〈気候変動に関する国際的取組〉
IPCC第4次評価報告書によると、世界の温室効果ガスの排出量は、工業化以降、人間活動により増加しており、1970年(昭和45年)から2004年(平成16年)の間に70%増加したとされています。2010年12月のCOP16においては、工業化以前に比べ気温上昇を2℃以内に抑えるとの観点から、大幅削減の必要性の認識を共有しました。この実現に向け、世界全体での排出量をできる限り早期にピークアウトさせることを目指し、低炭素社会の構築や革新的技術開発の推進を含む2050年(平成62年)までの世界全体の排出量の削減のあり方を共有するとともに、2050年までに自らの排出量を80%削減することを目指すこととしています。さらに、2020年(平成32年)までの中期目標については、すべての主要国による公平かつ実効性のある枠組みの構築と意欲的な目標の合意を前提として、1990年(平成2年)比でいえば25%の温室効果ガスの排出削減を目指す旨、国連に登録しています。わが国としては、COP16で採択されたカンクン合意を、米中等を含むすべての主要国が参加する真に公平かつ実効的な一つの法的拘束力のある国際枠組みへと発展させていくため、積極的に知恵を出しながら、引き続き、精力的に対話を重ね、交渉の進展に貢献していきます。
さらに、地球温暖化防止のため、今後の国際交渉の状況を注視しつつ、気候変動対策に取り組む意欲的な途上国に対して支援を実施することに加え、気候投資基金(CIF)や地球環境ファシリティ(GEF)等の多数国間基金を通じた貢献、コベネフィット・アプローチ等に基づく二国間・多国間の技術・資金協力の推進、国際民間航空機関(ICAO)及び国際海事機関(IMO)における国際航空分野及び国際海運分野からの温室効果ガス排出削減に関する検討等を引き続き実施します。
クリーン開発メカニズム(CDM)や共同実施(JI)等の京都メカニズムをさらに活用していく観点から、有望なプロジェクトをCDM/JIプロジェクトとして実施することができるよう、政府が一体となって引き続きさまざまな支援を行います。
開発途上国等におけるプロジェクトの発掘及び事業化を進めるとともに、ホスト国におけるCDM/JIプロジェクトの受入れやCDMを利用したコベネフィット事業に係る支援を引き続き実施するとともに、コベネフィット定量評価マニュアルの普及に努めます。
京都議定書の目標達成のため、わが国は国内対策に最大限取り組んだとしてもなお目標達成に不足すると見込まれる差分について、京都メカニズムを活用したクレジットの取得によって確実に対応することが必要であり、政府はNEDOを活用し、[1]リスクの低減を図りつつ、費用対効果を考慮して取得すること、[2]地球規模での温暖化の防止、途上国の持続可能な開発への支援を図ること、という観点を踏まえ、クレジットの取得を引き続き行います。
このような現行の京都メカニズムの着実な実施に加えて、新たな二国間の枠組みの構築に向け、途上国における排出削減プロジェクトの発掘・形成、排出削減量や測定に関する方法論等の確立を目的としたフィージビリティスタディ等を拡充して実施します。
IPCCの各種報告書の執筆に参加する専門家をサポートする等、IPCCの活動に対する人的、技術的、資金的な貢献を行います。また、温室効果ガス排出・吸収量世界標準算定方式を定めるためにIGESに設立されたインベントリータスクフォースの技術支援組織を引き続き支援します。
また地球温暖化アジア太平洋地域セミナーや、アジア地域でのインベントリに関するワークショップを引き続き開催し、適応や測定・報告・検証(MRV)することが可能な途上国の削減行動のあり方を含めた同地域における地球温暖化の諸課題について、意見交換やキャパシティ・ビルディング等を通じた途上国支援に努めます。
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