環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成26年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部>第3章 循環型社会の構築に向けて>第1節 廃棄物等の発生、循環的な利用及び処分の現状

第3章 循環型社会の構築に向けて

第1節 廃棄物等の発生、循環的な利用及び処分の現状

1 我が国の物質フロー

 ここでは、廃棄物・リサイクル対策を中心として循環型社会の形成に向けた、廃棄物等の発生、循環的な利用・処分の状況、国の取組、各主体の取組、国際的な循環型社会の構築について詳細に説明します。

(1)我が国の物質フロー

 循環型社会を構築するためには、私たちがどれだけの資源を採取、消費、廃棄しているかを知ることが第一歩となります。

 また、第3次循環型社会形成推進基本計画(平成25年5月閣議決定。以下「循環型社会基本計画」という。)では、発生抑制、再使用、再生利用、処分等の各対策がバランス良く進展した循環型社会の形成を図るために、この物質フロー(ものの流れ)の異なる断面である「入口」、「循環」、「出口」に関する指標に目標を設定しています。

 以下では、我が国の経済社会におけるものの流れ全体を把握する物質フロー会計(MFA:Material Flow Accounts)を基に、我が国における物質フローの全体像とそこから浮き彫りにされる問題点、循環型社会基本計画で設定した物質フロー指標に関する目標の状況について概観します。

ア 我が国の物質フローの概観

 我が国の物質フロー(平成23年度)を概観すると、15.7億トンの総物質投入量があり、5.1億トンが建物や社会インフラなどとして蓄積されています。また1.8億トンが製品等として輸出され、4.9億トンがエネルギー消費・工業プロセスで排出され、5.6億トンの廃棄物等が発生しているという状況です。このうち循環利用されるのは2.4億トンで、これは総物質投入量の15.3%に当たります(図3-1-1)。

図3-1-1 我が国における物質フロー(平成23年度)

 我が国の物質フローについての詳細は以下のとおりです。

○「総物質投入量」について

 平成23年度の総物質投入量は15.7億トンで、平成12年度の21.4億トンから5.7億トン減少しています。

○「天然資源等投入量」について

 天然資源等投入量とは国産・輸入天然資源及び輸入製品の量を指し、直接物質投入量(DMI:Direct Material Input)とも呼ばれます。

 平成23年度の天然資源等投入量は、国内、輸入をあわせて13.3億トン(5.5億トン(国内分)+7.8億トン(輸入分))と推計されます。これは平成12年度の19.3億トン(11.3億トン(国内分)+8.0億トン(輸入分))から6億トン減少しています。

 天然資源等投入量の減少要因は主に土石系資源投入量の減少によるものが大きく、平成22年度に引き続き景気低迷による大規模公共事業の変動を反映していると考えられ、日本国内に投入される天然資源が大きく減少しています。

 さらに、この天然資源等投入量には、隠れたフロー(資源採取等に伴い目的の資源以外に採取・採掘されるかまたは廃棄物などとして排出される物質)を含んでいません。今後は、隠れたフローや資源採取段階に使用したエネルギー資源等も含む総物質関与量(TMR)を意識しつつ、資源生産性を高め、現在の資源採取の水準をさらに減らしていく必要があります。

イ 我が国の物質フロー指標に関する目標の設定

 第3次循環型社会基本計画では、物資フローの「入口」、「循環」、「出口」に関する3つの指標について新たに目標設定しています。

 それぞれの指標についての目標年次は平成32年度としています。各指標について、最新の達成状況をみると以下のとおりです。

[1]資源生産性(=GDP/天然資源等投入量)

 資源生産性を平成32年度において、46万円/トンとすることを目標としています(平成12年度[約25万円/トン]から概ね6割向上)。なお、平成23年度は約39万円/トンでした(図3-1-2)。ただし、土石系資源を除いた資源生産性については、安定的な上昇は見られないことから(平成12年度約55万円/トン、平成23年度約61万円/トン)、限りある天然資源の消費を抑制し、より効率的な資源利用を行う必要があります。

図3-1-2 資源生産性の推移

[2]循環利用率(=循環利用量/(循環利用量+天然資源等投入量))

 循環利用率を平成32年度において、17%とすることを目標としています(平成12年度[約10%]からおおむね4~5割向上)。なお、平成23年度は約15%であり、順調に推移しています。これは、長期的に見れば循環利用量の増加と天然資源等投入量の減少に起因するものです(図3-1-3)。

図3-1-3 循環利用率の推移

[3]最終処分量(=廃棄物の埋立量)

 最終処分量を平成32年度において、1,700万トンとすることを目標としています(平成12年度[約5,600万トン]からおおむね60%減)。なお、平成23年度は約1,700万トンであり、順調に推移しています(図3-1-4)。

図3-1-4 最終処分量の推移

(2)廃棄物の排出量

ア 廃棄物の区分

 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号。以下「廃棄物処理法」という。)では、廃棄物とは自ら利用したり他人に有償で譲り渡したりすることができないために不要になったものであって、ごみ、粗大ごみ、燃えがら、汚泥、ふん尿などの汚物又は不要物で、固形状又は液状のものをいいます。

 廃棄物は、大きく一般廃棄物と産業廃棄物の2つに区分されています。産業廃棄物は、事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(昭和46年政令第300号)で定められた20種類のものと、廃棄物処理法に規定する「輸入された廃棄物」をいいます。

 一般廃棄物は産業廃棄物以外の廃棄物を指し、し尿のほか主に家庭から発生する家庭系ごみのほか、オフィスや飲食店から発生する事業系ごみも含んでいます(図3-1-5)。

図3-1-5 廃棄物の区分

イ 一般廃棄物(ごみ)の処理の状況

 平成24年度におけるごみの総排出量*1は4,522万トン(前年度比0.5%減)、1人1日当たりのごみ排出量は963グラム(前年度比1.3%減)となっています。

  *1 「ごみ総排出量」=「計画収集量+直接搬入量+集団回収量」

 これらのごみのうち、生活系ごみと事業系ごみの排出割合を見ると、生活系ごみが3,213万トン(約71%)、事業系ごみが1,309万トン(約29%)となっています。

 ごみは、直接あるいは中間処理を行って資源化されるもの、焼却などによって減量化されるもの、処理せずに直接埋め立てられるものに大別されます(図3-1-6)。

図3-1-6 全国のごみ処理のフロー(平成24年度)

