環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書令和4年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第6章>第5節 地域づくり・人づくりの推進

第5節 地域づくり・人づくりの推進

1 国民の参加による国土管理の推進

(1)多様な主体による国土の管理と継承の考え方に基づく取組
ア 多様な主体による森林整備の促進

国、地方公共団体、森林所有者等の役割を明確化しつつ、地域が主導的役割を発揮でき、現場で使いやすく実効性の高い森林計画制度の定着を図りました。所有者の自助努力等では適正な整備が見込めない森林について、針広混交林化や公的な関与による整備を促進しました。多様な主体による森林づくり活動の促進に向け、企業・NPO等と連携した普及啓発活動等を実施しました。

イ 環境保全型農業の推進

第2章第6節1(1)を参照。

(2)国土管理の理念を浸透させるための意識啓発と参画の促進

国土から得られる豊かな恵みを将来の世代へと受け継いでいくための多様な主体による国土の国民的経営の実践に向けた普及や検討に取り組んでいます。また、持続可能な開発のための教育(ESD)の理念に基づいた環境教育等の教育を通じて、国民が国土管理について自発的に考え、実践する社会を構築するための意識啓発や参画を促進しました。

ア 森林づくり等への参画の促進

森林づくり活動のフィールドや技術等の提供等を通じて多様な主体による「国民参加の森林づくり」を促進するとともに、身近な自然環境である里山林等を活用した森林体験活動等の機会提供、地域の森林資源の循環利用を通じた森林の適切な整備・保全につながる「木づかい運動」等を推進しました。

イ 公園緑地等における意識啓発

公園、緑地等のオープンスペースは、良好な景観や環境、にぎわいの創出など、潤いのある豊かな都市をつくる上で欠かせないものです。また、災害時の避難地としての役割も担っています。都市内の農地も、近年、住民が身近に自然に親しめる空間として評価が高まっています。

このように、様々な役割を担っている都市の緑空間を、民間の知恵や活力をできる限り活かしながら保全・活用していくため、2017年5月に都市緑地法等の一部を改正する法律(平成29年法律第26号)が公布され、必要な施策を総合的に講じました。

2 持続可能な地域づくりのための地域資源の活用と地域間の交流等の促進

(1)地域資源の活用と環境負荷の少ない社会資本の整備・維持管理
ア 地域資源の保全・活用と地域間の交流等の促進

東日本大震災や東京電力福島第一原子力発電所事故を契機として、地域主導のローカルなネットワーク構築が危機管理・地域活性化の両面から有効との見方が拡大しています。また、中長期的な地球温暖化対策や、気候変動による影響等への適応策、資源ひっ迫への対処を適切に実施するためには、地域特性に応じた低炭素化や地域循環共生圏の構築、生物多様性の確保への取組等を通じ、持続可能な地域づくりを進めることが不可欠です。

2021年度においては、地域における再エネの最大限の導入を促進するため、地方公共団体による脱炭素社会を見据えた計画の策定や合意形成に関する戦略策定等を補助する「再エネの最大限の導入の計画づくり及び地域人材の育成を通じた持続可能でレジリエントな地域社会実現支援事業」や地域防災計画に災害時の避難施設等として位置付けられた施設に、平時の温室効果ガス排出抑制に加え、災害時にもエネルギー供給等の機能発揮を可能とする再生可能エネルギー設備等の導入を補助する「地域レジリエンス・脱炭素化を同時実現する避難施設等への自立・分散型エネルギー設備等導入推進事業」等を実施しました。さらに、地域における低炭素化プロジェクトに民間資金を呼び込むため、地域低炭素投資促進ファンドからの出資による支援や、グリーンボンド発行・投資の促進等を行いました。

「第五次環境基本計画」において目指すべき持続可能な社会の姿として掲げられた循環共生型の社会である「環境・生命文明社会」を実現するためには、ライフスタイルのイノベーションを創出し、パートナーシップを強化していくことが重要です。このため、国民一人一人が自らのライフスタイルを見直す契機とすることを目的として、企業、団体、個人等の幅広い主体による「環境と社会によい暮らし」を支える地道で優れた取組を募集し、表彰するとともに、その取組を広く国民に対して情報発信する「グッドライフアワード」を、2013年度から実施しています。2021年度は、応募があった192の取組の中から、最優秀賞1、優秀賞3、各部門賞7、計11の取組を環境大臣賞として表彰しました。

特別な助成を行う防災・省エネまちづくり緊急促進事業により、省エネルギー性能の向上に資する質の高い施設建築物を整備する市街地再開発事業等に対し支援を行いました。

イ 地域資源の保全・活用の促進のための基盤整備

地域循環共生圏づくりに取り組む28の活動団体を選定し、地域の総合的な取組となる構想策定及びその構想を踏まえた事業計画の策定、地域の核となるステークホルダーの組織化等の環境整備を実施しました。また、2019年度より運用を開始している「地域循環共生圏づくりプラットフォーム」では、各実証地域の取組から得られた知見を取りまとめ、地域の実情に応じた支援の在り方や効果を測る指標等の検討を実践的に行ったほか、オンラインにて「地域循環共生圏フォーラム2021」(主催:環境省、共催:and Beyondカンパニー(事務局:NPO法人ETIC.))を開催し、民間企業や団体、地方公共団体関係者を中心に、340名以上が参加しました。このフォーラムでは脱炭素分野や資源循環など、様々なテーマの分科会を開き、地域循環共生圏づくりに取り組んでいる民間企業等や地域の双方向の活発な議論が行われ、「学び」や「出会い・交流」の場となりました。

