環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成27年版 環境・循環型社会・生物多様性白書施策>第4章 大気環境、水環境、土壌環境等の保全

第4章 大気環境、水環境、土壌環境等の保全

第1節 大気環境の保全対策

1 大気環境の監視・観測体制の整備

 国設大気環境測定所、国設自動車交通環境測定所(及び国設酸性雨測定所)を引き続き運営していきます。また、「大気汚染物質広域監視システム(そらまめ君)」により全国の大気汚染常時監視データをリアルタイムで収集し、監視体制の充実を図ります。環境放射線等モニタリング調査については、離島等(全国10か所)において引き続き大気中の放射線等のモニタリングを実施します。特にPM2.5に関しては、国設酸性雨測定所等における成分分析を実施します。また、地方公共団体における常時監視体制の整備を促進し、その測定結果を広く公表します。

 また、有害大気汚染物質について、化学物質排出移動量届出(PRTR)データを活用した大気濃度シミュレーション等によりモニタリングの効率化を検討します。

 さらに、モニタリングにより、揮発性有機化合物の排出抑制効果を把握するとともに、光化学オキシダント濃度の動向の把握等を行います。

2 固定発生源対策

 固定発生源からの大気汚染対策については、引き続き排出基準の遵守の徹底を図ります。また、近年の経験豊富な公害防止担当者の大量退職等による、事業者や地方公共団体における公害防止業務の構造的変化に対応するため、企業、自治体、住民等による地域ぐるみの公害防止の促進等の措置を講じていきます。窒素酸化物対策については、総量規制を行っている東京都特別区等、横浜市等及び大阪市等の地域について、引き続き総量規制の徹底を図ります。

3 移動発生源対策

(1)自動車排出ガス対策

 中央環境審議会の「今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について」(第十二次答申)を踏まえ、二輪車の更なる排出ガス低減対策の推進を図るとともに、その検討に当たっては、国連欧州経済委員会自動車基準調和世界フォーラムにおける国際基準の策定や見直しに貢献した上で国際基準への調和について検討します。また、燃料蒸発ガスについて、自動車の駐車時に排出される燃料蒸発ガス対策の強化や給油時等に排出される燃料蒸発ガス対策の導入について、実行可能性、技術的課題、対策による効果について確認するとともに、排出寄与度や他の発生源に対する対策の実施状況及び欧米における状況も踏まえ検討します。

 また、平成26年度以降順次強化する排出ガス基準に適合する公道を走行しない特殊自動車(オフロード特殊自動車)等への買換えが円滑に進むよう、税制の特例措置、政府系金融機関による低利融資による促進を引き続き講じます。

(2)大都市地域における自動車排出ガス対策

 大都市地域における二酸化窒素及び浮遊粒子状物質に係る大気環境の改善に向け、自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法(平成4年法律第70号)に基づく車種規制、事業者による排出抑制のための措置、局地汚染対策及び流入車対策等の施策を円滑かつ着実に推進します。

(3)低公害車の普及促進

 車両導入に対する各種補助、自動車税のグリーン化及び自動車重量税・自動車取得税の免除・軽減措置等の税制上の特例措置並びに政府系金融機関による低利融資を通じて、低公害車の更なる普及促進を図ります。

(4)交通流対策

 交通流の分散・円滑化施策としては、道路交通情報通信システム(VICS)の情報提供エリアの更なる拡大、スマートウェイの一環としての高速道路上を中心としたITSスポットサービスの推進、及び道路交通情報提供の内容・精度の改善・充実、信号機の高度化を行います。また、違法駐車の取締り強化を始め、ハード・ソフト一体となった駐車対策を推進します。さらに、公共交通機関の利用を促進するため、公共車両優先システム(PTPS)の整備を推進します。

(5)船舶・航空機・建設機械の排出ガス対策

 海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律(昭和45年法律第136号。以下「海洋汚染等防止法」という。)に基づき、船舶に搭載される原動機や焼却炉等の設備に関する検査等による規制の実効性確保、その他国内体制の整備に引き続き努めます。また、平成22年5月の海洋汚染等防止法の改正を踏まえ、規制に必要な体制の整備及び革新的な環境負荷低減技術の開発を進めます。建設機械については燃費性能の優れた建設機械の認定制度を実施するとともに、これらの建設機械の取得時の融資制度、補助事業を実施します。

