環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成28年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第1部パート2第1章>第2節 放射性物質汚染対処特措法に係る取組の進捗状況

第2節 放射性物質汚染対処特措法に係る取組の進捗状況

 地震・津波・原子力発電所事故という複合的な災害は、国民生活に大きな影響を及ぼしました。特に、東京電力福島第一原子力発電所の事故によって放出された放射性物質による広範囲にわたる環境汚染とそこからの回復措置は、これまで我が国が経験したことのないものでした。この事態に対応すべく、第177回国会において放射性物質汚染対処特措法が制定され、平成23年8月30日に公布、平成24年1月1日に全面施行されました。

 この放射性物質汚染対処特措法に基づき、復興に向け、[1]放射性物質に汚染された廃棄物の処理、[2]放射性物質に汚染された土壌等の除染等が進められています。政府では、平成27年度までの5年間を「集中復興期間」と位置付け、様々な対策を講じてきました。本項では、環境回復措置を中心とした対策の進捗状況と、それに基づき、平成28年度から始まる「復興・創生期間」という次なるステージに進みつつある復興の動きを紹介します。

1 放射性物質に汚染された廃棄物の処理

(1)対策地域内廃棄物の処理

 平成28年3月末時点で、福島県の11市町村にまたがる地域が対策地域として定められています。平成25年9月の「福島県の災害廃棄物等の処理進捗状況についての総点検」の結果を踏まえ、平成25年12月に対策地域内廃棄物処理計画の見直しを行いました。なお、平成28年1月時点の災害廃棄物等の推定量は、11市町村合計で約116万トンとなっています。

 避難されている方々の円滑な帰還を積極的に推進する観点から、避難指示解除準備区域及び居住制限区域において、帰還の妨げとなる廃棄物を速やかに撤去し、仮置場に搬入することを優先目標としてきました。地域住民の方々の理解と地方自治体との緊密な連携によって、25か所の仮置場の供用を開始(うち4か所は原状復旧済)し、平成28年2月末までに、災害廃棄物等発生量のうち約66%に当たる約77万トンの搬入が完了しました(図1-2-1図1-2-2)。こうした取組により、平成27年度には、帰還困難区域を除いて、帰還の妨げとなる廃棄物の仮置場への搬入を完了しました。仮置場に搬入した災害廃棄物等は、各市町村ごとに設置することとしている仮設焼却施設でその減容化(焼却)を図っています。


図1-2-1 対策地域内の災害廃棄物等の仮置場への搬入済量

図1-2-2 対策地域内の仮置場及び仮設焼却施設の設置状況(平成28年3月末時点)

 平成27年度には、富岡町、南相馬市、葛尾村、浪江町、飯舘村蕨平(わらびだいら)地区で仮設焼却施設が稼働を開始し、平成28年3月末時点で、計8市町村で9施設のうち6施設が稼働中です(表1-2-1)。現在、事業を実施している減容化施設においては、排ガス中の放射能濃度、敷地内・敷地周辺における空間線量率のモニタリングを行い、その結果を公表することにより、安全に減容化できていることを確認しています。


表1-2-1 稼働中及び建設工事中の仮設焼却施設

 帰還困難区域の取扱いについては、「原子力災害からの福島復興の加速に向けて」改訂(平成27年6月12日閣議決定)において、放射線量の見通し、今後の住民の方々の帰還意向、将来の産業ビジョンや復興の絵姿等を踏まえ、引き続き地元と共に検討を深めていくこととしています。なお、同区域における、復興に不可欠な広域的インフラや復興拠点における廃棄物処理や後述する個別の除染を含む復旧・復興の取組については、復興のインフラ整備・生活環境整備という公共事業的観点から地域再生に向けたものとして実施することとしています。

(2)指定廃棄物の処理

 平成27年12月末時点で、12都県において、焼却灰や下水汚泥、農林業系副産物(稲わら、堆肥等)等計約17万トンが指定廃棄物として環境大臣による指定を受けています(表1-2-2)。政府は、指定廃棄物の処理に関して、放射性物質汚染対処特措法に基づく基本方針(平成23年11月11日閣議決定)で「当該指定廃棄物が排出された都道府県内において行う」としています。


表1-2-2 指定廃棄物の数量(平成27年12月31日時点)

 指定廃棄物は、現在は各都県のごみ焼却施設や下水処理施設、農地等において、各施設等の管理者等が国のガイドラインに沿って、遮水シート等で厳重に覆って飛散・流出を防ぐとともに、空間線量率を測定して周辺への影響がないことを確認するなどにより、適切に一時保管されています。

