環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成26年版 環境・循環型社会・生物多様性白書施策第3章>第2節 循環型社会を形成する基盤整備

第2節 循環型社会を形成する基盤整備

1 「質」にも着目した循環型社会の構築

(1)2Rの取組がより進む社会経済システムの構築

 廃棄物の有料化に伴うさまざまな問題に関する考え方や、有料化の検討の進め方等について取りまとめたガイドラインを通じて有料化を行う市町村を支援していきます。また、ごみ(一般廃棄物)処理有料化等に関する、現状の把握、優良事例の抽出、課題の検討等を行い、必要な施策及び上記ガイドライン改正の必要性の検討を行います。

 リユースについては、引き続きモデル事業を継続して実施しながら、継続性のある事業を見極め、その取組等を各地に広げていきます。

(2)使用済製品からの有用金属の回収

 自治体における使用済小型電子機器等の回収体制の構築や収集運搬等を支援しつつ、制度の普及啓発を行っていきます。

 平成25年5月に行った市町村アンケートによると、約75%の市町村(人口ベースで約90%)が小型家電リサイクル制度への参加に前向きな意向を示した一方で、具体的な回収方法や回収品目については未定と回答した市町村が多かったことを受け、今後は、これまでの実証事業等で得られた知見を自治体間で共有するとともに、回収体制の構築が円滑に進むよう運用支援業務を実施し、さらなるリサイクルの促進を図ります。

(3)水平リサイクル等の高度なリサイクルの推進

 我が国ではガラスびん、アルミ缶、ペットボトル、食品トレイ、自動車のバンパー等で水平リサイクルが行われています。リサイクルの質を向上させ、持続可能な資源活用をさらに推進していくため、引き続き、社会的費用の減少や地球温暖化対策とのバランスも考慮しつつ、高度で高付加価値な水平リサイクルなどを社会に定着させることを目指した施策を実施していきます。

(4)有害物質を含む廃棄物等の適正処理システムの推進

 平成25年10月に熊本で開催された外交会議において、「水銀に関する水俣条約」が採択されました。条約により、今後水銀の使用用途が制限されることから、余剰となった金属水銀及び水銀含有物が廃棄物として処分される事態が想定されます。このため、水銀廃棄物(廃金属水銀、水銀汚染物、水銀添加廃製品)の環境上適正な処理方策について検討を進めていきます。

(5)災害時の廃棄物処理システムの強化

 南海トラフ巨大地震や首都直下地震が発生した場合、これまでの経験をはるかに上回る量の災害廃棄物が発生すると予測されています。

 このため、環境省では、平成25年10月に「巨大地震発生時における災害廃棄物対策検討委員会」を開催し、巨大災害発生に備えて、災害廃棄物の発生量の推計、既存の廃棄物処理施設における処理可能量の推計を踏まえ、廃棄物処理システムの強靱(じん)化に関する総合的な対策の検討を進め、平成26年3月31日に、中間とりまとめ「巨大災害発生時における災害廃棄物対策のグランドデザインについて」を公表しました。

 これを踏まえ、地域ごとに関係者と連携を取りながら、巨大災害に備えた災害廃棄物処理に関する制度的な対応を検討するとともに、広域的な廃棄物処理体制が図られるように、地域ごとに国・自治体・事業者等が連携して巨大災害への対策や防災用設備の導入・備蓄及び体制の強化に関する地域ごとの具体的な方策を検討します。

 平成26年度以降は、これらの検討状況を踏まえ、巨大災害に備えた国・自治体・事業者等が共有できる行動指針・行動計画の策定を目指すこととしており、各地方環境事務所とも連携して、地域に即したより具体的な検討を進めていく予定です。

 さらに、東日本大震災以降の災害対策への意識の高まり等、社会環境の変化を踏まえ、一般廃棄物処理施設の整備については、3Rの推進に加え、災害対策や地球温暖化対策の強化を目指し、広域的な視点に立った強靱(じん)な廃棄物処理システムを確保するため、災害対策の強化に資するエネルギー効率の高い施設への重点的支援、基幹的設備の改良等による長寿命化・延命化等、交付金制度の活用による対策を引き続き進めていきます。

