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ベトナムにおける環境汚染の現状と対策、環境対策技術ニーズ

環境汚染の現状

(最終更新日:2016年4月1日)

大気汚染は継続的に増加

ベトナムでは、経済発展と気候変動により、大気環境への悪影響が増加しています。特に都市部や工業地域での大気環境が悪化しています。農村部においても手工芸品生産活動や収穫後の野焼きにより大気が汚染されています。

粉塵公害は都市部で拡大の一途を辿っています。特にハノイ市とホーチミン市における大気環境中の粉塵レベルは、世界で最も高いレベルに達しています。一方、NOx、SO2、COおよびその他ガスの濃度は、主要道路近郊や工業地域を除くほとんどの地域で、許容基準に収まっています。騒音公害は許容制限を超えており、また、悪臭汚染も局所的な発生ではあるものの、深刻な問題の1つとなっています。

最近の研究によると、越境大気汚染源からの影響の方が、ベトナムへのリスクがより大きいとされています。近隣諸国からの越境大気汚染に関連する問題としては、粒子状物質(PM)、水銀、酸性雨および光化学スモッグが挙げられます。

保健省によると、近年、空気感染性疾患の割合が増加しており、大気汚染はその原因の1つとなっています。統計データに基づくと、村や工業地帯で呼吸器系疾患を患っている人の割合は、他の地域における割合より高くなっています。

更に大気汚染は、経済や生態系にも影響を与え、気候変動、気温上昇、海面上昇、および異常気象の増加を引き起こす原因の1つとなっています。

水質汚染は依然として深刻な問題

家庭から、また工業、鉱業、水産養殖業からの排水により、地表水の質が悪下しています。都市部や下流域における地表水環境のほとんどは有機物で汚染されています。都市中心部のほとんどの河川、湖沼、運河や用水路で、汚染物質の濃度(有機性汚濁の一般的なパラメータによって測定)は、ベトナム国家技術基準QCVN 08:2008で定めたBクラス水源の最大許容値を2〜6倍上回っています。都市部や工業地帯を流れる河川では、水中の有機物と大腸菌群の割合も許容濃度を超えており、許容濃度を2〜3倍上回る場所さえあります。

実際、カウ川、ヌエ−ダイ川、ドンナイ川の3つの河川流域における汚染は警戒レベルに達しています。

カウ流域:タイのグエン省を通って流れる河川で、中流域はひどく汚染され、BOD5が許容値の3〜7倍高い濃度に達しており、下流(ファライを流れる地域)の汚染はさらに深刻であります。

ヌエ−ダイ流域:ハノイ市のトー・リック川とキム・グー川では、数十年間下水が垂れ流されてきました。また、これらの河川からの排水が流れ込むヌエ川の汚染は深刻で、QCVN 08:2008に規定されているB1クラス地表水の最大許容濃度を何倍も上回っています。それから、ダイおよびチャウジアン(ハナム省)水系は継続的にヌエ川から大量の汚染水が流入し、広範囲で養殖魚が死滅する事象が発生しています。

ドンナイ川水系:下流域(すなわち、サイゴン川)では、極めて深刻な汚染状況に陥っています。この河川流域で最も汚染が深刻なのは、ティバイ川の10キロ超に渡る流域(カ川がティバイ川へ流れ込む地点からミースワン工業団地まで)で死の川と化しています。ドンナイ川流域の都市部にある池、湖、運河および用水路はすべて深刻な汚染状態に陥っています。

地表水汚染により、地域の健康状態が全体的に脅かされています。また、水質汚染は水源を利用するコミュニティ間の社会的対立を引き起こしています。さらに水質汚染は、経済に深刻な損害と、自然生態系に有害な影響を与え、水資源の利用可能性を低下させています。

