主管理は先程申し上げたような意味で非常に重要です。そのベースになる情報の交換、提供も非常に重要と思っています。

 そういうことで、次のページには、まさに政策の理念を今申し上げた化学物質総合管理の理念にそった形で掲げております。
 次の頁が、それを少し書き直したもので、各政策のポイントにあたることが書かれております。

 全部説明していると大変ですので、11ページですが、最初に挙がっている1-1から1-3までというのはまさにハザードなりリスクの評価に関することであります。
 ここで1つだけ申し上げさせていただきたいのは、「化学物質総合評価管理プログラム」でございます。昨年来いろいろな努力を重ねてきて実現したわけですが、重要な点は何かと言いますと、科学技術関係予算の中でこういった問題を扱ってもらうべく大変な努力をいたしました。総合科学技術会議にもいろいろなご議論をしていただきながら、まさに科学技術関係予算として本プログラムを取り上げていただくことを何とか実現できたということです。
 一方で、もう1つ強調しておきたいところは、2-1、2-2と書いてありますが、リスクを評価して「おかしい」と指摘するだけではリスク低減は進まないわけで、具体的にどのように直していくかについても、実は多大な努力がないとできないということです。そういう面での努力も必要かと思っております。

 2つ目の政策の柱になっておりますのが自主管理ということですが、これも今申し上げたように大きな政策の柱として立っております。1-1と1-2、これは主として産業界がおやりになっていることを、我々としてもいい話だということで促進をしているのですが、1にあたるのが科学的知見とか方法論の確立に関することです。これは産業界の方が自分の資源を投入しておやりいただいていることで大変いいことだと思っております。一方、1個1個説明申し上げませんが、2-1、2-2は情報伝達、そして3にかかわることがリスクの管理削減に関することです。
 番号に丸が付いているのは何かということですが、ぜひご覧をいただきたいのですが、2-1、MSDS制度が92年からスタートしたと書いてあります。3-1が、PRTRの制度が92年からスタートしたと書いてあります。92年にレスポンシブル・ケアの議論がスタートしたときから、どのような方法論でやるかということを含めて積み上げてきたわけで、自主的な取り組みが世の中で定着し普遍化していくと法的な体系につながるということを示しているわけです。ぜひ申し上げたいのは、法的なやり方と自主管理というのは、これもまた二律背反ではなくて、大変重要な相互補完であり、場合によっては自主的な取り組みが先行して法律をつくる土壌を育てることも大いにあるということを申し上げたいと思います。
 同様の意味で、先程もすでにお話が出ておりましたが、97年から有害大気の自主管理を進めており、大変大きな成果を上げております。ほかにも有機スズ系の船底塗料の議論などもそうですが、自主的に物事を取り組んでいくと、なぜか予想以上に効果があがるというのも大変おもしろい現象で、喜ばしい現象ではないかと思っている次第です。

 次の頁は、とはいえ法律ということも非常に重要です。自主的なやり方と法律によるやり方のベストミックスが重要だということです。ここでご覧いただきたいのは、先程申し上げたように、自主管理の中から育ってきたものを法的枠組みを加えてより普遍化するために作ったものもありますし、化学兵器禁止法のように絶対にやめてほしいということで厳格にやるタイプのものもあります。2つのタイプがここにあろうかと思いますが、いずれにしてもぜひご覧いただきたいのは、右側にすべて「条約」など国際的枠組みが書かれていることです。これからの世の中、これまでもそうですが、化学物質の議論をし、法的な議論をするときに、国際的な枠組みとの、調和が非常に重要で不可欠な要素ではないかと思っております。

 次のページがそのことをまとめたものです。色々な国際的な場で論議されており、これに参画しております。それぞれの条約についてどのようなかたちで対応していくのかが課題になります。おおよその検討はついておりますが、今日はあまり議論をする時間がないので個別の件には深入りしないようにしたいと思います。

 最後のページですが、そういう意味では「化審法」というのは科学的方法論のもとでリスクを管理するために非常に大きな一石を投じました。さらに「化学物質管理促進法」がリスクコミュニケーションに大きな一石を投じた。先程申し上げましたように、これが車の両輪として進んでいけばと思っております。これは、ぜひこの場でご議論をいただき、広く認識をいただきたいことで、本資料は16ページ目が抜けた格好になっておりますが、むしろお手元で皆様ご自身で書いていただければ覚えていただけるのではないかと思い、今回あえて資料を抜かしております。

