環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書令和4年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第6章>第4節 国際的取組に係る施策

第4節 国際的取組に係る施策

1 地球環境保全等に関する国際協力の推進

(1)質の高い環境インフラの普及
ア 環境インフラの海外展開

2020年12月に策定された「インフラシステム海外展開戦略2025」において、戦略の目的の3本柱のうち二つに「カーボンニュートラル、デジタル変革への対応等を通じた、産業競争力の向上による経済成長の実現」と「展開国の社会課題解決・SDGs達成への貢献」が位置付けられ、脱炭素と環境がインフラ政策の中核に加わりました。これらの実現に向けて、相手国のニーズも踏まえ、実質的な排出削減につながる「脱炭素移行政策誘導型インフラ輸出支援」を推進しています。2021年6月には、二国間クレジット制度(JCM)を通じた環境インフラの海外展開を一層強力に促進するため、「脱炭素インフライニシアティブ」を策定しました。2021年10月に閣議決定した「地球温暖化対策計画」においては、JCMにより、2030年度までに官民連携でGHG排出削減量累計1億トン程度という目標が示されました(資金の多様化による加速化を通じて、官民連携で事業規模最大1兆円程度)。また、これまで我が国がパリ協定第6条の交渉を主導してきたことを踏まえ、2021年10月末から開催されたCOP26での合意を受けて、環境省は「COP26後の6条実施方針」を発表し、[1]JCMパートナー国の拡大と、国際機関と連携した案件形成・実施の強化、[2]民間資金を中心としたJCMの拡大、[3]市場メカニズムの世界的拡大への貢献を通じて、世界の脱炭素化に貢献していくこととしました。さらに、環境インフラの海外展開を積極的に取り組む民間企業等の活動を後押しする枠組みとして、2020年9月に環境インフラ海外展開プラットフォーム(JPRSI)を立ち上げました。本プラットフォームには現在400を超える団体(設立当初は277団体)が会員として参加しています。JPRSIでは、セミナー・メールマガジン等を通じた現地情報へのアクセス支援、日本企業が有する環境技術等の会員情報の海外発信、タスクフォース・相談窓口の運営等を通じた個別案件形成・受注獲得支援を行いました。

また、2021年度から、再エネ水素の国際的なサプライチェーン構築を促進するため、再エネが豊富な第三国と協力し、再エネ由来水素の製造、島嶼(しょ)国等への輸送・利活用の実証事業を開始しました。

アジアを始めとした途上国等における脱炭素移行を後押しするために、国立環境研究所等が開発した、GHG排出量の予測、対策や影響を評価するための統合評価モデル「アジア太平洋統合評価モデル(AIM)」を活用して、ベトナムやインドネシア、タイにおける長期戦略策定の支援を行い、これらの国々のカーボンニュートラル目標の設定に貢献しました。

イ 技術協力

独立行政法人国際協力機構(JICA)を通じた研修員の受入れ(オンライン)、専門家の派遣、技術協力プロジェクトなど、我が国の技術・知識・経験を活かし、開発途上国の人材育成や、課題解決能力の向上を図りました。

例えば、課題別研修「パリ協定下の『国が決定する貢献』前進に向けた能力強化」等、地球環境保全に資するオンライン講義等の協力を行いました。

(2)地域/国際機関との連携・協力

地球環境問題に対処するため、[1]国際機関の活動への支援、[2]条約・議定書の国際交渉への積極的参加、[3]諸外国との協力、[4]開発途上地域への支援を積極的に行っています。

ア 多数国間の枠組みによる連携

(ア)国連や国際機関を通じた取組

○ SDGs等における取組

2015年9月の国連サミットにおいて「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択され、2030年を達成期限とする持続可能な開発目標(SDGs)が定められました。SDGsは、エネルギー、持続可能な消費と生産、気候変動、生物多様性等の多くの環境関連の目標を含む、17の目標と169のターゲットで構成され、毎年開催される「国連持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラム(HLPF)」において、SDGsの達成状況についてフォローアップとレビューが行われます。

2021年7月には新型コロナウイルス感染症の影響を受け、前年に続きオンライン形式でHLPFが開催され、我が国は2017年以来2回目となる自発的国家レビュー(VNR)を発表しました。また、環境省は、「グリーン/ブルーリカバリーにおける里山イニシアチブの役割」を国際機関等と共催で、オンライン開催しました。笹川博義環境副大臣(当時)は、グリーンリカバリーとブルーリカバリーに向けたプラットフォームを提供するSATOYAMAイニシアティブの重要性を認識し、その取組に対する環境省の支援を約束しました。