 ただし、こうした一時保管場所における保管は、国による処理方針が確立するまでの間、やむを得ず一時的に負担をお願いしている措置であることから、災害等に備え、長期にわたる確実な管理体制を早期に構築することが必要です。

ア 福島県内での処理

 福島県内の指定廃棄物及び対策地域内廃棄物については、10万ベクレル/kg以下のものは既存の管理型処分場に搬入し、10万ベクレル/kgを超えるものは中間貯蔵施設に搬入する計画にしています(図1-2-3)。


図1-2-3 福島県内の汚染廃棄物の処理フロー

 農林業系廃棄物や下水汚泥等の可燃性の指定廃棄物については、搬入の前に焼却等の処理によって処分量を削減し、性状の安定化を図る減容化事業を地元の協力と理解を得ながら進めています。これまでに、3件の減容化処理事業について焼却等処理を終えたほか、平成28年1月、飯舘村蕨平(わらびだいら)地区において、飯舘村及び周辺5市町の可燃性廃棄物を焼却処理する仮設焼却施設が新たに稼働しました。加えて、県中・県南等の24市町村の農林業系廃棄物についても、田村市・川内村において仮設焼却施設の建設を準備中です。

 既存の管理型処分場の活用については、平成25年12月に環境大臣及び復興大臣が福島県を訪れて、受入要請を行いました。平成26年に開催された地元自治体の町議会全員協議会や住民説明会等を踏まえ、平成27年6月に同処分場の国有化を含めた国の考え方を福島県・富岡町・楢葉町に提示しました。これに対して、同年8月に県・両町から申入れを受け、同年11月にその申入れを踏まえた国の考え方を再度提示し、その後、同年12月に県・両町から、当該処分場の活用を容認いただいたところです(写真1-2-1)。


写真1-2-1 既存管理型処分場の活用に関する福島県知事、富岡町長、楢葉町長と環境大臣・副大臣、復興副大臣との面会(平成27年12月4日)

 今後も引き続き、地元の理解を得ながら、安心・安全の確保に万全を期して、早期の事業開始に向け、関係者との調整に取り組んでいきます。

イ 福島県外での処理

 環境省では、特に指定廃棄物の保管状況が逼(ひっ)迫している5県(宮城県、栃木県、千葉県、茨城県、群馬県)においては、有識者会議を開催し、長期管理施設の安全性を適切に確保するための対策や候補地の選定手順等について、科学的・技術的な観点からの検討を実施し、平成25年10月に長期管理施設の候補地を各県で選定するためのベースとなる案を取りまとめました。その後、それぞれの県における市町村長会議の開催を通じて長期管理施設の安全性や候補地の選定手法等に関する共通理解の醸成に努めた結果、宮城県、栃木県及び千葉県においては、各県の実情を反映した選定手法がそれぞれの市町村長会議で確定しました。

 これらの選定方法に基づき、環境省は、宮城県においては平成26年1月に3か所、栃木県においては平成26年7月に1か所、千葉県においては平成27年4月に1か所、詳細調査を実施する候補地を公表しました。詳細調査候補地の公表後には、それぞれの県において、指定廃棄物の処理に関して地元の理解を得られるよう、各県の関係者の協力を得ながら取り組んでいるところです。また、茨城県に関しては、平成28年2月に開催した第2回茨城県一時保管市町長会議において、現地保管継続の意向が苦渋の決断ながら総意として示されたことなど、同県の事情を総合的に判断し、8,000ベクレル/kg以下となるのに長期間を要する指定廃棄物については、災害等のリスクの観点から、引き続き県内1か所に集約して安全に管理する方針を堅持しつつ、8,000ベクレル/kg以下となるのに長期間を要しない指定廃棄物については、現地保管を継続し放射能濃度の減衰後に段階的に処理を進めていく方針を決定しました。これを受けて、各保管場所における保管強化策等、方針の実施に向けた取組を進めているところです。

 さらに、宮城県に関しては、平成28年2月に、県内の指定廃棄物の放射能濃度の再測定結果を公表するとともに、同年3月の市町村長会議では、[1]比較的濃度が高いものについては、災害等のリスクの観点から県内1か所に集約して安全に管理、[2]自然減衰により8,000ベクレル/kgを下回ったものについては、指定解除の仕組みも活用しながら順次処理という環境省の考え方を説明しました。