持続可能な地域づくりのためには、SDGsの達成を目指して、業種や分野を超えた人々の連携・協働が必要とされます。パートナーシップによるプラットフォームを形成し、環境・経済・社会課題の同時解決を目指すためには、多様なビジョンを持ち、主体的に地域課題解決に取り組む人材が期待されることから、地域の次世代リーダーを育成することを目的として、「地域循環共生圏創造を担うローカルSDGsリーダー研修」を全国5か所を対象地として開催しました。

資源循環分野については、第3章第3節を参照。

ウ 森林資源の活用と人材育成

森林資源をマテリアルやエネルギーとして地域内で持続的に活用するための担い手確保から発電・熱利用に至るまでの「地域内エコシステム」の構築等により、地域材の利用を促進しました。また、住宅や公共建築物等への地域材の利用拡大の支援を行いました。

人材育成に関しては、地域の森林・林業を牽引する森林総合監理士(フォレスター)、林業経営上の新たな課題に対応する森林経営プランナー、施業集約化に向けた合意形成を図る森林施業プランナー、間伐や路網作設等を適切に行える現場技能者を育成しました。

エ 災害に強い森林づくりの推進

東日本大震災で被災した海岸防災林の復旧・再生や豪雨や地震等により被災した荒廃山地の復旧・予防対策、流木による被害を防止・軽減するための効果的な治山対策など、災害に強い森林づくりの推進により、地域の自然環境等を活用した生活環境の保全や社会資本の維持に貢献しました。

オ 景観保全

景観の保全に関しては、自然公園法(昭和32年法律第161号)によって優れた自然の風景地を保護しているほか、景観法(平成16年法律第110号)に基づき、2021年3月末時点で630団体において景観計画が定められています。また、文化財保護法(昭和25年法律第214号)に基づき、2022年3月末時点で重要文化的景観を71地域選定しています(第2章第3節2(1)表2-3-1を参照)。

カ 歴史的環境の保全・活用

2021年度中に史跡名勝天然記念物の新指定19件、登録記念物の新登録3件、重要文化的景観の新選定1件をそれぞれ行うとともに、2021年度は1都市の歴史的風致維持向上計画を新規認定し、文化財の保護と一体となった歴史的風致の維持及び向上のための取組を行いました。

(2)地方環境事務所における取組

地域の行政・専門家・住民等と協働しながら、廃棄物・リサイクル対策、地球温暖化防止等の環境対策、東日本大震災からの被災地の復興・再生、国立公園保護管理等の自然環境の保全整備、希少種保護や外来種防除等の野生生物の保護管理について、地域の実情に応じた環境保全施策を展開しました。

3 環境教育・環境学習等の推進と各主体をつなぐネットワークの構築・強化

(1)あらゆる年齢階層に対するあらゆる場・機会を通じた環境教育・環境学習等の推進

環境省では、環境教育等による環境保全の取組の促進に関する法律(平成15年法律第130号。以下「環境教育等促進法」という。)に基づき、環境教育のための人材認定等事業の登録制度(環境教育等促進法第11条第1項)、環境教育等支援団体の指定制度(同法第10条の2第1項)、体験の機会の場の認定制度(同法第20条)の運用等を通じ、環境教育等の指導者等の育成や体験学習の場の確保等に努めました。

また、環境教育等促進法に基づき、発達段階に応じ、学校、家庭、職場、地域等において自発的な環境教育等の取組が促進されるよう、文部科学省との連携による教職員、地方公共団体職員、企業や団体職員向けの研修を行ったほか、学校や民間団体等が実施する環境教育や環境活動に役立つ情報を、環境学習ステーションにて提供しました。

加えて、「体験の機会の場」研究機構との間で環境教育等促進法に基づく協定(同法第21条の4第1項)を締結していることを踏まえ、同機構と連携して若年層を対象とした動画プレゼンテーションコンクール「Green Blue Education Forumコンクール2021」を実施する等、体験の機会の場の認定促進に向けた取組を進めました。

各地方公共団体において設置された地域環境保全基金により、環境アドバイザーの派遣、地域の住民団体等の環境保全実践活動への支援、セミナーや自然観察会等のイベントの開催、ポスター等の啓発資料の作成等が行われました。

文部科学省は、関係省庁と連携してエコスクールパイロットモデル事業を1997年度から2016年度まで実施し、1,663校認定してきました。2017年度からは「エコスクール・プラス」に改称し、エコスクールとして整備する学校を237校認定しました。

