騒音規制法(昭和43年法律第98号)に基づき規定される全国の179地方公共団体においては、自動車騒音常時監視を実施しています。この状況は、インターネット上の「環境GIS全国自動車交通騒音マップ」(自動車騒音の常時監視結果(環境展望台:国立環境研究所)(別ウィンドウ))において、地図とともに情報提供しています。
ア 工場・事業場及び建設作業による騒音・振動対策
騒音規制法及び振動規制法(昭和51年法律第64号)では、騒音・振動を防止することにより生活環境を保全すべき地域(指定地域)内における法で定める工場・事業場(特定工場等)及び建設作業(特定建設作業)の騒音・振動を規制しています。建設作業の振動については、振動の苦情総数の6割以上を占めている現状を踏まえ、地方公共団体担当者のための建設作業振動対策の手引を作成しました。また、各業界団体にて機器の騒音問題を低減するような自主的な取組を促進するための普遍的なマニュアルを作成しました。
イ 自動車交通騒音・振動対策
自動車交通騒音・振動問題を抜本的に解決するため、自動車単体の構造の改善による騒音の低減等の発生源対策、道路構造対策、交通流対策、沿道環境対策等の諸施策を総合的に推進しました(表4-3-1)。
自動車単体から発生する騒音を減らすため加速走行騒音、定常走行騒音、近接排気騒音の3種類について規制を実施しています。また、道路交通法(昭和35年法律第105号)等に基づく消音器不備、空ぶかし運転、不正改造車両の取締りを強化するなど、暴走族による爆音暴走の防止対策に取り組んでいます。
しかし、幹線道路の沿道地域を中心に環境基準の達成率は依然として低く、一層の騒音低減が必要であることから、中央環境審議会「今後の自動車単体騒音低減対策のあり方について」の答申に基づき、自動車の走行実態、騒音の実態及び国際的な規制の動向を踏まえ、四輪自動車及び二輪自動車の加速時に発生する騒音の規制手法等の抜本的な見直し、並びに四輪自動車用タイヤ単体から発生する騒音の規制の導入について検討しました。
自動車からの騒音や振動が環境省令で定める限度を超えていることにより道路の周辺の生活環境が著しく損なわれると認められる場合に、市町村長が都道府県公安委員会に対して道路交通法(昭和35年法律第105号)の規定による措置を要請することができる要請限度制度に基づき、自動車騒音について、平成22年度に地方公共団体が苦情を受け測定を実施した70地点のうち、要請限度値を超過したのは8地点であり、同様に、道路交通振動については、測定を実施した69地点のうち、要請限度値を超過した地点は2地点でした。
ウ 航空機騒音対策
平成19年「航空機騒音に係る環境基準について」(昭和48年12月環境庁告示第154号)の一部改正により、近年の騒音測定機器の技術的進歩及び国際的動向に即して新たな評価指標が採用され、平成25年4月1日に施行されることとなっており、平成21年7月に改正後の航空機騒音の測定・評価に関する標準的な方法を示した「航空機騒音測定・評価マニュアル」を発行するなど、施行に向けた準備を進めています。
耐空証明(旧騒音基準適合証明)制度による騒音基準に適合しない航空機の運航を禁止するとともに、緊急時等を除き、成田国際空港では夜間の航空機の発着を禁止し、大阪国際空港等では発着数の制限を行っています。
発生源対策を実施してもなお航空機騒音の影響が及ぶ地域については、公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律(昭和42年法律第110号)等に基づき空港周辺対策を行っています。同法に基づく対策を実施する特定飛行場は、東京国際、大阪国際、福岡等14空港であり、これらの空港周辺において、学校、病院、住宅等の防音工事及び共同利用施設整備の助成、移転補償、緩衝緑地帯の整備等を行っています(表4-3-2)。また、大阪国際空港及び福岡空港については、周辺地域が市街化されているため、同法により計画的周辺整備が必要である周辺整備空港に指定されており、国及び関係地方公共団体の共同出資で設立された独立行政法人空港周辺整備機構が関係府県知事の策定した空港周辺整備計画に基づき、上記施策に加えて、再開発整備事業等を実施しています。(平成24年7月1日に予定されている関西国際空港・大阪国際空港の経営統合に伴い、経営統合後の大阪国際空港周辺の事業は新関西国際空港株式会社が実施。)
自衛隊等の使用する飛行場等に係る周辺対策としては、防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律(昭和49年法律第101号)等に基づき、学校、病院、住宅等の防音工事の助成、移転補償、緑地帯等の整備、テレビ受信料の助成等の各種施策を行っています(表4-3-3)。
エ 鉄道騒音・振動対策