 ごみの総処理量のうち、中間処理されるごみは全体の排出量の約94%に当たる3,993万トンとなっています。中間処理施設としては、焼却施設のほか、資源化を行うための施設(資源化施設)、堆肥をつくる施設(高速堆肥化施設)、飼料をつくる施設(飼料化施設)、メタンガスを回収する施設(メタン回収施設)などがあります。中間処理施設に搬入されたごみは、処理の結果、450万トンが再生利用され、直接資源化されたものや集団回収されたものとあわせると、総資源化量は925万トンになります。ごみの総処理量に対する割合(リサイクル率)は、平成2年度の5.3%から平成24年度の20.4%に大きく増加しています。中間処理量のうち、直接焼却されるごみの量は3,399万トン(全体処理量の79.7%:直接焼却率)であり、焼却をはじめとした中間処理によって減量されるごみの量は3,135万トン(全体処理量の73.5%)にもなります。また、焼却施設には、発電施設や熱供給施設などが併設されて、発電や熱利用など有効利用が行われている事例も増加しています。

 一方、直接最終処分される廃棄物、焼却残さ(ばいじんや焼却灰)、焼却以外の中間処理施設の処理残さをあわせたものが最終処分場に埋め立てられる量になります。直接最終処分量は約57万トンで、総排出量の1.2%となっており、また、これに焼却残さと処理残さをあわせた最終処分量の総量は465万トンであり、どちらも年々減少しています。

ウ 一般廃棄物(し尿)の処理の状況

 平成24年度の水洗化人口は1億1,965万人で、そのうち公共下水道人口が9,197万人、浄化槽人口が2,768万人(うち合併処理人口は1,434万人)です。また非水洗化人口は896万人で、そのうち計画収集人口が885万人、自家処理人口が11万人です。

 総人口の約3割(非水洗化人口及び浄化槽人口)から排出されたし尿及び浄化槽汚泥の量(計画処理量)は2,220万kℓで、年々減少しています。そのほとんどは水分ですが、1kℓを1トンに換算して単純にごみの総排出量(4,522万トン)と比較すると、その数値が大きいことが分かります。それらのし尿及び汚泥はし尿処理施設で2,053万kℓ、ごみ堆肥化施設及びメタン化施設で4万kℓ、下水道投入で154万kℓ、農地還元で2万kℓ、そのほかで7万kℓが処理されています。

 なお、下水道終末処理場から下水処理の過程で排出される下水汚泥は産業廃棄物として計上されます。

エ 産業廃棄物の処理の状況

 平成23年度における全国の産業廃棄物の総排出量は約3億8,121万トンとなっています。

 そのうち再生利用量が約2億トン(全体の52%)、中間処理による減量化量が約1億6,877万トン(44%)、最終処分量が約1,244万トン(3%)となっています。再生利用量は、直接再生利用される量と中間処理された後に発生する処理残さのうち再生利用される量を足しあわせた量になります。また、最終処分量は、直接最終処分される量と中間処理後の処理残さのうち処分される量をあわせた量になります(図3-1-7)。

図3-1-7 産業廃棄物の処理の流れ(平成23年)

 産業廃棄物の排出量を業種別に見ると、排出量の最も多い業種が電気・ガス・熱供給・水道業、農業・林業、建設業となっています。この上位3業種で総排出量の約7割を占めています(図3-1-8)。

図3-1-8 産業廃棄物の業種別排出量(平成23年)

 産業廃棄物の排出量を種類別に見ると、汚泥の排出量が最も多く、全体の4割程度を占めています。これに次いで、動物のふん尿、がれき類となっています。これらの上位3種類の排出量が総排出量の8割を占めています。

(3)循環的な利用の現状

ア 容器包装(ガラスびん、ペットボトル、プラスチック製容器包装、紙製容器包装等)

 容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(平成7年法律第112号。以下「容器包装リサイクル法」という。)に基づく分別収集及び再商品化の実績は図3-1-9のとおりです。平成24年度の実施状況で見ると、ガラスびん、ペットボトルについては、9割以上の市町村が分別収集を行っています。

図3-1-9(1) 容器包装リサイクル法に基づく分別収集・再商品化の実績(1)

図3-1-9(2) 容器包装リサイクル法に基づく分別収集・再商品化の実績(2)

(ア)ガラスびん

 ガラスびんの生産量は平成24年で約128.1万トンであり、年々減少する傾向にあります。これは、社会構造の変化や流通構造の変化が要因と考えられます。

 なお、資源の有効な利用の促進に関する法律(平成3年法律第48号。以下「資源有効利用促進法」という。)に基づき、国内で製造されるガラス容器のカレット(ガラスを砕いたもの)利用率を平成27年度までに97%に向上することが目標として定められています。

 ガラスびんは1回限りの利用を前提としてつくられるワンウェイびんと洗浄して繰り返し利用されるリターナブルびんとに分けられます。廃棄されたワンウェイびんは砕かれてカレットになり、新しいびんをつくる場合の原料などとしてリサイクルされています。

 一方、リターナブルびんは、何度も繰り返し利用できるため、一般廃棄物の減量につながる容器であるといえます。

(イ)ペットボトル

 ペットボトル販売量(総重量)は、年々増加する傾向にあります。

 ペットボトルのリサイクルは、平成9年4月から容器包装リサイクル法に基づく市町村による分別収集が開始されて以降、平成9年に9.8%であった回収率(ペットボトル販売量に対する分別収集量の比率(平成21年度まではペットボトル販売量ではなく、ペットボトル用樹脂生産量))は平成24年度には51.3%となっています。また、清涼飲料メーカー、ペットボトル等製造メーカーの団体から構成されるPETボトルリサイクル推進協議会が調査している、市町村以外に主にスーパー等の事業者によって回収された量をあわせると、平成24年度の回収率は90.4%になっています。

 分別収集を実施した市町村数については、平成9年度の631から平成24年度では1,696へと増えてきています。これは全市町村数の97.4%になります。

 また、食品(主に飲料)用として使用したペットボトルを再生し、再び食品用のペットボトルとして使用することを「ボトルtoボトル」と呼びますが、近年、リサイクルの高度化により「ボトルtoボトル」の量が増加しています。

