環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成29年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部>第4章 大気環境、水環境、土壌環境等の保全>第1節 大気環境、水環境、土壌環境等の現状

第4章 大気環境、水環境、土壌環境等の保全

第1節 大気環境、水環境、土壌環境等の現状

1 大気環境の現状

(1)窒素酸化物

2015年度の二酸化窒素(NO2)の有効測定局数は、一般環境大気測定局(以下「一般局」という。)が1,253局、自動車排出ガス測定局(以下「自排局」という。)が400局でした。環境基準達成率は、一般局100%、自排局99.8%であり、一般局では近年全ての測定局で環境基準を達成し、自排局では2014年度と比較すると達成率が0.3ポイント上昇し、高い水準で推移しています(図4-1-1)。

図4-1-1 二酸化窒素の環境基準達成状況の推移(2008年度~2015年度)

また、年平均値は、一般局0.010ppm、自排局0.019ppmであり、一般局、自排局ともに近年緩やかな低下傾向が見られます(図4-1-2)。

図4-1-2 二酸化窒素濃度の年平均値の推移(1970年度~2015年度)

2015年度に環境基準が達成されなかった測定局は、自動車から排出される窒素酸化物(NOx)及び粒子状物質(PM)の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法(平成4年法律第70号。以下「自動車NOx・PM法」という。)の対策地域にある東京都の自排局1局のみでした(図4-1-3)。

図4-1-3 対策地域における二酸化窒素の環境基準達成状況の推移(自排局)(2006年度~2015年度)

また、年平均値は一般局、自排局とも近年緩やかな低下傾向が見られます(図4-1-4)。

図4-1-4 対策地域における二酸化窒素濃度の年平均値の推移(2006年度~2015年度)
(2)浮遊粒子状物質

2015年度の浮遊粒子状物質(SPM)の有効測定局数は、一般局が1,302局、自排局が391局でした。環境基準達成率は、一般局99.6%、自排局99.7%であり、2014年度と比較して、達成率が一般局で0.1ポイント、自排局で0.3ポイント低下しました(図4-1-5)。また、年平均値は、一般局0.019mg/m3、自排局0.020mg/m3であり、一般局、自排局とも近年ほぼ横ばい傾向が見られます(図4-1-6)。

図4-1-5 浮遊粒子状物質の環境基準達成状況の推移(2007年度~2015年度)
図4-1-6 浮遊粒子状物質濃度の年平均値の推移(1974年度~2015年度)
(3)微小粒子状物質

2015年度の微小粒子状物質(PM2.5)の有効測定局数は、一般局が765局、自排局が219局となっており、PM2.5が常時監視項目に加わった2010年度以降、着実に増加しています(表4-1-1)。環境基準達成率は、一般局74.5%、自排局58.4%でした(図4-1-7図4-1-8)。また、年平均値は、一般局13.1μg/m3、自排局13.9μg/m3でした。

表4-1-1 微小粒子状物質の環境基準非達成率及び黄砂観測延べ日数
図4-1-7 微小粒子状物質の環境基準達成状況の推移(一般局)
図4-1-8 微小粒子状物質の環境基準達成状況の推移(自排局)
(4)光化学オキシダント
ア 環境基準の達成状況

2015年度の光化学オキシダントの測定局数は、一般局が1,144局、自排局が29局でした。環境基準の達成状況は、一般局で0%、自排局で0%であり、依然として極めて低い水準となっています(図4-1-9)。一方、昼間の濃度別の測定時間の割合で見ると、1時間値が0.06ppm以下の割合は92.7%(一般局)でした(図4-1-10)。

図4-1-9 昼間の日最高1時間値の光化学オキシダント濃度レベルごとの測定局数の推移(一般局)(2008年度~2015年度)
図4-1-10 昼間の光化学オキシダント濃度レベル別測定時間割合の推移(一般局)(2008年度~2015年度)

なお、光化学オキシダントの環境改善効果を適切に示すために、中央環境審議会微小粒子状物質等専門委員会が提言した新たな指標(日最高8時間平均値の年間 99 パーセンタイル値の3年平均値)によれば、2013~2015年度では、関東地域、東海地域、阪神地域においてやや上昇傾向となりました(図4-1-11)。

図4-1-11 光化学オキシダントの環境改善効果を適切に示すための指標※による域内最高値の経年変化
イ 光化学オキシダント注意報等の発令状況等

2016年の光化学オキシダント注意報等の発令延日数(都道府県を一つの単位として注意報等の発令日数を集計したもの)は46日(16都府県)で、2015年の101日(17都府県)に対し減少となりました(図4-1-12)。月別に見ると、7月が最も多く17日、次いで8月が13日でした。