(6)普及啓発施策等

 各種イベント等において低公害車(次世代自動車等)、エコドライブの普及啓発を行うとともに、エコドライブ普及連絡会において、引き続きエコドライブの普及推進を図るため、行楽シーズンであり自動車に乗る機会が多くなる11月を「エコドライブ推進月間」とし、シンポジウムの開催や全国各地でのイベント等を連携して推進し、積極的な広報を行います。あわせて、当該連絡会が策定した「エコドライブ10のすすめ」の普及・推進に努めます。

4 微小粒子状物質(PM2.5)対策

 微小粒子状物質(PM2.5)については、政策パッケージの取組を着実に進めます。具体的には、引き続き成分分析を含む常時監視体制の整備を推進するとともに、シミュレーションモデルの高度化、発生源情報の整備、二次生成機構の解明等に取り組み、PM2.5濃度の予測精度の向上、現象解明や効果的な対策の検討を進めます。注意喚起のための暫定的な指針については、引き続き国民に対する的確な情報提供が行われるよう取り組みます。さらに、日中韓三か国環境大臣の合意に基づく政策対話や研究協力といった国際的な取組等について推進していきます。また、長期継続的に疫学調査等を進める等により、我が国におけるPM2.5の健康影響に関する更なる知見の充実を図っていきます。

5 光化学オキシダント対策

 「大気汚染物質広域監視システム」により、リアルタイムで収集したデータを活用し、光化学オキシダントによる被害の未然防止に努めます。

 光化学オキシダントの生成の原因物質である窒素酸化物及び揮発性有機化合物については、固定発生源からの排出抑制対策を引き続き実施していくとともに、「光化学オキシダント調査検討会報告書」(平成26年3月)に基づき、光化学オキシダント濃度に影響を与えると推測される要因について、測定値に基づく解析とシミュレーションを組み合わせた解析等を行い、光化学オキシダントの経年変化要因の解明や削減対策の把握に把握を進め、光化学オキシダント対策の検討を行います。

6 多様な有害物質による健康影響の防止

(1)有害大気汚染物質対策

 地方公共団体との連携の下に有害大気汚染物質による大気の汚染の状況を把握するための調査を行うとともに、有害大気汚染物質の人の健康に及ぼす影響に関する科学的知見の充実に努めます。

(2)石綿対策

 石綿(アスベスト)による大気汚染を未然に防止する観点から、改正された大気汚染防止法(昭和43年法律第97号。以下「大防法」という。)に基づき、吹付け石綿等が使用されている建築物等の解体等に伴う石綿の飛散防止対策の徹底を図ります。また、「石綿の飛散防止対策の更なる強化について」(中間答申)(平成25年2月)に指摘された事前調査の信頼性の確保等の課題について、改正法の施行状況等も踏まえ検討を行います。

7 越境大気汚染対策

(1)酸性雨対策

 東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(以下「EANET」という。)の活動に対し、資金の拠出や技術的な助言を行うとともに、EANETの発展・拡大に向けた議論に積極的に参画・支援します。

 国内においても、酸性雨による影響の早期把握、酸性雨原因物質や光化学オキシダント等大気汚染物質の長距離輸送の実態を長期的に把握し、それらによる被害を未然に防止する観点から、「越境大気汚染・酸性雨長期モニタリング計画」に基づき、酸性雨測定所等における大気モニタリング、湖沼等を対象とした陸水モニタリング、土壌・植生モニタリングを着実に実施します。

(2)黄砂対策

 日本、中国及び韓国の三カ国黄砂局長会合の下での共同研究等を通じて、黄砂に関連する観測データの共有を引き続き進めるなど、関係各国と密接に連携・協力しながら黄砂対策に取り組みます。

 国内においては、黄砂や黄砂とともに輸送される大気汚染物質の我が国への飛来実態を把握するための調査を実施するとともに、黄砂観測装置(ライダー装置)によるモニタリング及び情報提供を行います。

8 放射性物質の常時監視

 一般環境中の放射性物質の存在状況について、全国的な概況を把握すべく、環境大臣が自らモニタリングを実施するとともに、関係機関が既に実施している放射性物質に係るモニタリングのうち、大防法の放射性物質の常時監視の趣旨に合致するものについて、必要に応じ環境大臣がモニタリング結果の提供を受け、併せて公表します。