環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成28年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第4章>第5節 土壌環境の保全対策

第5節 土壌環境の保全対策

1 環境基準等の見直し

 土壌の汚染に係る環境基準(以下「土壌環境基準」という。)については、土壌環境機能のうち、水質を浄化し及び地下水を涵(かん)養する機能を保全する観点と、食料を生産する機能を保全する観点から設定されており、既往の知見や関連する諸基準等に即し、現在27項目について設定されています。

 水質汚濁に係る環境基準や地下水の水質汚濁に係る環境基準等に関しては、平成21年度から23年度にかけて、1,4-ジオキサン、クロロエチレン、1,2-ジクロロエチレン、1,1-ジクロロエチレン、カドミウム及びその化合物、トリクロロエチレンの6物質に関し基準の項目への追加、基準値の改正が行われていることを踏まえ、平成25年10月に土壌環境基準及び土壌汚染対策法に基づく特定有害物質の見直し等について中央環境審議会に諮問しました。中央環境審議会における審議を踏まえ、1,1-ジクロロエチレンについて平成26年3月に土壌環境基準の改正を行い、同年8月に土壌溶出量基準等の改正を行いました。

 次いで、平成28年3月に1,4-ジオキサン及びクロロエチレンについて土壌環境基準を設定するとともに、土壌汚染対策法の特定有害物質にクロロエチレンを追加する等の改正を行いました。

2 土壌汚染対策

 土壌汚染対策法に基づき、平成26年度には、有害物質使用特定施設が廃止された土地の調査279件、一定規模以上の土地の形質変更の届出の際に、土壌汚染のおそれがあると都道府県知事等が認め実施された調査153件、自主調査390件の合計822件行われ、同法施行以降の調査件数は、平成26年度までに4,890件となりました。調査の結果、土壌溶出量基準等を超過しており、かつ土壌汚染の摂取経路があり、健康被害が生ずるおそれがあるため汚染の除去等の措置が必要な地域(以下「要措置区域」という。)として、平成26年度末現在353件指定されています(353件のうち192件は解除)。また、土壌溶出量基準等を超過したものの、土壌汚染の摂取経路がなく、汚染の除去等の措置が不要な地域(形質変更時要届出区域)として、1,841件指定されています(1,841件のうち644件は解除)(図4-5-1)。


図4-5-1 土壌汚染対策法の施行状況

 要措置区域等において土地の形質の変更を行う場合には、都道府県等への届出が行われるほか、汚染土壌を搬出する場合には、汚染土壌処理施設への搬出が行われることにより、汚染された土地の適切な管理がなされるよう推進しました。

 土壌汚染の調査を実施する機関は、土壌汚染対策法に基づき調査を適確に実施するため環境大臣の指定を受ける必要がありますが、平成28年2月末時点で700件がこの指定を受けています。また、指定調査機関には、技術管理者の設置が義務付けられており、その資格取得のための土壌汚染調査技術管理者試験を平成27年11月に実施しました。

 そのほか、低コスト・低負荷型の調査・対策技術の普及を促進するための調査等を行いました。

 ダイオキシン類による土壌汚染対策については、第5章第3節3(2)を参照。

 「『日本再興戦略』改訂2015(平成27年6月30日閣議決定)」で、自然由来の汚染土壌の規制の在り方について検討し、全国的な措置の実施に先駆けて、短期間で可能なものについては、早期に国家戦略特区において試行的に開始するとされたことを踏まえ、国家戦略特別区域汚染土壌搬出時認定調査事業に係る命令が平成27年12月25日に制定されました。

 また、「規制改革実施計画(平成27年6月30日閣議決定)」に、国際制度比較調査の実施が盛り込まれたことを踏まえ、調査を実施しました。

 さらに、土壌汚染対策法は、平成22年4月の改正法の施行から5年が経過したことから、平成27年12月に、今後の土壌汚染対策の在り方について、中央環境審議会に諮問しました。

3 農用地の土壌汚染対策

 基準値以上検出等地域の累計面積は、平成26年度末現在7,592haであり、このうち、対策地域の指定がなされた地域の累計面積は6,609haになります。また、対策事業等(県単独事業、転用を含む)が完了している地域は6,975haあり、基準値以上検出等地域の面積の91.9%になります。