環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成30年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第6章>第2節 経済・社会のグリーン化の推進

第2節 経済・社会のグリーン化の推進

1 経済的措置

(1)政府関係機関等の助成

政府関係機関等による環境保全事業の助成については、表6-2-1のとおりでした。

表6-2-1 政府関係機関等による環境保全事業の助成
(2)税制上の措置等

2017年度税制改正において、[1]地球温暖化対策のための税の着実な実施、[2]車体課税のグリーン化、[3]質の高い住宅ストック形成の促進に向けたリフォーム税制の拡充(所得税・固定資産税)、[4]低公害自動車に燃料を充塡するための設備に係る課税標準の特例措置の延長(固定資産税)、[5]コージェネレーション設備に係る特例措置の延長(固定資産税)、[6]試験研究を行った場合の法人税額等の特別控除の見直し(法人税、所得税、法人住民税)等の措置を講じました。

(3)地方公共団体における環境関連税の導入の動き

地方公共団体において、環境関連税の導入の検討が進められています。例えば、産業廃棄物の排出量又は処分量を課税標準とする税については、27の都道府県及び1の政令市で導入されています。税収は、主に産業廃棄物の発生抑制、再生、減量、その他適正な処理に係る施策に要する費用に充てられています。

森林環境税や森づくり税など、名称こそ違えど、森林整備等を目的とする税が37の府県及び1の政令市で導入されています。例えば、高知県では、県民税均等割の額に500円を加算し、その税収を森林整備等に充てるために森林環境保全基金を条例により創設するなど、実質的に目的税の性格を持たせたものとなっています。

2 環境配慮型製品の普及等

(1)グリーン購入

国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(平成12年法律第100号。以下「グリーン購入法」という。)に基づく基本方針に即して、国及び独立行政法人等の各機関は、環境物品等の調達の推進を図るための方針の策定・公表を行い、これに基づいて環境物品等の調達を推進しました。

新たな特定調達品目として加煙試験及びタイルカーペット洗浄等を追加するとともに、照明器具及び自動車等の特定調達品目に係る判断の基準等の見直しを行いました。

グリーン購入の取組の更なる促進のため、最新の基本方針について、国の地方支分部局、地方公共団体、事業者等を対象とした説明会を全国8か所において開催しました。

そのほか、地方公共団体等でのグリーン購入を推進するため、マニュアル等の作成や実務支援等による普及・啓発活動を行っています。

国際的なグリーン購入の取組を推進するため、グリーン購入に関する世界各国の制度・基準についての情報を収集するとともに、ドイツ、米国及びベトナムのグリーン公共調達又は環境ラベルの担当者を招聘(へい)し、セミナーを開催しました。

(2)環境配慮契約

国等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する法律(平成19年法律第56号。以下「環境配慮契約法」という。) に基づく基本方針に従い、国及び独立行政法人等の各機関は、温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約(以下「環境配慮契約」という。)を推進しました。

電気の供給を受ける契約について、基本方針の見直しを行うとともに、環境配慮契約の取組を更に促進するため、最新の基本方針について、国の地方支分部局、地方公共団体、事業者等を対象とした説明会を全国8か所において開催しました。

地方公共団体等での環境配慮契約の推進のため、マニュアル等の作成や実務支援等による普及・啓発活動を実施しています。

(3)環境ラベリング

消費者が環境負荷の少ない製品を選択する際に適切な情報を入手できるように、環境ラベルなど環境表示の情報の整理を進めました。日本で唯一のタイプI環境ラベル(ISO14024準拠)であるエコマーク制度では、ライフサイクルを考慮した指標に基づく商品類型を継続して整備しており、2017年12月末時点でエコマーク対象商品類型数は64、認定商品数は5,624となっています。

事業者の自己宣言による環境主張であるタイプII環境ラベルや民間団体が行う環境ラベル等については、各ラベリング制度の情報を整理・分類して提供する「環境ラベル等データベース」を引き続き運用しました。また、適切な環境表示の在り方をまとめた「環境表示ガイドライン」等についてのパンフレットを作成・配布しました。

