環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書令和4年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第1部>第3章 私たちが変える持続可能な地域とライフスタイル>第1節 地域循環共生圏の更なる発展

第3章 私たちが変える持続可能な地域とライフスタイル

私たちの暮らしは、森里川海からもたらされる自然の恵み(生態系サービス)に支えられています。

かつては、自然から得られる資源とエネルギーが地域の衣・食・住を支え、資源は循環して利用されていました。それぞれの地域では、地形や気候、歴史や文化を反映し、多様で個性豊かな風土が形成されてきました。そして、地域の暮らしが持続可能であるために、森里川海を利用しながら管理する知恵や技術が地域で受け継がれ、自然と共生する暮らしが営まれてきました。

しかし、戦後のエネルギー革命、工業化の進展、流通のグローバル化により、私たちの暮らしは物質的な豊かさと便利さを手に入れ、生活水準が向上した一方で、自然の恵みにあまり頼らなくても済む暮らしに変化していく中で、人口の都市部への集中、開発や環境汚染、里地里山の管理不足による荒廃、海洋プラスチックごみ、気候変動問題等の形で持続可能性を失ってしまいました。そして、持続可能性を失った経済社会は、新型コロナウイルス感染症に対しても脆(ぜい)弱であることが明らかとなりました。

持続可能な経済社会となるためには、地域においても経済社会を変革する「イノベーション」が不可欠で、変革に向けたグランドデザインを描き、実行していく必要があります。そして、そこで暮らす一人一人のライフスタイルが持続可能な形に変革されていくとともに豊かさを感じながら活き活きと暮らし、地域が自立し誇りを持ちながらも、他の地域と有機的につながる地域のSDGs(ローカルSDGs)を実現することにより、国土の隅々まで活性化された未来社会が作られていくことが重要です。そのためにも、新しい資本主義のもとで地域のWell-beingをもたらし、デジタル田園都市国家構想を実現に近づけていくこと、つまりDX(デジタルトランスフォーメーション)を活用しつつ、地域のSDGsである地域循環共生圏の拡大と深化が鍵となります。

第1節 地域循環共生圏の更なる発展

1 地域循環共生圏

地域循環共生圏は、地域資源を活用して環境・経済・社会の統合的向上を実現する事業を生み出し続けるとともに、例えば都市と農村のように地域の個性を活かして地域同士で支え合うネットワークを形成していくという「自立・分散型社会」を示す考え方です。地域が抱える様々な課題を、環境を切り口に、パートナーシップのもとで統合的に解決していくことから、ローカルSDGsとも言います(図3-1-1)。

図3-1-1 地域循環共生圏の概念と地域循環共生圏を目指す取組
(1)地域循環共生圏づくりプラットフォーム

地域循環共生圏を創造していくためには、地域のステークホルダーが有機的に連携し、環境・経済・社会の統合的向上を実現する事業を生み出し続ける必要があります。環境省は2019年度より、「環境で地域を元気にする地域循環共生圏づくりプラットフォーム事業」を行い、ステークホルダーの組織化を支援する「環境整備」と、事業の構想作成を支援する「事業化支援」を行っています。さらにこの事業の中で、地域循環共生圏に係るポータルサイトの運用も行っており、「知る」「学ぶ」「出会う」「つながる」機会等を提供することで、全国各地におけるローカルSDGsの実践を一層加速させています。

事例:日本一の森林率84%をブランディングする(NPO法人84プロジェクト)

高知県は、県面積に占める森林の割合が84%で日本一の森林率を誇る自然豊かな土地です。84プロジェクトでは、その豊かな森林資源を明るくポジティブなイメージにしようと、高知県の森を84(はちよん)というブランドにし、それらを活用した商品開発等を行っています。また、森林の持続的な活用のため、「小さな林業」の推進を行い、UIターンなどによる林業従事者の新規参入も促進しています。

「小さな林業」とは、大型林業機械で一定の区域の木を一度に伐るのではなく、小型林業機械を使用して行う長期択伐型の林業形態のことです。良質な木材生産が可能な森を持続させることで、地域の自然資源を循環させることができることに加え、小型機械の使用で参入コストが低いことにより、林業従事者の拡大に期待できます。また、比較的幅の狭い道の敷設で済むため、山の保全にも配慮しています。

84プロジェクトでは、小さな林業の推進と高知県産木材のブランド化により、定住者を増やし、地域資源を活用した経済循環を生み出すことで地域を活性化するとともに、森林と人の持続可能な関わり方の実現を目指しています。

