環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成25年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第1部第1章>第2節 災害廃棄物を処理するための取組

第2節 災害廃棄物を処理するための取組

1 東日本大震災により生じた災害廃棄物の処理

(1)進捗状況

 東日本大震災により、東日本の13道県245市町村において、約1,965万トンの災害廃棄物と6県36市町村において約1,015万トンの処理を必要とする津波堆積物が発生したものと推計されています。このうち、特に甚大な被害を受けた岩手県、宮城県、福島県の沿岸市町村においては、岩手県で約366万トン、宮城県で約1,046万トン、福島県で約170万トンの災害廃棄物が発生し、それぞれ通常の一般廃棄物の排出量の8年分、13年分、2年分に相当する膨大な量と推計されています。

 震災からの復旧復興は、災害廃棄物等の迅速な処理が大前提です。処理は、現場からの撤去、仮置場への搬入、中間処理、再生利用、最終処分という手順で行われます。


写真1-2-1 災害廃棄物の手選別

 居住地近傍にある震災後に発生した災害廃棄物の仮置場への搬入は、福島県内の警戒区域を除くすべての地域で平成23年8月末までに完了し、家屋等の解体時に発生する災害廃棄物を含めて、平成24年度末までに仮置場への搬入は約91%完了しました。


写真1-2-2 岩手県山田町における仮置場の様子(平成24年10月時点)

 国は、災害廃棄物について、[1]平成25年3月末までに岩手県と宮城県において約6割を中間処理・最終処分すること、[2]平成26年3月末までに中間処理・最終処分を完了させることを目標として進めてきました。これまで、3県沿岸市町村の災害廃棄物推計量約1,582万トンのうち、924万トンの処理が完了しました(岩手県180万トン(49%)、宮城県676万トン(65%)、福島県68万トン(40%))。岩手県及び宮城県の災害廃棄物の進捗状況は61%となり、両県合計の中間目標(59%)を達成しました。一方、津波堆積物の進捗状況は37%であり、処理は進んできているものの、中間目標(42%)は未達成となりました。岩手県及び宮城県の災害廃棄物等については、目標期間内で、できるだけ早期の処理完了を目指し、着実な処理を実施します。そのため、平成25年度の中間時点(平成25年9月末)の処理量の見込みを設定し、きめ細やかな進捗管理を実施します。また、福島県の災害廃棄物等については、一部平成26年3月末までの終了が困難であることから、国の直轄処理、代行処理の加速化を図り、平成25年夏頃を目途に全体の処理見通しを明らかにします。


図1-2-1 岩手県・宮城県沿岸市町村の災害廃棄物の処理目標と実績

表1-2-1 3県(岩手県、宮城県、福島県)の沿岸市町村の処理状況(平成25年3月末現在)

(2)被災地における処理

 膨大な災害廃棄物を迅速に処理するため、被災地で廃棄物を処理するための体制整備が進んでいます。

 岩手県、宮城県では災害廃棄物処理計画を策定し、市町村の求めに応じ、県が一部の市町村から事務委託を受けて直接処理を行っています。施設整備については、岩手県、宮城県において31基すべての仮設焼却炉が平成25年1月下旬までに設置完了しているほか、21箇所の破砕・選別施設が本格稼働しています。


写真1-2-3 気仙沼ブロック気仙沼処理区小泉地区の仮設焼却炉(2基)(平成25年1月29日試運転開始)

 福島県では、市町村による処理に加えて、国による代行処理と直轄処理が行われています。代行処理は、東日本大震災により生じた災害廃棄物の処理に関する特別措置法に基づき制度化されたもので、平成24年3月に相馬市、新地町から要請を受け、国が相馬市内に仮設焼却炉を設置し、可燃物の焼却等を代行して実施しています。さらに、平成25年1月には広野町から要請を受け、仮設処理施設の設置に向けて準備を進めるなど被災地との調整を進めています。


写真1-2-4 福島県相馬市仮設焼却炉(3基)(平成25年2月20日本格稼働開始)

 一方、住民の方々が避難されている地域(旧警戒区域、計画的避難区域等)については、放射性物質汚染対処特別措置法に基づき、国が直轄処理を進めています。必要な仮置場や仮設焼却炉などの設置場所を自治体等と調整して、設置ができたところから処理を始めることとしています。

(3)再生利用等

 震災に伴って発生した膨大な災害廃棄物の処理にあっては、再生利用を前提にした中間処理を行い、コンクリートがら、金属くず、木くずなど再生利用可能なものは再生利用を進めることが重要です。このため、被災地における海岸堤防や海岸防災林復旧事業などの公共工事において、すでに再生利用が進んでいる津波堆積物やコンクリートくずに加え、不燃混合物の細粒分(ふるい下)や陶磁器くず等に由来する再生資材を積極的に活用することとしました。