東海道、山陽、東北及び上越新幹線については、環境基準達成に向けた対策として、新幹線鉄道沿線の住宅密集地域等であって75デシベルを超える地域における騒音レベルを75デシベル以下とするため、いわゆる75デシベル対策を推進しています。鉄道事業者が地上設備対策や環境性能に優れた新型車両の投入などの対策を実施した結果、沿線の環境は改善の傾向にあります。しかし、これまでの対策区間以外の区間において、75デシベルを超える地域が残されていることから、引き続き75デシベル対策を計画的に推進しています。なお、平成18年度以降に対策が実施された区間については、平成21年度から平成23年度にかけて騒音測定を実施し、75デシベル対策の達成状況の把握を行うこととしています。また、新幹線鉄道騒音の実態をより適切かつ正確に把握するため、平成22年5月に測定・評価に関する標準的な方法を示した「新幹線鉄道騒音測定・評価マニュアル」を発行しました。
在来鉄道騒音については、平成22年度に発行した「在来鉄道騒音測定マニュアル」を用いて統一した測定方法での騒音測定を実施し、現状の把握に努めています。
オ 近隣騒音対策(良好な音環境の保全)
近年、営業騒音、拡声機騒音、生活騒音等のいわゆる近隣騒音は、騒音に係る苦情全体の約20%を占めています。近隣騒音対策は、各人のマナーやモラルに期待するところが大きいことから、「近隣騒音防止ポスターデザイン」を一般公募して普及啓発活動を行っています。また、各地方公共団体においても取組が進められており、平成22年度末現在、深夜営業騒音は40の都道府県及び110の指定都市、中核市、特例市及び特別区で、拡声機騒音は41の都道府県及び114の指定都市、中核市、特例市及び特別区で条例により規制されています。
カ その他の対策
低周波音問題への対応に資するため、地方公共団体職員を対象として、低周波音問題に対応するための知識・技術の習得を目的とした低周波音測定評価方法講習を行いました。また、風力発電施設については、近年設置数が増加していること、騒音・低周波音による苦情が発生していることなどから、その実態の把握と知見の充実が求められており、風力発電施設等の低周波音の人への影響評価に関する研究を引き続き進めるとともに、騒音・低周波音を適切に調査、予測、評価する手法についても検討を行い、現時点までの検討結果を取りまとめました。
ア 悪臭防止法による措置
悪臭防止法(昭和46年法律第91号)に基づき、工場・事業場から排出される悪臭の規制等を実施しています。
同法は、悪臭物質ごとの規制に加え、複合臭問題等への対策強化を目的として、人間の嗅覚に基づいた臭気指数規制を導入しており、平成23年度も、地方公共団体に対するアンケートや情報提供等により、臭気指数規制の一層の導入促進に向けた取組を行いました。また、臭気指数等の測定を行う臭気測定業務従事者についての国家資格を認定する臭気判定士試験を実施しました。
イ 簡易嗅覚測定法の開発
規制対象となる工場・事業場からの悪臭苦情に対し、地方公共団体による測定は十分に実施されていない現状にあります。そのため、現場で簡便に測定できる新たな簡易嗅覚測定法を開発しました。
ウ 良好なかおり環境の保全・創出
まちづくりに「かおり」の要素を取り込むことで、良好なかおり環境を創出しようとする地域の取組を支援することを目指し、「かおりの樹木・草花」を用いた「みどり香るまちづくり」企画コンテストを実施しました。
ヒートアイランド対策大綱に基づき、[1]人工排熱の低減、[2]地表面被覆の改善、[3]都市形態の改善、[4]ライフスタイルの改善の4つを柱とするヒートアイランド対策の推進を図りました。
ヒートアイランド現象の実態や環境への影響に関する調査・観測や、熱中症の予防情報の提供を継続的に実施しました。また、WBGT(暑さ指数:湿球黒球温度)のモニタリングを強化しました。さらに、引き続きヒートアイランド現象に対する適応策についての調査・検討、地下水・地中熱の利用等環境技術を活用したヒートアイランド対策の検証を実施するとともに、平成24年3月には、「地中熱利用にあたってのガイドライン」を公表しました。
光害については、光害対策ガイドライン(平成18年度改訂)、地域照明環境計画策定マニュアル及び光害防止制度に係るガイドブック等を活用して、良好な照明環境の実現を図る取組を支援しました。
星空観察を通じて環境の意識啓発を行う全国星空継続観察(スターウォッチング・ネットワーク)事業については、有識者等の呼びかけにより継続実施されました。また、良好な大気環境・光環境の保全等を目的とした「星空の街・あおぞらの街」全国協議会が開催する全国大会(滋賀県多賀町)を開催しました。
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