小さな林業・作業道研修の様子
(2)グッドライフアワード

環境省が主催するグッドライフアワードは、日本各地で実践されている「環境と社会によい暮らし」に関わる活動や取組を募集し、表彰することによって、活動を応援するとともに、優れた取組を発信するプロジェクトです。国内の企業・学校・NPO・地方公共団体・地域・個人を対象に公募し、有識者の選考によって「環境大臣賞」「実行委員会特別賞」が決定されます。受賞取組を様々な場面で発信、団体間等のパートナーシップを強化することで、地域循環共生圏の創造につなげていきます。

コラム:自然を傷つけない屋根上太陽光発電とグリーンテックで環境に優しいエネルギー循環の実現(アイ・グリッド・ソリューションズ)

第9回グッドライフアワードで環境大臣賞最優秀賞に輝いたアイ・グリッド・ソリューションズは、商業施設や物流施設といった既存施設の屋根を利用した分散型太陽光発電所を導入し、土地を切り崩さないため自然環境に負荷をかけずに再生可能エネルギーを利用することを実現しています。施設の屋根で発電した電力をその施設内で使う地産地消の再エネであり、土地を切り崩すことがないため環境保全にも寄与しています。また、発電した電気は溜めることが出来ないという特性も独自のAIを用いたエネルギーマネジメントや循環的に利用できるプラットフォームを構築し、余った電力を別の利用者に供給することで、再生可能エネルギーを効率的に利用しています。

太陽光発電システムを設置した商業施設
(3)SATOYAMAイニシアティブ

我が国は、国連大学と共に、2010年に愛知県名古屋市で開催された生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)を機に、SATOYAMAイニシアティブを提唱しました(図3-1-2)。

図3-1-2 SATOYAMAイニシアティブの概念図

SATOYAMAイニシアティブは、地産地消等の持続可能なライフスタイルにより形成・維持されてきた、我が国の里地里山のような二次的な自然環境の保全と持続可能な利用の両立を目指しており、日本で培われた経験も発信しています。本イニシアティブでは、世界各地のパートナーと共に、地域ワークショップの開催や各国の農業生態系保全プロジェクトの支援などの活動を進め、生物多様性条約ではそれまであまり重視されていなかった、二次的な自然環境の重要性に光を当てたことで、生物多様性条約締約国会議をはじめとする国際的な議論の場においても高く評価されています。

「SATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ」の会員は、2022年3月時点で73か国・地域の283団体となっています。

生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)第二部で採択される予定の新たな生物多様性の世界目標の下で、SATOYAMAイニシアティブの取組を発展させ、我が国のOECM(保護地域以外で生物多様性保全に資する地域)の考え方や地域循環共生圏の国際発信や、SDGsの達成にも貢献することが期待されます。

コラム:Jリーグとの連携

2021年6月に、環境省と公益社団法人日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)は、お互いが持つ知見やネットワークを共有しながら、SDGsの観点で、地域の活力を最大限発揮できるための取組を協働していくことに合意しました。Jリーグの各クラブは、長年にわたり、地域やサポーターの協力も得て社会課題解決、地域振興に資する活動を実施してきました。今後、環境省は、Jリーグと協力しながら、気候変動対策やプラスチック資源循環施策、国立公園の利活用を始めとする環境問題に関する普及啓発や行動変容を訴求することで、サポーターや地域の企業、金融機関等への効果的な働きかけにつなげ、地域全体での環境・経済・社会の持続可能性の向上を図っていきます。

連携協定の締結式典の様子

事例:信州やまほいく(長野県)

長野県では、子どもたちが自然の中で主体的な遊びを通して、生きる力の土台を育めるよう、2015年に「信州型自然保育(信州やまほいく)認定制度」を創設、2022年1月現在241園が認定を受けています。認定園の1つである1971年開園の伊那市高遠第2・第3保育園は、2015年に園児数18名で定員の半分を切り存続の危機となりました。危機打開のために保護者や地域住民等で「高遠第2・第3保育園の存続と未来を考える会(現在は、「高遠第2・第3保育園と地域の未来を考える会」に変更)」を立ち上げ、保護者からの提案により同年10月信州型自然保育認定制度普及型(自然保育にも積極的に取り組んでいる活動)、2018年特化型(屋外での自然保育に重点を置く活動)の認定を受けました。県内唯一の特化型公立園として注目され、移住者増加に貢献し、2021年度の園児数30名中27名が移住者の子どもでした。今後も子どもを中心に、園・保護者・地域が連携して伊那市の保育目標である「生きる力のある子ども」を「やまほいく」という方法を通して育み、子どもたちの笑顔と元気な姿を見せ、話題を発信することで移住者増加等、地域の活性化に役立ちたいと考えています。

