環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書令和2年版 環境・循環型社会・生物多様性白書>令和元年度 環境の状況 令和元年度 循環型社会の形成の状況 令和元年度 生物の多様性の状況>第1部 総合的な施策等に関する報告>はじめに

令和元年度 環境の状況
令和元年度 循環型社会の形成の状況
令和元年度 生物の多様性の状況
第1部 総合的な施策等に関する報告

はじめに

現代の私たちの経済、社会は安定的で豊かな環境の基盤の上に成立しています。しかしながら人間活動の増大は、地球環境に大きな負荷をかけており、環境問題として顕在化し、私たちの生活にも様々な影響が生じています。

地球温暖化が進展すると気象災害のリスクは更に高まると予想されています。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書をはじめ科学者たちにより繰り返し警鐘が鳴らされています。また、2019年だけでも欧州をはじめ世界で記録的な熱波を経験するととともに、我が国でも令和元年房総半島台風、令和元年東日本台風等の激甚な気象災害に見舞われました。このような深刻な気象災害は、気候変動の緩和や気候変動に適応する社会の必要性を私たちに突き付けています。世界の主要なリーダーたちの間でもリスクとしての認識が高まっています。また草の根レベルでも海外を中心に若者による気候変動への対策を求めるデモや、自治体等が「気候危機」を宣言する動きが広がるなど、今や私たちは「気候危機」とも言える時代に生きています。環境問題は気候変動だけではありません。海洋プラスチックごみ問題や生物多様性の損失なども深刻です。気候変動、海洋プラスチックごみ、生物多様性の損失といった今日の環境問題は、それぞれの課題が独立して存在するのではなく、相互に深く関連しています。そしてこれらの問題は今の私たちの経済・社会システムとも密接に関わっています。

2020年は気候変動問題に関してはパリ協定の本格的な運用が始まる年です。また、海洋プラスチックごみ問題の関係では2019年6月に開催されたG20大阪サミットで各国と世界のビジョンとして共有された「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を踏まえた施策が本格展開されていきます。生物多様性についても2021年以降の目標(ポスト2020生物多様性枠組)を議論する年でもあるなど2020年は、こうした地球環境の危機的な状況に対応する節目の年と言えます。

2015年に国連総会で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の中には、持続可能な開発目標(SDGs)が掲げられています。SDGsは、途上国、先進国共通の持続可能な社会づくり、すなわち環境保全、経済活動の発展、社会の向上を統合的に実現するための国際目標です。

気候変動、資源循環、生物多様性いずれの問題もグローバルな課題ですが、同時に私たちの生活とも密接に関係するローカルな課題でもあります。他方で我が国が直面する課題は、環境問題だけではありません。少子高齢化・人口減少、そして人口の地域的な偏在の加速化等により地域社会・経済の持続可能性の課題も抱えています。国全体で持続可能な社会を構築するためには、各々の地域が持続可能である、すなわち個々の地域レベルでのSDGsの達成が必要です。

今を生きる私たちの世代のニーズを満たしつつ、将来の世代が豊かに生きていける社会を実現するためには、従来型の大量生産・大量消費・大量廃棄の社会システムを見直し、環境、経済、社会を統合的に向上する社会へと社会を変革していくことが不可欠です。そのためには私たちには何ができるでしょうか。本白書の総説では、気候変動問題を中心に気候変動時代に生きる私たちの役割について考えたいと思います。

第1章では、まず、社会変革が必要となる前提として、気候変動問題をはじめとした環境の状況を説明しつつ、国際的な動向について紹介します。

第2章では、地球環境の危機への各主体の対応を加速化していくため、気候変動時代に求められる政府の取組、気候変動問題への意識の高まりを背景とした地方公共団体や企業等の取組、情報通信技術を取り入れた社会の基盤づくり、持続可能な地域づくりである地域循環共生圏の創造に向けた取組の一端を紹介します。

第3章では、日々の営みに焦点をあて、私たちのライフスタイルと環境とのつながりを考え、私たち個人ができるライフスタイルの変革及びそれが社会の変革にも寄与していくことについて論じます。

東日本大震災からの復興も我が国において重要な課題です。第4章では、東日本大震災からの復興に向けた取組を概説します。

世界保健機関(WHO)が「パンデミック」と表明した今般の新型コロナウイルスの感染拡大の状況に鑑み、第5章として、新型コロナウイルス感染症に対する環境行政の対応について紹介します。