 いずれにしても、先程も出ておりましたが、レギュラトリー・サイエンスのようなベースがあまりにも日本は弱すぎます。学問的にも弱いなどと言うと先生方から怒られるかもしれませんが、残念ながら日本のレベルはいかがかと思います。そういう意味では、世界的に通用する研究、学問のレベル、世界的に通用する知識基盤、あるいは世界的に通用する専門家、専門家集団をぜひ育てていきませんと、いくら論じても実が伴わないということになりかねないと思っております。
 そういう意味で、大学における教育などをどのように直していくのか。大学の独立法人化という議論もいろいろあるようですが、そういう中で、まさに国民的に高い関心を持っている分野をどうやって大学で取り組み人材を育成していただくのかということも、非常に重要ではないかと思っております。
 そういうことを通じまして、ぜひ問題指摘型の専門家ではなく、問題を解決していく提案のできるキャパシティを持った専門家、そして産業界、労働界、学界の人々や市民の方々がどんどん出てきて欲しい。そういうかたちになっていけば、この大きな問題を解決していくのに一つ一つでもプラスになっていくのではないかと思っています。
 そういう意味で、キャパシティ・ビルディングは開発途上国に対してもっぱら議論されますが、日本の国におけるキャパシティ・ビルディングをぜひこの場で議論をいただき、より広いコンセンサスを取りながら、大学をはじめ、関係のところで受け止めていただけるとこの円卓会議の一番実がある展開になるのではないかと思っております。以上です。

(司会) ありがとうございました。それでは、今日はおふたかたの欠席の方からコメントをいただいていますので、事務局から簡単にご紹介いただけますか。

(事務局) 本日ご欠席の後藤さんと山元さんからご意見をいただいております。その書面につきましては、メンバー意見発表資料集の袋の中に入っておりますが、時間の関係もございますので。

(司会) 後程お読みいただくということで。ありがとうございました。
 今、約2時間にわたって非常に長い自己紹介をいただいたのですが、今日は原科さんと安井さんが見えているのですが、この会に何を期待するか。我々は司会ということになっているのですが、4時半をめどに、あと6分ありますので、簡単に。そのあとに、このあとも大事な議論がありますので。今日は「さん」づけでいきますので、安井さん、いいですね。また先生の了解を得ないうちに「さん」にしますけれども、では原科さん、簡単にお願いします。

(原科)
  • 意思決定過程の透明化が重要である。環境アセスメントはコミュニケーションの一つの段階である。公共事業は膨大な費用を費やし、なおかつ、維持管理費が足りないとしているが、その情報公開は十分ではない。地域の環境資産を活かした活性化を図ることが重要となっている。

 それでは司会の方として、インスタントラーメンみたいですが、3分を目標にします。
 先程、田中康夫さんが来ておられてびっくりしたのですが、どうもはじめまして。昨日、長野県で田中康夫さんとご一緒だったものですから(笑)。長野県の資料を持ってきましたが、廃棄物の処理施設の検討委員会を頼まれまして、今、合意形成の場を持っています。昨日が第11回目の委員会でした。そんなわけでちょうど田中知事にお会いしたところです。資料を持ってまいりましたので、回覧してください。数があればよかったのですが、申し訳ありません。
 私の専門分野は環境計画です。環境計画における住民参加というところが中心ですが、そのための手段として、私は環境アセスメントは重要なものだと思っていますので環境アセスメントの研究もやってまいりました。たまたま放送大学というところで「環境アセスメント」という講義をもう8年やっています。今年で8年目ですが、これは15回のテレビ番組です。北野先生はよくテレビに出ておられますけれども、私もそういう格好ではときどき出ています。
 このアセスメントのポイントは、いろいろな言い方がありますが、1つは意思決定過程の透明化です。環境配慮をどのようにしたかということです。別の言い方をしますと、「環境アセスメントはコミュニケーションだ」ということも、私はときどき申します。つまり、アセスメントというのは意思決定過程の透明化ですから、どのように環境配慮したか、結局それをいかにきちんとコミュニケートしていくかです。日本のアセスメントでは、あまりリスクアセスはやらないのです。しかし、これは事業段階のアセスメントなので環境の影響に限定的なのですが、しかしこれからは環境リスクということが大変重要になってくると思います。例えば廃棄物の処理施設や最終処分場は、まさにリスクの問題です。そういった点で、今日これからの円卓会議のテーマというのは、私のアセスメントの分野でも大変重要なところです。
 それから、実は日本の公共事業はべらぼうに金を使っています。対GDP比6~7%近くです。これは30年間この調子です。その間アメリカは、例えば90年代は1.8%です。ですから、アメリカの3~4倍も使っているのです。
 私はこの6月に、衆議院ですけれども、国土交通委員会で「土地収用法」の改正のときに参考人として、専門の意見を述べました。そのときにほかの参考人の方が、国土交通省の資料でもこれだけ金がかかるのは確かだと。その方もその資料を持ってきてお見せになったのです。しかし、この6%もの水準を継続しないと今は維持管理だけでも足りないのだとおっしゃった。私に言わせると、無駄な公共事業をやりすぎたという証拠じゃないかという話です。つまり、欧米に比べてべらぼうにたくさんのお金を使って、なおかつ足りないというのはどうかしています。北野先生が心配しているから(笑)、もう時間が来たようですね。
 では、あとはお手元の資料です。「環境資産で地域活性化」と書きましたが、そのような公共事業、例えばこれは川辺川ダムの話が下の方に書いてあります。これはつい最近です。先月11月28日に地元の漁協が漁業補償に対してノーと言ったのです。漁民の皆さんは、これは、自分たちの経済的リスク、漁業活動に危ないということでノーと言ったのです。そのようなリスクの問題と、ここの場合にはもう1つ、洪水のリスクもありますが、実は洪水のリスクには十分対応できるということがその少し前の新聞報道で明らかになったのです。つまり国土交通省が情報を隠していた。国土交通省の資料で見ても、一部の堤防の強化で十分対応できます。その場合、70億円ぐらいでたぶんできるだろうという試算があります。ところが、川辺川ダムは2650億円もかかります。費用対効果がまるで違います。こんな話もあります。
 ですから、情報公開をしないと、いかに我々社会はむだをしてきたか。リスクの問題に関しては特に情報が重要なので、それだけ申し上げておきます。時間がオーバーして、誠にすみません。