○ UNEPにおける活動

我が国は、UNEPの環境基金に対して継続的に資金を拠出するとともに、我が国の環境分野での多くの経験と豊富な知見を活かし、多大な貢献を行っています。2021年7月にはUNEPの支援のもと日本国環境省が「UNEP海洋ごみ及びマイクロプラスチックに係るマルチステークホルダープラットフォーム(MSP)フォーラム」を主催し、各国、国際機関、産業界、NGO等440名の参加を得て国際的取組の強化等について議論しました。また、2021年及び2022年の2回に分けて開催された第5回国連環境総会(UNEA5)においても対応しています。

大阪に事務所を置くUNEP国際環境技術センター(UNEP/IETC)に対しても、継続的に財政的な支援を実施するとともに、UNEP/IETC及び国内外の様々なステークホルダーと連携するために設置されたコラボレーティングセンターが実施する開発途上国等への環境上適正な技術の移転に関する支援、環境保全技術に関する情報の収集・整備・発信、廃棄物管理に関するグローバル・パートナーシップ等への協力を行いました。さらに、関係府市等と協力して、同センターの円滑な業務の遂行を支援しました。また、UNEP/IETCは、2019年度から民間企業の協力も得て、持続可能な社会を目指す新たな取組である「UNEPサステナビリティアクション」の展開を開始しており、環境省としても支援しています。

2021年12月には、「UNEPグローバルダイアログ~汚染のない地球に向けた持続可能な廃棄物管理~」が開催され、廃棄物の環境上適正な管理とサステナビリティの重要性や、SDGsやその先にあるべき未来のサステナブルな社会における廃棄物管理等に関して多角的な議論を行いました。

持続可能な消費と生産パターンの国際的定着に向け、国や地方レベルの政策、民間・NGO等を含む各種事業、人材育成、技術移転、研究等を促進するために、リオ+20で合意された「持続可能な消費と生産10年計画枠組み」が2014年から本格的に始まり、本枠組みの6つのプログラムのうち、環境省は「持続可能なライフスタイル及び教育」プログラムの共同リード国として、アジアを始めとする新興国・途上国における低炭素・持続可能な消費行動・ライフスタイルへの移行に向けた取組を実施しました。

UNEPが、気候変動適応の知見共有を図るために2009年に構築したGAN及びアジア太平洋地域の活動を担うAPANへの拠出金等により、脆(ぜい)弱性削減に向けたパートナーシップの強化、能力強化活動を支援しました。

○ 経済協力開発機構(OECD)における取組

経済成長・開発・貿易等国際経済全般について協議することを目的として設立されたOECDは環境政策においても先進国主導のルールメーキングを主導しています。2019年6月に我が国が議長国を務めた「G20持続可能な成長のためのエネルギー転換と地球環境に関する関係閣僚会合」にもOECD事務局が参加し、会合の成功に貢献する等、環境外交における我が国の国際的なプレゼンスにも貢献しています。我が国は、2010年より環境政策委員会のビューローを、2012年1月より同委員会の副議長を務めるなど、OECD環境政策委員会及び関連作業部会の活動に積極的に貢献しています。2021年10月に、「共通の価値:グリーンで包摂的な未来の構築」をテーマに開催された閣僚理事会には、岡村善文OECD代表部特命全権大使、広瀬直経済産業審議官、正田寛地球環境審議官(オンライン)が参加し、気候変動を始めとする経済分野で国際社会が直面する共通の課題について活発な議論が行われました。

○ 国際再生可能エネルギー機関(IRENA)における取組

我が国は、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の設立当初より2018年まで理事国に選出、2019年のアジア太平洋地域の理事国を務め、2020年は代替国に就任しました。具体的には、IRENAに対して分担金を拠出するとともに、特に島嶼(しょ)国における人材育成及び再生可能エネルギー普及の観点から、2022年3月には、IRENA及びGCFとの共催により、オンラインで国際ワークショップを実施しました。

(イ)アジア太平洋地域における取組

○ 日中韓三カ国環境大臣会合(TEMM)