 海岸堤防、海岸防災林や圃場整備事業等への利用は、すでに進められています(表1-2-2参照)。このほか、平成25年2月より仙台塩釜港・石巻港区の石巻港港湾環境整備事業(廃棄物埋立護岸)において、災害廃棄物等の埋立てによる処理を開始(約105万トン利用予定)しました。引き続き利用先の拡大が必要であり、利用先との個別のマッチングに取り組むとともに、国が実施する公共工事における再生資材の活用を図っています。また、再生利用等の加速化が必要な津波堆積物については、処理計画に基づき、再生利用先の確保を推進していきます。


表1-2-2 災害廃棄物由来の再生資材を利用している主な公共事業

(4)広域処理

 災害廃棄物の処理については、上記のように最大限、被災地域内の処理・再生利用を進めていますが、早期の復旧復興に向けて処理を加速化するため、広く協力を要請して被災地以外での広域処理も積極的に推進しています。

 実施する広域処理量は、1都1府14県72件(青森県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、東京都、新潟県、富山県、石川県、福井県、静岡県、大阪府、福岡県)において約67万トンを見込んでおり、このうち32万トンの処理が完了しています。岩手県の木くず及び宮城県の可燃物の広域処理については、平成25年3月でおおむね完了しました。


表1-2-3 広域処理に関する地方自治体の状況(平成25年5月7日時点)

写真1-2-5 石巻港区廃棄物埋立護岸整備事業(平成25年2月20日開始)

写真1-2-6 山形県への広域処理等により解消した宮城県松島町の災害廃棄物の仮置場(撮影日:平成24年5月2日→平成25年1月7日)

(5)今後の備え

 東日本大震災は、東北地方太平洋岸の地域はもとより、我が国全体の経済や国民生活に甚大な影響を与え、大量の災害廃棄物の処理を課題として突きつけるなど、私たちに豊かな恵みをもたらす自然が、時として大きな脅威となって立ちはだかるものであることを改めて示しました。

 大規模災害時には、被害が広い範囲に及ぶほか、ライフラインや交通の途絶などにより、一般ごみについても平常時の収集・処理を行うことが困難となります。

 今後も起こり得る大規模災害に迅速かつ的確に対応するためには、廃棄物処理施設における防災対策をはじめとして、あらかじめ災害時における廃棄物処理体制を準備しておくことが極めて重要です。

 これらを踏まえ、環境省では、東日本大震災における災害廃棄物処理の対応について、反省点を含め、しっかり分析するとともに、それを踏まえ、災害の被害規模の段階(ステージ)や状況に応じた対策をとれるよう、現行の震災廃棄物対策指針を全面的に見直し、新たな指針を策定する作業に入っています。

 また、大規模災害発生時に災害廃棄物を速やかに処理することができるよう、事前対応として、[1]地方公共団体間の連携、[2]民間事業者等との連携、[3]仮置場の確保を促していくことにしています。

2 事故由来放射性物質により汚染された廃棄物の処理

 事故由来放射性物質により汚染された廃棄物については、放射性物質汚染対処特措法に基づいて、汚染の程度等に応じ、処理の主体や方法等が定められています。


図1-2-2 放射性物質汚染対処特措法の概要

 放射性物質汚染対処特措法では、[1]福島県内の警戒区域等にある災害廃棄物等(対策地域内廃棄物)と、[2]事故由来放射性物質の濃度がセシウム134とセシウム137の合計で8,000ベクレル/kgを超え、環境大臣の指定を受けた焼却灰や汚泥などの廃棄物(指定廃棄物)を特定廃棄物として定め、いずれも国が処理を進めることとしています。

 指定廃棄物の処理については、平成25年2月25日に「指定廃棄物の最終処分場候補地の選定に係る経緯の検証及び今後の方針」を公表し、最終処分場を確保することとしている各県において、県の協力を得ながら、市町村長会議等の開催を通じた共通理解の醸成を行うなど、自治体との意見交換を重視しながら、丁寧に手順を踏みつつ、着実に前進できるよう取り組んでいます。

 対策地域内廃棄物については、地域内の災害廃棄物の量、分布、放射線レベル等を調査の上、平成24年6月11日には「対策地域内廃棄物処理計画(田村市、南相馬市、川俣町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、浪江町、葛尾村、飯舘村)」を策定しました。現在、対策地域内廃棄物の処理を行うにあたって必要な仮置場や仮設焼却炉などの設置場所を自治体等と調整しており、設置ができたところから処理を始めることとしています。

 放射性物質の濃度が8,000Bq/kg以下の廃棄物については、通常の処理方法で適切な管理を行うことにより、周辺住民及び作業者いずれの安全も確保した上での処理が十分に可能であり、廃棄物処理法に基づき、一般廃棄物については市町村等が、産業廃棄物については排出事業者が処理を行うこととなっています。なお、一定の要件に該当する廃棄物の処理や処理施設の維持管理には、放射性物質汚染対処特措法による特別の基準が適用され、モニタリング等を実施することとされています。