環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書令和5年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第1部第4章>第2節 福島県内除去土壌等の最終処分に向けた取組

第2節 福島県内除去土壌等の最終処分に向けた取組

福島県内での除染により発生した除去土壌等については、中間貯蔵開始後30年以内に福島県外で最終処分を完了するために必要な措置を講ずることとされています。県外最終処分の実現に向けては、最終処分量の低減を図ることが重要であるため、県外最終処分に向けた取組に関する中長期的な方針として、2016年4月に「中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略」及び「工程表」を取りまとめ、2019年3月に見直しを行いました(図4-2-1)。また、2016年6月には、除去土壌の再生利用を段階的に進めるための指針として、「再生資材化した除去土壌の安全な利用に係る基本的考え方について」を取りまとめました。

図4-2-1 中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略の概要

これらに沿って、福島県南相馬市小高区東部仮置場及び飯舘村長泥地区において、除去土壌を再生資材化し、盛土の造成等を行うといった再生利用の安全性を確認する実証事業を実施してきました。これまでに実証事業で得られた結果からは、空間線量率等の上昇が見られず、盛土の浸透水の放射能濃度は概ね検出下限値未満となっています(なお、南相馬市の実証事業については、2021年9月に盛土を撤去済み)。

飯舘村長泥地区における実証事業では、2022年度に農地造成、水田試験及び花き類の栽培試験を実施しました(写真4-2-1)。

写真4-2-1 飯舘村長泥地区を視察する小林茂樹環境副大臣と柳本顕環境大臣政務官

農地造成については2021年4月に着手した除去土壌を用いた盛土が、2022年度末までに概ね完了しました。水田試験については、水田に求められる機能を概ね満たすことを確認しました。これまでに実証事業で得られたモニタリング結果からは、施工前後の空間線量率に変化がないこと、農地造成エリアからの浸透水の放射性セシウムはほぼ不検出であることなどの知見が得られており、再生利用を安全に実施できることを確認しています(図4-2-2)。さらに、道路整備での再生利用について検討するため、中間貯蔵施設内において道路盛土の実証事業にも着手しました。また、福島県外においても実証事業を実施すべく、関係機関等との調整を開始しました。

図4-2-2 飯舘村長泥地区事業エリアの遠景(水田試験エリアとは、「水田機能を確認するための試験」のエリアを表す)

減容・再生利用技術の開発に関しては、2022年度も、大熊町の中間貯蔵施設内に整備している技術実証フィールドにおいて、中間貯蔵施設内の除去土壌等も活用した技術実証を行いました。また、2022年度は双葉町の中間貯蔵施設内において、仮設灰処理施設で生じる飛灰の洗浄技術・安定化技術に係る基盤技術の実証試験を開始しました。

また、福島県内除去土壌等の県外最終処分の実現に向け、減容・再生利用の必要性・安全性等に関する全国での理解醸成活動の取組の一つとして、2022年度は2021年度に引き続き、全国各地で対話フォーラムを開催しており、これまで、第5回を広島市内で2022年7月に、第6回を高松市内で10月に、第7回を新潟市内で2023年1月に、第8回を仙台市内で3月に開催しました(写真4-2-2)。当日は、西村明宏環境大臣をはじめ、有識者や著名人に参加いただき、福島の除去土壌などに関する課題や今後について議論を交わしました。

写真4-2-2 西村明宏環境大臣や有識者や著名人等が参加した仙台での第8回対話フォーラム

さらに、2022年度も引き続き、一般の方向けに飯舘村長泥地区の現地見学会を開催しています。このほか、大学生等への環境再生事業に関する講義、現地見学会等を実施するなど、次世代に対する理解醸成活動も実施しました。

また、中間貯蔵施設に搬入して分別した土壌の表面を土で覆い、観葉植物を植えた鉢植えを、2020年3月以降、総理官邸、環境大臣室、新宿御苑、地方環境事務所等の環境省関連施設や関係省庁等に設置しています。鉢植えを設置した前後の空間線量率はいずれも変化はなく、設置以降1週間~1か月に1回実施している放射線のモニタリングでも、鉢植えの設置前後の空間線量率に変化は見られていません(写真4-2-3)。今後とも、除去土壌の再生利用の推進に関する理解醸成の取組を進めていきます。

写真4-2-3 総理官邸に設置している鉢植え