なお、製品の環境負荷を定量的に表示する環境ラベルは、タイプIII環境ラベル(ISO14025準拠)であるエコリーフ、製品のカーボンフットプリント(CFP、ISO/TS14067準拠)であるCFPコミュニケーションプログラム制度等があります。エコリーフの2018年2月末時点の認証製品数は累計で1,994件、CFPコミュニケーションプログラムの2018年2月末時点のCFP宣言認定製品数は累計で1,487件となっています。2017年4月から両プログラムは、複数影響領域と単一影響領域のどちらの宣言にも対応する新しい定量型環境ラベルプログラムとして統合されました(ISO14025とISO/TS14067には引き続き準拠)。

3 事業活動への環境配慮の組込みの推進

(1)環境マネジメントシステム

ISO14001を参考に環境省が策定した、中堅・中小事業者向け環境マネジメントシステム「エコアクション21」について、環境配慮経営ポータルサイト等を通じての認知向上と普及・促進を行いました。この結果、2018年3月末時点でエコアクション21の認証登録件数は7,946件となりました。また、同制度の有効性をより高め、更なる環境経営を促進することを目的に、同ガイドラインの改訂作業を2017年5月に公表しました。2017年度は、6種の業種別ガイドラインのうち、優良制度や入札加点制度等がある3業種(産業廃棄物・建設・食品関連)の改定作業を行い、2018年6月に公表予定です。

(2)環境会計

「環境会計ガイドライン」は、2002年に公表し、2005年に改定を行い我が国企業に幅広く利用されていますが、国内外の動向を踏まえつつ、ガイドラインの見直しに向けた検討を行っています。今年度は、環境報告等ガイドライン改定に関する検討会を開催し、環境報告ガイドラインに環境会計ガイドラインを組み込む形で検討を行い、改定案を作成しました。

(3)環境報告書

環境情報の提供の促進等による特定事業者等の環境に配慮した事業活動の促進に関する法律(平成16年法律第77号。以下「環境配慮促進法」という。)では、環境報告書の普及促進と信頼性向上のための制度的枠組みの整備や一定の公的法人に対する環境報告書の作成・公表の義務付け等について規定しています。環境報告書の作成・公表及び利活用の促進を図るため、環境配慮促進法に基づく特定事業者の環境報告書を一覧できるウェブサイトとして「もっと知りたい環境報告書」を運用しました。また、環境報告書の表彰制度である環境コミュニケーション大賞において、優れた報告書の表彰を行いました。

環境情報が投資判断の一要素として利用されつつあることを踏まえ、主として投資家等が利用することを前提とした「環境情報開示基盤」の運用実証を行いました。

(4)公害防止管理者制度

各種公害規制を遵守し、公害防止に万全を期すため、特定工場における公害防止組織の整備に関する法律(昭和46年法律第107号)によって、一定の条件を有する特定工場には、公害防止組織の整備として、公害防止に関する業務を統括する公害防止統括者及び公害防止に関する技術的な事項を管理する国家資格を有する公害防止管理者等を選任し、都道府県知事等への届出が義務付けられています。

資格の取得方法は、国家試験の合格、又は資格認定講習の修了の2種類があり、国家試験は1971年度から実施され、2017年度の合格者数は6,024人、これまでの延べ合格者数は37万616人です。

資格認定講習は、一定の技術資格を有する者又は公害防止に関する実務経験と一定の学歴を有する者を対象として、1972年度から実施され、2017年度の修了者数は2,174人、これまでの修了者数は27万4,789人です。

4 環境金融の促進

民間資金を環境分野へ誘引する観点からは、金融機能を活用して、環境負荷低減のための事業への投融資を促進するほか、企業活動に環境配慮を組み込もうとする経済主体を金融面で評価・支援することが重要です。そのため、以下に掲げる取組を行いました。

(1)環境関連事業への投融資の促進

一定の採算性・収益性が見込まれるものの、リードタイムや投資回収期間が長期に及ぶことなどに起因するリスクが高く、民間資金が十分に供給されていない再生可能エネルギー事業等の低炭素化プロジェクトに民間資金を呼び込むため、これらのプロジェクトに対し、「地域低炭素投資促進ファンド」からの出資による支援を行いました。

