環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書令和5年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第1部第4章>第4節 ALPS(アルプス)処理水に係る海域モニタリング

第4節 ALPS(アルプス)処理水に係る海域モニタリング

2021年4月、廃炉・汚染水・処理水対策関係閣僚等会議において、多核種除去設備等処理水(以下「ALPS(アルプス)処理水」という。)の処分について、2年程度後をめどに、安全性の確保と風評対策の徹底を前提に、海洋放出を行う基本方針が決定されました。

上記基本方針においては、ALPS(アルプス)処理水の海洋放出に当たり、トリチウム以外の放射性物質が規制基準を確実に下回るまで浄化されていることを確認するとともに、取り除くことの難しいトリチウムの濃度は、海水で大幅に希釈することにより、規制基準を厳格に遵守するだけでなく、消費者等の懸念を少しでも払拭するよう、当該規制基準の40分の1かつ世界保健機関(WHO)の飲料水水質ガイドラインの7分の1程度の水準(1,500ベクレル/ℓ未満)とすることとしています。また、ALPS(アルプス)処理水の放出前から海域モニタリングを強化・拡充し、その際、国際原子力機関(IAEA)の協力を得て分析機関間比較を行って分析能力の信頼性を確保することや、海洋環境の専門家等による新たな会議を立ち上げ、海域モニタリングの実施状況について確認・助言を行うことなどにより、客観性・透明性を最大限高めることとしています。

基本方針を踏まえ、2022年3月に政府の「総合モニタリング計画」を改定し、2022年度から放出前の海域モニタリングを開始しており、海水や魚類、海藻類についてトリチウム等の放射性核種の濃度を測定しています(写真4-4-1)。2023年度には海洋放出開始が予定されており、放出開始直後は測定の頻度を高くする予定です。

写真4-4-1 海域モニタリングの様子

また、2021年に「ALPS(アルプス)処理水に係る海域モニタリング専門家会議」を立ち上げ、海域モニタリングの地点、頻度、手法等の妥当性や結果に関する科学的・客観的な評価について専門家による確認・助言を得ながら海域モニタリングを実施しています。

さらに、2022年11月には分析機関間比較の一環としてIAEA及び第三国の専門家が来日し、共同での試料採取等を行いました(写真4-4-2)。今後、IAEAにより、我が国、IAEA及び第三国における分析結果の比較・評価が行われます。なお、2014年から実施している分析機関間比較において、IAEAが2021年の結果をまとめた報告書では、海域モニタリング計画に参加している日本の分析機関が引き続き高い正確性と能力を有していると評価されています。これらを含むALPS処理水の放出に関するIAEAによる独立したレビューについては、2023年4月にG7により支持が表明されました。

写真4-4-2 採取した試料をIAEA及び第三国の専門家が確認する様子