きれいなもみじ、はっぱのシャワー

2 地域における脱炭素化

(1)再生可能エネルギーを地域でつくる重要性

財務省の貿易統計によれば、2020年の我が国の鉱物性燃料の輸入額は約10.5兆円にのぼります。環境省において2015年度の市町村別のエネルギー代金の域内外収支を産業連関表等にて算出したところ、約9割の市町村で域外への支出が上回っています。この資金を、国内で生産できる多様な地域の再生可能エネルギーの導入や省エネ対策、投資に回すことにより、エネルギー収支を改善し、地域内の資金循環を増やすことで、足腰の強い地域経済を構築するとともに、新たな雇用の創出や、災害時の強靱(じん)さ(レジリエンス)の向上にもつながる効果が期待されます。

また、再生可能エネルギーの更なる導入に当たっては、適正な事業者による地域と共生した事業実施を図り、地域における前向きな合意形成を促した形で、適地の確保を進めることが重要です。一方で、急速に拡大してきた太陽光発電を中心として災害や環境への影響、不法投棄などに関する懸念が広がり、一部の事業では地域トラブルが生じているケースも見られます。このことを踏まえ、安全面、防災面、景観や環境への影響、将来の廃棄等に対する地域の懸念を払拭し、責任ある長期安定的な事業運営が確保される環境を更に構築することが必要です。環境省は、環境アセスメント制度や、2021年6月に公布された改正地球温暖化対策推進法に基づく地域脱炭素化促進事業に関する制度を適切に運用し、地域における円滑な合意形成を図りつつ、適正に環境に配慮し、地域に貢献する再生可能エネルギー事業を促進します。また、適正に環境配慮がなされず、丁寧な合意形成が図られていない再生可能エネルギー事業については、環境影響評価法に基づく環境大臣意見などにより今後も厳しい態度で臨んでいきます。さらに、経済産業省、農林水産省、国土交通省及び環境省が共同事務局となり、有識者や実務者等から構成される検討会を2022年4月に設置し、太陽光発電設備などの再生可能エネルギー発電設備の適正な導入及び管理に向けた施策の方向性を幅広く検討しているところです。

こうした地域と共生した形での導入を前提に、地域で再生可能エネルギーを作ることは、昨今の世界情勢を踏まえると、エネルギー安全保障にも寄与し、さらに脱炭素化の環境面、地域資金循環による経済面等に貢献できることが期待され、自立した地域づくりに貢献します。

(2)地域経済循環分析の活用

地域経済循環分析は、全国約1,700自治体から任意の自治体を選択するだけで、産業別の生産額や雇用者所得、石油・ガスなどのエネルギーに使用している額、域際収支など、経済の特徴が一目で分かり、さらに他の自治体との比較も簡単にできる分析ツールで、2017年度に環境省で構築しました。現在、環境省ウェブサイトに公開されている分析ツールは、誰でも無料で利用できます(図3-1-3、図3-1-4)。

図3-1-3 地域経済循環構造図
図3-1-4 地域経済循環分析 自動作成ツール出力例

地域経済循環分析により、市町村単位又は複数の市町村をまとめた圏域で、地域の所得(お金)の流れを生産、分配、支出(消費、投資等)の三面で「見える化」することで、地域経済の全体像と地域からの所得の流出入を把握でき、「地域からエネルギー代金の流出はどの程度か?」などの分析ができるため、地方公共団体の政策担当者が、再生可能エネルギー等の地域環境対策が地域経済循環構造に与える影響について検討することが可能となります。脱炭素化を核とした環境・経済・社会面における地域の諸課題の「同時解決」を図るためにも、地域経済活性化に寄与する地域環境対策を講ずることが必要です。

(3)環境政策に係る全国行脚

環境省では地域の脱炭素化及びその他の環境政策について、環境大臣、環境副大臣、環境大臣政務官が全国47都道府県で様々な関係者と対話を実施しています。2022年1月には、地方公共団体とともに地方の成長戦略でもある地域脱炭素の重要性について理解を深めていくために、地域脱炭素施策に関するブロック別意見交換会を開催しました。環境大臣、環境副大臣、環境大臣政務官が出席し、都道府県知事及び市町村長等合計140名が参加し、地域の脱炭素化に関するニーズや課題について意見交換を行いました。引き続き、環境大臣、環境副大臣、環境大臣政務官と地域の様々な関係者が対話をする環境政策に係る全国行脚を実施していきます(写真3-1-1)。