低炭素機器をリースで導入した場合のリース事業者に対するリース料の助成事業を引き続き実施したほか、再生可能エネルギー事業等に係る地方公共団体と地域金融機関向けに、事業の留意事項や関係者の連携促進に関する研修会の開催、相談窓口の設置、電源種別ごとの事業性評価の手法等を解説した手引きの更新など、再生可能エネルギー事業創出に向けた支援を行いました。

国内におけるグリーンボンドの発行及び投資の促進に資するため、モデル性を有するグリーンボンド発行計画について、「グリーンボンドガイドライン2017年版」への準拠性に係る確認、助言及び情報発信を行いました。

株式会社日本政策金融公庫においては、大気汚染対策や水質汚濁対策、廃棄物の処理・排出抑制・有効利用、温室効果ガス排出削減、省エネ等の環境対策に係る融資施策を引き続き実施しました。

(2)金融市場を通じた環境配慮の織り込み

金融機関が企業の環境配慮の取組全体を評価し、その評価結果に応じて低利融資を行う環境格付融資や、事業に伴う環境影響について融資先に調査等を求める環境リスク調査融資を促進するとともに、温暖化対策に資する設備投資を加速するため、利子補給事業を実施しました。また、我が国のESG投資(環境・社会・企業統治という非財務項目を投資分析や意思決定に反映させる投資)の促進の観点から、ESG投資の判断に資するよう、投資家等の実務者目線に立った環境情報の整理を検討しました。また、金融機関や取引先企業等と、環境とビジネスあるいは環境と事業リスクの関係等に関する理解の向上に向けた意見交換会等を行いました。さらに、金融業界一体となって環境金融に取り組むため、金融市場関係者が参画する懇談会を開催し、それぞれが果たすべき役割について議論しました。

(3)環境金融の普及に向けた基礎的な取組

金融機関が自主的に策定した「持続可能な社会の形成に向けた金融行動原則」(2017年12月末時点で255機関が署名)について、引き続き事務局として支援を行い、投融資判断に資する企業の環境情報の提供促進について検討を行いました。

5 その他環境に配慮した事業活動の促進

環境保全に資する製品やサービスを提供する環境ビジネスの振興は、環境と経済の好循環が実現する持続可能な社会を目指す上で、極めて重要な役割を果たすものであると同時に、経済の活性化、国際競争力の強化や雇用の確保を図る上でも大きな役割を果たすものです。

我が国の環境ビジネスの市場・雇用規模については、環境省の調査によれば、2016年の市場規模は約104.2兆円、雇用規模は約260万人となり、2000年との比較では市場規模は約1.8倍、雇用規模は約1.5倍に成長しました。環境ビジネスの市場規模は、2009年に世界的な金融危機で市場規模は一時的に落ち込んだものの、それ以降は市場規模、雇用規模ともに着実に増加しています。

2010年より年に2回、企業を対象に、環境ビジネスの景況感等についての調査を行う「環境経済観測調査」を行っています。2017年12月の調査結果によると、環境ビジネス実施企業の環境ビジネスに係る業況DI(「良い」と回答した割合-「悪い」と回答した割合)は「21」となり、前回の2017年6月調査の業況DI「19」よりやや上昇し、環境ビジネスの業況は好調さを維持している結果となりました。他のビジネス実施企業も含めた全企業のDIは「23」であり、2016年6月以降上昇傾向が続いています。また、前回調査同様、先行きについては、半年先、10年先共に好調さを維持する見通しであり、特に「地球温暖化対策」分野の業況DIが全体を牽引しています。

6 社会経済の主要な分野での取組

(1)農林水産業における取組

持続可能な農業生産を支える取組の推進を図るため、化学肥料、化学合成農薬の使用を原則5割以上低減する取組と併せて行う地球温暖化防止や生物多様性保全に効果の高い営農活動に取り組む農業者の組織する団体等を支援する環境保全型農業直接支払を実施しました。