2 低炭素社会・自然共生社会づくりとの統合的取組

 廃棄物の焼却や埋立てに伴う温室効果ガスの削減を図る観点からも、その発生量の抑制を図ります。

 具体的には、廃棄物等の発生抑制・再使用・再生利用の推進によって廃棄物焼却量や直接埋立量の抑制を図ります。また、化石系資源の使用量の抑制を図るため、廃棄物発電施設や、有機性廃棄物からのメタン回収を高い効率で行う施設に対し補助するなど、廃棄物の焼却に伴って生じる排熱を有効に活用する廃棄物発電・熱利用やバイオマスエネルギーの活用を推進していきます。木くずなど有機性廃棄物の最終処分場への直接埋立については、温暖化効果の高いメタンを発生することから、原則として行わないこととし、地域の特性に応じて、適切に再生利用等を行っていく必要があります。

 また、循環型社会の形成等の観点を踏まえ、加工時のエネルギー消費量が少なく、再生産可能な資源としての特性を有する木材の利用を推進していきます。

3 地域循環圏の高度化

 地域における資源循環型経済社会構築の実現に向けて、ゼロ・エミッション構想推進を目的とした全国26か所の「エコタウン事業」認定地域を核に、適正な地域循環圏構築に向けた取組、既存のエコタウン等の高度化に向けた取組、リサイクルと温暖化対策を同時に行う取組への支援等を行います。

4 循環資源・バイオマス資源のエネルギー源への利用

 下水道事業において発生する汚泥は、近年は減少傾向にあるものの、産業廃棄物の総発生量の約19%を占めており、下水汚泥を受け入れている最終処分場の残余年数が依然として非常に厳しい状況にあることから、今後さらなる汚泥の減量化、再生利用に加え、地球温暖化対策の推進も踏まえたエネルギー利用が必要となっています。このような状況を踏まえ、下水汚泥資源化施設の整備の支援、下水道資源の循環利用に係る計画策定の推進、下水汚泥再生利用・エネルギー利用に係る技術開発の促進・普及啓発などに取り組んでいきます。

 バイオマスの活用の推進に関する施策についての基本的な方針、国が達成すべき目標等を定めた「バイオマス活用推進基本計画」(22年12月閣議決定)に基づき、以下の取組を実施します。

 [1]国産バイオ燃料の本格的な生産に向け、原料供給から製造、流通まで一体となった取組のほか、食料・飼料供給と両立できる稲わら等のソフトセルロース系原料の収集・運搬からバイオ燃料の製造・利用までの技術の確立を目指します。

 [2]農山漁村の自立・分散型エネルギーシステムの形成に向けて、バイオ燃料や熱エネルギーを効率的に生産・利用するための技術の開発を推進します。

 また、関係7府省共同で策定したバイオマス事業化戦略に基づき、原料生産から収集・運搬、製造・利用までの経済性が確保された一貫システムを構築し、バイオマス産業を軸とした環境にやさしく災害に強いまちづくり・むらづくりを目指すバイオマス産業都市の構築を推進します。

 加工時のエネルギー消費量が少ない地域材の利用等を推進するとともに、建設廃棄木材等の廃棄物系の木質資源のうち未利用となっている資源の再使用・再資源化を図るため、木質複合材料等の開発を行います。さらに、家畜排せつ物等有機性資源の堆肥化や再生可能エネルギーとしての利活用などによる循環的利用の促進等を推進します。また、農業集落排水事業において、発生する汚泥の有機肥料等へのリサイクルを推進します。このほか、水産系副産物である貝殻の再資源化により資源の循環的利用を推進します。

5 循環産業の育成

(1)廃棄物等の有効活用を図る優良事業者の育成

 循環型社会の形成の礎となる産業廃棄物処理業の優良化を推進するため、優良産廃処理業者認定制度を活用して、環境配慮契約法の仕組みが地方公共団体や民間部門に波及していくよう関係者に働きかけるなどにより、適正処理に意欲的な処理業者が市場で適切に評価され、産業廃棄物の排出事業者から積極的に処理を委託されるような環境づくりを引き続き行っていきます。