図4-1-12 注意報等発令延べ日数、被害届出人数の推移(2002年~2016年)

また、光化学大気汚染によると思われる被害届出人数(自覚症状による自主的な届出による)は2県で合計46人でした。

ウ 非メタン炭化水素の測定結果

2015年度の非メタン炭化水素の測定局数は、一般局が329局、自排局が153局でした。午前6時~午前9時の3時間平均値の年平均値は、一般局0.13ppmC、自排局0.16ppmCで、近年では一般局、自排局とも緩やかな改善傾向が見られます(図4-1-13)。

図4-1-13 非メタン炭化水素の午前6時~午前9時における年平均値の経年変化推移(1976年度~2015年度)
(5)二酸化硫黄

2015年度の二酸化硫黄(SO2)の有効測定局数は、一般局が974局、自排局が51局でした。環境基準達成率は、一般局99.9%、自排局100%であり、近年良好な状態が続いています。

年平均値は、一般局0.002ppm、自排局0.002ppmで、近年は、一般局、自排局ともほぼ横ばい傾向にあります(図4-1-14)。

図4-1-14 二酸化硫黄濃度の年平均値の推移(1970年度~2015年度)
(6)一酸化炭素

2015年度の一酸化炭素(CO)の有効測定局数は、一般局が57局、自排局が230局でした。環境基準達成率は、1983年度以降、一般局、自排局とも100%であり、全ての測定局において環境基準を達成しています。

年平均値は一般局0.3ppm、自排局0.4ppmで、近年は一般局、自排局と共にほぼ横ばい傾向にあります(図4-1-15)。

図4-1-15 一酸化炭素濃度の年平均値の推移(1970年度~2015年度)
(7)有害大気汚染物質

環境基準が設定されている4物質に係る測定結果(2015年度)は表4-1-2のとおりで、全ての地点で環境基準を達成しています(ダイオキシン類に係る測定結果については、第5章第3節3(1)表5-3-1を参照)。

表4-1-2 環境基準が設定されている物質(4物質)

また、指針値(環境中の有害大気汚染物質による健康リスクの低減を図るための指針となる数値)が設定されている物質のうち、アクリロニトリル1地点(329地点中)、1,2-ジクロロエタンは2地点(337地点中)、ニッケル化合物は1地点(285地点中)ヒ素及びその化合物は8地点(282地点中)、マンガン及びその化合物は2地点(278地点中)で指針値を超過しており、塩化ビニルモノマー、クロロホルム、水銀及びその化合物、1,3-ブタジエンはすべての地点で指針値を達成しています。

(8)放射性物質

2015年度の大気における放射性物質の常時監視結果においては、全国10地点における空間放射線量率の測定結果を集計しました。その結果、おおむね過去の調査結果の範囲内でした。

(9)石綿

石綿(アスベスト)による大気汚染の現状を把握し、今後の対策の検討に当たっての基礎資料とするとともに、国民に対し情報提供していくため、建築物の解体工事等の作業現場周辺等で、大気中の石綿濃度の測定を実施しました(2015年度の対象地点は全国44地点110か所)。2015年度の調査結果では、一部の解体工事の作業現場などにおいて石綿繊維について高い濃度が見られましたが、建物周辺及び一般環境において特に高い濃度は見られませんでした。

(10)酸性雨・黄砂
ア 酸性雨

我が国では、1983年度から酸性雨のモニタリングやその影響に関する調査研究を実施しており、2013年度に取りまとめた最近5年間(2008年度~2012年度)のモニタリング結果の概要は、次のとおりです。

「降水は引き続き酸性を示している(全平均値pH4.72)、降水中に含まれる非海塩性硫酸イオン等の濃度は冬季と春季に高く、国内の酸性沈着における大陸からの影響が示唆されます。特に山陰等の地域で顕著な上昇が見られた一方で、太平洋側及び瀬戸内海沿岸では他地域と比較して季節的な変動は小さいものでした。また、二酸化硫黄及び粒子状非海塩性硫酸イオンは、大陸に近い地点ほど濃度が高く、大陸からの移流の寄与が大きいことが示唆され、特定の気象条件や黄砂の飛来現象に伴いイオン成分等の上昇も確認されました。