環境と調和の取れた農業生産活動を推進するため、農業者が環境保全に向けて最低限取り組むべき農業環境規範の普及・定着や、持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律(平成11年法律第110号)に基づき、土づくりと化学肥料・化学合成農薬の使用低減に一体的に取り組む農業者(エコファーマー)の普及推進、有機農業の推進に関する法律(平成18年法律第112号)に基づく有機農業の推進に関する基本的な方針の下で生産技術力の強化、産地の販売企画力の強化、販路拡大等に関する支援を引き続き行いました。

森林・林業においては、持続可能な森林経営及び地球温暖化対策の推進を図るため、造林、保育、間伐等の森林整備を促進するとともに、計画的な保安林の配備の推進及び治山事業等による機能が低下した保安林の保全対策、多様な森林づくりのための適正な維持管理に努めるほか、関係省庁の連携の下、木材利用の促進を図りました。

水産業においては、持続的な漁業生産等を図るため、適地での種苗放流等による効率的な増殖の取組を支援するとともに、漁業管理制度の的確な運用に加え、漁業者による水産資源の自主的な管理措置等を内容とする資源管理計画に基づく取組を支援しました。さらに、沿岸域の藻場・干潟の造成等生育環境の改善を実施しました。また、持続的養殖生産確保法(平成11年法律第51号)に基づく漁協等による養殖漁場の漁場改善計画の作成を推進しました。

(2)運輸・交通

運輸・交通分野における環境保全対策については、自動車一台ごとの排出ガス規制の強化を着実に実施しました。また、自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法(平成4年法律第70号)に基づき、自動車からの窒素酸化物(NOx)及び粒子状物質(PM)の排出量の削減に向けた施策を実施しました。

ア 低公害車の開発等

次世代低公害車の技術開発としては、大型車について低炭素化等に資する革新的技術を早期に実現するため、高効率次世代ディーゼルエンジン、大型液化天然ガス(LNG)自動車といった次世代大型車関連の技術開発及び実用化の促進を図るための調査研究を行いました。

交通分野における早期の社会実装を目指したエネルギー起源CO2の排出を抑制する技術の開発及び実証事業として、小型燃料電池トラックや大型LNGトラックの技術開発・実証等を行いました。

車両導入に対する各種補助、自動車税のグリーン化及び自動車重量税・自動車取得税の免除・軽減措置等の税制上の特例措置並びに政府系金融機関による低利融資を講じ、次世代自動車の更なる普及促進を図りました。

イ 交通管理

新交通管理システム(UTMS)の一環として、交通管制システムの高度化等により、交差点における発進・停止回数を減少させるとともに、光ビーコン等を通じて交通渋滞、旅行時間等の交通情報を迅速かつ的確に提供しました。また、交通公害低減システム(EPMS)を神奈川県、静岡県、兵庫県において運用しました。さらに、道路交通情報通信システム(VICS)車載機の普及促進等に努めました。

都市部を中心に各種交通規制を効果的に実施することにより、その環境の改善に努めました。具体的には、大型車を道路の中央寄りに走行させるための通行区分の指定を行うとともに、大量公共輸送機関の利用を促進し、自動車交通総量を抑制するため、バス優先・専用通行帯の指定、公共車両優先システム(PTPS)の整備等を推進しました。また、都市における円滑な交通流を阻害している違法駐車を防止し、排除するため、駐車規制の見直し、違法駐車の取締りの推進、違法駐車抑止システム等の運用等のハード、ソフト一体となった駐車対策を推進しました。

ウ 公共交通機関の利用促進

自家用自動車に比べ環境負荷の少ないバス・鉄道等の公共交通機関利用への転換を促進するため、交通系ICカードの導入、バスロケーションシステムの普及促進、バス高速輸送システム(BRT)の整備等、バスの利用促進策を講じました。また、都市鉄道新線の整備、複々線化等の輸送力増強による混雑緩和や、速達性の向上を図りました。さらに、貨物線の旅客線化、駅施設や線路施設の改良など既存ストックを有効活用するとともに、駅のバリアフリー化を推進することにより利用者利便の向上策を講じました。

事業所単位でのエコ通勤の取組支援として、エコ通勤優良事業所認証制度の普及・促進を図り、2018年3月末時点で640事業所を認証するなど、マイカーから公共交通機関等への利用転換の促進を図りました。