写真3-1-1 環境政策に係る全国行脚の様子

事例:浦和美園第3街区を核として実現するスマートシティさいたまモデル(さいたま市、Looop、中央住宅、高砂建設、アキュラホーム)

埼玉県さいたま市では2011年に「次世代自動車・スマートエネルギー特区」の指定を受け、「暮らしやすく、活力のある都市として、継続的に成長する環境未来都市」の実現を目指しています。さらに、2015年からはSDGsにつなげるスマートシティさいたまモデルを実現すべく、環境負荷が少なく快適、便利で健康的に過ごせる最先端のまちづくりが展開されてきました。美園地区の「浦和美園E-フォレスト」内においては、共有空間の創出や住宅の高断熱化、次世代型電力コミュニティの導入等、先進技術により自然・街・人が様々な形でつながり、未来への好循環を育むまちづくりが進められています。各住戸が敷地の一部を拠出することで、住民共用のコモンスペースを創出し、電線や通信ケーブルの地中化も行っており、住民同士が適度に顔を合わせるコミュニティの醸成を促す設計になっています。

この「浦和美園E-フォレスト」のうち第3街区は、さいたま市、Looop(ループ)、中央住宅、高砂建設、アキュラホームが共同で開発し、2021年12月から入居を開始した全51戸の分譲地で、住宅街の各戸の屋根上の太陽光パネル(4.5kW/戸)で発電した電力を、街区中央にあるチャージエリアに集約し、各戸へ配電するマイクログリッドを形成しています。チャージエリアには大型蓄電池(125kWh)や「動く蓄電池」である電気自動車(EV)を備え、太陽光発電の余剰分の蓄電と配電を行います。

また、各戸にはハイブリッド給湯器も導入し、予測需要量に対し太陽光発電の余剰が発生するタイミングでお湯を沸き上げるなど、需給両面で再生可能エネルギーの利用率を最大限に高めています。1年間に街区で必要とする電力の60%以上を街区内で発電した再生可能エネルギーで賄い、不足分も非化石証書を活用することで街区内の電力供給を実質的に再生可能エネルギー100%としています。系統停電時には、系統電力から独立してマイクログリッドが自立運転することで、街区内への電力供給を継続可能にする災害への強さも実現します。

街区内では、太陽光発電の余剰に応じて従量料金単価を変動させるダイナミックプライシング料金メニューを提供します(2022年4月開始)。各戸に設置するデバイスで電力使用量や翌日の従量料金単価を表示し、各家庭の行動変容を促進することで、太陽光発電の自家消費率向上も見込まれます。

第3街区 エネルギーシステム概要、山口壯環境大臣による街区の視察

事例:再生可能エネルギーを地域観光振興のコンテンツに(元気アップつちゆ)

元気アップつちゆは、福島市街から車で約30分の位置にある土湯温泉のまちづくりを行っている会社です。2011年の東日本大震災の影響による観光客激減を打開するため、土湯温泉観光協会と湯遊つちゆ温泉協同組合が出資し、2012年に設立されました。地域資源の温泉を生かした振興を考えた結果、バイナリー式地熱発電所を2015年に稼働させ、売電収入を住民が福島市街に通うためのバス定期券代や空き店舗の活用補助等に活用しています。またバイナリー式地熱発電所は産業観光資源の役割も果たし、観光客数増加とそれに伴う雇用創出に貢献しています。今後は多様なフィールドと分野で活躍する人たちと協働で「オープンプラットホーム観光地」を目指します。

バイナリー式地熱発電所、発電時に使った冷却水で海老を飼育

3 地域循環共生圏づくりを支えるESG金融の推進

地域の金融機関には、地域資源の持続的な活用による地域経済の活性化を図るとともに、地域課題の解決に向けて中心的な役割を担うことが期待されています。このような環境・経済・社会面における課題を統合的に向上させる取組は、地域循環共生圏の創造につながるものであり、地域金融機関がこの取組の中で果たす役割を「ESG地域金融」として推進することにより、取組を深化させていくことが重要です。

(1)ESG地域金融実践ガイド2.0

2021年4月、ESG 地域金融の実務の発展に応じる形で、環境省はESG地域金融実践ガイドを改定しました。このガイドは、金融機関としてのESG地域金融に取り組むための体制構築や事業性評価の事例をまとめるとともに、事例から抽出された実践上の留意点や課題等について分析したもので、地域金融機関が参照しながら自身の取組を検討・実践する助けとなる資料となっています。