化学肥料や農薬の不適切な使用による農業汚染は未改善

ここ数年、農薬の需要は全体量でも単位量当たり投与量(kg/ヘクタール)でも急増しています。その結果、食中毒を含む不適切な食品衛生の事例および汚染農地の数が増加しました。農業汚染は、亜鉛コーティングの紙製容器、ビニール袋やプラスチックボトル、ガラス瓶などに入った大量の植物保護化学剤(年平均19.637トン)によって引き続き大幅に拡大しています。容器内の化学剤残留物は、農地、排水溝、水路に漏出し、農村環境の土壌汚染や水質汚染を引き起こしています。

主な理由として挙げられるのは、(1)肥料の不適切な使用と有機肥料の不足、(2)総合的病害虫管理(IPM)の不適切な実施、(3)4つの適切さに基づく労働安全基準−適切な薬剤、適切な投与量、適切な時間、適切な使用−が厳密に遵守されていないこと、(4)植物保護化学剤(PPC)の使用に関する科学的知識や情報が農家に不足していること、特に一部の農家はより大きな利益を追求するあまりPPCの有害性を故意に知ろうとしないこと、が挙げられます。

沿岸海域の油濁汚染が増加

沿岸海域における油の割合は、特にバイチャイ橋(クアンニン省)付近のクアルク地域と中央沿岸地域では、警戒レベルにまで上昇しています。南部沿岸地域では油の割合が過去5年間継続的に上昇しており、国家技術基準QCVN 08:2008で規定される最大許容濃度を上回っています。近年、海に排出される廃油が適切に管理されていないことが主な理由として挙げられます。海上輸送活動、漁業、観光業、造船・修理事業や船舶衛生、沖合の石油開発からの排出(特に油流出事故)は増加しています。

固形廃棄物の収集率が低いうえ環境安全が守られていない処理

過去数年、国の積極的な開発に伴い、工業地帯、都市部および農村部で排出された固形廃棄物は、発生量も種類も増しています。発生する廃棄物の平均量は年10%増加しています。

廃棄物の発生源ベースでは、固形廃棄物の46%が都市部から排出され、工業生産からの排出が17%、残りは農村部や手工芸村、医療現場から排出された廃棄物となっています。都市廃棄物と産業廃棄物の割合は、2015年までにそれぞれ51%および22%に達すると予測されていました。有害廃棄物に関しては、どのセクターにおいても発生全体量の18〜25%を占めています。

固形廃棄物の回収率はかなり増加しているものの、依然として実用的な要件と期待を満たすレベルには至っていません。家庭からの固体廃棄物や産業廃棄物、行政サービス・工業地域・加工区域から排出される廃棄物の回収率は約80〜82%となっています(この率は都市部では83〜85%で、農村部では40〜55%)。都市部の固形廃棄物のほとんどは発生元で分別されておらず、最終処分場にまとめて運搬されます。固形廃棄物のリサイクルと処理、そのなかでも有害廃棄物の管理と処理は、要件を満たしていません。多くの固形廃棄物処理施設が建設、運営されているものの、処分場や処理施設、その処理能力および効率性については、依然として要求に対応しきれていません。固形廃棄物の再利用と再使用は断片的な活動となっています。

固形廃棄物の不適切な管理や不衛生な処理が組み合わさって、環境、地域の衛生状態と社会の経済発展に影響を及ぼしています。非衛生的な埋立処分場から生じた環境汚染が周辺地域の農業生産と養殖に甚大な損害を引き起こしました。すなわち病気のリスクを高め、埋立地周辺で暮らし病気にかかる人々の割合が増加しました。また固形廃棄物に起因する汚染は、いくつかの地域において、環境に関する近年の紛争をもたらす原因となっています。

これまで、固形廃棄物管理に対する多くの取り組みがさまざまなレベル、部門で行われてきました。固形廃棄物による環境汚染の傾向を回避するために多くの対策や解決策が策定、提案されてきました。しかしながら、固形廃棄物管理における断片化、重複、ギャップ、完全に施行されていない固形廃棄物管理の政策および法制度の未熟性、経済的な手法を用いる際の非効率性、情報ツールへの不十分な投資、固形廃棄物管理の社会化、民営化、市民参加の限界など、欠点があります。