(司会) ありがとうございました。では、安井さん。

(安井)
  • 化学物質については、社会全体の知識が不足している。市民はリスクに関する知識も必要である。これにはメディアの特性が影響している。メディアは問題指摘するのに有効であるが、解決する過程や解決後は報道しない。関係者相互のリスクコミュニケーションが重要になっている。
  • この円卓会議は、円ではなく三角会議になっている。円くするために公募による一般市民の参加を求めるべきである。

 遅れてまいりましてすみません。もともと私も材料屋をやっておりまして、それがいつの間にか環境屋に化けてしまいました。
 最近何をやっているのかといいますと、環境問題も究極的には省エネルギー、省資源の社会にいかにいくかということではないかと最近は思っておりまして、そんな方向にどうやったら社会的合意が取れるかという研究をやっております。いろいろな方法のアンケート、ワークショップ、教育ソフトなどをやりながら、市民社会の反応を見ていくという研究を今やっております。
 化学物質に関しましては、非常に多種類があるということと、どんどん進歩する、どんどん変わるということがあって、現実では知識そのものにまだ不確実性を伴っているところがあります。化学物質と同じく嫌われ者の代表とすれば放射線だと思うのですが、その放射線の曝露については、歴史的な長さと、比較的単一であるということから、はるかにしっかりとした科学的情報があるのです。しかしながら、最新の分子生物学などの知識といったようなもので、放射線の危険性はこういうものなのだという新しい知識が出ても、一般市民社会は全然理解しないのです。なぜかというと、たぶんコミュニケーションがなっていないからだと思います。
 ですから、まずは化学物質の側には正しい知識の蓄積が重要であると同時に、その他の分野もしっかり見据えたうえで、どういうコミュニケーションをやるのがいいのかというのは、かなり問題だという認識を持っております。
 化学物質に限らず、そもそもリスクというものの理解を、今回の狂牛病の話を見ていても、ほとんどリスクがないにもかかわらずいまだに牛肉は売れないという状況を見ても、やはりリスクというものの理解は、一般社会にはそれそのものが困難なのかもしれないという気もしないではない。その辺はどうするのだろうなと、今、きわめて根本的な問題があるように思っております。
 1つは、メディアの持つ特性が1つであり、メディアというのは問題を指摘することについてはきわめて有効なのですが、その問題が解決されていく過程はあまり記述をしない。解決されてしまってからもあまり記述をしないということがあります。
 さらに、先程増田さんの方から、レギュラトリー・サイエンス、学者は何をやっているのだという話はおっしゃるとおりなのですが、それ以外にも学者というのはとんでもない特性を持っていて、自分のやっている研究が世の中に意味がないとは決して言いませんから、自分のやっていることは絶対に怖いことであり、絶対にすごいことなのです。環境ホルモンというのは絶対に怖いわけです。そういうことがありますから、これは時と場合によってはうそになってしまうわけでして、そのような内部告発も場合によっては重要なのかもしれない。いずれにしても、いろいろな事実を明らかにしつつ、リスクというきわめて難しいものをどうやってコミュニケーションをやっていくのかなということで考えております。
 ここに出ておりますのは、皆さんにお配りしておりますが、ある図書で指摘されていた有害化学物質の例でありまして、「何だこんなものなのか」というものしか出ていないわけです。実際には本当はもっと怖いのがあるのではないかと思っているのですが、少なくともここへ出ているようなものというのは、ある意味で昔から指摘されているようなものであって、それが「怖い怖い」という話になって出てきている。こういった人たちの影響も何とかしなければいけないかなと思っております。
 あと、この円卓会議に対する期待を述べよということでしたが、実はこの円卓会議というのは三角会議ではないかと思っていまして、実は丸くないのではないかと思っているのです。だから、こういう三角な会議をやってもあまりしょうがないのではないかと思っていまして、もう少し丸くするために、本当の意味での一般市民の参加を求めるべきではないかと思っております。以上です。

