環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成27年版 環境・循環型社会・生物多様性白書施策第4章>第3節 水環境の保全対策

第3節 水環境の保全対策

1 環境基準の設定等

 水質汚濁に係る環境基準のうち、健康項目については、水環境中での存在状況や有害性情報等の知見の収集・集積を引き続き実施します。

 生活環境項目については、底層溶存酸素量(以下「底層DO」という。)、沿岸透明度、大腸菌について、基準設定の検討を引き続き実施します。また、水生生物の保全に関する環境基準について、水環境中での存在状況や有害性情報等の知見の収集・集積を引き続き実施します。国が類型指定を行う水域については、引き続き必要な情報を収集し、類型指定の検討を進めます。

2 水環境の効率的・効果的な監視等の推進

 水質汚濁防止法(昭和45年法律第138号。以下「水濁法」という。)に基づき、国及び地方公共団体は、公共用水域及び地下水の水質について、引き続き常時監視を行います。また、要監視項目についても、地域の実情に応じて水質測定を行います。なお、放射性物質についても、引き続き常時監視を行います。

3 公共用水域における水環境の保全

 工場・事業場については適切な排水規制を行い、排水規制の対象となっていない項目等について、規制等の対策の必要性の検討を進めます。また、トリクロロエチレンに関する排水基準の見直しを行うとともに、ほう素・ふっ素・硝酸性窒素等に関する暫定排水基準の見直しについて引き続き検討を行います。

 閉鎖性水域における水環境の保全を図るため、水濁法等に基づく排水規制、下水道や浄化槽の整備等の各種施策を総合的に実施します。また、富栄養化しやすい湖沼及び閉鎖性海域を対象として、水濁法等に基づき、窒素・りんの排水規制を行うとともに、富栄養化の水質状況等の把握を行います。

 湖沼については、湖沼水質保全特別措置法(昭和59年法律第61号)に基づく湖沼水質保全計画が策定されている琵琶湖や霞ヶ浦等11湖沼について、同計画に基づき、各種規制措置のほか、下水道及び浄化槽の整備その他の事業を総合的・計画的に推進するとともに、湖沼の底層DOや透明度改善に関する検討を行います。

 東京湾、伊勢湾及び瀬戸内海においては、化学的酸素要求量(COD)、窒素含有量及びりん含有量を対象とした水質総量削減に係る取組を引き続き推進するとともに、第8次水質総量削減の在り方についての検討を進めます。また、全国88か所の閉鎖性海域について、窒素及びりんの排水規制を引き続き実施します。瀬戸内海については、瀬戸内海環境保全特別措置法(昭和48年法律第110号)及び平成27年2月に変更された「瀬戸内海環境保全基本計画」等に基づき、沿岸域環境の保全、再生及び創出、水質の保全及び管理、自然景観及び文化的景観の保全、水産資源の持続的な利用の確保等の諸施策を推進します。有明海及び八代海については、有明海及び八代海等を再生するための特別措置に関する法律(平成14年法律第120号)に基づき、環境省に設置されている有明海・八代海等総合調査評価委員会における有明海及び八代海等の再生の評価を進めるために必要となるデータの収集・整理を進めるとともに、赤潮や貧酸素水塊の発生対策、底質改善、生態系の回復、その他の当該海域の環境の保全及び改善のための施策、水産資源の回復等による漁業の振興のための施策等を引き続き推進します。このほか、多様な魚介類等が生息し、人々がその恩恵を将来にわたり享受できる自然の恵み豊かな豊穣の里海の創生を推進します。さらに、海域の状況に応じた陸域・海域が一体となった円滑な物質循環を達成するための効率的かつ効果的な管理方策の構築や沿岸域の環境改善に向けた取組を推進します。

 生活排水対策については、人口減少等の社会情勢の変化を踏まえ、短期的にはおおむね10年で汚水処理施設の整備を概成することを目指し、また中長期的には汚水処理施設の改築・更新等の運営管理の観点で、汚水処理に係る総合的な整備計画である「都道府県構想」の見直しを推進し、浄化槽、下水道、農業集落排水施設、コミュニティ・プラント等の各種汚水処理施設の効率的かつ適正な整備を図ります。