 事業者が、再生資源の利用率目標の達成及び再生資源の新規用途の開発などの、個別品目の状況に応じた再生利用能力の向上を図ることを促進します。また、再生資源やリサイクル製品は、初めて使用される資源やこれによる製品に比べて割高になりがちであることも踏まえつつ、信頼性を確保し、国、地方公共団体、事業者、国民すべての主体がリサイクル製品を積極的に利用することなどにより、リサイクル製品の利用・市場の育成等を推進します。

 そのほか、環境報告ガイドラインの改訂を受けて、その活用・啓発に努め、さらなる環境情報の開示促進と質の向上に向けた取組を進めます。

(2)廃棄物発電設備など廃棄物処理・リサイクル施設の整備推進

 廃棄物の3Rを推進するための目標を設定し、広域的かつ総合的に廃棄物処理・リサイクル施設の整備を推進する「循環型社会形成推進交付金制度」を活用し、地域における循環型社会づくりのための社会資本整備を加速させます。

 また、主に民間の廃棄物処理事業者が行う地球温暖化対策を推し進めるため、廃棄物熱回収施設設置者認定制度を活用するとともに、廃棄物エネルギー導入・低炭素化促進事業により、高効率の廃棄物熱回収施設や廃棄物燃料製造施設の整備を支援していきます。

 さらに、平成26年度税制改正において、廃棄物処理施設に係る課税標準の特例措置及び最終処分場に係る維持管理積立金制度に係る特例措置について、その適用期限を2年間延長することとしています。

 浄化槽においては、単独処理浄化槽の撤去費用に対して助成を行うことで、引き続き単独処理浄化槽から合併処理浄化槽への転換を推進します。また、温室効果ガスの削減目標達成のための浄化槽分野におけるCO2削減対策の促進を図るため、低炭素社会対応型浄化槽の整備を引き続き推進していきます。

 また、畜産業において発生する家畜排せつ物等については、家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律(平成11年法律第58号)等に基づき、適正な管理を徹底するとともに、地域における有効利用を促進し、効率的かつ環境保全上適切に循環するシステムを形成するための施設整備等を推進します。

 再資源化施設に関しては、建設廃棄物等の再資源化を促進するため、再資源化施設の稼働状況等に関する情報交換システムの運用を推し進めていくとともに、再資源化施設の立地について、その適正な立地誘導等が図られるよう必要な施策について検討を進めていきます。

 水産物の加工流通過程における排水処理の高度化及び水産加工残さ等のリサイクルの促進に必要な施設整備を推進します。港湾における廃棄物埋立護岸について、東京湾等において整備を行います。

(3)静脈物流システムの構築

 建設資源のリサイクルを促進するため、首都圏の建設発生土を全国の港湾建設資源として広域的に有効利用するプロジェクト(いわゆるスーパーフェニックス計画)として、平成26年度には小名浜港、相馬港及び広島港において建設発生土の受入を実施します。

 静脈物流の拠点となる港湾を総合静脈物流拠点港(リサイクルポート)に指定し、リサイクル関連施設の臨海部への立地を推進するとともに、循環資源の収集・保管・処理の総合的な静脈物流拠点を形成し、ネットワーク化を図ります。

 また、平成26年度に開始するモーダルシフト・輸送効率化による低炭素型静脈物流促進事業について、国土交通省と環境省が連携し、引き続き、海上輸送による低炭素型静脈物流システムの構築に必要な経費等に補助をしていきます。

6 廃棄物の適正な処理

(1)不法投棄・不適正処理対策

 不法投棄等の未然防止・拡大防止対策として、廃棄物処理法の厳格な適用を図るとともに、引き続き、5月30日から6月5日までを「全国ごみ不法投棄監視ウィーク」として設定し、国と都道府県等が連携して、不法投棄等の撲滅に向けた普及啓発活動等の取組を一斉に実施します。また、不法投棄等に関する情報を国民から直接受け付ける不法投棄ホットラインの運用及び現地調査や関係法令等に精通した専門家を不法投棄等現場へ派遣することにより都道府県等を支援し、不法投棄等の撲滅に向けた取組を進めていきます。