(司会)
  • 構成メンバー皆が指摘するようにリスクコミュニケーションが重要で、リスクコミュニケーションには信頼の確立が必要である。円卓会議は、政策提言に限らず活動できるものになっていけばいいと思う。

 ありがとうございました。その辺についてはこのあとの議題でまた提案があると思います。では、1分だけいただいて私の自己紹介をさせていただきます。
 先程、増田さんがOECDの話と関連づけて自分のお仕事の話がありましたけれども、私は大学院を出てぶらぶらしていたときに「化審法」ができて、化学品安全センターというものを国の補助金で造っていただいて、そこで職を得たというのが私の今までの歴史です。
 その中で、OECDの先程の第1期を10年ほど勉強する機会がありまして、そのあとGESAMPという国連の海洋の機関で化学品の安全審査ということで、私自身は大変いい勉強ができたなと思っております。
 現在、化学審議会の試験判定部会に出ているのですが、正直言って大丈夫かな、私たちがいいと言ったものが将来問題を起こさないかなと、そういう心配はかなりしながら審査をしております。
 そのあと大学へ移りまして、現在リスクコミュニケーションを勉強しています。先程来、リスクコミュニケーションの重要性が非常に指摘されておりますが、私は、基本的に何が一番大事かというとやはりお互いの信頼性の確立だろうと思います。不信感をどう除いていくかということだと思いまして、その意味でこの会議がそういう場になってくれればいいなと思っております。以上です。
 長時間ありがとうございました。

(3)「化学物質と環境円卓会議」の進め方について

(司会) それでは議題(3)、この円卓会議の進め方です。今後どう進めていったらいいかということで、事務局から叩き台を用意していただいていますので、安達さんの方からご説明をいただけますか。

(事務局) それではお手元の資料4についてご説明させていただきます。円卓会議の進め方につきましては次回ご議論をいただく予定にしておりますが、その前に今回、次回と実際には開催しなければなりませんので、開催手続きや出席者の方々等、最低限の運営要領についてだけお決めいただければと考えております。その叩き台を準備させていただいたのが資料4「化学物質と環境円卓会議の運営要領」です。では、大急ぎで読ませていただきます。
 1.開催。(1)開催は、化学物質と環境円卓会議が決定する。(2)日程調整および開催の通知は、円卓会議の事務局(環境省)が行う。
 2.出席。(1)円卓会議への出席は、構成メンバー本人の出席を基本とする。ただし、特別の理由がある場合には、代理の者を会合に出席させることができる。(2)円卓会議は、必要に応じ、構成メンバー以外の者の出席を求めることができる。
 3.進行。議事進行役は、学識経験者が務める。
 4.議題。円卓会議が決定する。
 5.情報の公開・発信等。(1)円卓会議の会合は、公開で行う。(2)会合の議事要旨は、円卓会議の事務局が作成し、議事進行役の学識経験者の確認を得たうえで、遅滞なく、円卓会議のホームページ上で公開する。(3)会合の議事録は、円卓会議の事務局が作成し、会合の参加者の確認を得たうえで、遅滞なく、円卓会議のホームページ上で公開する。(4)会合で配付された資料は、原則として円卓会議のホームページ上で公開する。(5)円卓会議は、インターネットの活用や地域での開催(地域フォーラム)などにより、国民各界の意見・要望の集約に努めることとする。
 6.その他。上記に定めるもののほか、運営に必要な事項は、円卓会議で決定する。
 引き続きまして、資料5につきましてもご説明させていただきます。今後のスケジュールにつきましても、これも基本的に円卓会議で決めていただくことでございますが、事務局としてのイメージをご説明させていただきます。
 本日、12月3日、第1回会合が開催されております。第2回会合につきましては、明年1月、実際には1月末から2月初めを目途に開催したいと考えております。なお、お手元に、ご都合についての用紙を配付しておりますので、ご記入いただき、その場に置いていただけるか、あるいはFAXで送っていただければ幸いです。
 第2回会合におきましては、当面の進め方につきましてご議論をいただく予定にいたしております。その後、3~4月を目途に2回の地域フォーラムを開催し、地域で活動しておられる方々等の意見を聴取することを考えております。
 その後、5月を目途に第3回会合を開催いたしまして、インターネットや地域フォーラムで寄せられた意見を集約するということで、それらの集約された意見から具体的な討議テーマを決定していただく。さらに時間が許せば、最初のテーマについて討議を開始したいと考えております。以上です。