 浄化槽については、「都道府県構想」の下、市町村が浄化槽の整備計画の策定・見直しを積極的に行うことで普及促進が図られるよう、市町村が浄化槽の整備・維持管理の主体となる「市町村浄化槽整備推進事業」の推進を図ります。一方、「市町村浄化槽整備推進事業」における市町村の金銭的・事務的負担の軽減に向け、PFI等の民間活用を推進し、さらに、官民が連携して整備の促進・適正な管理に取り組んでいけるよう民間活用による新たな整備・管理手法の検討を行います。また、浄化槽台帳情報を電子データとして関係者間で効率的かつ正確に管理することを可能とする浄化槽台帳システム整備を支援することにより、単独処理浄化槽から合併処理浄化槽への転換促進、適正な維持管理の確立や災害対応力の強化等の管理体制の強化を図るとともに、浄化槽の信頼性の向上を目指します。

 下水道整備については、全人口の約7割の汚水処理を担っていますが、市街化区域にも下水道未普及地域が残されており、快適で衛生的な生活環境の享受という公平性が確保されておらず、また、広域的な水質保全の面からも課題となっています。そのため、未普及地域のうち、人口が集中している地域や水道水源水域等、水質保全上重要な地域において重点的に整備を推進するとともに、その他の地域においては、他の汚水処理施設と連携強化を図るとともに地域の実状に応じた低コストの整備手法の導入により、機動的な整備を行います。また、水域の早期水質改善に向け、既存施設の一部改造や運転管理の工夫による段階的な高度処理も含め、引き続き下水道における高度処理を推進するとともに、計画的な合流式下水道の改善を推進します。

 農業集落排水事業については、農業集落におけるし尿、生活雑排水等を処理する農業集落排水施設の整備又は改築を実施するとともに、既存施設について、長寿命化や老朽化対策を適時・適切に進めるための地方公共団体による機能診断等の取組を支援します。

4 地下水汚染対策

 水濁法が平成23年6月に改正され、地下水汚染未然防止のための構造等の基準が設けられた、既存施設に対する適用猶予期間が平成27年5月末までとなっていることから、地方公共団体と協力し、地下水汚染の未然防止制度の円滑な施行に向けた対応を進めます。さらに、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素による地下水汚染については、流域の関係者が参画した地域に応じた総合的な対策の推進に取り組みます。

5 環境保全上健全な水循環の確保

(1)水環境に親しむ基盤作り

 良好な河川環境の整備と保全に係る取組を推進します。自発的に環境保全活動に参加できる環境づくりの施策を展開します。

 地域住民等の参加を得て、全国の河川において水生生物による簡易水質調査を推進するとともに、市民団体と協働して、身近な水環境の全国一斉調査を実施します。

 また、雨水渠(きょ)等の下水道施設や下水処理水を活用した、せせらぎ水路等の水辺空間の再生・創出を推進します。

(2)環境保全上健全な水循環の確保

 水循環基本法(平成26年法律第16号)が平成26年7月に施行されたことを受け、水環境の観点から、今後の望ましい社会・経済像を見据え、現在及び将来の社会・経済の状況、技術レベル、生活の質を考慮した上で、流域の特性に応じた水量、水質、水生生物等、水辺地を含む水環境が保全され、それらの持続可能な利用が図られる社会の構築を推進します。

 また、広く国民に向けた情報発信等を目的とした官民連携プロジェクト「ウォータープロジェクト」を参加企業等の協力の下、全国的に展開し、水循環の維持又は回復に関する取組と情報発信を促進します。

 また、流域別下水道整備総合計画等水質保全に資する計画を策定し、効率的な汚濁負荷削減施策を推進します。

 また、水質面のみならず、水量、水生生物、水辺地を含めた総合的な取組を進めるため、引き続き水循環に関する調査や施策の推進方策等についての検討を行います。特に農業集落排水施設等の生活排水処理施設整備事業を重点的に実施します。また、地域の湧水を保全・復活させるため、地域特性に応じた具体的・効果的な取組について検討を行います。

 下水処理水等の効果的な利用や雨水貯留浸透の推進、森林の適正な整備及び保全や、自然海岸、干潟、藻場、浅海域の適正な保全や人工干潟・海浜の整備の推進等を通じ、環境保全上健全な水循環の維持・回復を推進します。