 産廃特措法に基づく特定支障除去等事業が同法の有効期限までに完了するよう事業の計画的かつ着実な推進を図るとともに、平成25年2月に取りまとめられた「支障除去等に関する基金のあり方懇談会報告書-当面の財政的な支援について-」も踏まえて、引き続き財政支援のあり方等の検討を進めていきます。

 シップリサイクル条約の施行を支援するため、我が国主導の下、各種ガイドラインの作成を行います。

 国内においては、世界に先駆け、環境に配慮した先進国型のシップリサイクルシステムを構築するため、解体技術手法の調査研究を実施するなどさらなる取組を推進します。

 使用済みFRP船の処理については、平成20年度から全国において一般社団法人日本マリン事業協会が「FRP船リサイクルシステム」の本格運用を開始したため、今後ともリサイクル処理の必要性及びFRP船リサイクルシステムの周知啓発等を行うことにより、FRP船のリサイクル処理の普及促進に取り組んでいきます。

(2)最終処分場の確保等

 最終処分場の確保が特に困難となっている大都市圏のうち、近畿圏においては、大阪湾広域臨海環境整備センターが行う広域処理場(廃棄物埋立護岸、廃棄物受入施設、排水処理施設等)の整備促進及び埋立の円滑な実施を通じ、安全・安心・安定的な埋立処分容量の確保を図ります。また、首都圏をはじめその他の地域において、広域処理場の確保が必要となった際に、関係地方公共団体間に適切な働きかけを講じられるよう、次期広域処理場のあり方についての検討を実施します。

7 環境教育等の推進と的確な情報共有・普及啓発

(1)環境教育等の推進

 文部科学省では、学校における環境教育の推進を図るため、引き続き、環境のための地球学習観測プログラム(GLOBE)協力校の指定を行います。文部科学省と連携・協力の下、持続可能な開発のための教育(ESD)の視点を取り入れた環境教育を推進しており、昨年度から継続している「人材育成事業」においては学校を中心にESDを実証する場を増やしていくとともに、汎用化できるモデルプログラムの開発を行う予定です。また、「環境教育リーダー研修」を実施し、環境教育を担当する教員等の資質能力の向上を図る取組も引き続き行うこととしています。

(2)3Rに関する情報共有と普及啓発

 国民に対し3R推進に対する理解と協力を求めるため、関係府省(財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、消費者庁)連携の下、毎年10月を「リデュース・リユース・リサイクル(3R)推進月間」と定め、引き続き、広く国民に向けて普及啓発活動を実施します。また、3R推進月間の事業の一環として、3Rの推進に貢献している個人、グループ、学校及び特に貢献の認められる事業所等を表彰する「リデュース・リユース・リサイクル推進功労者等表彰」(リデュース・リユース・リサイクル推進協議会主催)の開催を引き続き後援します。

 経済産業省では、引き続き、普及啓発用DVD「レッツゴー3R」等の貸出等を実施します。

 また、3R教育に資する関連資料の配付等も引き続き実施します。

 さらに、環境負荷の低減、環境情報の提供、JISの活用等を念頭におき、消費者等利害関係者からの意見を反映し、規格の制定・改正を行い、JISに対する信頼感に答えていきます。さらに、平成19年7月に策定した「国際標準化アクションプラン」に基づき、我が国の優れた環境技術を国際提案し、国際標準化活動に取り組みます。

8 その他

 循環型社会基本法では、政府は、循環型社会の形成に関する施策を実施するために必要な財政上の措置等を講じることとしています。国の各府省の予算のうち、「循環型社会」の形成を推進するための経費は、平成26年度当初予算額で約1,447億6,375万円となっています(表3-2-1)。

 地方公共団体は、循環型社会の形成に関するさまざまな施策を策定・実施する主体です。その施策は当該区域の自然的社会的条件を踏まえて実施されるものであることから、国は、地方公共団体が実施する施策の適切さを確保するために、地方公共団体が施策を実施する際に参考となる基準・指針の設定等、地方公共団体を支援する措置を講じていきます。

 また、地方公共団体が循環型社会の形成に関する施策を講ずるために必要な費用について、交付金、地方公共団体への融資等、必要な財政措置を講じます。

表3-2-1 主な循環型社会形成推進基本法関係予算