FASHION&ENVIRONMENTファッションと環境の現状

ファッション産業の特徴や環境負荷等の実態を
5つのポイントで見てみましょう

1 産業の
全体像
海外で生まれ日本で消費される服の一生

洋服が作られてから廃棄されるまでの流れ

企画→製造段階(原材料調達、紡績、染色、裁断・縫製)→輸送→販売・利用・破棄(販売→利用→排出→リペア。リユース・リサイクルor焼却・埋め立て)

ファッション産業では、原材料の調達、生地・衣服の製造、そして輸送から廃棄に至るまで、それぞれの段階で環境に影響を与えています。現在、企業においては環境負荷を少しでも低減させるための様々な取り組みが図られていますが、衣服は色々な素材が混合されてできており、また海外における生産段階は、数多くの工場や企業によって分業されているため、環境負荷の実態や全容の把握が困難な状態となっています。

色々な素材が混合ざれて作られる衣服 ファスナー:金属 ボタン:プラスチック 裏地:ポリエステル 表地:コットン
POINT
グローバルに分業化された、長く複雑なサプライチェーンがファッション産業の特徴です。

2 製造段階 1枚の服にも、こんなに資源が!

生産時における産業全体の環境負荷
(原材料調達から店頭に届くまで)

原 材料調達段階の環境負荷 天然繊維の環境負荷(コットンなど):栽培時の水消費、化学肥料による土壌汚染 合成繊維の環境負荷(ポリエステルなど):石油資源の使用、工場でのCO₂排出 製造段階の環境負荷(年間) CO₂排出量:約90,000t 水消費量:約83億m3 廃棄物排出量:45,000t + 化学物質による水質汚染 服1着あたり換算 CO₂排出量:約25.5kg→ペットボトル(500ml)255個分 水消費量:2,300ℓ→浴槽11杯分 服の着数換算 廃棄物排出量:45,000t→服 約1.8億着分

出典元:環境省「令和2年度 ファッションと環境に関する調査業務」報告書(P.14~)[PDF2100KB])

服一着をつくるためにも環境に対して
様々な負荷がかかります

私たちが店頭で手に取る一着一着の洋服、これら服の製造プロセスではCO2が排出されます。また、原料となる植物の栽培や染色などで大量の水が使われ、生産過程で余った生地などの廃棄物も出ます。服一着を作るにも多くの資源が必要となりますが、大量に衣服が生産されている昨今、その環境負荷は大きくなっています。

POINT
衣服の製造には様々な資源が必要となり、また環境負荷が発生します。

3 販売・
利用段階
より安くより多くって、いいこと?

国内アパレル供給量・市場規模・衣類の
購入単価の推移

国内アパレル供給量・市場規模の推移と衣服一枚あたりの価格推移のグラフ。国内アパレル供給量は増加する一方で市場規模は下がっています。
衣服一枚あたりの価格推移 衣服一枚あたりの価格は年々安くなっており、1990年では6,192円でしたが、2023年では3,140円でした。

国内における供給数は増加する一方で、衣服一枚あたりの価格は年々安くなり、市場規模は下がっています。傾向として大量生産・大量消費が拡大しているとも言え、衣服のライフサイクルの短期化による大量廃棄への流れが懸念されます。

1人あたり(年間平均)の
衣服消費・利用状況

購入枚数:約20枚 手放す服:約14枚 着用されない服:約23枚

出典元:環境省「令和6年度循環型ファッションの推進方策に関する調査業務」におけるアンケート調査

手放す枚数よりも購入枚数の方が多く、一年間一回も着られていない服が一人あたり23着もあります。

POINT
ファッションの短サイクル化や低価格化がより多くの服を生み出し、消費されることにつながります。

4 3R活動 選ばれているのは、どんな別れ方?

服を手放す手段の分布

古着として販売:15% 譲渡・寄付:3% 地域・店頭での回収:10% 資源回収:14% 可燃ごみ・不燃ごみとして廃棄:59%

出典元:環境省「令和6年度循環型ファッションの推進方策に関する調査業務」報告書概要版(マテリアルフロー)

服を手放す手段は大きく分けて三つあります。一つ目は、リユースショップやフリマアプリ等を通じ古着として譲渡や売却すること。二つ目は資源として、または地域や店舗で回収してもらうこと。三つ目は可燃ごみ・不燃ごみとして廃棄すること。「可燃ごみ・不燃ごみとして廃棄」されている服を減らすためには、できるだけ服を長く大切に着て、手放す場合は、まずは中古・リユース品として他の人に使ってもらえないか確認することが重要です。難しい場合には、資源回収として排出してリサイクルするなど、できるだけごみとして廃棄しないようにしましょう。

生活者が手放したあとの服の行方(2024年)

手放されたあと、リサイクルされる衣服は8%、海外輸出も含むリユースされる衣服は30%で、合わせると38%です。処分、埋立される衣服は62%です。

出典元:環境省「令和6年度循環型ファッションの推進方策に関する調査業務」報告書概要版(マテリアルフロー)

※各割合(%)は家庭から手放した衣類の総量を分母としています。
※リサイクル率にはウエス(機械手入れ用の雑巾)など繊維に戻らないものを含み、 またサーマルリカバリーについては除いています。
※リユース率には海外輸出される衣服を含みます、また古着の海外輸出は輸出先国の現地産業に影響を与える懸念がある為、国内における更なるリユースの推進が課題です。

