環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書令和2年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部>第6章 各種施策の基盤となる施策及び国際的取組に係る施策>第1節 政府の総合的な取組

第6章 各種施策の基盤となる施策及び国際的取組に係る施策

第1節 政府の総合的な取組

1 環境基本計画

第五次環境基本計画(2018年4月閣議決定)では、目指すべき持続可能な社会の姿として、循環共生型の社会(「環境・生命文明社会」)の実現を掲げています。今後の環境政策の展開に当たっては、経済・社会的課題への対応を見据えた環境分野を横断する6つの重点戦略(経済、国土、地域、暮らし、技術、国際)を設定し、それに位置付けられた施策を推進するとともに、環境リスク管理等の環境保全の取組は、重点戦略を支える環境政策として揺るぎなく着実に推進しています。

2019年度は、本計画の第1回点検として、重点戦略、重点戦略を支える政策等について、先進的な取組をしている自治体や団体等からのヒアリングの実施等により施策の進捗状況の点検を進めました。

2 環境保全経費

政府の予算のうち環境保全に関係する予算について、環境保全に係る施策が政府全体として効率的、効果的に展開されるよう、環境省において見積り方針の調整を図り、環境保全経費として取りまとめています。2020年度予算における環境保全経費の総額は、1兆9,902億円となりました。

3 予防的な取組方法の考え方に基づく環境施策の推進

地球温暖化による環境への影響、化学物質による健康や生態系への影響など、環境問題の多くには科学的な不確実性があります。しかし、一度問題が発生すれば、それに伴う被害や対策コストが非常に大きくなる可能性や、長期間にわたる極めて深刻な、あるいは不可逆的な影響をもたらす可能性があります。このため、このような環境影響が懸念される問題については、科学的に不確実であることを理由に対策を遅らせず、知見の充実に努めながら、予防的な対策を講じるという「予防的な取組方法」の考え方に基づいて対策を講じていくべきです。この予防的取組は、第五次環境基本計画においても「環境政策における原則等」として位置付けられており、様々な環境政策における基本的な考え方として取り入れられています。関係府省は、第五次環境基本計画に基づき、予防的な取組方法の考え方に関する各種施策を実施しました。

4 SDGsに関する取組の推進

第五次環境基本計画で提唱されたSDGsを地域で実践するためのビジョンである「地域循環共生圏」の創造を進めていくため、環境省では、「環境で地方を元気にする地域循環共生圏づくりプラットフォーム事業」等により各地域での地域循環共生圏のビジョン作りを進めるとともに、全国各地で作られた地域循環共生圏のビジョンを実現するため、地域循環共生圏づくりプラットフォームの運用を開始しました。

詳細については、第1部第2章第2節を参照。

また、SDGsの環境的側面における各主体の取組を促進するため、環境省では2016年から「ステークホルダーズ・ミーティング」を開催しています。これは、先行してSDGsに取り組む企業、自治体、市民団体、研究者や関係府省が一堂に会し、互いの事例の共有や意見交換、さらには広く国民への広報を行う公開の場です。先駆的な事例を認め合うことで、他の主体の行動を促していくことを目的としています。2018年度は、全3回会議を実施し、脱炭素化とSDGsを実現するための将来ビジョンである「地域循環共生圏」の構築に向け、地域の取組を支える地域金融の役割、また海洋プラスチックごみ等について、有識者を交えた意見交換を行いました。2019年度は全2回会議を開催しました。

企業・団体等によるSDGs達成に向けた活動が加速度的に拡大している中、企業・団体等の優れた取組を政府全体として表彰することにより、こうした潮流を更に後押ししていくことを目的として、2017年に「ジャパンSDGsアワード」が創設されました。2019年12月に第3回目の表彰が行われ、「SDGs推進本部長(内閣総理大臣)賞」にアジア初のSDGs推進モデル都市である北九州市から日本初「SDGs商店街」を宣言した魚町銀天街が選ばれました。

また、第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」(2019年12月閣議決定)において、SDGsは「新しい時代の流れを力にする」という横断的な目標の下、全ての関係者の役割を重視し、「誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現を目指して、経済・社会・環境を巡る広範な課題解決に統合的に取り組むものとしています。国、地方公共団体等において、様々な取組に経済、社会及び環境の統合的向上などの要素を最大限反映することが重要です。したがって、持続可能なまちづくりや地域活性化に向けて取組を推進するに当たっても、SDGsの理念に沿って進めることにより、政策全体の全体最適化や地域課題解決の加速化という相乗効果が期待でき、地方創生の取組の一層の充実・深化につなげることができます。このため、SDGsを原動力とした地方創生の推進や地域循環共生圏の創造の後押しを行います。

さらに、内閣府では2018年度と2019年度において、地方公共団体(都道府県及び市区町村)によるSDGsの達成に向けた取組を公募し、優れた取組を提案する都市をSDGs未来都市として計60都市選定し、その中でも特に先導的な取組を自治体SDGsモデル事業として計20事業選定しました。これらの取組を引き続き支援するとともに、成功事例の普及展開を図り、2024年度までに、SDGs未来都市を累計210選定することを目指します。加えて、SDGsの推進に当たっては、多様なステークホルダーとの連携が不可欠であることから、官民連携の促進を目的として「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」を設置し、マッチング支援や分科会の立ち上げ等の取組を実施しています。さらに、金融面においてのSDGsの取組を推進し、「地方創生SDGs金融」を通じた、自律的好循環の形成を目指しています。このような取組を通じて、SDGsの達成に向けた取組を行っている都道府県及び市区町村の割合を、2024年度に60%とすることを目標とし、引き続き地方創生SDGsの普及促進活動を進めていきます(表6-1-1)。

表6-1-1 SDGs未来都市一覧

5 東京オリンピック・パラリンピック競技大会を契機とした取組の推進

東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けて、環境省は、関係府省庁や東京都、大会組織委員会と連携し、「環境問題への配慮・暑さ対策」といった観点から、リサイクルメダル製作への協力及びその成果の国内外への発信、外国からの来場者にも分かりやすいごみ分別ラベル作成への助言、熱中症対策や会場周辺の暑さ指数(WBGT)の調査、CO2削減を実現する先進的な技術知見の提供など、様々な協力・支援を行っています。ドーピング検査に使用する注射針等の円滑な処理等を含めた各種の対策を進めていくなど、3R・適正処理を徹底しています。