(司会) ありがとうございました。今日、資料4で、化学物質と円卓会議の大枠の運営要領、中身ではなくどのように運営していくか、事務局と委員の役割や情報の公開というお話が出ました。資料5では、地域フォーラム、地方でのこのようなフォーラムを考えているということで、その具体的な中身として、進め方やそのディスカッションについては、1月に予定されている次回で決めていこうではないかということで、資料4と5について事務局から説明をいただきました。ご質問はございますでしょうか。どうぞ。

(有田) 質問というよりも、先程、角田さんからも出されたように、私もこの円卓会議のイメージとして、これからこのようなコミュニケーションを行いながら1つのモデルみたいなものをつくっていくのかなという自分なりのイメージで参加しているものですから、少しつかめなくて、先程、北野さんから、意見というのはこういうことで言ってくださいと。そういう一つ一つの説明ですごくわかりやすくて、用意していたものとは別のところで発言したということがあったのです。
 何が言いたいかというと、この円卓会議は自分たちでつくっていくものとして考えていいのかということで言えば、先程、岩尾さんがおっしゃったように、リスクコミュニケーションのことが少しあるのですが、私は、どなたということで発言の揚げ足を取るわけではないのですが、「説得をする」という言葉が出てきたのです。非常に気になっていて、私たちは説得されるのではなくて、納得をするためにお互いにコミュニケーションを行うと理解しておりますので、そのためにも「リスクコミュニケーションは」という学習会を少し行っていただければと思っております。
注:産業側のあるメンバーの説明で、説得という言葉が使用されていた。

(司会) ありがとうございます。実は、私も今日ずっと会議の議論を聞いていまして、やはりリスクコミュニケーションがかなり大きな要素を占めてくるだろうと思いました。確かに、人によってリスクコミュニケーションの考え方、中身の理解が若干違う。違うというのは、どれが正しい、正しくないという意味ではないのですが、その意味で、次回以降、リスクコミュニケーションについて専門にやられている経験のある方を一度この場にお招きして、リスクコミュニケーションとはどうあるべきなのか、そもそもリスクコミュニケーションとは何なのかという勉強会をしたいと思っていたところです。
 今、有田さんからご提案をいただいて、まさに我が意を得たりという感じですが、皆様方いかがでしょうか。リスクコミュニケーションについては非常に今後重要になります。先程申し上げましたように、若干理解が違うところがありますので、リスクコミュニケーションというのはこういうものだということを専門の方からお話をしていただく機会を一度持ちたいと思うのですが、いかがでしょうか。よろしいですか。
 それでは、その辺について事務局にお話ししまして、そういう機会をぜひ次回以降持てるようにしたいと思っております。日程については先程ありましたが、ここに書いていただけばいいですね。調整していただくということで。

(事務局) それでは、第2回が比較的時間があるかと思いますので。

(司会) そうですね。できるだけ早い機会にそれを持った方がいいと思いますので、では次回、講師の方はこれから交渉していただきますが、ご都合もあると思いますので、第2回にリスクコミュニケーションについての勉強を行うということでいきたいと思います。どうぞ。

