環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書令和元年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第3章>第8節 循環分野における基盤整備

第8節 循環分野における基盤整備

1 循環分野における情報の整備

第四次循環基本計画で循環型社会形成に向けた状況把握のための指標として設定された、物質フロー指標及び取組指標について、2016年度のデータを取りまとめました。また、各指標の増減要因についても検討を行いました。

国民に向けた直接的なアプローチとしては、「限りある資源を未来につなぐ。今、僕らにできること。」をキーメッセージとしたウェブサイト「Re-Style」を年間を通じて運用しています(図3-8-1)。同サイトでは、循環型社会のライフスタイルを「Re-Style」として提唱し、コアターゲットである若年層を中心に、資源の重要性や3Rの取組を多くの方々に知ってもらい、行動へ結びつけるため、歌やダンス、アニメや動画等と連携した新たなコンテンツを発信しました。また、同サイトと連動して、3Rの認知向上・行動喚起を促進するイベント「Re-Style FES!」を全国6か所で開催したほか、「3R推進月間」(毎年10月)を中心に、多数の企業等と連携した3Rの認知向上・行動喚起を促進する消費者キャンペーン「選ぼう!3Rキャンペーン」を全国のスーパーやドラッグストア等で展開しました。また、企業との新しい連携体制として、同サイトを通じて、相互に連携しながら恒常的に3R等の情報発信・行動喚起を促進する「Re-Styleパートナー企業」を拡大しました。

図3-8-1 Re-Styleのロゴマーク

3Rに関する法制度やその動向をまとめた冊子「資源循環ハンドブック2018」を4,500部作成し、関係機関に配布したほか、3Rに関する環境教育に活用するなど、一般の求めに応じて配布を行いました。同時に、3R政策に関するウェブサイトにおいて、取組事例や関係法令の紹介、各種調査報告書の提供を行うとともに、普及啓発用DVDの貸出等を実施しました。

国土交通省、地方公共団体、関係業界団体により構成される建設リサイクル広報推進会議は、建設リサイクルの推進に有用な技術情報等の周知・伝達、技術開発の促進、一般社会に向けた建設リサイクル活動のPRを目的として、建設リサイクル技術発表会・技術展示会を毎年実施しており、2018年度は福岡県で開催しました。

2 循環分野における技術開発、最新技術の活用と対応

3Rの取組が温室効果ガスの排出削減につながる例としては、金属資源等を積極的にリサイクルした場合を挙げることができます。例えば、アルミ缶を製造するに当たっては、バージン原料を用いた場合に比べ、リサイクル原料を使った方が製造に要するエネルギーを大幅に節約できることが分かっています。同様に、鉄くずや銅くず、アルミニウムくず等をリサイクルすることによっても、バージン材料を使った場合に比べて温室効果ガスの排出削減が図られるという結果が、環境省の調査によって示されました。これらのことから、リサイクル原料の使用に加え、リデュースやリユースといった、3Rの取組を進めることによって、原材料等の使用が抑制され、結果として温室効果ガスの更なる排出削減に貢献することが期待できます。ただし、こうしたマテリアルリサイクルやリデュース・リユースによる温室効果ガス排出削減効果については、引き続き調査が必要であるともされており、これらの取組を一層進める一方で、継続的に調査を実施し、資源循環と社会の低炭素化における取組について、より高度な統合を図っていくことが必要です。

化石系資源の使用量を抑制するため、低炭素型廃棄物処理支援事業を実施しています。自治体や民間団体(自治体と連携し、廃棄物の3Rを検討する者)に対して、地域資源循環の高度化及び低炭素化に資するFS調査や事業計画策定を支援しました。また、リチウムイオン電池や炭素繊維強化プラスチック(CFRP)等の低炭素製品のリユース・リサイクル技術の実証を行う「低炭素製品普及に向けた3R体制構築支援事業」や、高度なリサイクルを行いながらリサイクルプロセスの省CO2化を図る設備の導入支援を行う「省CO2型リサイクル高度化設備導入促進事業」を実施しました。

