環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成25年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第1部>むすび

むすび

真に豊かな社会を子供達へ

~震災復興の中でともに考える持続可能な未来~


 東日本大震災が発生してから、本年6月で2年3ヶ月が経過しました。我が国観測史上最大の地震と津波は、私たちが長い時間をかけて築いてきた地域の社会基盤を一瞬にして崩壊させ、多くの尊い人命を奪いました。また、東京電力福島第一原子力発電所の事故は、大量の放射性物質を自然界に拡散させ、多くの人々がいまだに避難を余儀なくされています。

 少しでも早くこのような状況から脱し、安心して生活できる環境を取り戻すことが、今を生きる私たちの喫緊の課題です。私たちは全力で震災からの復旧・復興に取り組まなければなりませんが、その結果作り上げられる社会は、かつて存在したそれと全く同一のものなのでしょうか。

 これまで私たちが目指してきた社会は、地球に存在する有限な天然資源を採取し、エネルギーや製品の形にしてこれを消費し、便利な生活を享受しようとするものでした。しかしそれは一方で、地球環境に負荷をかけ続けるものであり、そのような社会のあり方は持続し続けられるものではないことがわかってきました。1970年代の二度のオイル・ショックと軌を一にして、それまでの社会のあり方に対して警鐘を鳴らす動きも出始めました。人々の意識も徐々に変化し、多くの人々が自然環境や生活環境にも目を向けるようになってきました。

 実際、例えば1980年代頃には地球温暖化の問題が注目され、温室効果ガスの排出量を抑えるためのさまざまな取組が行われるようになり、構築すべき社会として「低炭素社会」が位置付けられるようになりました。また、自然環境を人類の生存基盤として捉え、その保全と持続可能な利用を確保することにより将来にわたり自然のめぐみを享受できる「自然共生社会」の構築の必要性が世界に浸透しつつあり、その実現に向けた取組が進められています。さらに、地球に存在する資源の効率的な利用を図り、3Rの取組によって物質が健全に循環する「循環型社会」を目指した取組も進められています。

 このような地球環境を守る取組の結果、構築される社会はどのような社会でしょうか。低炭素社会・自然共生社会・循環型社会の実現に向けた取組は、結局のところ地球上に存在している生物や物質を含めた自然全体に働きかけるものであり、それぞれの取組が相互に関連しあいながら一つの目指すべき社会を形作っていくと考えることができます。このような低炭素社会・自然共生社会・循環型社会を構築することで実現した持続可能な社会は、いわば「真に豊かな社会」と呼ぶことができるのではないでしょうか。

 私たちは、永年にわたって先人たちが残してくれた自然環境の下で文明を育み、経済成長を実現し、現在の社会を築きあげました。私たちも、先人たちと同じように、子供や孫、その先の将来の世代に対し、このような真に豊かな社会を築き上げ、残していく義務があります。そのように考えれば、東日本大震災からの復旧・復興に取り組んでいく際にも、将来の子供達に対して残す社会をこれから構築していく、という視点も必要になってくるのではないでしょうか。

 また、私たちが社会を引き継ぐ子供達の世代で、真に豊かな社会が途切れることのないよう、さらにその先の子供達にこの社会を引き継いでもらうことが重要です。そのためには、未来を担う子供達が、地球環境が守られた真に豊かな社会の価値を認識し、自らもその社会の維持のために積極的な行動を行うよう促す環境教育は重要です。一人ひとりが自発的に自らの行動の環境に与える影響を考え、必要に応じて修正していくことが社会全体の持続性にとって重要です。

 今、私たちの社会は岐路に立っています。その行き先を決めるのは私たち一人ひとりの考え方と行動にかかっているのではないでしょうか。