環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書令和4年版 環境・循環型社会・生物多様性白書>令和3年度 環境の状況 令和3年度 循環型社会の形成の状況 令和3年度 生物の多様性の状況>第1部 総合的な施策等に関する報告>はじめに

令和3年度 環境の状況
令和3年度 循環型社会の形成の状況
令和3年度 生物の多様性の状況
第1部 総合的な施策等に関する報告

はじめに

米国がパリ協定に復帰したことで始まった2021年は、国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)に至るまで、国内外の気候変動政策が劇的な変化を遂げ、世界でカーボンニュートラルに向けて大きく前進した年でした。

COP26における「グラスゴー気候合意」において、世界全体に及ぶ危機である気候変動と生物多様性の損失は相互関係にあり、自然や生態系の保護・保全及び回復が重要であると述べられており、気候変動と同時進行で、生物多様性の保全、大気や海洋汚染の防止、プラスチックごみへの対処をはじめとした資源循環等にも取り組む必要があると言えます。

また、COP26の開催期間中、金融機関がネットゼロに対応するグローバルな金融機関の有志連合(Glasgow Financial Alliance for Net Zero:GFANZ)が正式に設立され、加えて国際サステナビリティ基準審議会(International Sustainability Standards Board:ISSB)の設立により、気候変動を含むサステナビリティに関する統一的な情報開示の枠組みを策定する動きが進むなど金融面から企業に対して脱炭素化を促す動きが世界全体で更に加速しています。企業にとって、脱炭素をはじめとした環境に配慮した事業活動は、取り組まなければステークホルダーから評価されなくなることと同時に、取り組むことがビジネスチャンスにつながるとも言え、今こそ、今まで通り(business as usual)のやり方からの変革が求められます。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第6次評価報告書の第I作業部会報告書では「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」と記されています。企業活動や、企業とバリューチェーンでつながり、モノやサービスを購入し生活している私たちの毎日の活動が地球温暖化に影響を及ぼしているということを認識し、一人一人がモノやサービス等の購入時に、脱炭素化や生物多様性の保全等につながるかどうかを考慮する必要があります。また、このような一人一人の購入活動等によるライフスタイルシフトは、企業の環境に配慮した事業活動を突き動かす力にもなり得ると考えられます。

新型コロナウィルス感染症の拡大による危機とともに、私たち人間の活動による気候変動、資源の大量消費、生物多様性の損失等の危機によって、持続可能性が危ぶまれています。将来世代が希望を持つことができる社会を引き継ぐためには、「脱炭素」「循環経済」「分散・自然共生」という多角的な切り口によるアプローチから、一人一人の暮らしの基盤である地域で企業活動から一人一人のライフスタイルまで横断的な変革を実践しなくてはなりません。また、我が国を持続可能な形に変革するグランドデザインでもある「新しい資本主義」「クリーンエネルギー戦略」「デジタル田園都市国家構想」において、地域は鍵となる主体です。

2022年は、2030年までに脱炭素を実現する「脱炭素先行地域」の募集を開始しました。この変革に向け、私たち一人一人は、科学的知見を基とした情報から現状を知って行動に移さねば、将来世代に希望を持つことができる未来を引き継ぐことができないと考えます。

これらを踏まえ、第1章では気候危機とも言われる気候変動問題に対する新たな事実と動向、生物多様性の国際動向から地球環境問題を捉え、第2章では「脱炭素」「循環経済」「分散・自然共生」という3つの切り口による我が国のアプローチについて解説し、第3章では、脱炭素を核とした地域循環共生圏の実現と私たち一人一人が実践するライフスタイルの変革から新たな循環共生型の社会(環境・生命文明社会)を考えます。また、第4章では、環境省にとって最重要の課題の一つである、東日本大震災・原発事故からの復興に向けた取組について紹介します。