手放した服がリユース・リサイクルを通じて再活用される割合の合計は約38%となっており、年々その割合は高まってきていますが、まだまだ改善の余地はありそうです。

GOOD PRACTICES企業・自治体等による好事例

POINT
私たちが手放した服のうち再利用・再資源化される割合はごくわずかです。

5 廃棄段階 捨てられた服のゆくえ

可燃ごみ・不燃ごみとして廃棄する理由

処理に手間がかからないから、76%

出典元:環境省「令和6年度循環型ファッションの推進方策に関する調査業務」におけるアンケート調査

アンケートによると私たちが衣服をごみとして廃棄してしまう理由の殆どは「手間や労力がかからない」からです。労力や手間をかけずに、生活者にもメリットがある形で再利用・資源化を促す手段が求められそうです。

可燃ごみ・不燃ごみに出される衣類の量と
焼却・埋め立て量

1日あたりに焼却・埋め立てされる衣服の総量(平均)1,300t/Day→大型トラック130台分

出典元:環境省「令和6年度循環型ファッションの推進方策に関する調査業務」報告書概要版(マテリアルフロー)

服がごみとして出された場合、ほとんどはそのまま焼却・埋め立て処分され、その量は年間で約48万トン。この数値を換算すると大型トラック約130台分を毎日焼却・埋め立てしていることになります。

POINT
毎日廃棄される大量の衣服を処理するためにも、環境負荷が生じており、現状を変えてゆく必要があります。

循環型モデルで廃棄のない世の中へ

  • 企業が
    取り組むこと

  • 生活者が
    できること

循環型モデルの導入のために企業が取り組むこととして、原材料調達時には、長寿命化やリサイクルを想定すること、環境配慮素材を選択することなどがある。製造時には、透明性やトレーサビリティの確保がある。適量供給のためには、需要予測や受注生産の採用、国内生産の導入がある。
循環型モデルの導入のために生活者が取り組むこととして、購入時には作られ方をしっかり見ること、適量購入のために先のことを考えて買うことがある。利用時には今持っている服を長く大切に着ることが挙げられる。利用後は、服を循環利用するために、リサイクルして服を資源として再活用する、リユースでファッションを楽しむことが挙げられる。

「大量生産・大量消費・大量廃棄」の一方通行(リニア)型から、「適量生産・適量購入・循環利用」により、廃棄される衣服が少なくなる循環(サーキュラー)型への取り組みが始まっています。

POINT
循環型モデルを実現するためには、衣服を製造・販売する企業と使用する生活者の双方のアクションが不可欠です。
循環型モデルへと踏み出した
企業の取り組み

企業では循環型モデルを実現するために、生産工程で廃棄される繊維を少なくすること、生活者に長く着てもらうために色落ちしにくい染色技術やほつれにくい縫製技術などの開発、リサイクルを想定し再利用しやすい素材選びや分解しやすいデザイン、さらにはモノマテリアル(単一素材)での商品開発など、様々な取り組みが検討されています。また、古い衣服の回収しやすい仕組みづくりやリサイクル技術の開発、元の製品に新たな付加価値を持たせて別の製品として再生させるアップサイクルへの取り組みや、リペア(修繕)サービスの拡充などにも及んでいます。
また、先進的に取り組む企業による連合組織「ジャパンサステナブルファッションアライアンス(JSFA)」が2021年に設立され、 2050年に向けて「カーボンニュートラル」「ファッションロスゼロ」を実現することを目指した取り組みが始まっています。

世界で加速する、
トレーサビリティと透明性の確保

ファッションは原材料から販売まで長く複雑なサプライチェーンとなっていますが、その透明性を求める動きが国際的に加速しています。温室効果ガスの排出量、水の使用量、水質汚染など環境負荷の把握や、ムリな労働を課していないかといった労働環境の把握を求める動きがグローバルブランドを中心に高まっており、国内企業も対応が求められています。

INTERESTサステナブルファッションへの関心

この先のファッションへ、
踏み出す準備はできている?

多くの関心を集めるサステナブル
ファッション!

サステナブルファッションへの関心割合

継 続層 具体的な取り組みを行って6カ月以上である:3.5% 実行層 具体的な取り組みを行って6カ月未満である:0.9% 準備層 関心があり、ここ1カ月以内にできることは実行したい:5.0% 関心層 関心はあるが、日常生活の中で具体的な行動は起こしていない:32.0% 無関心層 知っているが全く関心はない:18.8% 非認知層 (アンケートに回答するまで)サステナブルファッションを知らなかった 39.7%

出典元:環境省「令和6年度循環型ファッションの推進方策に関する調査業務」におけるアンケート調査

アンケートによると私たちの6割はサステナブルファッションを認知しています。約4割が関心を持っている、又は具体的な取組を行っており、サステナブルファッションへの関心は高まっていると言えます。

私たちの取組みが求められていること

衣服を処分するときに、回収しやすくする 46.4% どう対応すればよいのか、分かりやすく情報発信する 31.4% 衣服のリペアやリユースをもっと利用しやすくする 28.4% 安く買い、流行のシーズンが終わったら処分するサイクルを見直す 21.5% サステナブルな衣服の商品数をもっと増やし選択しやすくする 16.8% ファッションに関係する企業が、生産工程で環境問題にどう配慮しているかの情報が分かるようにする 15.5% 商品の環境負荷や環境配慮に関する情報が、購入時に分かるようにする 14.3%  消費者の好みや体型等のデータに応じた衣服の個別受注・生産システムを導入する 10.3% あてはまるものはない 20.5%

出典元:環境省「令和6年度循環型ファッションの推進方策に関する調査業務」におけるアンケート調査

「サステナブルファッションとは何か?どう動けばよいのか?」を整理し、情報発信することや服を処分する際に回収しやすくするなどが挙げられ、企業にも生活者にも、具体的なアクションが求められています。

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
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