環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成24年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第6章>第2節 環境影響評価等

第2節 環境影響評価等

1 戦略的環境アセスメントの導入

 環境保全上の支障を未然に防止するため、環境基本法(平成5年法律第91号)第19条では、国は環境に影響を及ぼすと認められる施策の策定・実施に当たって、環境保全について配慮しなければならないと規定されており、上位の計画や政策段階の戦略的環境アセスメントについてわが国での導入に向けた検討を行いました。

2 環境影響評価の実施

(1)環境影響評価法に基づく環境影響評価

 環境影響評価法(平成9年法律第81号)は、道路、ダム、鉄道、飛行場、発電所、埋立・干拓、土地区画整理事業等の開発事業のうち、規模が大きく、環境影響の程度が著しいものとなるおそれがある事業について環境影響評価の手続の実施を義務付けています。同法に基づき、平成24年3月末までに計203件の事業について手続が実施されました。そのうち、23年度においては、新たに7件の手続開始、また、4件が手続完了し、環境配慮の徹底が図られました(表6-2-1)。


表6-2-1 環境影響評価法に基づき実施された環境影響評価の施行状況

(2)環境影響評価の適切な運用への取組

 平成23年4月に成立した「環境影響評価法の一部を改正する法律」(図6-2-1)に盛り込まれている法改正事項のうち、方法書段階での説明会の義務化、電子縦覧の義務化及び政令で定める市からの直接意見提出手続の創設等に係る施行令の一部を改正する政令及び施行規則の一部を改正する省令が平成23年10月に公布され、平成24年4月に同法が一部施行されました。また、風力発電事業を同法の対象事業に追加するための施行令の一部を改正する政令が同年11月に公布され、平成24年10月に施行されます。環境影響評価の具体的な実施方法に関する基本的事項については、「環境影響評価法の一部を改正する法律」により創設された事業の早期段階における環境配慮を図るための計画段階環境配慮書の手続等が、平成25年4月から施行されること及び5年程度ごとを目途に点検し、その結果を公表することとなっていることから、平成23年6月より検討会を開催し、平成24年4月に策定、公表しました。そのほか、国・地方公共団体等の環境影響評価事例や制度及び技術の基礎的知識の提供による環境影響評価の質及び信頼性の確保を目的として、これらの情報等を集積し、インターネット等を活用して国民や地方公共団体等への情報支援を行いました。


図6-2-1 改正後の環境影響評価法の手続の流れ

(3)地方公共団体における取組

 平成23年度末現在、都道府県と政令指定都市を合わせた66団体のうち62団体において環境影響評価条例が公布・施行され、さらに知事意見を述べる際の審査会等第三者機関への諮問や事業者への事後調査の義務付けを導入しています。

 対象事業については環境影響評価法対象の規模要件を下回るものに加え、廃棄物処理施設やスポーツ・レクリエーション施設、畜産施設、土石の採取、複合事業なども対象としており、さらに環境基本法に規定されている「環境」よりも広い範囲の「環境」の保全を目的とし、埋蔵文化財、地域コミュニティの維持、安全などについても評価対象にするなど、地域の独自性が発揮されています。

(4)個別法等に基づく環境保全上の配慮

 港湾法(昭和25年法律第218号)、公有水面埋立法(大正10年法律第57号)、都市計画法(昭和43年法律第100号)等に基づいて行われる事業の認可、計画等の策定等に際し、環境保全の見地から検討を行いました。

(5)東日本大震災からの復旧・復興に係る施策等について

ア 災害復旧のための発電設備の設置に係る環境影響評価法の適用除外について

 震災により原形復旧することが不可能となった自社の発電設備の電気供給量を補うために、東京電力株式会社及び東北電力株式会社が当該発電設備に係る発電所以外の場所で行う発電設備の設置の事業で、災害復旧事業として復旧計画に位置付けられるものについては、環境影響評価法第52条第2項の規定に基づき、同法の適用除外となることを確認しました。これらの事業の実施による環境への負荷をできる限り回避・低減し、環境保全について適正な配慮が行われるよう、当該事業による環境影響を最小化するための実行可能な最大限の配慮を行うことや、関係地方公共団体及びその地域住民に対する説明や意見聴取等の措置をとるよう、政府として指導しました。

イ 復興特区における特定環境影響評価手続

 平成23年12月に施行された東日本大震災復興特別区域法に基づき、被災した地域での迅速な復興を図るための復興整備計画に位置付けられる復興整備事業のうち、環境影響評価法の対象事業となる土地区画整理事業並びに鉄道・軌道の建設及び改良事業について、地方公共団体等への意見聴取及び環境大臣意見の提出等の機会を確保するとともに、既存資料等の活用や、方法書、準備書、評価書を一つに集約した特定評価書を作成することなどにより環境影響評価を実施する特例規定を設けました。