公害紛争については、公害等調整委員会及び都道府県に置かれている都道府県公害審査会等が公害紛争処理法(昭和45年法律第108号)の定めるところにより処理することとされています。公害紛争処理手続には、あっせん、調停、仲裁及び裁定の4つがあります。
公害等調整委員会は、裁定を専属的に行うほか、重大事件(水俣病やイタイイタイ病のような事件)、広域処理事件(航空機騒音や新幹線騒音)等について、あっせん、調停及び仲裁を行い、都道府県公害審査会等は、それ以外の紛争について、あっせん、調停及び仲裁を行っています。
2023年中に公害等調整委員会が受け付けた公害紛争事件は29件で、これに前年から繰り越された50件を加えた計79件(責任裁定事件35件、原因裁定事件37件、調停事件4件、義務履行勧告事件3件)が2023年中に係属しました。その内訳は、表6-9-1のとおりです。このうち2023年中に終結した事件は30件で、残り49件が2024年に繰り越されました。
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終結した主な事件としては、「稲敷市における土砂埋立てに伴う土壌汚染による財産被害等責任裁定申請事件」があります。この事件は、土木関係会社が、山林及び共同墓地を無許可で埋め立てたため、茨城県稲敷市の申請人らが、土壌が汚染され、周辺井戸の水質が汚染されたとして、土木関係会社及び許可権限がある稲敷市らに対して損害賠償を求めたものです。公害等調整委員会は、本件について、直ちに裁定委員会を設け、専門委員による現地調査等を実施するなど、手続を進めた結果、2023年10月、被申請人らの損害賠償責任を認め、申請を一部認容する裁定を行いました。
2023年中に都道府県の公害審査会等が受け付けた公害紛争事件は40件で、これに前年から繰り越された41件を加えた計81件(調停事件80件、義務履行勧告事件1件)が2023年中に係属しました。このうち2023年中に終結した事件は39件で、残り42件が2024年に繰り越されました。
公害紛争処理制度の利用の促進を図るため、都道府県・市区町村、裁判所及び弁護士会に向けて制度周知のための広報を行いました。また、公害紛争処理連絡協議会、公害紛争処理関係ブロック会議等を開催し、都道府県公害審査会等との相互の情報交換、連絡協議に努めました。
公害紛争処理法においては、地方公共団体は、関係行政機関と協力して公害に関する苦情の適切な処理に努めるものと規定され、公害等調整委員会は、地方公共団体の長に対し、公害に関する苦情の処理状況について報告を求めるとともに、地方公共団体が行う公害苦情の適切な処理のための指導及び情報の提供を行っています。
2022年度に全国の地方公共団体の公害苦情相談窓口で受け付けた苦情件数は7万1,590件で、前年度に比べ2,149件減少しました(対前年度比2.9%減)。
このうち、典型7公害(環境基本法(平成5年法律第91号)第2条第3項において定義されている「大気汚染」「水質汚濁」「土壌汚染」「騒音」「振動」「地盤沈下」及び「悪臭」)の苦情件数は5万723件で、前年度に比べ大気汚染が690件減少するなど、全体でも672件減少しました(対前年度比1.3%減)。
また、典型7公害以外の苦情件数は2万867件で、前年度に比べ廃棄物投棄が849件減少するなど、全体でも1,477件減少しました(対前年度比6.6%減)。
2022年度の典型7公害の直接処理件数(苦情が解消したと認められる状況に至るまで地方公共団体において措置を講じた件数)4万5,781件のうち、3万328件(66.2%)が、苦情を受け付けた地方公共団体により、1週間以内に処理されました。
地方公共団体が行う公害苦情の処理に関する指導等を行うため、公害苦情の処理に当たる地方公共団体の担当者を対象とした公害苦情相談員等ブロック会議等を実施しました。
環境事犯について、特に産業廃棄物の不法投棄事犯、暴力団が関与する悪質な事犯等に重点を置いた取締りを推進しました。2023年中に検挙した環境事犯の検挙事件数は5,832事件(2022年中は6,111事件)で、過去5年間における環境事犯の法令別検挙事件数の推移は、表6-9-2のとおりです。
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2023年中に廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号。以下「廃棄物処理法」という。)違反で検挙された5,054事件(2022年中は5,275事件)の態様別検挙件数は、表6-9-3のとおりです。このうち不法投棄事犯が52.1%(2022年中は52.8%)、また、産業廃棄物事犯が12.9%(2022年中は12.9%)を占めています。
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2023年中の水質汚濁防止法(昭和45年法律第138号)違反に係る水質汚濁事犯の検挙事件数は2事件(2022年中は0事件)でした。
2023年中における主な罪名別環境関係法令違反事件の通常受理・処理人員は、表6-9-4のとおりで、受理人員は、廃棄物処理法違反の6,388人が最も多く、表全体の約90%を占めています。次いで、動物の愛護及び管理に関する法律(昭和48年法律第105号)違反(263人)となっています。処理人員は、起訴が3,624人、不起訴が3,504人であり、起訴率は約50.8%です。起訴人員のうち公判請求は199人、略式命令請求は3,425人です。
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