(ウ)プラスチック製容器包装

 プラスチック製容器包装は、平成12年度から容器包装リサイクル法に基づく対象品目となり、市町村による分別収集が始まりました。

 平成24年度の分別収集実績量は、72.7万トンに達し、容器包装リサイクル制度の浸透に伴い分別収集量の増加が進んでいます。なお、平成24年度に分別収集を実施した市町村数は、1,271であり、全市町村数の73.0%となっています。

(エ)紙製容器包装

 紙製容器包装は、プラスチック製容器包装と同様に平成12年度から容器包装リサイクル法に基づく対象品目となり、市町村による分別収集が始まりました。

 平成24年度の分別収集実績量は8.9万トンであり、分別収集を実施した市町村数は612と全市町村数の35.1%にとどまっています。なお、当該数値は紙製容器包装を単独で分別収集している市町村を対象とした集計であり、これとは異なり新聞や雑誌の回収ルートで紙製容器包装をあわせて収集している市町村数・収集量は集計に含まれていません。

(オ)スチール缶

 スチール缶の消費重量は、下降傾向にあり、平成24年度では66.4万トンとなっています。スチール缶リサイクル協会によれば、リサイクル率(消費重量に対する再資源化量(回収され鉄スクラップとして再資源化される量)の割合)は、平成24年には90.8%となっています。

(カ)アルミ缶

 アルミ缶の消費重量は、近年横ばい傾向にあり、平成24年では30.1万トンとなっています。アルミ缶リサイクル協会によると、アルミ缶のリサイクル率(消費重量に対する再生利用重量の割合)は、平成24年で94.7%に達しています。また、回収されたアルミ缶を再びアルミ缶にするいわゆる「CAN TO CAN」の割合は66.7%となっています。

(キ)紙パック

 紙パック(アルミニウムが利用されているものを除く)は、牛乳用、清涼飲料用、酒類用などに使用されています。平成24年度の分別収集実績量は、1.51万トンであり、分別収集を実施した市町村数は1,314で全市町村数の75.1%となっています。

 全国牛乳容器環境協議会によると、平成24年度の飲料用紙パック出荷量は20.4万トンであり、そのうち一般家庭等で18.0万トン、自動販売機、飲食店等で1.2万トン、学校給食で1.2万トン消費されています。

 また、回収量は市町村回収、店頭回収、集団回収をあわせて5.7万トンとなっており、再生用途としては、トイレットペーパー、ティッシュペーパー、板紙などにリサイクルされています。

(ク)段ボール

 段ボールは平成12年度から容器包装リサイクル法に基づく対象品目となり、市町村による分別収集が始まりました。平成24年度の分別収集実績量は、60.5万トンとなっています。

 また、分別収集を実施した市町村数は1,558で全市町村数の89.4%となっており、同じ時期に容器包装リサイクル法に基づく対象品目となったプラスチック製容器包装や紙製容器包装と比較するとかなり多くなっています。

 平成24年の段ボール原紙の消費量は820.2万トンあり、段ボール古紙の回収量は1,014万トンで、回収率(段ボール原紙のメーカー消費量に対する段ボール古紙回収量の割合)は123.6%となっています。ただし、平成24年度は約155万トンの輸入超過と推計されるため、これを加味するとリサイクル率(段ボール原紙の消費量に輸出入分を調整したものに対する段ボール古紙の回収量の割合)は約98%になります。

イ プラスチック類

 プラスチックは加工のしやすさ、用途の多様さから非常に多くの製品として利用されています。

 プラスチック循環利用協会によると、平成24年におけるプラスチックの生産量は、1,054万トンと推定され、国内消費量は960万トンとなっています。排出量に対する有効利用率は一般廃棄物が約78%、産業廃棄物が約82%、リサイクルされていないものについては、一般廃棄物の単純焼却が約15%、埋立処理が約7%、産業廃棄物の単純焼却が約6%、埋立処理が約12%と推計されています。

ウ 家電製品

 家庭用エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫及び洗濯機・衣類乾燥機の4品目については、リサイクルをする必要性が特に高いことから、平成13年4月に本格施行された特定家庭用機器再商品化法(平成10年法律第97号。以下「家電リサイクル法」という。)に基づき、特定家庭用機器廃棄物として規定され、製造業者等に一定の水準以上の再商品化が義務付けられています。

 具体的には、製造業者等に対して廃家電4品目の再商品化を義務付け、再商品化率(サーマルリカバリーを含まない)を、家庭用エアコン70%以上、ブラウン管テレビ55%以上、液晶・プラズマテレビ50%以上、冷蔵庫・冷凍庫60%以上、洗濯機・衣類乾燥機65%以上と定めて、リサイクルを推進しています。平成24年度に全国の指定引取場所において引き取られた廃家電4品目は、前年度比約33.4%減の合計約1,120万台でした。これは、エアコン、電気冷蔵庫・電気冷凍庫、テレビについては、エコポイント制度の終了により購入が手控えられたためです(図3-1-10)。

図3-1-10 全国の指定引取場所における廃家電の引取台数

 平成24年度における製造業者等の再商品化率は、家庭用エアコン91%、ブラウン管テレビ82%、液晶・プラズマテレビ87%、冷蔵庫・冷凍庫80%、洗濯機・衣類乾燥機86%であり、いずれも法定の基準を上回っています。

エ 建設廃棄物等

 建設廃棄物は、産業廃棄物の排出量の約2割、不法投棄量の約8割を占めています。中でも建築物解体による廃棄物については、昭和40年代以降に急増した建築物が更新期を迎えており、今後とも発生量が増加することが予想されています。

 また、建設廃棄物の排出量のうち、建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(平成12年法律第104号。以下「建設リサイクル法」という。)で一定規模以上の工事について再資源化等が義務付けられているコンクリート塊、アスファルト・コンクリート塊及び建設発生木材が占める割合が約8割であるため、その3品目の再資源化をまず実施することが必要です(図3-1-11)。

図3-1-11 建設廃棄物の種類別排出量

 コンクリート塊及びアスファルト・コンクリート塊については、平成24年度の実績でいずれも建設リサイクル法基本方針の平成22年度目標である再資源化率95%を維持しています。

 また、建設発生木材については、平成24年度の実績で再資源化等(再資源化及び縮減)率が94.4%であり、平成22年度目標である95%の達成に向け、引き続き再資源化等率の向上を図っています。建設汚泥については、平成24年度の実績で「建設リサイクル推進計画2008」の平成24年度目標である再資源化等率82%に達していますが、他の品目と比較して再資源化等率が低いことから引き続き建設汚泥の有効利用を促進しています。

