環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成26年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第3章>第5節 東日本大震災により生じた災害廃棄物及び放射性物質に汚染された廃棄物の処理

第5節 東日本大震災により生じた災害廃棄物及び放射性物質に汚染された廃棄物の処理

1 災害廃棄物の処理

 平成23年に発生した東日本大震災では、大規模地震に加え、津波の発生により、さまざまな災害廃棄物が混ざり合い、その性状も量もこれまでの災害をはるかに超えた被害が広範囲に発生しました。

 被災した13道県239市町村(福島県の避難区域を除く)において災害廃棄物が約2,000万トン、6県36市町村において津波堆積物が約1,100万トン発生しました。

 被災県内での懸命な処理に加え、広域処理による多くの自治体や民間事業者の協力により着実な処理が推進され、これらの処理は福島県の一部地域を除いて、目標として設定した平成26年3月末までに処理を完了しました。東日本大震災における災害廃棄物等については積極的な再生利用が実施されており、災害廃棄物は約82%、津波堆積物はほぼ全量が再生利用されています。

 福島県については、可燃物の処理について、いわき市を除く4市町から代行処理の要請を受け、国が処理を進めています。相馬市に設置した仮設焼却炉により、新地町の可燃物については焼却が完了、相馬市の大部分の可燃物については平成25年度末に焼却が完了しました。広野町及び南相馬市については、早期に仮設焼却炉を整備し、処理完了を目指します。また、避難区域については、帰還の妨げとなる廃棄物を撤去し、仮置場へ搬入することを最優先目標として着実な処理の推進に全力をあげます。

2 放射性物質に汚染された廃棄物の処理

 平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法(平成23年法律第110号。以下「放射性物質汚染対処特措法」という。)に基づき、事故由来放射性物質による汚染状態が8,000ベクレル/kgを超えるものであって環境大臣が指定した廃棄物(以下「指定廃棄物」という。)と、平成23年12月28日「汚染廃棄物対策地域及び除染特別地域を指定する件」によって指定された福島県の汚染廃棄物対策地域内における災害廃棄物等(以下「対策地域内廃棄物」という。)は国が処理することとなっています。

(1)福島県内

ア 対策地域内廃棄物の処理

 対策地域内廃棄物については、平成24年6月11日に「対策地域内廃棄物処理計画(以下「処理計画」という。)を策定し、これに基づく仮置場の整備や仮置場への廃棄物の搬入を進めてきましたが、これらの処理の進捗を踏まえて、対策地域内廃棄物の量等の見込みや処理計画の目標について見直す必要が生じたこと、また、双葉町を加えた対策地域内のすべての市町村において避難指示区域の見直しが完了したことも踏まえて、処理計画について見直しを行い、平成25年12月26日に改定を行いました。

 対策地域内(帰還困難区域を含まない)における災害廃棄物等の推定量として、当初想定できなかった家の片付けごみ、災害廃棄物の処理の一環としての被災家屋の解体により発生する廃棄物を追加するとともに、処理の実績等を踏まえて精査を行った結果、11市町村合計で約80万2,000トンとなっています。

 対策地域内の災害廃棄物等については、避難されている方々の円滑な帰還を積極的に推進する観点から、避難指示解除準備区域及び居住制限区域において、帰還の妨げとなる廃棄物を速やかに撤去し、仮置場に搬入することを優先目標として進めています。市町村毎にこれらの仮置場への搬入完了目標を定め、平成25年度末時点で、楢葉町、川内村、大熊町の3町村については帰還の妨げとなる廃棄物の仮置場への搬入を一通り完了しました。また、南相馬市についても目標通り、一部を除き搬入しました。仮置場への搬入後の災害廃棄物等の処理については、その発生量や発生の時期、処理施設の立地場所の確保の状況等を踏まえて、各市町村と随時調整を行いつつ、処理のスケジュールを設定します。既にいくつかの市町村で仮設処理施設の設置場所を確保し、建設を進めているところです。

イ 指定廃棄物の処理

 福島県内の指定廃棄物については、8,000ベクレル/kgを超え、10万ベクレル/kg以下のものは既存の管理型処分場、10万ベクレル/kg超のものは中間貯蔵施設に搬入する方針であり、平成25年12月に管理型処分場の活用と中間貯蔵施設の設置について、計画案を提示し、受け入れの要請を行いました。

 この案について、平成26年2月に福島県知事より、配置計画を見直すよう申入れがあったのに対し、3月に管理型最終処分場内に計画していた固形化施設等の設置場所を見直すなどの回答をしました。

 また、下水汚泥や農林業系廃棄物などの指定廃棄物については、保管が長期化すると、腐敗や臭気などのおそれがあることから、性状を安定させ、保管スペースを確保する観点から、焼却等の減容化事業を行っています(表3-5-1)。

表3-5-1 福島県内における指定廃棄物等の減容化事業の例

(2)福島県以外

 福島県以外の指定廃棄物については、既存の廃棄物処理施設の活用について引き続き検討を行いつつ、指定廃棄物が多量に発生し、保管がひっ迫している都道府県においては、国がそれぞれの県内に集約して、必要な最終処分場等を確保する方針です。

 平成25年2月に、自治体との意見交換を重視した候補地の選定プロセスに大幅に見直すという方針を公表し、これまで関係5県(宮城県、茨城県、栃木県、群馬県、千葉県)において市町村長会議を開催するとともに、有識者会議での議論を重ねてきました。平成25年10月の有識者会議では、処分場の候補地を各県で選定するためのベースとなる基本的な案を取りまとめました。

 その後、宮城県、栃木県における選定手法について確定し、候補地の選定作業に入っています。宮城県においては、平成26年1月に、詳細調査を実施する候補地を提示しました。