生態系への影響については、一部の地点で、土壌pH低下、湖沼や河川pHの低下等、大気沈着との関連性が示唆される経年変化を確認しました。また、樹勢の変化等が見られた地点(樹木)もありましたが、これらの地点の中には、自然的要因による影響が考えられるものもありました。樹木の成長量の観点から見た森林全体の衰退は、確認されていません。土壌の酸性化や窒素飽和の状態が進んでいることが指摘されている伊自良湖(いじらこ)集水域(岐阜県)では、回復の兆候も一時は見られたものの、いまだ明確ではありません。一般に酸性雨による影響は長い期間を経て現れると考えられているため、現在のような酸性雨が今後も降り続けば、将来、更に酸性雨による深刻な影響が生じるおそれがあります。

また、最近5か年度における降水中のpHの推移は図4-1-16のとおりです。依然として、全国的に酸性雨が観測されています。

図4-1-16 降水中のpH分布図(2011年度~2015年度)
イ 黄砂

近年、中国、モンゴルからの黄砂の飛来が大規模化しており、中国、韓国、日本等でその対策が共通の関心事となっています。従来、黄砂は自然現象と考えられていましたが、近年の現象には、過放牧や耕地の拡大等の人為的な要因も影響しているとの指摘もあり、環境問題としても注目が高まりつつあります。気象庁の観測によれば、2000年以降、我が国で黄砂が観測されることが多くなっていますが、黄砂は年により変動が大きく、長期的な傾向は明瞭ではありません。

2 地域の生活環境の現状

(1)騒音・振動

騒音に係る環境基準は、地域の類型及び時間の区分ごとに設定されており、類型指定は、2015年度末現在、47都道府県の754市、416町、38村、23特別区において行われています。また、環境基準達成状況の評価は、「個別の住居等が影響を受ける騒音レベルによることを基本」とされ、一般地域(地点)と道路に面する地域(住居等)別に行うこととされています。

2015年度の一般地域における騒音の環境基準の達成状況は、全測定地点で85.7%、地域の騒音状況を代表する地点で85.7%、騒音に係る問題を生じやすい地点等で85.6%となっています。

2015年度の道路に面する地域における騒音の環境基準の達成状況は、全国818万5,300戸の住居等を対象に行った評価では、昼間・夜間のいずれか又は両方で環境基準を超過したのは52万2,700戸(6.4%)でした(図4-1-17)。このうち、幹線交通を担う道路に近接する空間にある345万700戸のうち昼間・夜間のいずれか又は両方で環境基準を超過した住居等は36万8,200戸(10.7%)でした。

図4-1-17 2015年度道路に面する地域における騒音の環境基準の達成状況

航空機・鉄道の騒音・振動については、その特性に応じて、別途環境基準又は指針が設定されています。航空機騒音・新幹線鉄道騒音に係る環境基準については、地域の類型ごとに設定されており、2015年度末現在で、航空機騒音については34都道府県において、新幹線鉄道騒音については26都府県において類型の指定(未供用の線区に係る地域を除く)が行われています。

航空機騒音に係る環境基準は、2007年の航空機騒音に係る環境基準について(昭和48年12月環境庁告示第154号)の一部改正により新たな評価指標が採用され、2013年4月1日に施行されました。2015年度においては574地点の測定地点のうち458地点(79.8%)で達成しました(図4-1-18)。

図4-1-18 航空機騒音に係る環境基準の達成状況(2011年度~2015年度)

新幹線鉄道騒音に係る環境基準の達成状況は、2015年度においては608地点の測定地点のうち325地点(53.5%)で達成しました(図4-1-19)。東海道、山陽、東北及び上越新幹線沿線において、主に住居地域を中心におおむね75デシベル以下が達成されていますが、一部で達成していない地域が残されています。また、新幹線鉄道振動については、振動対策指針値はおおむね達成されています。

図4-1-19 新幹線鉄道騒音に係る環境基準の達成状況(2011年度~2015年度)

騒音苦情の件数は2015年度は前年度より620件減少し、16,490件でした(図4-1-20)。発生源別に見ると、建設作業騒音に係る苦情の割合が33.5%を占め、次いで工場・事業場騒音に係る苦情の割合が29.6%を占めています。

図4-1-20 騒音・振動・悪臭に係る苦情件数の推移(1974年度~2015年度)

2015年度には全国の地方公共団体で、人の耳には聞き取りにくい低周波の音がガラス窓や戸、障子等を振動させる、気分のイライラ、頭痛、めまいを引き起こすといった苦情が297件受け付けられました。

また、振動の苦情件数は、2015年度は3,011件で、前年度に比べて169件減少しました。発生源別に見ると、建設作業振動に対する苦情件数が65.1%を占め、次いで工場・事業場振動に係るものが17.4%を占めています。