2021年12月にオンラインで開催された第22回日中韓三カ国環境大臣会合(TEMM22)では、これまでの共同行動計画(2015-2019年)に基づく三か国の環境協力の進展について評価するとともに、新たな「環境協力に係る日中韓三カ国共同行動計画(2021-2025年)」を採択しました。新たな共同行動計画では、SDGs、パリ協定等のグローバルな取組への貢献、各分野間のシナジーの拡大など、今後三か国が協力活動を実施する際の原則を定めるとともに、海洋プラスチックごみ対策、気候変動対策、大気汚染対策等、日中韓に共通する環境問題について、TEMMの下で今後の協力して実施する活動を盛り込みました。

○ 日ASEAN環境協力イニシアティブ

2017年11月に提唱した「日ASEAN環境協力イニシアティブ」に基づき、ASEAN地域でのSDGs促進のため、廃棄物・リサイクル、持続可能な都市、排水処理、気候変動における環境インフラへの支援や、海洋汚染、化学物質、生物多様性の分野における協力が進んでいます。特に気候変動分野における環境協力の主要なプログラムとして、2021年10月の日ASEAN首脳サミットにおいて、「日ASEAN気候変動アクション・アジェンダ2.0」を日本より発表し、ASEAN各国の歓迎を受けました。これは、2018年11月の日ASEAN首脳サミットにおいて提唱した「日ASEAN気候変動アクション・アジェンダ」を、透明性・緩和・適応の3本の柱は維持した上で、特にASEAN地域の脱炭素社会への移行に向けた取組を大幅に拡充するとともに、既存の取組についてもその強度を強化するものです。同アジェンダに基づき、日本政府全体のアクションとして、ASEANとの気候変動地域協力を強化していきます。

特に、一つ目の柱である「透明性」としては、我が国がリーダーシップをとって設立した透明性パートナーシップ(PaSTI)に基づき、ベトナム、タイ、フィリピン等のASEAN国における企業等の排出量の透明性向上のための能力開発等を実施しました。また、これらの事例を活用し、ASEAN地域全体のガイドライン骨子をCOP26の場で公表するなど、我が国のGHG排出量算定報告公表制度の経験を活かした協力を実施しました。

○ 太平洋・島サミット(PALM)

2021年7月に開催された第9回太平洋・島サミット(PALM9)において、日本が太平洋島嶼(しょ)国と共に取り組んでいく今後3年間の具体的取組としてまとめられた「共同行動計画」には、5つの重点分野の1つに気候変動・防災が掲げられ、JCMの地域的展開のためのワークショップの実施や、豪州と協力したグリーン水素事業も同行動計画に位置付けられました。同行動計画を踏まえ、同年9月にJCMに関する情報提供のためのワークショップを開催し、太平洋島嶼(しょ)国側から脱炭素に向けた課題や太平洋島嶼(しょ)国におけるJCMを通じた協力の可能性等について議論しました。

(ウ)アジア太平洋地域における分野別の協力

自然と共生しつつ経済発展を図り、低炭素社会、循環型社会の構築を目指すクリーンアジア・イニシアティブの理念の下、2008年から様々な環境協力を戦略的に展開してきました。2016年以降は特に、SDGsの実現にも注力し、アジア地域を中心に低炭素技術移転及び技術政策分野における人材育成に係る取組等を推進しています。

気候変動については第1章第1節7、資源循環・3Rについては第3章第7節1、汚水処理については第3章第7節2、水分野については第4章第3節、大気については第4章第7節3(3)を参照。

イ 二国間の枠組みによる連携

(ア)先進国との連携

○ 米国

2021年4月、菅義偉内閣総理大臣(当時)とジョセフ・バイデン米国大統領は、日米首脳会談において、「野心、脱炭素化及びクリーンエネルギーに関する日米気候パートナーシップ」を立ち上げることで一致し、発表しました。これは、日米首脳間で発表する初めての気候変動に関する協力枠組みで、[1]両国における2030年目標や2050年までの温室効果ガス排出実質ゼロ目標、2030年目標達成に向けた計画や政策等の情報共有等を行うとともに、パリ協定の実施に係る交渉において協力すること、[2]水素、CCUS/カーボンリサイクル、革新原子力等の分野を含むイノベーションに関し、日米両国で協力し、グリーン成長の実現に向け協働すること、[3]日米両国による協力案件を模索するための議論を行うほか、途上国における気候に配慮し適応力のあるインフラ開発及び能力構築、地方政府の行動促進や気候資金の分野における連携を行うこと、を主な内容としています。

