環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書令和3年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部>第2章 生物多様性の保全及び持続可能な利用に関する取組>第1節 愛知目標の達成状況

第2章 生物多様性の保全及び持続可能な利用に関する取組

第1節 愛知目標の達成状況

1 愛知目標の国際的な達成状況

2020年9月に、「地球規模生物多様性概況第5版(以下「GBO5」という。)」が、生物多様性条約事務局により公表されました。GBO5は、各国から提出された生物多様性条約「第6回国別報告書」、生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(IPBES)の評価報告書等の生物多様性に関する研究成果やデータを分析し、「生物多様性戦略計画2011-2020(以下「戦略計画」という。)」及び「愛知目標」の国際的な達成状況について評価するとともに、戦略計画の2050年ビジョン「自然との共生」に向けて必要な行動等をまとめた報告書で、2021年以降の新たな生物多様性の世界目標の策定に向けた議論等に科学的な情報を提供するものです。

GBO5で指摘されたことは主として、以下のようにまとめられます。

図2-1-1 愛知目標と達成状況

我が国は、生物多様性条約事務局に設置した生物多様性日本基金を通じて、GBO5の作成を支援するとともに、途上国の国別報告書及び生物多様性国家戦略の策定支援を行うことにより、GBO5の根拠資料の充実化に貢献しました。2018年12月に第6回国別報告書を条約事務局に提出し、加えて、GBO5のレビュープロセスに積極的に参加するなど、内容の充実化にも貢献しました。

2 我が国における愛知目標の達成状況と生物多様性国家戦略2012-2020の最終評価

2021年2月に「生物多様性国家戦略2012-2020の実施状況の点検結果」を公表しました。この点検は、「生物多様性国家戦略2012-2020」の実施状況について最終評価を行うもので、我が国における愛知目標の達成状況の評価も含まれています。点検では、愛知目標の20の目標に対応して生物多様性国家戦略2012-2020で設定した13の国別目標の関連指標群の動向等を踏まえて評価しました。関連指標群の点検値は表2-1-1のとおりです。その結果、5つの国別目標を『目標を達成した』、8つの国別目標を『目標に向けて進捗したが、達成しなかった』と評価しました(図2-1-2)。他方、「目標に向けて進捗したが、達成しなかった」と評価した8つの国別目標についても、例えば、トキ・コウノトリの野生復帰や、サンゴ礁・藻場・干潟等における各種指定区域の面積に関する関連指標群に進捗が認められるなど、大部分の国別目標は進んでいます。このため、国別目標全体としては、愛知目標の達成に向けて着実に進捗したと考えられます。

表2-1-1(1) 国別目標の関連指標群の点検値
表2-1-1(2) 国別目標の関連指標群の点検値
表2-1-1(3) 国別目標の関連指標群の点検値
表2-1-1(4) 国別目標の関連指標群の点検値
表2-1-1(5) 国別目標の関連指標群の点検値
表2-1-1(6) 国別目標の関連指標群の点検値
図2-1-2 愛知目標と我が国の国別目標の関係

また、生物多様性国家戦略2012-2020全体の達成状況評価は、同戦略で設定した2020年度までの短期目標「生物多様性の損失を止めるために、愛知目標の達成に向けたわが国における国別目標の達成を目指し、効果的かつ緊急な行動を実施する」に対して、「国別目標の達成に向けて様々な行動が実施されていることは評価できるが、更なる努力が必要」と評価しました。