環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書令和5年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第1章>第3節 オゾン層保護対策等

第3節 オゾン層保護対策等

1 国際的な枠組みの下での取組

オゾン層の保護のためのウィーン条約及びモントリオール議定書を的確かつ円滑に実施するため、オゾン層保護法を制定・運用しています。また、同議定書締約国会合における決定に基づき、「国家ハロンマネジメント戦略」等を策定し、これに基づく取組を行っています。

開発途上国においては、JCMを利用した代替フロンの回収・破壊スキームの導入補助事業やモントリオール議定書の円滑な実施等を支援するために議定書の下に設けられた多数国間基金等を使用した二国間協力事業等を実施しました。

また、2019年12月のCOP25を機に、我が国のリーダーシップにより設立した、フロン類のライフサイクル全般にわたる排出抑制対策を国際的に展開していくための枠組みである、フルオロカーボン・イニシアティブは15の国・国際機関から賛同を得ています(2022年11月時点)。2022年度も国際会議の場におけるサイドイベントを3回、国内関係者との会合を1回開催し、活動の幅を広げています。

2 オゾン層破壊物質の排出の抑制

我が国では、オゾン層保護法等に基づき、モントリオール議定書に定められた規制対象物質の製造規制等の実施により、同議定書の規制スケジュール(図1-3-1)に基づき生産量及び消費量(=生産量+輸入量-輸出量)の段階的削減を行っています。HCFCについては2020年をもって生産・消費が全廃されました。

図1-3-1 モントリオール議定書に基づく規制スケジュール

オゾン層保護法では、特定物質を使用する事業者に対し、その排出の抑制及び使用の合理化に努力することを求めており、特定物質の排出抑制・使用合理化指針において具体的措置を示しています。ハロンについては、「国家ハロンマネジメント戦略」に基づき、ハロンの回収・再利用、不要・余剰となったハロンの破壊処理等の適正な管理を進めています。

3 フロン類の管理の適正化

我が国では、主要なオゾン層破壊物質の生産及び消費は2019年末に全廃されましたが、オゾン層保護推進のためには、現在も市中で使用されている、特定フロンを充填した冷凍空調機器廃棄時の徹底した冷媒回収が必要です。加えて、特定フロンから転換が進み排出量が年々増加するHFCは強力な温室効果ガスであり、HFCを含めたフロン類の排出抑制対策は、地球温暖化対策の観点からも重要です。

このため、家庭用の電気冷蔵庫・冷凍庫、電気洗濯機・衣類乾燥機及びルームエアコンについては家電リサイクル法に、業務用冷凍空調機器についてはフロン排出抑制法に、カーエアコンについては自動車リサイクル法に基づき、これらの機器の廃棄時に機器中に冷媒等として残存しているフロン類の回収が義務付けられています。回収されたフロン類は破壊又は再生の方法で適正処理されることとなっています。2021年度の各機器からのフロン類の回収量は表1-3-1、図1-3-2のとおりです。

表1-3-1 家電リサイクル法に基づく再商品化によるフロン類の回収量・破壊量(2021年度)
図1-3-2 業務用冷凍空調機器・カーエアコンからのフロン類の回収・破壊量等(2021年度)

フロン排出抑制法には、冷媒フロン類に関して、業務用冷凍空調機器の使用時漏えい対策、機器の廃棄時にフロン類の回収行程を書面により管理する制度、都道府県知事に対する廃棄者等への指導等の権限の付与、機器整備時の回収義務等が規定されています。これらに基づき、都道府県の法施行強化、関係省庁・関係業界団体による周知など、フロン類の管理の適正化について、一層の徹底を図っています。

改正事項について、施行から5年経過後の点検・評価を2021年から実施しました。その結果、2022年6月に「平成25年フロン排出抑制法の施行状況の評価・検討に関する報告書」として今後のフロン対策の取組の方向性について取りまとめました。