○ EU

2021年5月、菅義偉内閣総理大臣(当時)とシャルル・ミシェル欧州理事会議長及びウァズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員長はテレビ会議形式で会談を行い、「日EUグリーン・アライアンス」の立ち上げを発表しました。これは、グリーン成長と2050年温室効果ガス排出実質ゼロを達成するため、気候中立で、生物多様性に配慮した、かつ、資源循環型の経済の実現を目指すものであり、気候変動COP26及び生物多様性COP15を成功させるため、日EUで、[1]エネルギー移行、[2]環境保護、[3]民間部門支援、[4]研究開発、[5]持続可能な金融、[6]第三国における協力、[7]公平な気候変動対策の分野での協力を定めております。

○ オーストラリア

2021年6月、菅義偉内閣総理大臣(当時)は、G7コーンウォール・サミットに招待され英国を訪問中のスコット・モリソン・オーストラリア連邦首相と会談を行い、アジア等のエネルギー移行の支援を含む「技術を通じた脱炭素化に関する日豪パートナーシップ」を発表し、日豪経済関係を官民一体となって推進させていく重要性を確認しました。

(イ)開発途上国との連携

○ 中国

2019年11月に開催された日中環境ハイレベル円卓対話等において、中国生態環境部と環境政策及び大気汚染、海洋プラスチックごみ、気候変動対応、生物多様性等における環境協力を推進し、両省間で環境に関する協力覚書を署名することに合意しました。今年度には、ハイレベルでの対話を定期的に開催し、協力覚書の検討を進めるとともに、中国が掲げる2030年までのピークアウト及び2060年までの炭素中立目標の引き上げに関して働きかけを行うなど、率直な議論を交わしました。

気候変動については、2018年10月に、気候変動対策に関する研究面からの知見について両国の研究者が意見交換を行うため、環境省が、中国・気候変動戦略研究・国際協力センター(NCSC)と協力して「気候変動に関する日中政策研究ワークショップ」を北京で開催しました。日本及び中国の気候変動政策の現況、長期戦略研究の現状、排出削減と持続可能な発展との相乗効果、2度目標達成に向けたアジア地域での日中両国の協力の在り方について、活発な意見交換を行いました。

大気分野については、2018年6月に署名した「大気環境改善のための研究とモデル事業の協力実施に関する覚書」等に基づき、日中の政府間及び都市間の連携を通じて、PM2.5発生源対策に資するVOCの削減技術及び気候変動対策に資するコベネフィット型環境技術の導入促進等に関する協力を行いました。

海洋プラスチックごみについては、日中高級事務レベル海洋協議の下に設置された日中海洋ごみ協力専門家対話プラットフォーム会合及び日中海洋ごみワークショップの第3回会合を2021年12月に開催し、各国が実施している海洋プラスチックごみや資源循環に係る取組や科学的知見の整備に関する意見交換を行いました。

○ インドネシア

2019年6月に署名された海洋調整担当大臣との共同声明に基づき、海洋プラスチックごみについては、モニタリングの技術協力として、研修を行いました。

○ インド

2018年10月にインド環境・森林・気候変動省と署名した環境分野における包括的な協力覚書に基づき、2021年9月に「第1回日本・インド環境政策対話」を開催しました。本政策対話では気候変動分野の二国間協力等について議論するとともに、JCMに関する政府間協議の実施等、今後両省の協力を一層推進していくことに合意しました。

○ モンゴル

2018年12月に更新されたモンゴル自然環境・観光省との環境協力に関する協力覚書に基づき、「第14回日本・モンゴル環境政策対話」を2021年12月にオンラインで開催し、大気汚染対策、GOSATシリーズ、JCM、生物多様性等について、意見交換を行いました。

○ フィリピン

2017年1月に、安倍晋三内閣総理大臣(当時)とロドリゴ・ドゥテルテ・フィリピン共和国大統領の立会いの下でJCMに関する二国間文書への署名が行われたことを踏まえ、2018年2月にJCMに関する日・フィリピン間の第1回合同委員会が開催され、各種規程・ガイドライン類の採択等が行われ、JCM実施のための基盤が整いました。2022年3月にはフィリピン環境天然資源省と共催で「日本・フィリピン環境ウィーク」をオンラインで開催し、両省の気候変動分野を含む環境分野の協力に関する環境政策対話と合わせて、第6回廃棄物分野に関する対話を実施しました。また環境セミナー、展示会・ビジネスマッチング等を一体的に実施し、政策支援から案件形成までの包括的な協力を推進しました。

