環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書令和4年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第3章>第7節 適正な国際資源循環体制の構築と循環産業の海外展開の推進

第7節 適正な国際資源循環体制の構築と循環産業の海外展開の推進

1 適正な国際資源循環体制の構築

地球規模での循環型社会形成と、我が国の循環産業の海外展開を通じた活性化を図るためには、国、地方公共団体、民間レベル、市民レベル等の多様な主体同士での連携に基づく重層的なネットワークを形成する必要があります。アジア太平洋諸国における循環型社会の形成に向けては、3R・循環経済に関するハイレベルの政策対話の促進、3R・循環経済推進に役立つ制度や技術の情報共有等を目的として、2020年11月から12月に「アジア太平洋3R・循環経済推進フォーラム」第10回会合をウェビナー形式で開催しました。本会合では、アジア太平洋地域におけるプラスチック廃棄物問題の概要をまとめた「プラスチック廃棄物レポート」が採択されました。また、アフリカにおける廃棄物管理に関する知見共有とSDGs達成促進等を目的として、2017年4月に独立行政法人国際協力プロジェクトの一つとして、モザンビーク国マプト市のウレネ埋立処分場での福岡方式を活用した安全性向上支援事業が実施され、2020年10月に竣工式が実施されました。アジア各国に適合した廃棄物・リサイクル制度や有害廃棄物等の環境上適正な管理(ESM)の定着のため、国際協力機構(JICA)では、アジア太平洋諸国のうち、ベトナム、インドネシア、マレーシア、スリランカ、大洋州について、技術協力等により廃棄物管理や循環型社会の形成を支援しました。また、政府開発援助(ODA)対象国からの研修員受入れをオンラインで実施しました。

国際的な活動に積極的に参画し、貢献することも重要です。2021年3月には、世界経済フォーラム(WEF)と共催で「循環経済ラウンドテーブル会合」を開催し、日本企業の循環経済に関する技術や取組を世界に発信しました。

外務省及び環境省は、我が国に誘致したUNEP国際環境技術センター(UNEP/IETC)の運営経費を拠出しています。UNEP/IETCは、2016年の国連環境総会決議(UNEA2/7)で廃棄物管理の世界的な拠点として位置付けられ、主に廃棄物管理を対象に、開発途上国等に対し、研修及びコンサルティング業務の提供、調査、関連情報の蓄積及び普及等を実施しています。

バーゼル条約に関する国際的な取組について、我が国は、プラスチック廃棄物の環境上適正な管理に関する技術ガイドライン、有害廃棄物の陸上焼却に関するガイドライン、水銀に関する水俣条約において考慮することとされている水銀廃棄物の環境上適正な管理に関する技術ガイドラインについて策定作業を主導しています。

2019年のバーゼル条約第14回締約国会議(COP14)においては、バーゼル条約の規制対象物にプラスチックの廃棄物を加える附属書改正が決議されました。2021年1月1日に改正附属書が発効し、規制対象となるプラスチックを輸出する際に相手国の事前同意が必要となりましたが、それに先立ち、規制対象となるプラスチックの範囲を明確化するため、2020年10月に、プラスチックの輸出に係るバーゼル法該非判断基準を公表しました。

また、バーゼル条約の円滑な運用のための国際的な連携強化を図るため、我が国主催の有害廃棄物の不法輸出入防止に関するアジアネットワークワークショップをオンラインで開催し、アジア太平洋地域の12の国と地域及び関係国際機関が参加しました。

国、国際機関、NGO、民間企業等が連携して自主的に水銀対策を進める「世界水銀パートナーシップ」において廃棄物管理分野の運営を担当し、技術情報やプロジェクト成果の共有を進めました。また、同分野内のパートナーを集い、水銀廃棄物の処理技術や各国の課題等に関する情報交換等を行い、水銀廃棄物対策技術の普及促進に取り組みました。

我が国は、2019年3月に2009年の船舶の安全かつ環境上適正な再資源化のための香港国際条約(以下「シップ・リサイクル条約」という。)への加入書を国際海事機関(IMO)に寄託し、締約国となりました。我が国は、このシップ・リサイクル条約の策定をリードしてきた国として、条約の早期発効に向けて、各国に対する働きかけを行っています。具体的には、表敬訪問や会談等の機会を捉えた主要解撤国に対する早期条約締結の呼びかけや、ODAを通じたシップ・リサイクル施設改善の支援を行っており、その結果、2019年11月にはインドの条約締結に至りました。引き続き、主要解撤国の一つであるバングラデシュの条約締結に向けた課題の調査を行うなど、条約の早期発効に向けた取組を推進しています。

そのほか、港湾における循環資源の取扱いにおいては、循環資源の積替・保管施設等が活用されました。

近年、世界各国において自然災害が頻発化・激甚化しています。災害大国である我が国が蓄積してきた災害対応のノウハウや経験の供与は、アジア太平洋地域のような災害が頻発する地域においても有効です。そこで、環境省では、我が国の過去の災害による経験、知見を活かした国際支援の一環として、2018年に大地震が発生したインドネシア共和国に対して、災害廃棄物対策に関する政策策定への支援をオンラインにより実施しました。さらに、環境省ではこうした国際的な支援の一環として、2018年に策定されたアジア太平洋地域向けの災害廃棄物管理ガイドラインの改訂を行い、2022年3月にオンラインで開催された第8回廃棄物資源循環に関する国際会議(3RINCs)の災害廃棄物セッションと連携し、アジア太平洋地域における災害廃棄物対策の強化に向けた周知活動を実施しました。

2 循環産業の海外展開の推進

我が国の廃棄物分野の経験や技術を活かした、廃棄物発電ガイドラインの策定などアジア各国の廃棄物関連制度整備と、我が国循環産業の海外展開を戦略的にパッケージとして推進しています。我が国循環産業の戦略的国際展開・育成事業等では、海外展開を行う事業者の支援を2021年度に8件実施しました。2011年度から2020年度までの支援の結果、2022年3月時点で、事業化を開始し、既に収入を得ている件数が6件、事業化の目処が立っており、最終的な準備を進めている件数が1件、事業化に向けて、特別目的会社(SPC)・合弁企業設立準備、覚書(MOU)締結準備、入札プロセス開始等をしている件数が6件、事業化に向けて、引き続き調査をしている件数が16件となっています。また、我が国企業によるアジア等でのリサイクルビジネス展開支援については、2018年度から継続して実施している国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による技術実証と併せて、相手国政府との政策対話を実施し、我が国企業の海外展開促進と相手国における適切な資源循環システム構築のためのリサイクルシステム・制度構築を支援しています。

各国別でも様々な取組を行っています。インドネシア、カタール、サウジアラビア、タイ、フィリピン、ベトナム、マレーシア、ミャンマー、モザンビーク、ロシア等に対し、政策対話や合同ワークショップの開催、研修等を通じて、制度設計支援や、人材育成を行いました。

アジア地域等の途上国における公衆衛生の向上、水環境の保全に向けては、浄化槽等の我が国発の優れた分散型生活排水処理システムの国際展開を実施しています。2021年度は、第9回アジアにおける分散型汚水処理に関するワークショップを2021年11月にオンラインで開催し、分散型汚水処理システムの適正な普及に関する法制度・規制等の課題の解決や、維持管理のうち特に汚泥の処理・処分の解決に向けて議論を行い、各国分散型汚水処理関係者への情報発信とネットワーク構築や連携強化を図りました。また、SDGs目標6.3の達成に貢献し、浄化槽関連企業の海外展開の後押しを目的とした、汚水処理技術に関するセミナーをオンラインにて2か国で開催しました。