環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書令和4年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第1部第2章>第2節 循環経済の視点からのアプローチ

第2節 循環経済の視点からのアプローチ

大量生産・大量消費型の経済社会活動は、大量廃棄型の社会を形成し、健全な物質循環を阻害するほか、気候変動問題、天然資源の枯渇、大規模な資源採取による生物多様性の損失など様々な環境問題にも密接に関係しています。

資源・エネルギーや食料需要増大、プラスチックをはじめとした廃棄物発生量の増加が世界全体で深刻化しており、一方通行型の経済社会活動から、持続可能な形で資源を利用する「循環経済(サーキュラーエコノミー)」への移行を目指すことが世界の潮流となっています。

1 循環経済(サーキュラーエコノミー)の我が国の動向

(1)第四次循環型社会形成推進基本計画の第2回点検及び循環経済工程表の策定

「地球温暖化対策計画」において、温室効果ガスの排出削減対策のうちの廃棄物処理における取組の1つとして、サーキュラーエコノミーへの移行を加速するための工程表の今後の策定に向けて具体的検討を行うことが定められました。これを受けた取組の一つとして、2022年度に予定されている、「第四次循環型社会形成推進基本計画」(2018年6月閣議決定)の評価・点検結果を循環経済工程表として取りまとめ、ライフサイクル全体での資源循環に基づく脱炭素化の取組の推進を図っていきます。

(2)循環経済パートナーシップ

2021年3月、環境省及び経済産業省、一般社団法人日本経済団体連合会は、循環経済の取組の加速化に向けた官民連携による「循環経済パートナーシップ(J4CE、ジェイフォース)」を立ち上げました。J4CEでは、日本企業によるサーキュラーエコノミーに関する先進的な取組として131事例を取りまとめて、9月にウェブサイトにおいて公開しました。また、すでに実績のある技術やビジネスモデル、将来に向けた研究開発や連携の取組など、様々な観点から特に注目すべき28件についての事例集も発行しました(図2-2-1)。

図2-2-1 循環経済パートナーシップと注目事例集
(3)循環経済及び資源効率性に関するグローバルアライアンス

世界全体での循環経済への公正な移行などを目指して、各国政府や国際的な機関・団体が結集する「循環経済及び資源効率性に関するグローバルアライアンス(GACERE)」が2021年2月に立ち上がりました。GACEREには我が国を含む18か国・地域・機関が参加しており(2022年3月時点)、サーキュラーエコノミーと気候変動に関する調査報告書の公表などを実施しています。

2 プラスチック資源循環の促進

(1)プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律

第204回国会において「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」(令和3年法律第60号)が成立し、2022年4月1日に施行されました。本法律は、プラスチック使用製品の設計から廃棄物の処理に至るまでのライフサイクル全般にわたって、3R+Renewableの原則に則り、あらゆる主体のプラスチックに係る資源循環の促進等を図るためのものです。具体的には、次の措置を盛り込んでいます。

[1]「設計・製造」段階において、プラスチック使用製品設計指針(プラスチック使用量の削減や部品の再使用、再生プラスチックの利用等)を策定し、当該指針に則した設計を国が認定する制度を創設すること。

[2]「販売・提供」段階において、特定プラスチック使用製品提供事業者が取り組むべき措置に関し、判断の基準を定め、特定プラスチック使用製品の使用の合理化によりプラスチック使用製品廃棄物の排出を抑制すること。

[3]「排出」段階において、市区町村の分別収集及び再商品化、製造事業者等による自主回収及び再資源化、排出事業者による排出の抑制及び再資源化等の取組を促進すること。

本法律を円滑に施行するとともに、引き続き、「プラスチック資源循環戦略」(2019年5月消費者庁・外務省・財務省・文部科学省・厚生労働省・農林水産省・経済産業省・国土交通省・環境省策定)で掲げた野心的なマイルストーンの達成を目指し、予算、制度的対応をはじめ様々な施策を総合的に検討・実施していきます。

図2-2-2 「プラスチック資源循環」に関する特設ウェブサイト イメージデザイン
(2)決議「プラスチック汚染を終わらせる:法的拘束力のある国際文書(条約)に向けて」