 今後も引き続き、指定廃棄物の保管状況が逼(ひっ)迫している県においては、災害等に備えた長期にわたる管理を確実にするため、全力で取り組んでいきます。

2 放射性物質に汚染された土壌等(草木、工作物等を含む)の除染等の措置等

 放射性物質汚染対処特措法は、除染の対象として除染特別地域と汚染状況重点調査地域を定めています。除染特別地域は、警戒区域又は計画的避難区域の指定を受けたことがある地域で、国が除染実施計画を策定し、除染事業を進めています。他方、汚染状況重点調査地域は、地域の空間放射線量が毎時0.23マイクロシーベルト以上の地域がある市町村について、当該市町村の意見を聴いた上で指定を行い、指定されたそれぞれの市町村が区域を定めて除染実施計画を決定しています。

(1)除染特別地域(国による直轄除染を行う地域)の状況

 除染特別地域に指定されている福島県内の全11市町村では、除染実施計画にのっとり、環境省が順次除染作業を進めています(図1-2-4)。平成28年3月末までに、田村市、大熊町、楢葉町、川内村、葛尾村、川俣町及び双葉町について、同計画に基づく面的除染が完了しました(表1-2-3)。面的除染を完了した市町村においては、除染の効果が維持されているか確認することなどを目的に、除染実施後のモニタリング等を行っています。こうした施策もあって、平成26年4月に田村市、10月に川内村の一部及び平成27年9月に楢葉町の避難指示が解除されました。残りの面的除染が完了していない市町村についても、全域又は一部地域において作業中であり、平成28年度末までの完了を目指しています(帰還困難区域を除く)。


図1-2-4 除染特別地域における除染の進捗状況(平成28年3月末時点)

表1-2-3 除染特別地域における除染実施率(面的除染が完了した市町村は除く)(平成28年3月末時点)

(2)汚染状況重点調査地域(市町村等が除染等の措置を行う地域)の状況

 平成28年3月末時点で、8県93市町村が地域ごとの実情、優先順位や実現可能性を踏まえて除染実施計画を策定しており、これに基づき除染を進めています(図1-2-5)。そのうち子供の生活環境を含む公共施設等の除染については、福島県内で約9割(平成28年2月末現在)、福島県外でほぼ終了(平成27年12月末現在)となり、予定した除染が完了に近づいています(表1-2-4)。そのほか、住宅、農地・牧草地、道路等についても、引き続き除染を進めています。なお、福島県外の57市町村のうち、約9割の市町村は、除染等の措置の進捗について、「完了」(22市町村)又は「おおむね完了」(27市町村)としています。


図1-2-5 汚染状況重点調査地域における除染の進捗状況(平成28年3月末現在)

表1-2-4 汚染状況重点調査地域における各施設及びエリアごとの除染の進捗状況

 平成27年11月には、群馬県において、除染実施計画が策定された全ての市町村で除染等の措置が完了し、平成28年3月には、汚染状況重点調査地域に指定されていた茨城県鉾田市、栃木県佐野市の指定が解除となりました。除染特別地域同様、市町村除染の全ての地域で平成28年度末までに除染実施計画に基づく面的除染を完了させるべく、自治体とも連携して全力で取り組むとともにフォローアップ除染を行うなど、必要な措置を確実に実施していきます。

除染の成果

 平成27年9月に避難指示が解除された楢葉町では、平成26年3月の除染完了以降、町役場が町内での業務を再開し、また仮設商業店舗「ここなら商店街」が、帰町された方々の生活拠点、除染や復興事業に携わる方々の食事・憩いの場となるなど、地域の再生・復興を後押ししています。加えて、JR常磐線の復旧、常磐自動車道の開通及び医療機関や介護保険事業所の再開等、生活インフラの復旧も加速しています。さらには、避難指示解除後は町民の方々が気軽に立ち寄り歓談できるサロン「ふらっと」が開設されたり、町の真の復興に向け「何かしたい」と町民有志が自主的、主体的に行動するグループ「なにかし隊」が設立されたりするなど、町内での地域コミュニティの再生を目指した取組も進められています。


復興祈念式典の様子(平成27年9月5日)

 また、福島県の避難指示区域等で稲の作付けが制限されていた地域では、除染の実施後、次第に営農再開に向けた実証栽培等が行われ、実際に再開する動きもみられます。環境省では、除染後の水田で収穫されたお米の安全性とおいしさをPRするため、中央合同庁舎5号館の職員食堂で試験米の提供を行いました。これらのお米は、全量全袋検査の結果、食品衛生法の定める基準値(1kg当たり100ベクレル)を大きく下回っており、安全性が確認されています。平成27年は川俣町・飯舘村・楢葉町・浪江町で収穫された新米の提供を行いました。試食会に参加した生産者からは「黄金色の稲穂を見るのは本当にうれしい。安心でおいしいお米であることを知ってほしい」という声が聞かれました。