(2)悪臭

悪臭苦情の件数は2003年度以降は減少しており、2015年度の悪臭苦情件数は12,529件となり12年連続で減少しました。

(3)その他の大気に係る生活環境の現状
ア ヒートアイランド現象

都市部の気温が郊外に比べて高くなるヒートアイランド現象が大都市を中心に生じており、夏季には、30℃を超える時間数が増加しています(図4-1-21)。また、冷房等による排熱が気温上昇を招き、それが更なる冷房使用の原因となり新たな排熱が生ずるという悪循環の発生等様々な環境影響を及ぼしています。特に近年においては、猛暑による熱中症搬送者数の増加等もあり、都市の熱環境の改善について社会的な要請が高まっています。

図4-1-21 関東地方における30℃以上の合計時間数の分布(5年間の年間平均時間数)
イ 光害(ひかりがい) 

不適切な照明等の使用から生じる光は、人間の諸活動や動植物の生息・生育に悪影響を及ぼすことがあります。また、過度の屋外照明はエネルギーの浪費であり、地球温暖化の原因にもなります。

3 水環境の現状

(1)公共用水域の水質汚濁
ア 健康項目

水質汚濁に係る環境基準のうち、人の健康の保護に関する環境基準(健康項目)については、2015年度の公共用水域における環境基準達成率が99.1%(2014年度は99.1%)と、前年度と同様、ほとんどの地点で環境基準を満たしていました。

イ 生活環境項目

生活環境の保全に関する環境基準(生活環境項目)のうち、有機汚濁の代表的な水質指標である生物化学的酸素要求量(BOD)又は化学的酸素要求量(COD)の環境基準の達成率は、2015年度は91.1%(2014年度89.1%)となっています。水域別では、河川95.8%(同93.9%)、湖沼58.7%(同55.6%)、海域81.1%(同79.1%)となり、湖沼では依然として達成率が低くなっています(図4-1-22)。

図4-1-22 公共用水域の環境基準(BOD又はCOD)達成率の推移

閉鎖性海域の海域別のCODの環境基準達成率は、2015年度は、東京湾は63.2%、伊勢湾は68.8%、大阪湾は75.0%、大阪湾を除く瀬戸内海は76.7%となっています(図4-1-23)。

図4-1-23 広域的な閉鎖性海域の環境基準(COD)達成率の推移

一方、全窒素及び全りんの環境基準の達成率は、2015年度は湖沼51.2%(同50.4%)、海域86.8%(同89.4%)となり、湖沼では依然として低い水準で推移しています。閉鎖性海域の海域別の全窒素及び全りんの環境基準達成率は、2015年度は東京湾は66.7%(6水域中4水域)、伊勢湾は71.4%(7水域中5水域)、大阪湾は100%(3水域中3水域)、大阪湾を除く瀬戸内海は96.5%(57水域中55水域)となっています。

また、2015年の赤潮の発生状況は、東京湾27件、伊勢湾43件、瀬戸内海80件、有明海35件となっています。また、これらの海域では貧酸素水塊や青潮の発生も見られました。

(2)地下水質の汚濁

2015年度の地下水質の概況調査の結果では、調査対象井戸(3,360本)の5.8%(195本)において環境基準を超過する項目が見られ、汚染井戸の監視等を行う継続監視調査の結果では、4,462本の調査井戸のうち2,001本において環境基準を超過していました。なお、2009年度から従来の定期モニタリング調査は継続監視調査へ調査区分を変更しています(図4-1-24図4-1-25図4-1-26)。また、過剰施肥、不適正な家畜排せつ物及び生活排水処理等が原因と見られる硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素の環境基準超過率が3.5%と最も高くなっており、これらに係る対策が緊急の課題となっています。一方、汚染源が主に事業場であるトリクロロエチレン等の揮発性有機化合物(VOC)についても、依然として新たな汚染が発見されています。

図4-1-24 2015年度地下水質測定結果
図4-1-25 地下水の水質汚濁に係る環境基準の超過率(概況調査)の推移
図4-1-26 地下水の水質汚濁に係る環境基準の超過本数(継続監視調査)の推移
(3)水環境における放射性物質について

2013年12月に改正された水質汚濁防止法(昭和45年法律第138号)が施行され、国民の健康及び生活環境の保全の観点から環境大臣が放射性物質による水質の汚濁の状況を常時監視し公表することとされました。これに基づき、2014年度から全国の公共用水域及び地下水における放射性物質の存在状況の把握を目的として、全国47都道府県において、公共用水域、地下水の各110地点で放射性物質のモニタリングを始めました。