 建設工事現場から場外に搬出された建設発生土の利用率は平成24年度の実績88.3%と「建設リサイクル推進計画2008」で定めた平成24年度の目標値87%に達していますが、他の品目と比較して利用率がやや低いことから引き続きさらなる工事間利用の推進に向けて、各種の取組を進めています。

オ 食品廃棄物

 食品廃棄物は、食品の製造、流通、消費の各段階で生ずる動植物性残さ等であり、具体的には加工食品の製造過程や流通過程で生ずる売れ残り食品、消費段階での食べ残し・調理くず等です。

 これら食品廃棄物は、食品製造業から発生するもの等は産業廃棄物に、一般家庭、食品流通業及び飲食店業等から発生するものは主に一般廃棄物に区分され、平成23年度において前者が275万トン、後者が1,453万トン(うち一般家庭から発生するもの1,014万トン)、あわせて1,728万トンが排出されています(表3-1-1)。

表3-1-1 食品廃棄物の発生及び処理状況(平成22年度)

 食品製造業から発生する食品廃棄物は、必要量の確保が容易なこと及びその組成が一定していることから比較的再生利用がしやすく、飼料化が167万トン(61%)、肥料化が37万トン(13%)、その他が15万トン(5%)で合計220万トン(80%)が再生利用されています。

 また、食品流通業及び飲食店業等から発生する食品廃棄物(事業系一般廃棄物)は、飼料化が40万トン(9%)、肥料化が41万トン(9%)、その他が35万トン(8%)で合計115万トン(26%)が再生利用されています。

 一方、一般家庭から発生する食品廃棄物(家庭系一般廃棄物)は、多数の場所から少量ずつ排出され、かつ組成も複雑であることから、62万トン(6%)が再生利用されているにすぎません。

 これらの結果、食品廃棄物全体では、397万トン(23%)が肥料・飼料等に再生利用され、残りの1,332万トン(77%)は焼却・埋立処分されています。

 食品廃棄物を含む廃棄物系バイオマスは、飼料・肥料などへの再生利用や熱・電気に転換するエネルギー利用の可能性があり、循環型社会及び低炭素社会の実現を目指すため、その利活用をさらに推進しています。

カ 自動車

(ア)自動車

 使用済みとなる自動車は、自動車リサイクル法に基づき、最初に自動車販売業者等の引取業者からフロン類回収業者に渡り、カーエアコンで使用されているフロン類が回収されます。その後、自動車解体業者に渡り、そこでエンジン、ドア等の有用な部品、部材が回収されます。さらに残った廃車スクラップは、破砕業者に渡り、そこで鉄等の有用な金属が回収され、その際発生する破砕残さ(シュレッダーダスト)が、主に廃棄物として処理されています(図3-1-12)。自動車については、平成24年度において341万台が自動車リサイクル法に基づきリサイクルされており、1台当たりの重量比で、20~30%程度が解体業者によって有用部品として回収(部品リユース)され、50~55%程度が素材としてリサイクル(マテリアルリサイクル)されています。

図3-1-12 使用済自動車処理のフロー(平成24年度)

 また、平成17年10月から、使用済自動車の引渡しに支障が生じている離島市町村に対して、特定再資源化預託金等を用いた支援事業を開始しており、平成25年度には88市町村の2.2万台に対して資金出えんがされました。

(イ)タイヤ

 (一社)日本自動車タイヤ協会によれば、平成25年における廃タイヤの排出量102.1万トン(平成24年101.0万トン)のうち、輸出、更生タイヤ台用、再生ゴム・ゴム粉などとして、32.1万トン(平成24年30.8万トン)が原形・加工利用され、57.8万トン(平成24年57.4万トン)が製錬・セメント焼成用、発電用などとして利用されています。

 廃タイヤについては有価物と不要物の区別が困難であるため、有価物と偽って不適切に野積みされ、火災等の問題を引き起こしている事案も発生しています。このため、環境省では、使用済タイヤを有価物であると称して野積みする事案について、厳正に対処するよう都道府県に通知しています。

キ パーソナルコンピュータ及びその周辺機器

 資源有効利用促進法では、平成13年4月から事業系パソコン、平成15年10月から家庭系パソコンの再資源化を製造等事業者に対して義務付け、再資源化率を、デスクトップパソコン(本体)50%以上、ノートブックパソコン20%以上、ブラウン管式表示装置55%以上、液晶式表示装置55%以上と定めてリサイクルを推進しています。

 平成24年度における自主回収実績はデスクトップパソコン(本体)約19万台、ノートブックパソコン約20万台、ブラウン管式表示装置約5万台、液晶式表示装置約18万台となっています。また、製造等事業者の再資源化率は、デスクトップパソコン(本体)77.8%、ノートブックパソコン59.4%、ブラウン管式表示装置71.6%、液晶式表示装置72.6%であり、いずれも法定の基準を上回っています。

 なお、これ以外の回収ルートとして、リース・レンタル会社、販売店及び販売会社を経由し又は直接に廃棄物処理業者に引き取られるか、地方公共団体において回収・処理されているものもあります。加えて、平成25年4月から施行された小型家電リサイクル法では、パソコン及びその周辺機器についても対象としています。

ク 小形二次電池(ニカド蓄電池、ニッケル水素蓄電池、リチウム蓄電池、密閉形鉛蓄電池)

 小形二次電池には、主な材料としてニッケルやカドミウム、コバルト、鉛など希少な資源が使われており、小形二次電池のリサイクルは大きな効果を持っています。

 資源有効利用促進法では、平成13年4月から小形二次電池の再資源化を製造等事業者に対して求め、再資源化率を、ニカド電池60%以上、ニッケル水素電池55%以上、リチウム蓄電池30%以上、密閉型鉛蓄電池50%以上と定めて、リサイクルの一層の推進を図っています。

 平成24年度における小形二次電池(携帯電話・PHS用のものを含む)に係るリサイクルの状況は、ニカド蓄電池の処理量764トン、再資源化率72.6%、ニッケル水素蓄電池の処理量198トン、再資源化率76.6%、リチウム蓄電池の処理量312トン、再資源化率61.1%、密閉型鉛蓄電池の処理量1,504トン、再資源化率50.0%であり、再資源化率の実績は、いずれも法令上の目標を達成しています。