(3)個別の除染等の取組等

ア 帰還困難区域の除染の取組方針

 帰還困難区域であっても、復旧・復興や住民の方々の移動のために特に必要性の高い広域的なインフラや復興拠点として、常磐自動車道、双葉町役場等の除染を実施・完了してきたほか、6月には大熊町の復興まちづくりビジョンにおいて将来の居住地や事業用地として位置付けられている下野上地区周辺の一部の除染に着手しました。帰還困難区域の取扱いについては、前述したように、「原子力災害からの福島復興の加速に向けて」改訂(平成27年6月12日閣議決定)において、放射線量の見通し、今後の住民の方々の帰還意向、将来の産業ビジョンや復興の絵姿等を踏まえ、引き続き地元と共に検討を深めていくこととしています。なお、同区域における、復興に不可欠な広域的インフラや復興拠点における個別の除染を含む復旧・復興の取組については、復興のインフラ整備・生活環境整備という公共事業的観点から地域再生に向けたものとして実施することとしています。

イ 森林の放射性物質対策

 森林については、住居等の近隣の森林や、森林内の人が日常的に立ち入る場所において、堆積有機物の除去等の除染を進めています。また、除染後の事後モニタリングを実施していく中で、森林からの放射性物質の流出による再汚染が確認された場合には、放射性物質の流出防止対策を実施することとしています。さらに、下層植生の繁茂を促し土壌流出を抑制する効果のある間伐等の森林整備や実証事業等の林業再生の取組を併せて実施することにより、森林の放射性物質対策を進めることとしています。

 平成28年3月には「福島の森林・林業再生のための関係省庁プロジェクトチーム」において、「福島の森林・林業の再生に向けた総合的な取組」を取りまとめ、除染等の取組だけでなく、林業再生に向けた取組や住民の方々の安全・安心の確保のための取組等を関係省庁が連携して進めていくこととしています。

除染等の実施に係るリスクコミュニケーション等の取組

 除染等の実施に際し、関係する方々の理解を得るため、除染や放射線に関する最新の情報を正確かつ分かりやすい形で発信し、住民の方等とのコミュニケーションに努めています。


リスクコミュニケーションの様子

 例えば、福島県と共同で運営する除染情報プラザからの専門家の派遣等による地域とのコミュニケーションや、福島県出身の芸能人なすび氏が除染や放射線に関する日頃の疑問について専門家に取材する「なすびのギモン」(テレビ番組、マンガ)等を用いた分かりやすい情報提供を行っています。

 これらの取組を複合的に行い、除染や放射線に対する理解が得られるよう努めているほか、国際社会に対しても我が国の除染等の経験について積極的に情報発信を行っています。

3 中間貯蔵施設の整備と除去土壌等の輸送の状況

(1)進捗状況

 放射性物質汚染対処特措法等に基づき、福島県内の除染に伴い発生した放射性物質を含む土壌及び福島県内に保管されている10万ベクレル/kgを超える指定廃棄物等を最終処分するまでの間、安全に集中的に管理・保管する施設として中間貯蔵施設を整備することとしています。福島県内の除去土壌等の発生量は、減容化した後で1,600万~2,200万m3と推計され、これは東京ドームの約13~18倍に相当します。

 中間貯蔵施設については、候補地におけるボーリング調査等の結果や外部有識者から構成される検討会での議論、大熊町及び双葉町の住民を対象とした住民説明会での意見等を踏まえて、平成26年7月~8月に国の考え方の全体像を提示しました。これを受けて、同年9月に福島県、同年12月に大熊町、平成27年1月には双葉町から施設の建設受入れが容認されたのち、同年2月に福島県並びに大熊町及び双葉町より施設への除去土壌等の搬入受入れが容認されました。その後、施設予定地内に除去土壌等を一時的に保管する保管場の整備を進め、同年3月から安全かつ確実に輸送を実施できることを確認するため、福島県内43市町村から、おおむね一年程度かけてそれぞれの現地状況に応じて約1,000m3程度ずつパイロット輸送(写真1-2-2)を開始しました。パイロット輸送については、事前に想定・準備した安全対策等はおおむね想定どおり機能し、日々の輸送を実施する中で発見された課題や中間貯蔵施設環境安全委員会等における指摘を踏まえ、関係機関との連携の下、道路補修等の交通安全対策、事故を想定した訓練の実施等の改善策を随時講じることで、安全かつ確実に輸送を実施しました。また、パイロット輸送の検証を行い、この内容を反映した平成28年度以降の輸送実施計画を取りまとめました。


