環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書令和3年版 環境・循環型社会・生物多様性白書施策第2章>第3節 生物多様性保全と持続可能な利用の観点から見た国土の保全管理

第3節 生物多様性保全と持続可能な利用の観点から見た国土の保全管理

1 生態系ネットワークの形成

生物の生息・生育空間のまとまりとして核となる地域(コアエリア)及びその緩衝地域(バッファーゾーン)を適切に配置・保全するとともに、これらを生態的な回廊(コリドー)で有機的につなぐことにより、生態系ネットワーク(エコロジカルネットワーク)の形成に努めます。生態系ネットワークの形成に当たっては、流域圏など地形的なまとまりにも着目し、様々なスケールで森里川海を連続した空間として積極的に保全・再生を図るための取組を関係機関が横断的に連携して総合的に進めます。また、民間等の取組により保全が図られている地域や、保全を目的としない管理が結果として自然環境を守ることにも貢献している地域(OECM)等に関する検討を進めます。

2 重要地域の保全

各重要地域について、保全対象に応じて十分な規模、範囲、適切な配置、規制内容、管理水準、相互の連携等を考慮しながら、関係機関が連携・協力して、その保全に向けた総合的な取組を進めます。

(1)自然環境保全地域等

原生自然環境保全地域、自然環境保全地域、沖合海底自然環境保全地域、都道府県自然環境保全地域については、引き続き行為規制や現状把握等を行うとともに、新たな地域指定を含む生物多様性の保全上必要な対策を検討・実施します。沖合海底自然環境保全地域に関しては、第2章第4節も参照。

(2)自然公園

自然公園(国立公園、国定公園)については、公園計画等の見直しを進めつつ、公園計画に基づく行為規制や利用のための施設整備等を行います。また、国立公園を世界水準の「ナショナルパーク」としてブランド化し、保護すべきところは保護しつつ、利用の促進を図ることにより、地域の活性化を目指す取組を推進します。その他、再生可能エネルギーの利用の促進や省エネルギー化を推進するとともに、電気自動車の充放電設備の整備等、カーボンニュートラルの観点を含めた施設整備を実施します。

(3)鳥獣保護区

狩猟を禁止するほか、特別保護地区(鳥獣保護区内で鳥獣保護又はその生息地保護を図るため特に必要と認める区域)においては、一定の開発行為の規制を行います。

(4)生息地等保護区

生息地等保護区の指定、生息環境の把握及び維持管理、施設整備、普及啓発を行い、必要に応じ、立入り制限地区を設け、種の保存を図ります。

(5)天然記念物

動物、植物及び地質鉱物で我が国にとって学術上価値の高いもののうち重要なものを天然記念物に指定するなど、法令等に基づく適切な保存と活用に努めます。

(6)国有林野における保護林及び緑の回廊

原生的な天然林を有する森林や希少な野生生物の生育・生息の場となる森林である「保護林」や、これらを中心としたネットワークを形成して野生生物の移動経路となる「緑の回廊」において、モニタリング調査等を行い森林生態系の状況を把握し順応的な保全・管理を推進します。

(7)保安林

全国森林計画に基づき、保安林の配備を計画的に推進するとともに、その適切な管理・保全に取り組みます。

(8)特別緑地保全地区・近郊緑地特別保全地区等

多様な主体による良好な緑地管理がなされるよう、管理協定制度等の適正な緑地管理を推進するための制度の活用を図ります。

(9)ラムサール条約湿地

湿地の保全と賢明な利用及びそのための普及啓発を図るとともに、計画的な登録を推進します。

(10)世界自然遺産

登録された4地域(屋久島、白神山地、知床、小笠原諸島)の適切な保全管理を推進するとともに、奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島の可能な限り早期の新規登録を見据えて、法・制度に基づく保全管理の充実、地域関係者との連携や地域住民への普及啓発等の観点から必要な取組を進めます。

(11)生物圏保存地域(ユネスコエコパーク)

国立公園等の管理を通して、登録された各生物圏保存地域(ユネスコエコパーク)の適切な保全管理を推進するとともに、地元協議会への参画を通じて、持続可能な地域づくりを支援します。また、新規登録を目指す自治体に対する情報提供、助言等を行います。

(12)ジオパーク

国立公園と重複するジオパークにおいて、地形・地質の多様性等の保全を図るとともに、ジオツアーや環境教育のプログラムづくり等について、地方公共団体等のジオパークを推進する機関と連携して進めます。

(13)世界農業遺産・日本農業遺産

世界農業遺産及び日本農業遺産に認定された地域の農林水産業システムの維持・保全等に係る活動を推進するとともに、本制度や認定地域に対する国民の認知度を向上させるための情報発信に取り組みます。

3 自然再生

河川、湿原、干潟、藻場、里山、里地、森林など、生物多様性の保全上重要な役割を果たす自然環境について、自然再生推進法(平成14年法律第148号)の枠組みを活用し、多様な主体が参加し、科学的知見に基づき、長期的な視点で進められる自然再生事業を推進します。また、地域循環共生圏の考え方や防災・減災等の自然環境の持つ機能等に着目し、地域づくりや気候変動への適応等にも資する自然環境の再生等を推進します。

4 里地里山の保全活用

里地里山等に広がる二次的自然環境の保全と持続的利用を将来にわたって進めていくため、人の生活・生産活動と地域の生物多様性を一体的かつ総合的に捉え、民間保全活動とも連携しつつ、持続的な管理を行う取組を推進します。

文化的景観のうち、地方公共団体が保存の措置を講じ、特に重要であるものを重要文化的景観として選定するとともに、地方公共団体が行う重要文化的景観の保存・活用事業に対し支援を実施します。

5 木質バイオマス資源の持続的活用

森林等に賦存する木質バイオマス資源の持続的な活用を支援し、地域の低炭素化と里山等の保全・再生を図ります。

6 都市の生物多様性の確保

(1)都市公園の整備

都市における生物多様性を確保し、また、自然とのふれあいを確保する観点から、都市公園の整備等を計画的に推進します。

(2)地方公共団体における生物多様性に配慮した都市づくりの支援

都市と生物多様性に関する国際自治体会議等に関する動向及び決議「準国家政府、都市及びその他地方公共団体の行動計画」の内容等を踏まえつつ、都市のインフラ整備等に生物多様性への配慮を組み込むことなど、地方公共団体における生物多様性に配慮した都市づくりの取組を促進するため、「生物多様性に配慮した緑の基本計画策定の手引き」の普及を図るほか、「都市の生物多様性指標」に基づき、都市における生物多様性保全の取組の進捗状況を地方公共団体が把握・評価し、将来の施策立案等に活用されるよう普及を図ります。