ケ 小型電子機器等

 使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律(平成24年法律第57号)は、平成25年4月から施行されました。本法律では、使用済小型電子機器等に利用されている金属等の大部分が回収されずに廃棄されている状況を踏まえ、使用済小型電子機器等の再資源化を促進するための措置を講じることによって、廃棄物の適正な処理及び資源の有効な利用の確保を図るものです。本法律の基本方針では、平成27年までに、年間14万トン、国民1人当たり年間1kgの使用済小型電子機器等を回収することが目標として定められています。

コ 下水汚泥

 下水道事業において発生する汚泥(下水汚泥)は、近年は減少傾向にあります(図3-1-13)。平成23年度現在、全産業廃棄物の発生量の2割近くを占める約7,479万トン(対前年度約8万トン増、濃縮汚泥量として算出)が発生していますが、最終処分場に搬入される量は48万トン(対前年度比約13万トン増)であり、脱水、焼却等の中間処理による減量化や再生利用により、最終処分量の減量化を推進しています。なお、平成23年度において、下水汚泥の有効利用率は、東日本大震災の影響により埋立処分や場内ストックが増えたため、乾燥重量ベースで55%となっています。

図3-1-13 年度別下水汚泥発生量の推移

 下水汚泥の再生利用はセメント原料などの建設資材利用が大半を占めるものの、有機物に富んでいる下水汚泥の性質に着目した緑農地利用やエネルギー利用など利用形態は多岐にわたっています。

 平成23年度には乾燥重量ベースで122万トンが再生利用され、用途としては、セメント原料(51万トン)、レンガ、ブロック等の建設資材(32万トン)、肥料等の緑農地利用(33万トン)、固形燃料(2万トン)などに利用されています。

2 一般廃棄物

(1)一般廃棄物(ごみ)

ア ごみの排出量の推移

 ごみの総排出量及び1人1日当たりの排出量は経済成長に伴い、昭和60年度前後から急激に増加し、平成2年度からは横ばいないし微増傾向が続いていますが、基本方針でベースラインとしている平成9年度5,310万トンを8年連続で下まわりました(図3-1-14)。

図3-1-14 ごみ総排出量と1人1日当たりごみ排出量の推移

イ ごみ処理方法

 ごみ処理方法を見ると、直接資源化及び資源化等の中間処理の割合は平成24年度は18.9%となっています。また、直接最終処分されるごみの割合は着実に減少しており、平成24年度は1.3%となっています。

ウ ごみ処理事業費

 平成24年度におけるごみ処理に係る経費の総額は、1兆7,884億円であり、国民1人当たりに換算すると、1万3,900円となり、前年度からほぼ横ばいです。

(2)一般廃棄物(し尿)

ア し尿処理の推移

 し尿処理人口の推移を見ると、浄化槽人口がほぼ横ばいの推移であるのに対し、公共下水道人口(平成24年度実績9,197万人)の増加により、これらをあわせた水洗化人口(平成24年度実績1億1,965万人)は年々増加しています(図3-1-15)。

図3-1-15 し尿処理形態別人口の推移

 平成24年度末の浄化槽の設置基数は776万基(平成23年度782万基)で、前年度と比べて約6万基の減少となっています。内訳を見ると、合併処理浄化槽(し尿と生活雑排水の処理)が328万基(平成23年度314万基)と増加しているのに対し、単独処理浄化槽(し尿のみの処理)が453万基(平成23年度467万基)と大きく減少しており、その結果、合併処理浄化槽の割合は42%(平成23年度40%)に上昇しています。国庫補助制度の充実等により合併処理浄化槽の整備が進む一方、浄化槽法(昭和58年法律第43号)の平成12年の改正によって単独処理浄化槽の新設が原則として禁止され、合併処理浄化槽への設置替えや下水道等の整備により、単独処理浄化槽の廃止が進んでいることが影響しているものと考えられます。

イ し尿及び浄化槽汚泥の処理状況の推移

 平成24年度の実績では、し尿及び浄化槽汚泥2,220万kLはし尿処理施設又は下水道投入によって、その99.4%(2,207万kℓ)が処理されています。

 また、し尿等の海洋投入処分については、廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令の改正により、平成19年2月より禁止されました。

3 産業廃棄物

(1)産業廃棄物の発生及び処理の状況

ア 産業廃棄物の排出量の推移

 平成2年度以降の産業廃棄物の排出量の状況を見ると、4億トン前後で大きな変化はなく、ほぼ横ばいとなっています(図3-1-16)。

図3-1-16 産業廃棄物の排出量の推移

イ 産業廃棄物の中間処理施設数の推移

 産業廃棄物の焼却、破砕、脱水等を行う中間処理施設の許可施設数は、平成23年度末で1万8,880施設となっており、前年度との比較では1.4%の減少となっています。中間処理施設のうち汚泥の脱水施設が17.0%、木くず又はがれき類の破砕施設が50.1%、廃プラスチック類の破砕施設が9.5%を占めています。

ウ 産業廃棄物処理施設の新規許可件数の推移(焼却施設、最終処分場)

 産業廃棄物処理施設に係る新規の許可件数は、焼却施設、最終処分場ともに、廃棄物処理施設に係る規制の見直し等を行った平成9年の廃棄物処理法の改正以降激減しています(図3-1-17図3-1-18)。

図3-1-17 焼却施設の新規許可件数の推移(産業廃棄物)

図3-1-18 最終処分場の新規許可件数の推移(産業廃棄物)

(2)大都市圏における廃棄物の広域移動

 首都圏などの大都市圏では、土地利用の高度化や環境問題等に起因して、焼却炉などの中間処理施設や最終処分場を確保することが難しくなっています。そのため、廃棄物をその地域の中で処理することが難しく、一般廃棄物も産業廃棄物も、その多くが都府県域を越えて運搬され処分されています。

 廃棄物の広域移動は、廃棄物を受け入れている地域で廃棄物が不法投棄されたり、それによる環境汚染が引き起こされたりした場合に、ほかの地域で発生した廃棄物を搬入することそのものに対する不安感や不公平感と相まって、周辺地域とのあつれきを誘因し、廃棄物の受入制限が進む結果となるとの懸念が広がっています。

4 廃棄物関連情報

(1)最終処分場の状況

ア 一般廃棄物

(ア)最終処分の状況

 平成24年度における最終処分量(直接最終処分量と中間処理後に最終処分された量との合計)は465万トン、1人1日当たりの最終処分量は99gであり、減少傾向が継続しています(図3-1-19)。