写真1-2-2 パイロット輸送の様子

 こうした取組と並行して、施設整備に必要な用地を取得するため、国として連絡先を把握している全ての地権者に連絡を取り、個別訪問等による丁寧な説明を行うとともに、その了解を得て物件調査を行い、その結果に基づいて順次、補償額の算定作業と提示を進めています。また、連絡先が不明の地権者についても、戸籍簿等による調査を進めています。さらに、平成27年11月に、用地取得を促進するため「地権者説明の加速化プラン」を取りまとめ、現在の作業状況と補償額の提示の見通しを地権者へお知らせしたほか、補償額の算定作業のスピードアップ、連絡先不明の地権者への新聞広告を通じた働き掛けや職員の増員等の体制の強化も行いました。

 平成28年2月に、パイロット輸送の検証内容も踏まえ、[1]平成28年度から本格施設の整備に着手し、用地取得を加速化して施設を順次、拡張していくこと、[2]平成28年度から段階的に輸送量を増加していくことなどを内容とする「平成28年度を中心とした中間貯蔵施設事業の方針」を公表しました。さらに、同年3月には、中間貯蔵施設に係る「当面5年間の見通し」を公表しました。この見通しでは、用地取得や施設整備に全力を尽くすことにより、「復興・創生期間」の最終年であり、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会も開催される平成32年度までに、500万~1,250万m3程度の除去土壌等を搬入できる見通しとしています。この見通しに沿って取組を進めることによって、少なくとも、学校や住宅等で現場保管されている除去土壌等に相当する量(現時点で約180万m3)の中間貯蔵施設への搬入を目指すとともに、用地取得等を最大限進め、幹線道路沿いにある除去土壌等に相当する量(約300万~500万m3)の中間貯蔵施設への搬入を目指すこととしています。引き続き、地元の理解を得ながら、取組を進めていきます。

(2)減容・再生利用に向けた取組

 除去土壌等の最終処分は、中間貯蔵開始後30年以内に福島県外で完了することとしています。

 県外での最終処分に向け、国は8つのステップ(図1-2-6)で進めていくことを提示し、平成26年11月には中間貯蔵・環境安全事業株式会社法(平成15年法律第44号)が改正・施行され、中間貯蔵に関する国の責務規定を追加し、「国は、(中略)中間貯蔵開始後30年以内に、福島県外で最終処分を完了するために必要な措置を講ずる」ことが明文化されました。


図1-2-6 福島県外での最終処分に向けた8つのステップ

 県外での最終処分の方向性を検討していく上では、除去土壌等の減容技術の開発と活用等により、できるだけ再生利用可能な量を増やして、最終処分量を減らすことが重要です。そのため、国は、平成27年7月に[1]除去土壌等の減容・再生利用に関する技術開発戦略、[2]除去土壌等の再生利用に向けた技術的課題や促進策等について検討を進めていくため、外部有識者から構成される「中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略検討会」を立ち上げました。この検討会の検討結果を受け、技術開発・実証、再生利用の推進等を含む除去土壌等の減容・再生利用に係る技術開発戦略を取りまとめる予定です。

 こうした検討を行う一方、国は技術開発にも継続的に取り組んでいます。「除染・減容等技術実証事業」を通じて、今後活用し得る除染や汚染廃棄物の処理等の技術、最終処分を見据えた除去土壌等の減容・再生利用等の技術を選定し、実証試験を実施するとともに、その効果、経済性、安全性等の評価・公表を行っています。同事業では、広く民間企業等に公募を行っており、外部有識者により構成される委員会において、平成27年度に技術提案があった37件のうち9件を選定し、実証・評価を行いました。

4 放射性物質汚染対処特措法の施行状況の点検について

 放射性物質汚染対処特措法は、附則第5条において、施行後3年経過後に、同法の施行状況について検討を加えることを定めています。そこで国は、平成27年1月をもって同法の本格施行から3年が経過したことを踏まえ、同年3月に、外部有識者から構成される「放射性物質汚染対処特措法施行状況検討会」を開催し、同法の施行状況について点検を行いました。

 同検討会では、全関係自治体から意見を聴取しながら点検を進めました。平成27年9月になされた取りまとめでは、[1]現行の枠組みの下で施策を前進させることに総力を挙げることが重要、[2]国・自治体が共に強い当事者意識を持って今まで以上に連携・協力しあうべき、[3]分野横断的事項について環境省のみならず関係機関が連携して取り組むべきといった指摘がなされました(その他個別の指摘とその対応状況については、表1-2-5参照)。今後も、本取りまとめによる指摘を踏まえながら、放射性物質汚染対処特措法に基づいて、除染、中間貯蔵施設の整備、汚染廃棄物処理といった個別分野に係る取組を推進していきます。


表1-2-5 放射性物質汚染対処特措法の施行状況の点検