ESDについては、「持続可能な開発のための教育:SDGs実現に向けて(ESD for 2030)」という2020年から2030年までの新たな国際的実施枠組みが2019年11月に第40回ユネスコ総会で採択され、同年12月には第74回国連総会で承認されました。「ESD for 2030」の理念を踏まえ、関係省庁が連携し、2021年5月、「第2期ESD国内実施計画」を策定し、同日に「ESD推進の手引」も更新しました。また、学習指導要領では、小・中・高等学校の各段階において「持続可能な社会の創り手」となることが期待されることを明記しており、引き続き、ESDの提唱国として、持続可能な社会の創り手を育成するESDを推進していきます。

文部科学省では、ユネスコスクール(ユネスコ憲章に示されたユネスコの理想を実現するため、平和や国際的な連携を実践する学校であり、ユネスコが認定する学校)をESDの推進拠点として位置付けています。ユネスコスクール全国大会の開催(2021年11月)等を通じて、ESDの実践例の共有や議論等を行いESDの活動の振興を図るほか、補助金事業を通じて、持続可能な社会の創り手育成の推進につながる教員養成、カリキュラム作成及び評価手法の開発支援、ユース世代のESDへの取組の促進とネットワーク構築に取り組んでいます。

(2)各主体をつなぐ組織・ネットワークの構築・強化

ESD活動に取り組む様々な主体が参画・連携する地域活動の拠点を形成し、地域が必要とする取組支援や情報・経験を共有できるよう、文部科学省や関係団体と連携して、ESD活動支援センター及び地方ESD活動支援センター(全国8か所)を活用したESDに関する情報収集・発信、地域間の連携・ネットワークの構築に努めるとともに、ネットワークの拡大を受けて、テーマ別の学び合いの仕組みを導入しました。このほか、国連大学が実施する世界各地でのESDの地域拠点(RCE)の認定、アジア太平洋地域における高等教育機関のネットワーク(ProsPER.Net)構築等の事業を支援しました。

(3)市民、事業者、民間団体等による環境保全活動の支援

環境カウンセラー登録制度の活用により、事業者、市民、民間団体等による環境保全活動等を促進しました。

独立行政法人環境再生保全機構が運営する地球環境基金では、国内外の民間団体が行う環境保全活動に対する助成やセミナー開催等により、それぞれの活動を振興するための事業を行いました。このうち、2021年度の助成については、310件の助成要望に対し、181件、総額約5.9億円の助成決定が行われました。

環境省、独立行政法人環境再生保全機構、国連大学サステイナビリティ高等研究所の共催により、環境活動を行う全国の高校生に対し、相互交流や実践発表の機会を提供する「全国ユース環境活動発表大会(全国大会)」を2022年2月に開催し、優秀校に対して環境大臣賞等を授与しました。

持続可能な地域づくりのための中間支援機能を発揮する拠点として「環境パートナーシップオフィス(EPO)」を全国8か所に展開しています。各地方環境事務所と各地元のNGO・NPOが協働で運営、環境情報の受発信といった静的なセンター機能だけではなく、地域の環境課題解決への伴走等といった動的な役割を担いました。EPOの結節点として、各EPOの成果の取りまとめや相互参照、ブロックを超えた横展開等、全国EPOネットワーク事業を「地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)」が行いました。また、GEOCは環境省・国連大学との協働事業として時機に見合った国際情報の発信やシンポジウムの開催等を行いました。

環境教育等促進法に基づく体験の機会の場等の各種認定の状況等を環境省ウェブサイトにおいて発信しました。

事業者、市民、民間団体等のあらゆる主体のパートナーシップによる取組を支援するための情報をGEOC及びEPOを拠点としてウェブサイトやメールマガジンを通じて、収集、発信しました。

また、団体が実施する環境保全活動を支援するデータベース「環境らしんばん」により、イベント情報等の広報のための発信支援を行いました。

マルチステークホルダーによる生物多様性主流化・行動変容への取組は、第2章第2節1(1)を参照。

(4)環境研修の推進

環境調査研修所では、全国の地方公共団体、関係行政機関から、例年2,000名程度の研修への参加を得て、環境行政に関わる人材育成を行ってきました。

2021年度においては、2020年度に引き続き、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、従来どおりの研修について、実施を見合わせました。

従来は、研修の双方向性の確保、研修生間の交流の重視等の観点から、合宿制により集合研修を実施してきましたが、現時点ではその形式での研修実施が困難な状況であることから、行政研修・職員研修・分析研修の一部カリキュラムについて、動画教材配信等、ウェブ経由での研修代替措置を実施しました。

また、研修所から地方試験研究機関等に共通試料を送付して行う「遠隔参加型分析実習」を2020年度に引き続き実施(年度内2回、のべ5コースを実施)したほか、環境分析に関する情報として、環境調査研修所のホームページ上で、関連図書、環境試料の分析手法に関するリンク集を紹介するとともに、メールによる環境分析に関する技術的な問い合わせ窓口を開設しています。