(2)持続可能な社会の実現のためのESG地域金融の普及展開に向けた共通ビジョン

分散型の持続可能な社会づくりに向けて地域におけるESG金融の普及展開を図ることを目的に、ESG金融ハイレベル・パネルの下に「ESG地域金融タスクフォース」を立ち上げ、地域金融の様々なプレイヤーと一体となって議論を進め、2021年3月にESG地域金融の普及展開に向けた「共通ビジョン」を策定しました。地域課題の解決や地域資源の活用を通じた持続可能な社会の実現に向けて、地域金融機関等の果たすべき役割や共有すべき考え方等がまとめられています。

(3)地方銀行との連携

地域金融機関は地域循環共生圏の創造に向けて中心的な役割が期待されることもあり、地域の様々なセクターとの積極的な連携が図られています。地域金融機関との頻繁な意見交換や勉強会の開催のほか、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に基づく情報開示の支援などを含めて各種の事業を通じて実際の案件形成・地域の課題解決をサポートしています。

事例:三井住友信託銀行と北海道地方環境事務所がESG地域金融に関する連携協定

2021年9月に両者でESG地域金融に関する連携協定を締結しました。地域循環共生圏や地域脱炭素の実現に向けて、地域金融機関への伴走支援体制を強化して道内市町村や企業の取組を金融面から後押しし、北海道におけるESG地域金融の普及と地域課題解決を目的としています。今後、市町村も含め、地方銀行や信用金庫を対象とした講師派遣やヒアリング、事業の掘り起こし等を行っていく予定です。三井住友信託銀行は独自のインパクト評価手法や専門家集団が科学的根拠に基づいてイノベーションの推進や技術の社会実装を図る「テクノロジー・ベースド・ファイナンス」を実施しており、その強みを活かした取組を行っていきます。

地域金融機関への伴走支援のフレームワーク

4 地域循環共生圏の深化へ

2022年は「地域脱炭素元年」とも言われます。地域の脱炭素化を推進するためには、地域経済に貢献し、地域課題の解決を図り、地方創生を後押しする「地域に利益をもたらす脱炭素化事業」であることが重要です。このような事業は、地域の多様な分野の人が協働して主体的にかかわり、地域外の人とのつながり・支えあいによって生み出されます。

また脱炭素化を実現することは、資源循環や自然共生を同時に実現していくことでもあります。そして地下資源の活用を中心とした従来の大量生産・大量消費・大量廃棄型の経済社会から、再生可能エネルギーや自然資本といった地上に在る資源の活用を中心とした新たな経済社会への変革でもあります。

これらの考え方は、脱炭素を核とした地域循環共生圏の創造といえます。地域循環共生圏の創造と両輪で進めていく必要があることとして、ライフスタイルシフトがあります。人の経済社会が拠って立つ自然環境と、生きとし生けるものの営みを将来世代に引き継ぎ、持続可能なものにしていくという目的・視点に立つライフスタイルに転換することで、地域循環共生圏の創造との相乗効果により、環境と生命・暮らしを最も大切で根本的な価値においた、健康で心豊かな、新たな時代の真に循環共生型の社会(環境・生命文明社会)が実現するからです。

そのためには、環境教育の推進等による価値観の転換や人材の育成・確保、指数関数的なスピードで進化しているデジタル技術を活用し、これまで実現できなかったことを実現していくDX(デジタルトランスフォーメーション)が大きな鍵を握っています。

事例:ブロックチェーンを活用した地域循環共生圏づくり

chaintope(チェーントープ)は、福岡県飯塚市にあるブロックチェーン技術開発を主体とした会社で自社開発したアプリケーションを[1]サステナビリティ[2]トレーサビリティ[3]トラストサービス(行政証書発行)[4]デジタルアセット(地域通貨等)の4領域で展開しています。2021年8月に佐賀市とみやまパワーHDと協働し、佐賀市内清掃工場のバイオマス発電実績と、市内の公共施設等の再生可能エネルギー供給サービス利用実績をリアルタイムでブロックチェーンに記録し、地産地消率や再生可能エネルギー消費量やCO2削減量を即時可視化して環境価値の電子証書化に成功しました。この環境価値を地域内で循環させるとともに、脱炭素だけでなく災害対策等にも活用することを目指しています。

佐賀市環境価値証書のイメージ、佐賀市清掃工場でのシステム状況