○ シンガポール

2017年6月に更新されたシンガポール環境水資源省との間の「環境協力に関する協力覚書」に基づき、2020年12月に「第6回日本・シンガポール環境政策対話」をオンラインで開催し、大気汚染、廃棄物管理、気候変動対策について意見交換を行い、今後も二国間及びASEAN地域における環境協力を強化していくことに合意しました。

○ タイ

2020年1月に開催された第2回日本・タイ環境政策対話の結果に基づき、海洋プラスチックごみについては、モニタリングの技術協力として、研修を行いました。

○ ベトナム

2020年8月に更新されたベトナム天然資源環境省との間の「環境協力に関する協力覚書」に基づき、2021年11月、「第7回日本・ベトナム環境政策対話」を開催し、ベトナムの2050年までのカーボンニュートラル目標の実現のため、「2050年までのカーボンニュートラルに向けた気候変動に関する共同協力計画」に合意し、両大臣により署名しました。また、12月には第1回合同作業部会を開催し、本共同協力計画に基づく気候変動分野及び海洋プラスチックごみ対策分野等における具体の協力を議論しました。このほか、気候変動や循環経済、水質汚染などに関するオンラインセミナーや両国企業によるバーチャル展示・ビジネスマッチ等、複数のイベントを「第2回日本・ベトナム環境ウィーク」として一体的に開催し、官民における二国間環境協力を推進しました。また、海洋プラスチックごみについては、モニタリングの技術協力として、当地における海洋プラスチックごみ調査手法の取りまとめに向けた助言、研修を行いました。

ウ 海外広報の推進

海外に向けた情報発信の充実を図るため、組織体制を見直すとともに、報道発表の英語概要、環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書の英語抄訳版等、海外広報資料の作成・配布や環境省ウェブサイト・SNS等を通じた海外広報を行いました。

エ 開発途上地域の環境の保全

我が国は政府開発援助(ODA)による開発協力を積極的に行っています。環境問題については、2015年2月に閣議決定した「開発協力大綱」において地球規模課題への取組を通じた持続可能で強靱(じん)な国際社会の構築を重点課題の一つとして位置付けるとともに、開発に伴う環境への影響に配慮することが明記されています。また、特に小島嶼(しょ)開発途上国については、気候変動による海面上昇など、地球規模の環境問題への対応を課題として取り上げ、ニーズに即した支援を行うこととしています。

(ア)無償資金協力

居住環境改善(都市の廃棄物処理、上水道整備、地下水開発、洪水対策等)、地球温暖化対策関連(森林保全、クリーン・エネルギー導入)等の各分野において、無償資金協力を実施しています。

草の根・人間の安全保障無償資金協力についても貧困対策に関連した環境分野の案件を実施しています。

(イ)有償資金協力

下水道整備、大気汚染対策、地球温暖化対策等の各分野において、有償資金協力(円借款・海外投融資)を実施しています。

(ウ)国際機関を通じた協力

我が国は、UNEPの環境基金、UNEP/IETC技術協力信託基金等に対し拠出を行っています。また、我が国が主要拠出国及び出資国となっているUNDP、世界銀行、アジア開発銀行、東アジア・ASEAN経済研究センター(ERIA)等の国際機関も環境分野の取組を強化しており、これら各種国際機関を通じた協力も重要になってきています。

(3)多国間資金や民間資金の積極的活用

地球環境ファシリティ(GEF)は、開発途上国等が地球環境問題に取り組み、環境条約の実施を行うために、無償資金等を提供する多国間基金です。2021年12月に開催されたGEF評議会では、事業案の採択、環境改善効果の向上に向けた取組、基金のガバナンス等が議論されました。我が国はGEFのトップドナーとして、意思決定機関である評議会の場を通じ、GEFの活動・運営に係る決定に積極的に参画しています。また、第8次増資会合がこれまで4回開催され、我が国は次期増資期間(2022年-2026年)におけるプログラムの優先事項の特定及び政策方針等の作成に貢献しました。