低炭素型廃棄物処理支援事業、廃棄物焼却施設の余熱等を利用した地域低炭素化モデル事業、廃棄物発電電力を有効活用した収集運搬低炭素化モデル事業については、第3節を参照。

農山漁村のバイオマスを活用した産業創出を軸とした地域づくりに向けた取組について推進すると同時に、「森林・林業基本計画」等に基づき、森林の適切な整備・保全や木材利用の推進に取り組みました。

海洋環境等については、その負荷を低減させるため、今後も循環型社会を支えるための水産廃棄物等処理施設の整備を推進しました。

港湾整備により発生した浚渫(しゅんせつ)土砂等を有効活用し、深掘り跡の埋戻し等を実施し、水質改善や生物多様性の確保など、良好な海域環境の保全・再生・創出を推進しています。

エコタウン等に関する取組については、第3節を参照。

下水汚泥資源化施設の整備の支援等については、第4節2を参照。静脈物流に係る更なる環境負荷低減と輸送コスト削減を目指し、モーダルシフト・輸送効率化による低炭素型静脈物流促進事業を実施しています。2018年度は、海上輸送による低炭素型静脈物流システムを構築する事業を22件採択しました。

これまでに22の港湾を静脈物流の拠点となる「リサイクルポート」に指定し、広域的なリサイクル関連施設の臨海部への立地の推進等を行いました。さらに、首都圏の建設発生土を全国の港湾の用地造成等に用いる港湾建設資源の広域利用促進システムを推進しており、三河港等において建設発生土の受入れを実施しました。

3 循環分野における人材育成、普及啓発等

我が国は、関係府省(財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、消費者庁)の連携の下、国民に対し3R推進に対する理解と協力を求めるため、毎年10月を「3R推進月間」と定めており、広く国民に向けて普及啓発活動を実施しました。

3R推進月間には、様々な表彰を行っています。3Rの推進に貢献している個人、グループ、学校及び特に貢献の認められる事業所等を表彰する「リデュース・リユース・リサイクル推進功労者等表彰」(主催:リデュース・リユース・リサイクル推進協議会)の開催を引き続き後援しました。経済産業省は、リサイクル製品の製造や、生産活動における3Rの取組として1件の経済産業大臣賞を贈りました。国土交通省は、建設工事で顕著な実績を挙げている3Rの取組5件に対して国土交通大臣賞を贈りました。文部科学省は、学校等の教育分野における3Rの優れた取組1件に対して文部科学大臣賞を贈りました。環境省は、市民・事業者・行政のパートナーシップを活用した3Rの優れた取組1件に対して環境大臣賞を贈りました。農林水産分野においては、食品リサイクル等で顕著な実績を挙げている取組に対して1件の内閣総理大臣賞が贈られました。そのほか、製薬企業の事業所等に対しても、1992年度以降、内閣総理大臣賞1件、厚生労働大臣賞19件、3R推進協議会会長賞22件を贈っており、製薬業界においても確実に3Rの取組が定着しています。

循環型社会の形成の推進に資することを目的として、2006年度から循環型社会形成推進功労者表彰を実施しています。2018年度の受賞者数は、3団体、7企業の計10件であり、「第13回3R推進全国大会」式典において、表彰式を行いました。さらに、新たな資源循環ビジネスの創出を支援している「資源循環技術・システム表彰」(主催:一般社団法人産業環境管理協会、後援:経済産業省)においては、経済産業大臣賞1件を表彰しました。これらに加えて、農林水産省は「食品産業もったいない大賞」を通じ、農林水産業・食品関連産業における3R活動、地球温暖化・省エネルギー対策等の意識啓発に取り組みました。

各種表彰以外にも、3R推進ポスター展示、リサイクルプラント見学会や関係機関の実施するイベント等のPRを3R推進月間中に行いました。同期間内には、「選ぼう!3Rキャンペーン」も実施し、都道府県や流通事業者・小売事業者の協力を得て、環境に配慮した商品の購入、マイバッグ持参など、3R行動の実践を呼び掛けました。