2022年2月から3月にかけて開催された第5回国連環境総会再開セッション(UNEA5.2)において、海洋プラスチック汚染を始めとするプラスチック汚染対策に関する法的拘束力のある文書(条約)について議論するための政府間交渉委員会(INC)を立ち上げる決議が採択されました。我が国はUNEA5.2の開催に先立って、プラスチックの大量消費国・排出国を含む多くの国が交渉に参加するためには、各国の状況を考慮した上で海洋プラスチックごみ対策を推進することが重要という考えの下、国別行動計画を策定・公表する仕組みを念頭に置いた決議案を提出し、「プラスチック汚染を終わらせる」という表題の決議には我が国が提案した内容や考え方が大きく反映されています。海洋及びその他の環境におけるプラスチック汚染問題は国境を越え得る課題であり、世界全体で協調して対策に取り組まなければ問題解決は困難です。我が国は2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにまで削減することを目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」の提唱国として、今後のINCにおける国際交渉にも積極的に参加し、世界的な対策の推進に貢献します。

3 廃棄物・資源循環分野の脱炭素化

廃棄物・資源循環分野においても、2050年温室効果ガス排出実質ゼロのための排出削減策の検討を早急に進めていくことが不可欠であることから、2021年8月の中央環境審議会循環型社会部会にて、「廃棄物・資源循環分野における2050年温室効果ガス排出実質ゼロに向けた中長期シナリオ(案)」を公表しました。

本シナリオでは、廃棄物・資源循環分野の2050年温室効果ガス排出実質ゼロの達成に向けて対象とする温室効果ガス排出の範囲や削減対策の実施についての基本的な考え方を整理し、政府・地方公共団体・民間企業・NGO/NPO・国民等の各主体が今後取り組むべき方向性を明らかにするため、温室効果ガス削減対策の強度別にシナリオを設定し、2050年までの温室効果ガス排出量の試算を行いました。

試算により、プラスチック資源循環の進展等により廃棄物処理施設(焼却施設・バイオガス化施設等)からの排ガス等の中の炭素の大半がバイオマス起源となり、廃棄物処理施設でCCUSを最大限実装できれば、廃棄物・資源循環分野の実質ゼロ、さらには実質マイナスを実現できる可能性があることが示唆されましたが、同時に、今までの計画等の延長線上の対策では、2050年までの廃棄物・資源循環分野の脱炭素化のためには不十分なことが明らかとなり、技術、制度面での対策のみならず、関係者が一丸となり、相当な野心を持って取り組んでいく必要があります。

今後、素材産業や製造業等の他分野の脱炭素化に向けた動きとの連携・調整を図りつつ、廃棄物処理における技術開発の進捗も踏まえ、引き続き温室効果ガスの排出削減策に向けた検討の深化・精緻(ち)化を進めてまいります。

4 災害廃棄物処理

地震や豪雨などの大規模な災害によって発生した災害廃棄物を適正かつ円滑・迅速に処理するため、災害時には、環境省の職員を現地に派遣するほか、専門家や支援自治体、民間団体の協力による支援体制を構築しています。専門家及び民間団体を登録する災害廃棄物処理支援ネットワーク(D.Waste-Net)を運用するとともに、災害廃棄物処理を経験した地方公共団体職員を「災害廃棄物処理支援員」として登録し、発災時に被災地を支援してもらうことを目的とした「災害廃棄物処理支援員制度(人材バンク)」を2020年度に設立しました。2021年7月に静岡県熱海市で発生した土石流災害では、人材バンクの初運用として被災現場に支援員が現地入りし、仮置場の運営に関する助言や、家屋解体・撤去に関する助言等を熱海市に行いました。支援員による過去の被災経験を活かした助言により、迅速な復旧に向けた貢献ができました。

また、人的支援のみならず、一般廃棄物処理施設の整備も支援しています。廃棄物処理施設が被災により稼働停止し、市民の生活環境や公衆衛生への悪影響が懸念される事態に備えるため、災害廃棄物処理の中核を担い、廃棄物発電により、地域のエネルギーセンターとして災害対応拠点ともなる一般廃棄物処理施設の更新や耐水対策など施設の強靱(じん)化に係る支援を行っています。