2015年度の調査を取りまとめた結果では、水質及び底質における全β放射能及び検出されたγ線放出核種は、過去の測定値の傾向の範囲内でした。

4 土壌環境の現状

土壌汚染については、土壌汚染対策法(平成14年法律第53号)に基づき、有害物質使用特定施設の使用の廃止時、一定規模以上の土地の形質変更の届出の際に、土壌汚染のおそれがあると都道府県知事等が認めるときのほか、自主的にも土壌汚染状況調査が行われています。さらには、土壌汚染対策法には基づかないものの、売却の際や環境管理等の一環として自主的な汚染調査が行われています。

都道府県等が把握している調査結果では、2015年度に土壌の汚染に係る環境基準(以下「土壌環境基準」という。)又は土壌汚染対策法の土壌溶出量基準又は土壌含有量基準(以下「土壌溶出量基準等」という。)を超える汚染が判明した事例は934件となっています(図4-1-27)。事例を有害物質の項目別で見ると、鉛、ふっ素、砒(ひ)素等による汚染が多く見られます。

図4-1-27 年度別の土壌汚染判明事例件数

農用地の土壌の汚染防止等に関する法律(昭和45年法律第139号)に定める特定有害物質(カドミウム、銅及び砒(ひ)素)による農用地の土壌汚染の実態を把握するため、汚染のおそれのある地域を対象に細密調査が実施されており、2015年度は6地域325haにおいて調査が実施されました。これまでに基準値以上の特定有害物質(カドミウム、銅及び砒(ひ)素)が検出された、又は検出されるおそれが著しい地域(以下「基準値以上検出等地域」という。)は、累計134地域7,592haとなっています。

5 地盤環境の現状

地盤沈下は、地下水の過剰な採取により地下水位が低下し、主として、粘土層が収縮するために生じます。代表的な地域における地盤沈下の経年変化は、図4-1-28に示すとおりであり、2015年度までに、地盤沈下が認められている主な地域は39都道府県64地域となっています。

図4-1-28 代表的地域の地盤沈下の経年変化

2015年度に地盤沈下観測のための水準測量が実施された23都道府県34地域の沈下の状況は、図4-1-29のとおりでした。

図4-1-29 全国の地盤沈下の状況(2015年度)

かつて著しい地盤沈下を示した東京都区部、大阪市、名古屋市などでは、地下水採取規制等の対策の結果、長期的には地盤沈下は沈静化の傾向をたどっています。しかし、消融雪地下水採取地、水溶性天然ガス溶存地下水採取地など、一部地域では依然として地盤沈下が発生しています。

長年継続した地盤沈下により、多くの地域で建造物、治水施設、港湾施設、農地及び農業用施設等に被害が生じており、海抜ゼロメートル地域などでは洪水、高潮、津波などによる甚大な災害の危険性のある地域も少なくありません。

6 海洋環境の現状

日本周辺の海洋環境の経年的変化を捉え、総合的な評価を行うため、水質、底質等の海洋環境モニタリング調査を実施しています。2015年度は、北海道南西部の噴火湾から沖合にかけての海域において調査を実施した結果、カドミウムについては過去の調査結果と概ね同程度の値であり、フェニルスズ化合物はいずれの測点においても定量下限値と同程度又は低い値でした。また、ヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)の値は一測点において検出されず、ほとんどの測点において定量下限値以下の低い値でした。全体としての過去の調査結果と比較して概ね同程度の値であり、当該海域における汚染の拡大及び進行は確認されませんでした。今後も引き続き定期的な監視を行い、汚染の状況に大きな変化がないか把握していくこととします。

なお、海洋環境モニタリング調査結果のデータについては、国立研究開発法人国立環境研究所が整備した「環境GIS 」(http://tenbou.nies.go.jp/gis/(別ウィンドウ))で公表しています。

最近5か年(2012年~2016年)の日本周辺海域における海洋汚染(油、廃棄物等)の発生確認件数の推移は図4-1-30のとおりです。2016年は437件と2015年に比べ45件増加しました。これを汚染物質別に見ると、油による汚染が293件で前年に比べ46件増加、廃棄物による汚染が111件で前年に比べ1件減少、有害液体物質による汚染が21件で前年に比べ12件増加、その他(工場排水等)による汚染が12件で前年に比べ12件減少しました。

図4-1-30 海洋汚染の発生確認件数の推移