環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書令和4年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第1部第4章>第3節 復興の新たなステージに向けた未来志向の取組

第3節 復興の新たなステージに向けた未来志向の取組

環境省では、福島県内のニーズに応え、環境再生の取組のみならず、脱炭素、資源循環、自然共生といった環境の視点から地域の強みを創造・再発見する「福島再生・未来志向プロジェクト」を推進しています。本プロジェクトでは、2020年8月に福島県と締結した「福島の復興に向けた未来志向の環境施策推進に関する連携協力協定」も踏まえ、福島県や関係自治体と連携しつつ、脱炭素・風評対策・風化対策の3つの視点から施策を進めていくこととしています。

脱炭素に向けた施策としては、環境、エネルギー、リサイクル分野での新たな産業の定着を目指した実現可能性調査を2018年度から継続して実施し、2021年度は地域のグリーン水素や再生可能エネルギーの地域利用の可能性調査や、営農型太陽光発電システムの構築に係る調査、脱炭素ツーリズムに係る調査など8件の調査を採択しました。さらに、2021年度から、福島での自立・分散型エネルギーシステム導入に関して「調査」「計画」「整備」の各段階で重点的な財政的支援を「脱炭素×復興まちづくり」推進事業として開始しており、2021年度は、計画策定補助が2件、設備導入補助が10件採択されました。

また、福島に対する風評払拭や環境先進地へのリブランディングにつなげるため、2021年度から福島において未来に向けてチャレンジする姿を発信する、「FUKUSHIMA NEXT」表彰制度を設けました(図4-3-1)。審査の結果、環境大臣賞に3人(組)、福島県知事賞に3人(組)が選ばれ、今後、環境省では、様々なメディアを通じてこれらの優れた取組を発信していくこととしています。また、福島の復興と脱炭素の先進地域を目指す取組を世界に発信することを目的に、COP26にてセミナーとブース展示を実施しました。

図4-3-1 FUKUSHIMA NEXT2月広告

加えて、福島・環境再生の記憶の継承・風化対策として、未来を担う若い方々と一緒になって福島の未来を考えることを目的に「いっしょに考える『福島、その先の環境へ。』チャレンジ・アワード」という表彰制度を2020年度から引き続き実施しました(写真4-3-1)。

写真4-3-1 いっしょに考える「福島、その先の環境へ。」チャレンジ・アワードの表彰状授与式の様子(2021年12月)

さらに、2019年4月に福島県と共同策定した「ふくしまグリーン復興構想」を踏まえ、2021年7月に磐梯朝日国立公園満喫プロジェクト推進に向けた地域協議会を立ち上げるなど、国立公園等の魅力向上に関する取組を進めています。

2021年12月には、福島の復興まちづくりと脱炭素社会の実現を目指す「令和3年度福島再生・未来志向シンポジウム~福島の復興と脱炭素社会の実現に向かって~」を実施し、3月には「福島、その先の環境へ。」シンポジウムを実施しました(写真4-3-2)。引き続き、福島県との連携をより一層強化しながら、未来志向の環境施策を推進していきます。

写真4-3-2 穂坂泰環境大臣政務官や著名人も参加した「福島、その先の環境へ。」シンポジウムでのパネルディスカッションの様子(2022年3月12日)

事例:国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)にて福島の復興の取組を発信

2021年10月から11月に英国・グラスゴーで開催された国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)において、福島第一原発事故からの復興と脱炭素先進地域を目指す福島の取組を世界に発信することを目的として、COP26の会場に併設したジャパン・パビリオンにてブースを出展するとともに、11月10日に「あれから10年。福島、その先の環境へ。」と題したセミナーを開催しました。

ブースの出展では、復興が進む福島の現状に関して正確な情報をわかりやすく伝えるため、震災からの復興のあゆみと未来に向けた取組を紹介する動画を放映するとともに、福島を紹介する特設サイトが閲覧できるタブレット、特産品などを展示しました。ブースには年代や性別を問わず、世界各国から多くの方が訪れました。

また、セミナーでは、2050年のカーボンニュートラルを目指す福島県、大熊町、浪江町とも連携し、各首長と山口壯環境大臣のビデオメッセージや、各地方公共団体における脱炭素に向けた取組と、復興まちづくりに向けた取組を紹介しました。会場では、セミナー開始前に用意した席が満席となり、1階の同時配信モニター前で立ち見をする方もいるなど、福島の現状に対する関心の高さが伺えました。

環境省では、福島の現状に対する正しい理解の促進を図るため、今後も地方公共団体と連携して国際的な発信に取り組んでいきます。

ブースでの説明の様子、ブースの展示の様子、セミナーの様子