2018年10月には「第13回3R推進全国大会」を富山県及び3R活動推進フォーラムと共催し、イベントを通じて3R施策の普及啓発を行いました。同大会式典で環境大臣表彰を行う、3R促進ポスターコンクールには、全国の小・中学生から約5,400点の応募があり、環境教育活動の促進にも貢献しました。

個別分野の取組として、容器包装リサイクルに関しては、国の施策や取組等に係る研修を行い、容器包装廃棄物排出抑制推進員(3R推進マイスター)の活動を支援しました。

優良事業者が社会的に評価され、不法投棄や不適正処理を行う事業者が淘(とう)汰される環境をつくるために、優良処理業者に優遇措置を講じる、優良性評価制度を2005年度に創設しました。2011年4月からは、更に優良処理業者へのインセンティブを改善した優良産廃処理業者認定制度を運用しています。また、2015年度、2016年度は、産業廃棄物の排出事業者と優良産廃処理業者の参加するフォーラムを開催し、これらの事業者間の連携・協働に向けたきっかけの場を創設するとともに、優良産廃処理業者の情報発信サイト「優良さんぱいナビ」の利便性向上のためのシステム改良を引き続き実施しました。2013年度に国等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する法律(環境配慮契約法)(平成19年法律第56号)に類型追加された「産業廃棄物の処理に係る契約」では、優良産廃処理業者が産廃処理委託契約で有利になる仕組みとなっています。環境配慮契約の実施割合は、2014年度が31.7%、2015年度が39.8%、2016年度が37.2%、2017年度が39.5%と推移しています。優良認定業者数については2011年4月の制度開始以降増加しており、2017年度末で1,196事業者となっています。

環境省では、産業廃棄物処理業者が廃棄物の適正処理等の社会的責任を果たしつつ、それ以外にも、地域経済の活性化・雇用の創出等の地方創生に貢献することとなるよう、2017年度に「産業廃棄物処理業の振興方策に関する提言」(産業廃棄物処理業の振興方策に関する検討会)を公表しました。同提言においては、労働力人口の減少や環境制約顕在化等の社会経済動向の変化により「悪貨が良貨を駆逐する業界」に後戻りするリスクの高まりを指摘し、それらに対応して産業廃棄物処理業が持続的な発展を遂げるために、処理業者における成長と底上げ戦略の確立と、処理業者を支援するための関係者による方策として[1]先進的優良企業の育成(優良産廃処理業者認定制度の強化と有効活用等)、[2]排出事業者の意識改革(排出事業者責任についての周知等)、[3]意欲ある企業の支援体制整備(環境に配慮した契約・調達の促進等)、[4]優良先進事例のPR・情報発信(産業廃棄物処理業者による地域貢献のサポート等)が掲げられています。環境省ではこの提言の考え方に基づき、施策の具体化に向けた検討を行っています。

環境省が策定している環境マネジメントシステム「エコアクション21」のガイドラインを通して、環境マネジメントシステム導入を促進しました。また、CO2の排出量算定・排出量削減と環境マネジメントシステムの構築に取り組む中小企業の裾野を拡大するため、中小企業向けの環境経営体制構築支援事業(Eco-CRIP補助事業)を行いました。さらに、情報開示の世界的潮流や企業を取り巻くガバナンスの在り方の変容を踏まえ、「環境報告ガイドライン2018年版」を2018年6月に公表するとともに、環境情報の更なる利用促進を図り、企業と投資家等の対話を支援するため、環境情報開示基盤の整備事業を推進しました。

特定廃棄物最終処分場における特定災害防止準備金の損金又は必要経費算入の特例、廃棄物処理施設に係る課税標準の特例及び廃棄物処理事業の用に供する軽油に係る課税免除の特例といった税制措置を活用することにより、廃棄物処理施設の整備及び維持管理を推進しました。