図3-1-19 最終処分量と1人1日当たり最終処分量の推移

(イ)最終処分場の残余年数と残余容量

 平成24年度末現在、最終処分場は1,741施設、残余容量は1億1,201万m3であり、残余年数は、全国平均で19.7年分となっています(図3-1-20)。

図3-1-20 最終処分場の残余容量及び残余年数の推移(一般廃棄物)

(ウ)最終処分場のない市町村

 平成24年度末現在、全国1,742市区町村のうち、当該市区町村として最終処分場を有しておらず、民間の最終処分場に埋立てを委託している市区町村数(ただし、最終処分場を有していない場合であっても大阪湾フェニックス計画対象地域の市区町村は最終処分場を有しているものとして計上)は307市町村となっています。

(エ)今後の取組

 最終処分場等の廃棄物処理施設は、いわゆる迷惑施設であることから、新たな立地は困難な状況にありますが、中でも最終処分場の確保は市町村単位では難しいケースが見られます。こうした状況から、広域的に最終処分場を確保する取組がすでに始まっていますが、今後は、単に用地の確保が難しいからほかの地域に確保するといった発想ではなく、管理すべき施設の数を減らし、確実かつ高度な環境保全対策を実施した上で、廃棄物のリデュースや適正な循環的利用を徹底した後の最後の受け皿として、広域的に最終処分場の整備を進めていく必要があります。

 こうした循環型社会の形成のために必要なごみ処理施設の整備は、市町村において廃棄物の3Rに関する明確な目標を設定した上で、その実施に向けた総合的な施策を内容とする計画を策定して進めていく必要があります。

イ 産業廃棄物

 平成23年度末の産業廃棄物の最終処分場の残余容量は1億8,606万m3で前年より846万m3減少しました。また、残余年数は全国平均で14.9年分であり、徐々に改善は図られているものの、首都圏の残余年数は5.3年分であり、特に大都市圏において残余容量が少なくなっています(図3-1-21)。

図3-1-21 最終処分場の残余容量及び残余年数の推移(産業廃棄物)

 産業廃棄物の最終処分場は、民間事業者による整備を基本としつつ、これらの整備状況を踏まえ、必要と認められる容量を公共関与による施設整備で確保することも進めていく必要があります。

(2)ごみ焼却施設における熱回収の取組

ア ごみの焼却余熱利用

 ごみ焼却施設からの余熱を温水や蒸気、発電などで有効利用している施設の割合は、全国で約7割です(図3-1-22)。具体的な利用方法としては、後述するごみ発電をはじめ、施設内の暖房・給湯での利用や、施設外での利用として温水プール、老人福祉施設等社会福祉施設への温水・熱供給、地域暖房への供給等があります。

図3-1-22 ごみ焼却施設における余熱利用の状況(平成24年度)

 余熱利用の目的を見ると、清掃工場で使用する資源エネルギーの節約、地域還元が大きな割合を占めています。

 このような施設内外での余熱利用は、低炭素社会の取組への貢献を図る観点からもさらに推進していく必要があることから、平成22年の廃棄物処理法改正に伴い廃棄物熱回収施設設置者認定制度が創設されました。

イ ごみ発電

 ごみ発電とは、ごみを焼却する時に発生する高温の排出ガスのもつ熱エネルギーをボイラーで回収し、蒸気を発生させてタービンを回して発電を行うもので、ごみ焼却施設の余熱利用の有効な方法の一つです。

 平成24年度末において、稼働中又は建設中のごみ焼却施設のうち、発電を行っている又は行う予定の施設は317に上ります(表3-1-2)。また、大規模な施設ほどごみ発電を行っている割合が高いため、ごみ発電を行っている割合は施設数ベースでは26.6%ですが、ごみ処理能力ベースでは約61.3%となっています。その総発電量は、約77億kWhであり、1世帯当たりの年間電力消費量を3,400kWhとして計算すると、この発電は約226万世帯の消費電力に匹敵します。また、ごみ発電を行った電力を場外でも利用している施設数は195施設となっています。

表3-1-2 ごみ焼発電施設数と発電能力(平成24年度)

 ごみ発電による発電効率の平均は約11.9%ですが、0.7%から35%程度と施設により差があります。最近では、効率の高い発電施設の導入が進んできていますが、現状では、発電とその他の余熱利用をあわせても、燃焼によって発生する熱量の4分の3程度が無駄に失われています。発電後の低温の温水を地域冷暖房システムに有効利用する事例もあり、こうした試みをさらに拡大していくためには、熱供給・熱利用双方の連携による施設整備が有効です。

ウ RDF(ごみ固形燃料)

 RDF(Refuse Derived Fuel:ごみ固形燃料)は、通常のごみと比較して、腐敗性が少なく、比較的長期の保管が可能であること、減容化、減量化されるため、運搬が容易であること、形状、発熱量がほぼ一定となるため安定した燃焼が可能であること等の特徴を有しています。

 循環型社会における廃棄物処理の優先順位を踏まえつつ、性状に応じた利用先を確保することが可能であれば、RDFを利用していくことも有効であるといえます。

(3)不法投棄等の現状

ア 平成24年度に新たに判明した産業廃棄物の不法投棄等の事案

(ア)不法投棄等の件数及び量

 平成24年度に新たに判明したと報告のあった産業廃棄物の不法投棄又は不適正処理(以下「不法投棄等」という。)の事案は、不法投棄事案が187件、4.4万トン、不適正処理事案が179件、11.3万トンでした(図3-1-23図3-1-24)。

図3-1-23 産業廃棄物の不法投棄件数及び投棄量の推移

図3-1-24 産業廃棄物の不適正処理件数及び不適正処理量の推移

 また、平成24年度に新たに判明したと報告のあった5,000トン以上の大規模な不適正処理事案は5件でした。なお、平成24年度に新たに判明した5,000トン以上の大規模な不法投棄事案の報告はありませんでした。

(イ)不法投棄等をされた産業廃棄物

 平成24年度に新たに判明したと報告のあった不法投棄等のうち、がれき類、木くず(建設系)などの建設系廃棄物が占める割合について見ると、不法投棄については件数の約76.5%(143件)、不法投棄量の約75.3%(3.3万トン)を占めています。不適正処理については建設系廃棄物が件数の約72.1%(129件)を占め、不適正処理量の約87.7%(9.9万トン)を占めています(図3-1-25)。