自然生態系の劣化

森林の総面積は増加しているものの、増加した面積のほとんどは植林です。天然林の生態系は質的及び量的に劣化しています。生物多様性に富んだ原生林がわずか約0.57ヘクタール存在していますが、これらの森林は散在しており、森林の総面積のわずか8%しか占めていません。マングローブ林などの広範な領域の湿地生態系は破壊されたり、他の目的のために使用されたりしています。ベトナムのマングローブ林の総面積は、現在、1990年レベルの60%、1943年レベルの37%に相当する約171,000ヘクタールとなっています。

ベトナムは、海洋生態系、特にサンゴ礁や海草の悪化にも直面しています。サンゴ礁生態系は、量と質の両方で低下しています。サンゴ礁の80%超が劣悪な状態にあり、海草の総面積は1990年以来40%〜60%程度減少しています。

種の多様性の低下

ベトナムは近年哺乳類の種類数の減少で世界15位となっています。ベトナムは鳥類の消滅においては20位に、また植物や両生類の多様性の消失がみられる世界の上位30か国に入っています。絶滅の危機にある野生生物種の数が増加しており、その脅威のレベルもますます高まっています。いくつか絶滅種となっています。多くの動物および植物が絶滅の危機に瀕しており、「危急」(絶滅危惧II類)から「危機」(絶滅危惧IB類)や「深刻な危機」(絶滅危惧IA類)に分類が変更されています。

適切に保護されていない珍しい遺伝資源

多くの珍しい遺伝資源、特に地域固有の動植物が適切に保護されていません。地域固有の植物は、多様な外来種との競争により消滅しつつあります。現在では家畜の多くの種類は交配種であり、純粋種の消滅またはその数の大幅な減少につながっています。

主な理由として挙げられるのは、(1)土地利用と生態系の不適切かつ非科学的な変化、(2)過剰な開発と生物資源の持続不可能な利用、(3)環境汚染、(4)有害な外来種の侵入、(5)気候変動による悪影響です。

国連の米国理事会によるミレニアム報告書では、環境安全保障を「脆弱な管理または設計に起因し、各国または国を超えて発生する、環境ハザードに対する安全保障」として定義しています。現在、ベトナムでは環境安全保障の徹底的な分析を行うことのできる十分な情報はなく、この問題に十分な関心が払われていません。多くのアナリストが、国境を越えた環境汚染や気候変動が同一水資源を共有する国家間の意見の相違や対立のリスクを高める可能性があると述べています。また、貧困、環境紛争、持続可能でない地域開発など環境汚染に起因する社会問題が、環境の安全を脅かしています。

ただしこのセクションでは、過去5年間にわたって顕在化し深刻さを増しているような、環境安全への主要な課題と考えられる問題のみを取り上げています。

十分には整備されていない法的文書システム

紛れもない成功どころか、環境管理は依然として不十分な状態です。この問題は、文書の重複(すなわち、異なる省庁が同じ問題に関する規制を公表)、法律における不明確さ、不完全さ、一貫性の欠如から生じており、それが環境管理のための組織的なシステムから環境管理と保護活動の実行に至るまで幅広い問題につながっていて、この点からも国際統合の要件(ベトナムが世界市場に参加するためにWTO加盟国として負う義務)を満たすことができません。

(2016年2月時点の調査に基づく)

詳細情報

ベトナムにおける環境汚染の現状(平成21年度報告書抜粋) [PDF 899KB]
  1. 大気汚染
  2. 水質汚濁
  3. 悪臭、騒音
  4. 土壌汚染
  5. ヒートアイランド現象
ベトナム環境報告書2010(ベトナム語版)

(2013年3月時点での調査結果に基づく)

セミナー資料

平成25年2月20日にはベトナムにおける水質汚濁の現状や排水処理技術ニーズをテーマとした「ベトナムにおける日本の排水処理技術普及のためのセミナー 」を開催しました。