(中下) 先程発言したのですが、被害者の方を構成メンバーに加えるということは、この時点では難しいのでしょうか。

(司会) それはあとで相談したいと思います。後程相談します。

(中下) わかりました。

(4)その他

(司会) 議事4で「その他」があるのですが、事務局はございますか。

(事務局) ただいま、中下さんの方からもお話がございましたが、ゲストにつきましても、この円卓会議で、必要な場合には呼べるというふうになっているかと思います。
 今、被害者の方というお話がございましたが、私どもの方に化学産業の労働者組合であります化学リーグ21からゲスト出席して意見を述べたいというご連絡もいただいております。

(司会) そうですね。今日、メーカーとユーザーの方も出ていらっしゃるのですが、実際の、言葉が難しいので、「労働者」という言葉を使っていいのかどうかわからないのですが、実際に現場でそういうものを扱っていらっしゃる化学リーグ21の方から、今事務局からお話がありましたように、この場でお話をさせていただきたいと。私としては、ゲストということで、先程申し上げたリスクコミュニケーションの専門家と一緒に、第2回にゲストというかたちでお招きし、お話をしていただく機会を設けたいと思うのですが、いかがでしょうか。

(原科) 先程、安井先生が、これは三角形の会議、円卓ではないとおっしゃって、三角形は尖っていて怖いですよね。それでもう少し丸くするにはその間を埋める必要があるかなという意味では、そのような立場の違う、いろいろな立場の方が来ることが必要ですね。ただ、委員会の構成上、20名を超すとなかなか会議が進めにくいのです。私は会議のそういう研究をやっていますから、研究の立場からいいますと、20名を超えるとなかなか難しくなるので、技術的には厳しいところがありますけれども。

(司会) 必要に応じて、皆さん方のご意見を伺いながらゲストとしてお招きして、ぜひ意見を出していただく。決してクローズするつもりは全くありませんし、いろいろな立場の方の意見をいただくことは大変重要だと思いますので。
 ただ、会議のいろいろな問題で、委員としてお招きすることは困難かもしれませんが、ゲストとしては十分同じ立場・資格でお話しできるようにしたいと思いますのでご了解をいただきたいと思いますが、よろしいですか。角田さん、どうぞ。

(角田) 今の話題と違う話なのですが、2回目がリスクコミュニケーションの勉強会というのに反対ではないのですが、この円卓会議の性格が、すみません、私はまだ今一つわからないのです。勉強会という位置づけなのか、それとも海外の事例のように政府に提言するとか、それぞれのセクターの行動を促すための意見をまとめて発表するというところなのかというあたりを、議論をまだしていないし、たぶん次回以降だと思うので、それをしていただくことはできますね。

(司会) そう考えております。今、私が皆さん方の意見を伺っていると、次回にとりあえずリスクコミュニケーションについて少し勉強してみようではないかと言っているのです。化学リーグ21の方がご意見を言っていただけるということですので、その方についてはゲストとしてその立場からご意見を伺おうではないかと。そのあと、具体的に、今、角田さんのおっしゃったようなかたちで、この円卓会議をどのようなかたちにしていくのかということを議論していきたいと思います。事務局はそれでよろしいでしょうか。
 今日は第1回目で、それぞれ自分がどんなことを考えているかという、顔合わせのために3時間使ってはいけないのですが、そういうことでお互いにこれからやっていくわけですから、多少その辺は理解した方がいいだろうということで、今日は時間を取っていただきました。どうぞ。

(原科) このいただいたパンフレットによりますと、会議の概要が表紙の裏にありますが、「化学物質と環境円卓会議」と。コミュニケーションのためには、「環境」の間に中黒ぐらい入れた方がいいと思うのです。「環境円卓会議」になっていますが、「環境・円卓会議」だと思うのです。
 これは「国民各界の意見・要望を集約し」、そして「理解を深め」、最終的には「共通認識を市民・産業・行政に発信します」と書いていますね。共通認識を発信するということはどういうことでしょうか。具体的な政策提言までいくのかいかないか、この辺がよくわからないという感じがしました。

(司会) 当面は、その議論の内容をご了解いただいたうえでインターネット等で公表・公開していく中でそういうかたちになれば、それでよろしいのかなと思うのですが、これはまだ事務局と相談していませんし、我々も相談しなければいけませんが、会議を進めていく中で、そういう方向であればそれでいいのではないかと。ある政策提言をするための会だけに私は限定したくないと思っております。
 ほかにございますでしょうか。それでは、途中で急がせてすみませんでした。まだ10分ほど早いのですが、これで第1回目の会議を終わらせていただきます。次回については、また開催日程等を事務局からご連絡申し上げます。どうも長時間ありがとうございました。