図3-1-25 不法投棄された産業廃棄物の種類(平成24年度)

(ウ)不法投棄等の実行者

 平成24年度に新たに判明したと報告のあった不法投棄等事案の実行者の内訳は、不法投棄件数で見ると、排出事業者によるものが全体の約56.1%(105件)で、実行者不明のものが約23%(43件)、許可業者によるものが約5.9%(11件)、複数によるものが約5.3%(10件)となっています。不法投棄量で見ると、排出事業者によるものが約51.3%(2.2万トン)で、許可業者によるものが約23.3%(1.0万トン)、無許可業者によるものが約12.4%(0.5万トン)、実行者不明のものが5.6%(0.2万トン)、複数によるものが5.5%(0.2万トン)でした。また、不適正処理件数で見ると、排出事業者によるものが全体の約72.6%(130件)で、許可業者によるものが約8.4%(15件)、複数によるものが約6.7%(12件)、実行者不明が約4.5%(8件)、無許可業者によるものが約2.2%(4件)となっています。不適正処理量で見ると、許可業者によるものが約33.5%(3.8万トン)、複数によるものが32%(3.6万トン)で、排出事業者によるものが約30%(3.4万トン)、無許可業者によるものが1.6%(0.2万トン)、実行者不明のものが約1.3%(0.2万トン)でした。

(エ)支障除去等の状況

 平成24年度に新たに判明したと報告のあった不法投棄事案(187件、4.4万トン)のうち、現に支障が生じていると報告されたものは1件で、既に支障除去措置等に着手しています。現に支障のおそれがあると報告された事案(5件)については、今後の対応として、4件が支障のおそれの防止措置(うち、2件は措置完了済み)、1件が状況確認のための定期的な立入検査を実施するとされています。その他、支障等調査中と報告された事案(6件)については、既に、支障等の状況を明確にするための確認調査に着手しています。

 また、平成24年度に新たに判明したと報告のあった不適正処理事案のうち、現に支障が生じていると報告されたものは3件で、既に支障除去措置等に着手しています。現に支障のおそれがあると報告された事案(6件)については、今後の対応として、4件が支障のおそれの防止措置、1件が撤去指導、改善命令等、1件が状況確認のための定期的な立入検査を実施するとされています。

イ 平成24年度末時点で残存している産業廃棄物の不法投棄等事案

 都道府県及び廃棄物処理法上の政令市が把握している平成25年3月31日時点における産業廃棄物の不法投棄等事案の残存件数は2,567件、残存量の合計は1,777万トンでした。

 このうち、現に支障が生じていると報告されている事案(17件)については、今後の対応として、すべて支障除去措置を実施するとされており、いずれも現時点では原因者等又は行政による支障除去措置が着手されています。現に支障のおそれがあると報告されている事案(106件)については、今後の対応として、23件が支障のおそれの防止措置、23件が周辺環境モニタリング、60件が状況確認のための立入検査を実施するとされています。その他、現在支障等調査中と報告された事案(36件)については、いずれも支障等の状況を明確にするための確認調査に着手又は次年度中に着手予定とされています。また、現時点では支障等がないと報告された事案(2,408件)についても、必要に応じて、改善指導、定期的な立入検査や監視等が実施されています。

 注:(3)の調査は、環境省が、都道府県及び廃棄物処理法上の政令市の協力を得て毎年度取りまとめているものです。

(4)特別管理廃棄物

ア 概要

 廃棄物のうち爆発性、毒性、感染性その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有するものを特別管理廃棄物(特別管理一般廃棄物又は特別管理産業廃棄物)として指定しています。その処理に当たっては、特別管理廃棄物の種類に応じた特別な処理基準を設けることなどにより、適正な処理を確保しています。また、その処理を委託する場合は、特別管理廃棄物の処理業の許可を有する業者に委託することとなります。

イ 特別管理廃棄物の対象物

 これまでに、表3-1-3に示すものを特別管理廃棄物として指定しています。

表3-1-3 特別管理廃棄物

(5)石綿の処理対策

ア 産業廃棄物

 石綿による健康等に係る被害の防止のための大気汚染防止法等の一部を改正する法律(平成18年法律第5号)が平成19年4月に完全施行され、石綿含有廃棄物の安全かつ迅速な処理を国が進めていくため、溶融などの高度な技術により無害化処理を行う者について環境大臣が認定した場合、都道府県知事等による業や施設設置の許可を不要とする制度(無害化処理認定制度)がスタートしています。また、平成22年の廃棄物処理法施行令の改正により、特別管理産業廃棄物である廃石綿等の埋立処分基準が強化されました。

イ 一般廃棄物

 アイロン、トースター、ドライヤーなど、石綿を含む家庭用品が廃棄物となったものについては、市町村に対し、ほかのごみと区別して排出し、破損しないよう回収するとともにできるだけ破砕せず、散水や速やかな覆土により最終処分するよう、また、保管する際はほかの廃棄物と区別するよう要請しています。

 また、永続的な措置として、専門家の意見を聞きつつ、石綿含有家庭用品が廃棄物となった場合の処理についての技術的指針を定め、市町村に示し、適正な処理が行われるよう要請しています。

(6)ポリ塩化ビフェニル(PCB)廃棄物の処理体制の構築

ア 全国的なPCB廃棄物処理体制の構築

 国は、日本環境安全事業株式会社を活用して、PCBを使用した高圧トランス・コンデンサ等を全国5か所(北九州、豊田、東京、大阪、北海道室蘭)の拠点的広域処理施設において処理する体制を整備し、処理が進められています。また、PCB汚染物等(安定器、感圧複写紙等)の処理については、平成21年に北九州で処理が開始され、平成25年9月には北海道室蘭において処理が開始されました。

 また、環境省は都道府県と連携し、費用負担能力の小さい中小企業者等による処理を円滑に進めるための助成等を行う基金(PCB廃棄物処理基金)を造成しています。

イ 微量PCB汚染廃電気機器等の処理方策

 微量PCB汚染廃電気機器等の民間による処理体制の整備を検討するため、平成17年度から焼却実証試験を実施しており、試験対象となったPCB廃棄物が安全かつ確実に処理出来ることが確認されています。この実証試験の結果等を踏まえ、平成21年11月に関係する告示を改正し、廃棄物処理法における無害化処理に係る特例制度の対象に微量PCB汚染廃電気機器等を追加し、平成25年度末までに8事業者が認定され、処理が進められています。