開発途上国の温室効果ガス削減と気候変動の影響への適応を支援する緑の気候基金(GCF)については、初期拠出の15億ドルに続いて、2019年10月の第1次増資ハイレベル・プレッジング会合において、我が国から最大15億ドルの拠出表明を行い、これまでに我が国を含む32か国及び2地方政府が総額約100億ドルの拠出を表明しました。また、2021年12月までに127か国における190件の支援案件がGCF理事会で承認されました。我が国は基金への最大級のドナーとして資金面での貢献に加え、GCF理事国として、支援案件の選定を含む基金の運営に積極的に貢献しています。また、我が国は、途上国の要請に基づき技術移転に関する能力開発やニーズの評価を支援する「気候技術センター・ネットワーク(CTCN)」に対して2020年度に約118万ドルを拠出し、積極的に貢献しました。

(4)国際的な各主体間のネットワークの充実・強化
ア 地方公共団体間の連携

脱炭素社会形成に関するノウハウや経験を有する日本の地方公共団体等の協力の下、アジア等各国の都市との間で、都市間連携を活用し、脱炭素社会実現に向けて基盤制度の策定支援や、優れた脱炭素技術の普及支援を実施しました。2021年度は、札幌市、富山市、川崎市、横浜市、東京都、広島県、大阪市、福岡市、北九州市、愛媛県による19件の取組を支援しました。2021年3月の第1回に引き続き、2022年3月に第2回脱炭素都市国際フォーラムを日米共催で実施しました。

イ 市民レベルでの連携

独立行政法人環境再生保全機構が運営する地球環境基金では、プラットフォーム助成制度に基づいて、国内の環境NGO・NPOが国内又は開発途上地域において他のNGO・NPO等との横断的な協働・連携の下で実施する環境保全活動に対する支援を行いました。

(5)国際的な枠組みにおける主導的役割

2021年6月、英国・コーンウォールで開催されたG7サミットの首脳宣言では、気候変動対策について、遅くとも2050年までにネット・ゼロ目標を達成するための努力にコミットし、各国がその目標に沿って引き上げた2030年目標にコミットすることを確認するとともに、排出削減対策が講じられていない石炭火力発電への政府による新規の国際的な直接支援の年内の終了にコミットすること等について一致しました。我が国は2021年から2025年までの5年間において、官民合わせて6.5兆円相当の支援を実施することと、適応分野の支援を強化していく考えを表明し、G7としても、2025年までの国際的な公的気候資金全体の増加及び改善にコミットしました。また、国内の状況に応じて2030年までにG7各国の陸地及び海洋の少なくとも30%を保全又は保護すること、「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を基礎として、プラスチックによる海洋汚染の深刻化に対処するための行動を加速化すること等にコミットしました。

2021年7月には、イタリア・ナポリでG20環境大臣会合及び気候・エネルギー大臣会合が開催されました。G20として初めて「気候」を冠する会合であり、気温上昇を1.5℃に抑えるための努力を追求するためには、全ての国による意味のある効果的な行動が必要であることを認識し、野心的な2030年目標をCOP26までに更新・通報すること等を求めました。同年10月、イタリア・ローマで開催されたG20サミット首脳宣言でも、1.5℃に抑えることを射程に入れ続けるためには、長期的な野心と短・中期的な目標とを整合させる明確な国別の道筋の策定を通じ、全ての国による意味のある効果的な行動及びコミットメントが必要とされました。また、「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」に沿って、海洋プラスチックごみに対処するというコミットメントを再確認しました。日本からは海洋プラスチックごみに関して、「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」の実現に向けた取組を主導していく旨述べました。

なお、宇宙空間のごみ(スペースデブリ)が、新たな国際的な課題となっており、国際社会が協力してスペースデブリ対策に取り組む必要があることから、我が国では、JAXAにおいて、2019年4月から世界に先駆けて大型デブリ除去プロジェクトを開始し、2020年4月からは、民間企業と連携して、2022年度の関連技術実証を目指して必要な開発を進めています。

上述の2019年のG20エネルギー・環境大臣会合で採択された「G20海洋プラスチックごみ対策実施枠組」に基づき、上述の2021年のG20環境大臣会合にあわせて、イタリアのイニシアティブの下、日本が支援し、「第3次G20海洋プラスチックごみ対策報告書」を取りまとめました。

また、2018年11月のASEAN+3サミットにて提唱された「ASEAN+3海洋プラスチックごみ協力アクション・イニシアティブ」に基づき、2019年に設立された海洋プラスチックごみナレッジ・センター(RKC-MPD)において、民間企業の優良事例を紹介するプラットフォームを立ち上げました。