ウ 法の施行状況に関する検討

 「PCB廃棄物適正処理推進に関する検討委員会」の報告書「今後のPCB廃棄物の適正処理推進について」(平成24年8月)を踏まえ、平成24年12月にPCB特措法第10条に基づくPCB廃棄物の処分の期間が改正され、新たに平成39年3月31日までとされました。また、ポリ塩化ビフェニル廃棄物処理基本計画の変更に向けた検討を行いました(表3-1-4表3-1-5)。

表3-1-4 PCB廃棄物の保管状況(平成23年3月31日現在)

表3-1-5 PCB 廃棄物を保管する事業所におけるPCB 使用製品の使用状況(平成23年3月31日現在)

(7)ダイオキシン類の排出抑制

 ダイオキシン類は、ものの燃焼の過程等で自然に生成する物質(副生成物)であり、ダイオキシン類の約200種のうち、29種類に毒性があるとみなされています。

 ダイオキシン類の現在の発生源は製鋼用電気炉、たばこの煙、自動車排出ガスなどのさまざまな発生源がありますが、主な発生源はごみ焼却による燃焼です。

 昭和58年11月に都市ごみ焼却炉の灰からダイオキシン類を検出したと新聞紙上で報じられたことが契機となって、ダイオキシン問題に大きな関心が向けられるようになりました。

 廃棄物処理におけるダイオキシン問題については、早期から検討が行われており、平成9年1月に厚生省が取りまとめた「ごみ処理に係るダイオキシン類発生防止等ガイドライン」(新ガイドライン)や、平成9年8月の廃棄物処理法施行令及び同法施行規則の改正で位置づけられた新たな構造基準・維持管理基準などに基づき、対策が取られてきました。環境庁でも、ダイオキシン類を大気汚染防止法(昭和43年法律第97号)の指定物質として法的規制をかけることとし、平成9年12月から焼却炉及び製鋼用の電気炉からの排ガス基準が定められ、ダイオキシン類の排出が法律で規制されることとなりました。

 さらに、平成11年3月に策定された「ダイオキシン対策推進基本指針」及び平成11年に成立したダイオキシン類対策特別措置法(平成11年法律第105号。以下「ダイオキシン法」という。)の2つの枠組みにより、ダイオキシン類対策が進められました(詳細は第5章を参照)。平成24年における削減目標の設定対象に係るダイオキシン類の排出総量は、ダイオキシン法に基づく国の削減計画における削減目標量(平成23年以降の当面の間において達成すべき目標量)を下回っており、目標達成が確認されました(表3-1-6)。

表3-1-6 我が国におけるダイオキシン類の事業分野別の推計排出量及び削減目標量

 また、平成23年の廃棄物焼却施設からのダイオキシン類排出量は平成9年から約99%減少しました。これは、規制強化や基準適合施設の整備に係る支援措置等によって、排出基準やその他の構造・維持管理基準に対応できない焼却施設の中には休・廃止する施設が多数あること、基準に適合した施設の新設整備が進められていることが背景にあるものと考えられます。なお、ダイオキシン法に基づいて定められた大気の環境基準の平成24年度の達成率は100%であり、すべての地点で環境基準を達成しています。

(8)その他の有害廃棄物対策

 感染性廃棄物については「廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル」を平成24年5月に改訂し、周知を行っています。また、水銀や残留性有機汚染物質(POPs)等の有害特性を有する化学物質を含む廃棄物について、国際的動向に対応し、適切な処理方策について検討を進め、平成22年9月にPFOS含有廃棄物の処理に関する技術的留意事項を取りまとめ平成23年3月に改訂し、周知を行いました。

 さらに、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和32年法律第166号)及び放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(昭和32年法律第167号)に基づき排出されるもののうち、放射線防護の安全上問題がないクリアランスレベル以下の廃棄物について、情報管理システムを稼働させ、トレーサビリティの確保に努めています。

(9)有害廃棄物の越境移動

 有害廃棄物の越境移動に起因する環境汚染等の問題に対処するために採択された「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」(以下「バーゼル条約」という。締約国は平成26年1月現在179か国及びEU)を受け、我が国は特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律(平成4年法律第108号。以下「バーゼル法」という。)を制定し、また国内処理が原則となっている廃棄物についても、廃棄物処理法により輸出入規制を行い、これらの法律により有害廃棄物等の輸出入の厳正な管理を行っています。平成25年のバーゼル法に基づく輸出入の状況は表3-1-7のとおりです(廃棄物の輸出入については第2節を参照)。

表3-1-7 バーゼル法に基づく輸出入の状況(平成25年)

 近年は、経済活動のグローバル化やアジア各国の急速な経済成長による資源需要の増大を背景に、リサイクルを目的とした循環資源の国際移動も活発化しています。こうした中で、廃棄物等の不適正な輸出入が懸念されることから、これを未然に防止するために国内の関係機関や各国の政府機関と連携して対策を講じています(各国政府機関との連携については第4節を参照)。

 国内においては、関係省庁と連携し、有害廃棄物等の輸出入に係る事前相談や立入検査などの現場対応、輸出入事業者等を対象としたバーゼル法等に関する説明会の開催(平成25年度は全国11か所)、税関との意見交換会、各国の輸出入規制情報のウェブサイトへの掲載等を行っています。また、昨年に引き続き、平成25年10月には、「リデュース・リユース・リサイクル(3R)推進月間」の活動の一環として、税関の協力の下、地方環境事務所において有害廃棄物等の不法輸出入の監視強化のための取組を行いました。

 また、部品、金属等の有用資源を抜き取ることを目的として、中古利用目的であると偽装して使用済家電製品等が輸出される例が指摘されていることから、中古利用目的の輸出であることを客観的に判断できる基準を明確化し、中古利用目的であることの証明を容易にすることを目的として「使用済み電気・電子機器の輸出時における中古品判断基準」を平成26年4月1日から適用しました。また、雑品スクラップに混入した使用済小型電子機器等に関する対策として、有害特性分析手法の検討を開始しました。

 また、途上国では適正処理が困難であるものの、我が国では処理可能な自社等の国外廃棄物を、対応能力の範囲内で受け入れて適正に処理する取組を推進するため、国内において処理することにつき相当の理由があると認められる場合に限り、国外廃棄物の処分を産業廃棄物処分業者等に委託して行う者も、廃棄物を輸入できるようになっています。